工夫を凝らした山岳推理小説
2014/08/03 22:40
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はタイトルの「遭難者」が示すとおり、山が舞台となる所謂山岳小説なのだが、その中身は推理小説である。実在する白馬岳、白馬鑓ヶ岳、唐松岳、八方尾根など、かなり著名な山岳地帯(後立山連峰)の登山コースがその舞台となっている。その分、登山が趣味の読者は食付きが良いであろう。
長野県内に所在する会社の山岳部の山行から物語は始まる。会社の山岳部のパーティで後立山連峰を目指した。2組に別れて行動したまでは良かったが、1組の男性社員が不帰の險で滑落して死亡してしまった。山行が始まった当初から体調が良くなかったと他の社員は語る。
これからストーリーは展開していくのだが、山岳部内部の人間関係がもたらす殺人事件に発展していく。この殺人事件についてはそれほど特徴があるとは思えない。推理小説の一種で山行を利用した殺人事件である。
ただし、この殺人事件が発覚する契機に工夫が凝らされている。殺人事件の被害者を悼んで追悼集が作られた。この追悼集に不信を抱いたのは母親であった。殺人事件なので、自分の犯罪が露見しそうになると次の殺人を犯さざるを得なくなる。こうして連続殺人には見えない複数の死亡者が出てしまう。
こういう展開を表現するために、その追悼集、山岳遭難事故報告書、事故対策本部の報告書などが綴られて、折原はその内容を読者に突きつけている。これらの材料から殺人事件の全貌を読者に理解させるという意図である。
随分凝った作りである。遭難事故が殺人事件に変わっていく姿を見せていく。新聞記事や手紙などを提供してストーリーを展開させるという手法は時折見かけるが、追悼集を端緒とする山岳小説は面白い。かくいう私もそれに釣られて手に取ってみたものである。殺人事件の動機などはありふれているのだが、こういう工夫は読者の興味を引き、楽しませるといえよう。
H26.6.16読了
2014/06/28 07:29
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投稿者:竹匠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山は密室!よく言われるプロット。あまりにも、安直な設定では・・・
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地図とか登山予定とか、小ネタがいろいろ仕込んであって、前半はすいすい読んでしまったのだが、ラストまですいすいいっちゃったのは予想外でしたよ…。
むしろこの小ネタ意味あったんだろーかと思う。
もちろん、それなりに面白いし読みやすいです。
火曜サスペンスみたいにすっきりはっきりしたディテールでドラマを配置してありますのであまり頭も使わなくて読めます。
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山での遭難者に対する追悼集の形式で書かれた山岳ミステリ。
父を山で失い、長男、母と続く遭難。
単なる事故なのか、自殺なのか、真相に近づけるのか。
前半、後半に別れているが、後半はテンポ良く一気に読めます。
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山で遭難した青年に捧げられた2冊の追悼集から、謎が生まれる。
まぁ、ミステリーなので不慮の事故ではないわけで、登場人物たちがそこに気づくまでが、もどかしい。
つか、それでもちゃんと気づいていないし。いや、気づいたら事故そのものが成立しなくなるのか。
なんか、痛し痒しだな。
で、結論ありき、の話なのかなと。
事件の結論と、追悼集をそのままのせるという形式にするという形から始まった…ようするに企画か。
企画に振り回されちゃったかなって感じ。
一番は、一応主人公であろう遭難した青年の姿が不明確なことかな。まぁ、残った人がそれぞれに語るから人によって印象や、受け止め方が違うから仕方ないのだろう。でも、もうちょっと…。
ほんと、もうちょっとなんとか、って感じでした。
うん。
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文庫化される前は、実際に箱入り分冊追悼集という形で発行され、この話は絶対にその形で読んだ方が良いと思う。文庫だとどうしても臨場感が薄くなり、小説を読んでるという意識が勝ってしまう。
ミステリとしては、筋書きが分かり易く物足りないが、アイデアは素晴らしいと思う。そして、最後のロマンスは絶対不必要w あれで一気に安っぽく感じてしまったのが残念…
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【山が好きな青年は、山に消えた――】山で滑落死を遂げた青年のために編まれた二冊の追悼文集にこめられたミステリー。鬼才の手腕が冴える傑作を、一巻本にて復刊する!
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日本ミステリ作家の中の職人の中の職人、彼の名こそ「折原一」
そんな職人作家の中篇、元々は山で非業の死を遂げたクライマーの追悼集からインスパイアされたとのこと。
文庫本を読んだが、初版は実際の追悼集を模した体裁をとっており、別冊を含めた2冊での出版だったとのこと。そのほうがまさに折原一っぽくて、文庫だと面白さ半減ってところだろうと思う。
個人的には安定の折原なので、伏線等の仕掛けも含めて、満足はした。ただ信者以外にはどうだろうか?誰もは楽しめる1冊とは言えるだろうか?まぁ自分は信者だからどうでもいいが…
いやそれなりに存在する信者のためにも、折原氏には作風をブレることなく邁進していただきたい!と思う。まだ~者シリーズは未読がけっこうあるので読んでいきます。
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少し変わった構成のミステリ。第1部に当たるのは,笹村雪彦追悼集という限定100部で製本された本という設定である。笹村雪彦追悼集は,以下の構成となっている。
○ 北アルプスの白馬岳から唐松岳に向かう途中、不帰ノ嶮において稜線から滑落(墜落死)した笹村雪彦の話
○ 笹村雪彦の母である笹村時子を誘い,慰霊登山が企画された話。慰霊登山の中で,笹村時子は,息子の死が自殺かどうかを調べ,何らかの真相を知ったような描写がある。最後は,「復習してやる」という言葉が聞こえたあと,笹村時子と中村アイという女性が墜落死する。
第2部は,笹村雪彦と笹村時子の死亡の真相を,笹村雪彦の妹である笹村千春が捜査するという話になっている。
最後に明らかになる真相は,笹村雪彦が社内恋愛の末に自殺したのでも,笹村雪彦が会社の金を使い込んだ為に、保険金詐欺を行ったのでもなく,会社の金を一時的に使い込んでいた笹村雪彦を脅迫していた須磨史郎という人物が,笹村雪彦を事故死に見せかけて殺害し,慰霊登山の中で笹村雪彦の死の真相を捜査していた笹村時子が真相に気づいたため,笹村時子と中村アイを殺害していたというものだった。
須磨四郎は,笹村千春も殺害しようとするが,同殺害は失敗し,須磨は足を滑らせ,墜落死した。
折原一にしては叙述トリックにそれほどの冴がなく,やや平凡なできなように思う。読んでいる間,良質のサスペンスだったが,真相が平凡というイメージ。★2かな。
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二冊の追悼集から成る小説。
単行本の発売時には、実際に箱入りの二分冊とした凝った作りの書籍にして発売されたらしいが、今回読んだのは文庫版(一冊にまとめられている)。
全編を占めるのは二冊の追悼集。
登山に興味もない、ましてや知識もない自分としては、最初、なかなか物語に入り込めなかった。北アルプスの細かい地名など聞かされてもイメージが湧かないし、登山用語などもチンプンカンプン・・・。
半分を過ぎたあたりから物語に入り込めるんだけど、これが、また、今まで読んできた折原一とはチョット異なる感じで・・・。
たしかに死人は居るんだが、そもそも自殺なのか他殺なのかも判然としないし、自殺にしても他殺にしても動悸が見えてこない。モヤモヤした感じを抱いたまま後半へ進むんだが・・・。
ラストは、ちょっと強引だよなぁ。
他の方も書かれているけど、この小説は単行本発売時みたいに、二分冊で読んだ方がリアルに感じる事が出来たかもしれない。野心的な試みだったと思うけど、文庫版でもその試みで出版して欲しかったなぁ。そうすれば、また違った読後感を味わえたんじゃないかと思う。
強烈な「折原マジック」を期待してただけに、やや肩透かしだった一冊。
☆3個
背表紙~
残雪の北アルプスで、若手会社員・笹村雪彦は所属する山岳サークルの登山行で足を踏み外し、滑落死を遂げた。だが山を愛した彼に捧げた追悼集は、死因に疑いをもった母親の行動によって、予想外な内容に・・。登山届、現地地図、死体検案書など詳細な記録を収録した2分冊の追悼集に込められた謎とは何か?
思うんだけど、文庫サイズで、登山届やら現地地図やらを見せられても、小さすぎて見えにくいんだよなぁ。
それに結局のところ、真相には登山届も死体検案書も関係なかったし・・・。
序盤、なかなか物語に入り込めず、中盤、かなり盛り上がったんだけど、ラストが強引なのがなぁ・・・。
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うーん……
結局母が転落した時に複数人が聞いた「復讐してやる」という声は何だったのか、N子とSは野島さんと五十嵐さんだったのか?
N子とSの話で引っ張った割にはそこをはっきりさせないまま終わり消化不良。付き合ってた過去があるのにN子冷たすぎ……。
真相は真相でまあどうでもいいというか、最後の無理矢理ハッピーエンドな感じも白けた。
装丁は非常に凝っており、一冊目を読んだ段階では非常に面白かっただけに二冊目のガッカリ感が残念だった。
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『異人たちの館』に続き、折原作品十作目。実際に起きた事件を参考にした“ —— 者”シリーズ。山岳ミステリィ。いろんな事件が合わさり、一番重要な雪彦、時子両殺人事件が隠されていた。折原さんらしい作品でした^^ 星三つ半。
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「遭難者」
単行本はまさかの。
私は文庫本を読みましたが、ハードは、追悼集(本編)と別冊の二冊構成だったようです。アマゾン紹介には奇書!てあるけど言い過ぎ。
本書は、北アルプスの白馬岳から唐松岳に縦走中、不帰ノ嶮という難所で滑落死した青年・笹村雪彦の死の真相を追求するミステリー。但し、折原一氏十八番の叙述トリックは使用されていません。そのため、誰が誰でいつすり替わったんだ??みたいなアレは味わえないので、ご留意を。これは純粋なミステリーです。
但し、構成が少し変わっていて、登山記録、山岳資料、死体検案書などが収められた追悼集で物語が進みます。そこに母や妹による関係者インタビューが差し込まれたりして、2人によるやりとり描写だけのシーンは少なめ。
ただ、山岳資料や死体検案書などが真犯人を決定づける証拠になっている訳ではないので、何のために盛り込まれたのか意図を図れませんでした。追悼集も、妹の探偵パートナーとなる雪彦の同級生を事件に参戦させるためだけのフックだった様な、、、。
これらよりも印象的なのは、雪彦のノートでした。そこには、N子からの手紙が差し込まれていたのですが、指輪もらった数日後に嫌いだったSに靡いて直接は言いづらいから手紙で言いますだなんて、どうかしてる発言連発のN子に引きました。結局、N子の深掘りも特にないのもイマイチ。
終盤畳み掛ける犯人当時のくだりは、いささか強引な展開に感じました。霧が濃い中突き飛ばしで終了、次はお前だ!と迫るのは二時間サスペンス風(こちらも最後は崖)。そして最後の謎の恋愛成就。いきなり結婚てちょっと意味わからない笑
叙述トリック作品を使わないとこんなテイストになるんでしょうか。折原作品は、まず叙述トリック系から読むのをお勧めします。
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構成がちょっと変わっていて面白い。
北アルプスで滑落死した息子の慰霊登山に参加する母親。
死の原因は何だったのか?誰かが関わっているのか?
追悼集から謎を読み解いていく。
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ストーリー 3.6
キャラクター 3.3
熱中度 3.9
衝撃度 3.5
読了感 3.5
追悼集がそのままミステリー本になるというアイデアがすごい。