19世紀の奇才作家による、思わず作品にはまり込んでしまう傑作です!
2020/05/11 10:24
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、19世紀に活躍したフランス人作家シャルル・バルバラの代表作の一つです。内容は、19世紀中頃のパリが舞台となっており、当地で急に金回りがよくなり、かつての貧しい生活から一転して、社交界の中心人物となったクレマンが主人公です。無神論者としての信条を捨てたかのように、著名人との交友を楽しんでいた主人公ですが、ある過去の殺人事件の真相が自宅のサロンで語られると、異様な動揺を示し始めるのでした。同作は、フランス版の『罪と罰』とも言われ、私も興味をもって手にしたのですが、読んでいくうちに、みごとに作品にはまり込んでしまいました。とっても興味深い一冊です。
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ミステリっぽいタイトルであり、ストーリーの構造もミステリを思わせるのは確かだが、ではミステリかと言われると判断に困る。
個人的にはヘンリー・ジェイムズを思い出したが、ドストエフスキーの『悪霊』を彷彿とさせる部分もあるユニークな作風。奇才という表現がぴったりだ。
この著者は長らく本国でも忘れられていたそうで、発掘したのは翻訳を担当された亀谷氏だとか。他作品の邦訳にも期待したい。
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19世紀フランスの作家、音楽家でもあり、
ボードレールと親交のあったシャルル・バルバラの中編。
セーヌ川から引き揚げられた証券仲買人の遺体、その死の背後の犯罪。
探偵小説の要素もあるが、
殺人者の苦悩と贖罪意識に重点が置かれたヒューマンドラマ。
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赤い橋で死体で発見された仲買人のティヤール。横領と破産が発覚しての自殺と考えられた事件。ティヤールの未亡人と恋に落ちたマックス。友人のクレマンとの再会。恋人のロザリと結婚したクレマンの生活。無神論者でありながら生活のために教会に勤めるクレマン。ロザリの衰弱。二人の子供に隠された秘密。会合で判事が語る犯罪に動揺するクレマンとロザリ。ロザリの死とクレマンの告白。
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バルバラを再発見した亀谷さんの調査と物語を交互に織り交ぜながら映画を作ったら面白そうなんだけど、誰か作ってくれませんかね?
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『罪と罰』に影響を与えたに違いない哲学心理小説!19世紀パリ、かつての貧乏暮らしから急に生活が豊かになり社交界の中心人物となった無神論者のクレマンと病気の妻ロザリ。ある夜サロンで判事が語った殺人事件の話にクレマンは露骨な動揺を見せる。描かれるのは「神が存在しなければ全てが許される」と考えた当時の反神思想と神の存在を否定しきれない不安というキリスト教社会的なジレンマであり、殺した男の面影が後に生まれた子供に現れるという雨月物語的な恐怖。そこに結論はなく、まるでありきたりの人生同様に悲劇と幸福が哲学的なモヤモヤと共に訪れる。ある人には幸福が、ある人には不幸が、それはサイコロを振って偶然出た目のようなもの。悲劇も幸福も因果関係から生まれるわけではない。そして幸不幸が人の知覚による違いでしかないなら神もまた偶然出たサイコロの目でしかない。
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犯罪を犯して幸せをつかんだとしても、罪の重さに耐えられない。そこには不毛と恐怖と絶望がある。
クレマンの子供はなぜ死者に似ているのか?私にはわからない。
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とある殺人を犯しそれをきっかけに自身の成功を得た人物を描いた作品。
殺人という罪に対して単純に勧善懲悪を課すのではなく、その背徳性を解いているのが特徴です。彼自身が無神論者であることもかなりのキーワードではないでしょうか。
あとは主人公との対比が目を引く部分でしょう。まさに真反対な真っ直ぐさ、ときには月並みな野次馬心など、読者としてはともに心を揺さぶられる存在としてピッタリだったように思えます。
多少哲学的な意見のぶつかり合いのシーンもありますが、かなり読みやすい小説でした。
ただ、殺人事件を取り扱っているものの、推理小説的な要素はあまりありませんでした。社会派の小説と呼ぶ方がしっくりきそうですね。
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久々に古典に手を出してみた。現代は多様化というなんでもよさを受け入れているのに対して、昔は文字を読んだり書いたりするのが上流階級のしかも教養のある人だったの時代の、多分なんだけど、学者の論文みたいな世界だったと思うんだよね。なので読む側にこび売ってない。現代のように意味のない表記をたくさん入れて文字数(金)を稼ぐ必要もない。読んでて結構扱いづらい物だなと感じた。シンプルな言葉で展開が早いのでよーく考えて読み進めないと一気においてけぼりを喰らう。