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本書は,われわれがいかに錯覚に陥りやすく,不合理な意思決定をしがちかということを,多種多様な実験とデータによって示している。
本書を読了した後においては,さまざまな人間の営みを,これまでとは違った視点で(ある意味では,ひねくれた視点で)見られるようになるかもしれない。
認知的錯覚に陥ることを回避し,客観的・合理的な意思決定をするためにはどうすればよいかという点については,著者によれば,効果的な解決策は存在しない。しかし,エラーのパターンを知り,自分の置かれた状況を冷静に観察することで,部分的には意思決定のあり方を改善できるのではないだろうか(著者自身も,断片的には解決法を提示している)。その意味で,本書の内容は,実生活に役立てることもできるだろう。
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人はどのように意思決定したり、物事を理解しているのかがわかれば、ビジネスの仕掛けが変わるはずと思い、その手の本をまとめ読み。組織やチームを動かすことや経済行為について、一般的に言われているほど人は合理的ではない。やはり感情の動物。「教室の写真を見せられると教育に前向きになる(プライミング効果)」「速い思考と遅い思考の組み合わせ」「創造性とは素晴らしく良く働く連想機能」「感情という尻尾は合理的な犬を振り回す」「次のファイスブックを見落とすリスクは凡庸な企業に投資するリスクよりもはるかに深刻と受け止められている」。
読了済みの『スイッチ』に登場する象使いと象と同じで理解が深まった。
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社会人ゼミテキスト
佐々木先生の言葉を借りると、
本当に合理的なものとは、何か、ということ
合理性には限界がある、といこと
が書かれた本。
私の経済学のイメージが180度変わった。
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・ 実験の参加者は統計的事実を無視し、ステレオタイプと類似性だけを問題にした。彼らは難しい判断を下すにあたり、似た者を探して単純化ヒューリスティック(近道の解決法)を使ったのだと考えられる。
・ 直感的解決の探索は自動的に行われるが、時に失敗し、専門的スキルによる解決も、ヒューリスティックな解決も、一切浮かんでこない時がある。そういう時はたいてい、私たちはより時間をかけて頭を使う、熟慮熟考へとスイッチを切り替える
・ システム1は自動的に働き、システム2は、通常は努力を低レベルにおさえた快適モードで作動している
・ システム1は、印象、直感、意思、感触を絶えず生み出してはシステム2に供給する。システム2がゴーサインを出せば、印象や直感は確信に変わり、衝動は意志的な行動に変わる
・ そもそもシステム2は鈍くて効率が悪いので、システム1が定型的に行っている決定を肩代わりすることはできないのである。私たちにできる最善のことは妥協にすぎない。失敗しやすい状況を見分ける方法を学習し、かかっている物が大きいときに、せめて重大な失敗ウを防ぐべく努力をすることだ。
・ システム2に備わっている決定的な能力は、いわゆる「タスク設定」ができることである。
・ 私たちは普通、簡単な作業を小分けにするとか、中間結果を出して長期記憶に覚えさせるとかすぐにいっぱいになってしまう作業記憶を使わずに神に書き出すといった方法を使って、過大な負荷を防ぐ.こんな具合に時間と行動を管理して、長丁場を乗り切り、「最小努力の法則」にしたがって生活している。
・ 鮮明に印刷された文章、繰り返し出てくる文章、プライム(先行刺激)のあった文章は認知しやすく、スムーズに処理されることが伺える(認知容易性=慣れ親しんだ物が好き)認知が容易な時は、あなたは多分機嫌がよく、好きな物を見ていて、聞いていることをもっともだと思い、直感を信用し、慣れ親しんだ心地よい状況だと感じている。
・ 見覚え、聞き覚えといった感覚は、単純だが強力な「過去性」という性質を帯びており、そのために、以前の経験が鏡に直接映し出されているように感じる(ジャコビー)
・ 聞き慣れたことは真実と混同されやすい
・ 結局一番頻繁に見せられた単語や写真ほど好きになる。このことから明らかなように、この印象を形成しているのはシステム1であり、そのことにシステム2は気づいていない。むしろ単純接触効果は全く意識せずに見ている時の方が刺激としては強い。
・ 気分は明らかにシステム1の働きを左右する。不機嫌な時や不幸な時、私たちは直感のきらめきを失ってしまう
・ システム1は信じたがるバイアスを備えている。疑ってかかり、信じないと判断するのはシステム2の仕事だが、しかしシステム2は時に忙しく、だいたいは怠けている。実際、疲れている時やうんざりしている時は、人間は根拠のない説得的なメッセージ(たとえばコマーシャル)に影響されやすくなる
・ 「自分の見た物がすべてだ」となれば、つじつまはあわせやすく、認知も容易になる。そうなれば、私たちはそのストーリーを真実と受け止めやすい。速い思考ができるのも、複雑な世界の中で部分的な情報に意味付けできるのもこのためである。
・ 標本サイズが大きければ、小さい場合より正確である。標本サイズが小さいと、大きい場合より極端なケースが発生しやすくなる。
・ アンカリング効果:ある道の数値を見積もり前に何らかの特定の数値を示されると、この効果が起きる
・ 「お一人様12個まで」平均7個、「お一人様何個でも」平均2個
・ 連想システムは情報の信頼性に拘泥しない。大事なのはストーリーであり、それはなんであれ、入手できた情報からこしらえられる。見た物がすべてである
・ 利用可能性ヒューリスティック
・ 代表性ヒューリスティック:システム1はそうと意識しなくても、類似性の印象を絶えず生み出している
・ 結果の確率を見積もる時は、妥当な基準率をアンカーにする
・ 回答者は確立理論に反して、より詳しくて具体的なシナリオの方が確率は高いと判断した
・ 高価な商品に安物のおまけを付けたところ、そのせいで、全体が安っぽくなってしまった。これはまさに、過ぎたるは及ばざるがごとし、というやつだ
・ 私たちの頭は因果関係を見つけたがる強いバイアスがかかっており、ただの統計はうまく扱えない
・ ある人のたったひとつの目立つ特徴についての判断に、すべての資質に対する評価を一致させるようしむけるのがハロー効果。
・ ハロー効果は「よい人間のやることはすべてよく、悪い人間のやることはすべて悪い」という具合に、評価に一貫性を持たせる働きをする。
・ 何にでも意味付けをしたがるシステム1の作用によって、私たちは世界を実際よりも整然として、単純で、予測可能で、首尾一貫した物としてとらえている。過去の認識の錯覚は、未来は予測できコントロールできるというもうひとつの錯覚を生む。こうした錯覚は心地よい。事態が全く予測不能だったら感じるはずの不安を和らげてくれるからだ。
・ 自信は感覚であり、自信があるのは、情報に整合性があって、情報処理が認知的に容易であるからにすぎない。必要なのは、不確実性の存在を認め、重大に受け止めることである。
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世の中自分が考えているより因果関係で説明できることは実は少なくて,かなり多くの不確実性に支配されている。
そのことを踏まえた上で,意思決定の際には意識的にベイズ推定のフレームワークを使っていきたい。
早い思考と遅い思考という思考のラベリングは初めて知った。
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プロスペクト理論の創始者であり、行動経済学の先駆者、ダニエル・カーネマン著。様々な事例に対する、行動経済学からの解釈は、非常に興味深い。好き嫌いでスパっと判断するシステム1と、熟考のシステム2。周りの意思決定を見て「あ、今、システム1がでた。」「システム2が発動中やな。」と思ってしまう。
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ハロー効果
代表性と基準率
平均への回帰
後知恵バイアスや結果バイアスは、結果としてリスク回避を助長する一方で、無責任なリスク追求者に不当な見返りをもたらす。・・・かくして一握りの幸運なギャンブラーは、大胆な行動と先見性のハロー効果によって、「勇気あるリーダー」という称号を手に入れるのである。
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ハロー効果(ハローこうか、英:halo effect)とは、心理学者エドワード・ソーンダイクによって名づけられた造語で、心理的効果の一つ。 ある対象を評価をする時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。 認知バイアスの一種。
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人の「認識」と「思考」を実証的に科学した本。
体系的で、学術色も強くないため読みやすい。
この分野で土台になる一冊。
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プライミング効果やアンカリングが印象的。先行刺激やアンカーが無意識のうちに行動や判断に影響しているとは。知らず知らずのうちに自分も影響を受けていたのだなと思った。あと,物事に因果関係を見つけたがる性質も考えさせられた。
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人間の判断は概ね合理的で、強い情動(恐怖や愛情、憎悪)が絡むような場合に逸脱するとされてきたが、カーネマンらは人間の思考には本来的に系統的なエラーが入り込むものであることを示した。
とりわけタイプ1とよぶ速い思考に由来するヒューリスティックな判断や選択による誤りを扱っている。
システム1はバイアスがある。難しい問題を易しい問題に置き換えて答えようとするうえ、論理や統計はほとんど分かっていない。スイッチオフすることもできないため、例えば自分の国の言葉が画面上に出てきたりした場合は読まずにはいられない。意識して疑う、ということもそのレパートリーに入っていない。疑いを抱くためには相容れない解釈を同時に思い浮かべる必要があり、それには知的努力を必要とする、これはシステム2の守備範囲である。
システム2はシステム1を見張る役目ではあるが、例えば7つの数字を覚えておく、など認知的負荷の高い作業に忙殺されている時は誘惑に駆られやすかったり、利己的な選択、表面的な判断、などシステム1の影響が強くなる。システム2が他のことにかかりきりの時は、私たちはほとんど何でも信じてしまう
感情的な問題がからんでくると、システム1の批判者よりは擁護者になりやすい。気に入っているものの長所をあげて批判に抵抗したりする。
・認知容易性
注意を要するようなテストの問題を読みやすいフォント、読みにくいフォントの二種類で印刷すると、読みにくいフォントの方が成績が良かった。認知負担を感じたおかげでシステム2が動員されたため。
・ハロー効果
Forming impressions of personality (Asch, 1946)の実験では
アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい
の二人の印象が問われた。普通はアランの方に好感をもつ。頭がいい人が頑固なのは理由がある、とみなされるが、頑固な人が頭がいいのは一段と危険、と取られる。また、ハロー効果によって「頑固」は「頭が固い」とも「意志が強い」ともどちらでも解釈できるので、第一印象の文脈に合わせて解釈される。
人物描写の時にその人の特徴を示す言葉の並び順は適当に決められることが多いが、実際には順番が重要。
・置き換え
Priming and communication (Strack, 1988) の実験ではドイツの学生を対象に
あなたは最近どれぐらいしあわせですか?
あなたは先月何回デートしましたか?
と質問したが、デート回数と幸せの間には全く相関がなかった
しかし
あなたは先月何回デートしましたか?
あなたは最近どれぐらいしあわせですか?
と聞くと高い相関が見られた。しあわせという評価の難しい質問を恋愛ライフに置き換えたため
・少数の法則
小さいサンプルでの結果を過信しやすい
成績上位の学校は小さい規模のものが多く、過去には大きな学校を小さなものに分割することまで行なわれた。が、実際は小さい学校のほうがばらつきが大きいだけ。小さい学校の成績は平均を��回るわけではない。私たちはメッセージの内容に注意を奪われ、その信頼性を示す情報にはあまり注意しない。偶然の事象を因果関係で説明しようとすると必ずまちがう。
・アンカリング効果
世界で最も高いアメリカ杉は1200フィート(180)より高いでしょうか?低いでしょうか?
世界で最も高いアメリカ杉の高さはどれぐらいだと思いますか?
と聞かれる。アンカーは1200(高いアンカー)か180(低いアンカー)のどちらかが提示される。アンカーの差は1020。
高いアンカーを提示されたグループの平均は844フィート、低いアンカー群が282フィートで562フィートの差があった場合、アンカリング率は562/1020=55%となる。アンカーにそのまま沿った場合は100%、アンカーを完全に無視した場合は0%となるが、通常は55%程度になる。
アンカリング効果はかなり強力で、不動産業者の見積もる不動産価格や寄付の額(XXドル以上寄付するつもりがありますか?とか)などで影響が確かめられている。手がかりが全くないときに、わらをもつかむつもりでアンカーに寄せているのではなく、全くランダムに選ばれたアンカーだと分かっている場合でもアンカリング効果は見られる。
缶詰のセールの場合「お一人様12個まで」とすると平均7個売れ、「お一人様何個でも」という掲示の時の倍売れた。
・利用可能性ヒューリスティック
Ease of retrieval as information(Schwarz, 1991) の実験では
あなたが何かを強く主張した例を6つ書き出してください
次に、自分はどの程度自己主張が強いか、自己評価してください
と聞かれた。この質問の6つを12に増やした群と比較すると12のグループは自己主張が低いと評価した。こういう例は3−4個はすぐに浮かぶが12も思い出すのは難しいため。たやすく思い出せたという感覚の方が、思い出せる例の数よりも強力。
また、「自己評価をしなかった例を12書き出してください」と言われた群では自己主張が強い、と評価している。
UCLAのある教授は学生たちに講義の改良点を挙げさせた。この時、改善点を多く上げるように指示したクラスほど講義に高い評価をつけた
・平均回帰
フランシス・ゴルトンが見出した。
二種類の計測値の相関が完全でない(r=1でない)場合には必ず起こる。相関と回帰とは別々の概念ではなく、同じ概念を別の角度から見たにすぎない。
成績が悪くて叱責されると、次はよい成績になる
うつ状態の人にエネルギー飲料を飲ませるとよくなる
などは因果関係で説明されるべきでない。成績が悪い、うつ状態、など極端な集団が平均に回帰しただけ。確認するためにはきちんとコントロール群を置かないといけない
・妥当性の錯覚
私たちは過去についてつじつまの合った後講釈をする。今日、後知恵で説明がつくなら昨日予測できたはずだという直観を拭い去ることができない。過去を分かっているという錯覚が、未来を予測できるという過剰な自信を生む
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2002年に「プロスペクト理論」の研究により、ノーベル経済学賞を受賞したダニエルカーネマンの著作。行動経済学の始祖である著者のこれまでの研究成果が一通りわかる。
上巻では、早いが正確性に欠ける思考の「システム1」と、正確性はシステム1よりも高いが遅く怠け者である「システム2」の解説、判断の際に活用される「ヒューリスティックとバイアス」の解説がなされる。
著者は、「オフィスの井戸端会議で活用することを想定している」と説く。それは、他人の間違いを指摘しやすくし、翻って冷静な視点で自分を見ることにも繋がるのだと。そのため、それぞれの章末には井戸端会議での活用例が示される。しかし、行動経済学、心理学の第一級の研究者である著者であっても、自分が囚われているバイアスなどがちょっと判断できるくらいで、意思決定をよりよいものにすることにはなかなかつながらないと語っている。そうなのであれば、より知能の劣る私などができることがあるのだろうか?と考えてしまう。
とはいえ、行動経済学が研究対象とする人間の「意思決定」を考えるうえでは、外せない書ではないだろうか。繰り返し読んで自分の血肉にしたい書。
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書いてあることはわかるし、新鮮な情報なのだけど、とにかくずっと頭を使って読むからか疲れてしまった…。でも、人間の意志や決定は、意外にも色々影響を受けてることがわかって面白かった。途中で断念…。
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プライムエフェクト。言語や行動による意識づけが無意識のうちに関連する観念を呼び起こすこと。笑顔にしてると幸せになるのは正しい
世の中の事象は大半がランダム
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すごく面白くて示唆に富んでいるけど、今そこにいる直感的で非合理な上司への対処は乗っていない。
あと著者が周囲の人に優柔不断と思われちゃいないか心配だ。