紙の本
海の資源をめぐる仁義なき戦い
2019/08/01 18:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
それは造船・船舶技術、貯蔵技術の発展なんかも含めた総力戦。もちろん軍事もからむし、気候や海流の変化も含めてわくわくする歴史のお話。
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ローマのカタコンベにはイエス・キリストを象徴する魚のモチーフが多く見られる。魚はキリスト教以前から「豊穣であるがゆえに生命のシンボルであり、なおかつ永遠の生命を求めるがゆえに葬儀と関係して復活のシンボルでもあった。そして豊穣の女神の象徴として魚を崇拝する人々がおり、彼らは女神と一体化するための儀式として魚を食べ」ていたのだ。こうした歴史的経緯からキリスト教に魚が取り入れられ、ヨーロッパの歴史の中でときに国を動かすほどの存在となったニシンとタラについて詳述してあるたいへん興味深い本。
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何が専門かよくわからない著者によるヨーロッパの食文化史をめぐる本。ケモノの肉よりも、ニシンとタラが食料として重要だったからこそ、しっかりした漁場と魚市場をもつオランダが覇権国になった。それから近世のイギリスもフランスも、北大西洋の漁場をめざした。
こういうのを目からウロコ、と言うんですね。
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大航海時代の船員が何を食べて航海していたかについては、前から疑問に思ってきたが、明確な答えをもらった感じだ.魚をベースにした歴史物語だが、図番がもっと多いと読みやすいと思った.
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最初の方は、西洋社会での魚が持つイメージの変容が扱われているのかな、と思った。
古代社会では貴重な蛋白源。ゆえに命を支える聖なる食べ物というイメージと、精力あふれるエロスにつながるものというイメージが混在するさまが描かれていた。
本書のメインはそのあと、ニシンやタラ漁が大航海時代を食料面で支えたり、新大陸と旧大陸、そしてアフリカの三角貿易の一角をなす重要な産物になったりという、魚が世界の経済システムの中で大きな役割を果たしてきたことを解き明かしていた。
刺激的な本だと思う。
ただ、こちらが年末のあわただしい時期に読んだせいか、細部についてまで好奇心を保てなかったというかなんというか。
ちょっともったいない読み方になったように思う。
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世界における「魚」の歴史を振り返り、文明の進歩と食(特に魚食)が、どのように移り変わっているのかを紹介したもの。
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言われてみれば…の西洋社会と魚の繋がり。信仰、政治経済、文学など広い範囲に影響あるんだなあと改めて。レシピページもうちょっと欲しかった!
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2014年刊。著者は千葉工業大学准教授。
シェークスピア他西欧(近世?)文学研究を主フィールドにする著者が、文学作品・宗教・法令・外交文書などの文献史料の解読を通じ、西欧近世以降の漁業と生活、タラ・ニシン漁業から生じる外交関係、海域利用に関する政治哲学の変遷など大航海時代の一側面の解読を目論む書。
少なくとも、西欧=肉食という単純な図式でないことだけは看取できそう。
そもそも生肉が広く行きわたるのが農業の革新的発展が見られる18C。
一方で、肉欲と結びつくと看做された獣肉とその血はキリスト教の断食日にはタブーとされている。とはいえ、割と長期にわたった断食日に何も食べないわけではなく、蛋白源としては魚肉が利用された。
このような大量販路のあった魚肉に関し、まず、ウナギが大量に食されたのは意外な上、塩漬けニシンの製法開発が、ハンザ同盟、その後はオランダの発展を決定づけたとはさらに意外である。
江戸初期、日本に来航したオランダ船は、ニシン漁と塩漬けのニシン製法の高度化に由来するというのは、東西の同時代史を考える上で見逃せない視座になりそう(その後、英に覇権を許したのが、蘭の長期間による戦争状態による没落という視座も同様)。
他方、北大西洋のタラ漁も新大陸植民地化に大きく寄与し、高級な塩漬け製法によるタラは欧州に、安価なタラの塩漬けは新大陸植民地の奴隷の食となったのも、大航海時代以降の奴隷貿易を考える上での背景事情になりそう。
確かに、世界史というタイトルは言い過ぎだが、魚食という観点での西欧外交史という視座は本書の他はあまり見ないように思う。一読の価値は高そうだ。
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西洋料理といえば、まず最初に連想するのが肉料理だろう。しかしヨーロッパの地図を見ると見事な海洋国家である。この地理において魚が人々の営みに関わらないわけがない、と言う点を主眼においたのがこの本だ。
本書では主にニシンとタラをとり巻く歴史について取り扱っている。ニシンに関するオランダとイングランドのせめぎ合い、タラと砂糖によるイギリスとフランスの対立及びアメリカの独立…船による移動が主流だった中世〜近世において単なる食料以上の価値を持っていた事が分かる。
そしてタラとニシン以上にこの本を読んで驚いたのはウナギの食用が非常に盛んだった事だ。こういう新たな知見を得る時はとてもワクワクする。その実感を与えてくれる意味で良い本だった。
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サブタイトルは ニシンとタラとヨーロッパ。
主に16-17世紀の話である。ヨーロッパ人は食の多くをウナギに負うていたことに始まり、次いでニシンやタラが重要な食料となり、交易にも国際関係にも戦争にも大きな要素となった。つまり歴史のダイナミズムを揺り動かす存在であった。
文学者である筆者の発想はシェイクスピアの劇中に多く魚関係のセリフが出てくることに由来する。
歴史の切り口として面白く、ヨーロッパとアメリカの文化を考えるうえで大変参考になった。
魚で始まる というか、魚で動いたヨーロッパ とも言えるだろう。