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今年読んだ本でいっちゃん面白かったです。
といっても、まだ、たかだか30冊くらいしか読んでいませんが、迷わず☆5つ。
弱肉強食の厳しい自然の中で、「弱者」とされる生き物はどんな戦略を駆使して生き抜いているのか。
これ、あーた、目からウロコの連続ですよ。
私の感想なんかホントどうでもいいから、一例を挙げましょう。
たとえば、アゲハチョウ。
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アゲハチョウの擬態は巧みである。何しろ成長にあわせて、次々に擬態を変化させていくのである。
まず、卵からかえった小さな幼虫は、黒色と白色のまだら模様をしている。じつは、これは鳥の糞に姿を似せているのである。黒色と白色の幼虫は葉の上では目立つが、鳥も自分の糞は食べようとしない。擬態は何も目立たなくするばかりではない。あえて目立つ擬態もあるのである。
やがてアゲハチョウの幼虫は成長を遂げる。擬態をするときには、その大きさも重要である。あまりに大きいと、さすがに鳥の糞には見えなくなってくる。そこで、幼虫は一転して鮮やかな緑色に筋の入った模様になる。こうして葉っぱに擬態するのである。
それでも鳥に見つかって襲われると、アゲハチョウは頭を上げて反り返る。緑色の幼虫の背中には大きな目玉模様がついている。そして、この目玉模様を大きく振り上げて、鳥の苦手なヘビに化けているのである。
それでは動けないさなぎはどうだろうか。
アゲハチョウのさなぎは尖った形をしている。これは木の刺(とげ)に姿を似せているのである。
それだけではない。アゲハチョウのさなぎには緑色のものと、茶色のものがある。じつは、すべすべした枝の上では緑色のさなぎになり、ごつごつした枝では茶色のさなぎを作るのである。アゲハチョウの幼虫がエサにするミカンの木には、ごつごつした茶色い幹と、つるつるした新しい緑色の枝とがある。そのため、茶色の幹では茶色いさなぎを作り、緑色の枝では緑色のさなぎを作るように工夫されていたのである。
何かに姿を似せると言っても、一通りでは芸がない。アゲハチョウは、このように成長のステージに対応させて、擬態するモチーフを巧みに変化させていたのである。
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ふう。
どうですか?
へー、とか、ほー、とか言いながら読んだでしょう?
アゲハチョウに対する見方が変わったでしょう?
こんな例が次から次に出てきて、もう興奮してページを繰る手が止まりません。
たとえば、昆虫界でもっとも強いとされているのはアリ。
なぜなら、アリは集団で襲いかかるので、どんなに強い昆虫もかなわないから。
イワシやアジなど「青魚」「光物」と呼ばれる魚の背中が青くてキラキラしているのは、天敵である海鳥が空から見たときに、海の青に溶け込むような色合いになっているからだとか。
逆に、腹側が白いのは、海の底からの天敵であるイルカなどが下から見たときに、まぶしい太陽の光で白んだ海面に映る空の白色に溶け込ませるためなんですって。
チョウがひらひらと不規則に飛ぶのは、外敵である鳥に食べられないためなのは想像がつくと思いますが、あれは実際には羽を閉じて自由落下した後、羽をはば���かせて舞い上がるという動きを繰り返しているのだそう。
そうそう、カゲロウの話も印象的です。
一般に「かげろうの命」と呼ばれるように、はかないものの代名詞のように使われるカゲロウですが、たしかに成虫の命は短いものの、幼虫では何年も過ごすんですって。
著者いわく「どちらかというと長寿な方」。
しかも現在、知られているもっとも古い昆虫の化石はカゲロウのものらしい。
「いたずらに長く生きていたとすると、天敵に食べられたり、事故にあったりして、天寿を全うせずに死んでしまうことが多い。しかし、短い命であれば天寿を全うすることができる。そのためにカゲロウの成虫は命を短くしているのである」
何とも示唆に富む話です。
えーと、どうでしょうか?
なんだか健気でいたいけで、生き物たちがいっそう愛おしくなってきませんか?
本書によれば、弱者の戦略には大きく、①群れる②逃げる③隠れる④ずらすーがあるそうです。
生き残るためには、強くなることだけが能ではないのです。
ちょっと難しい話になりますが、1978年にアメリカの生態学者コネルが提唱した「中程度攪乱仮説」というのがあるそうです。
結論から言うと、安定した環境では激しい競争が起きて強い者が生き残り、弱い者は滅びていく。
一方、ある程度、攪乱がある条件では、必ずしも強い者が勝つとは限らない。
つまり、弱者にとって、複雑で、変化の大きいことはチャンスなのです。
おお。
もともとあった自然が破壊された環境に、最初に生える植物のことを、植物学では「パイオニアプランツ」(先駆種)と呼ぶそうですね。
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先駆的なパイオニアが生える土地は、けっして恵まれてはいない。土は固く、根の成長を妨げる。水や栄養分も足りない。しかし、そんな環境でパイオニアプランツは成長を遂げていく。
(中略)パイオニアプランツが生存し、豊かになった土地には、次々と力のある植物が侵入してくる。そうなれば、競争に弱いパイオニアたちは追いやられてしまうのである。
(中略)しかし、それで良いのだ。パイオニアたちは、すでに他の植物が入り込んだ土地には未練を残さずタネを飛ばす。パイオニアプランツの種は風で移動するものが多い。そして、再び、新たな未開の大地に速やかに侵入してニッチとするのである。
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書き写していて途中から、生物の話ではなく、まるで人間社会の話を書いているように錯覚しました。
でも、本書はそのような意図で書かれています。
はっきりと人間社会を意識して書かれているのです。
ただし、押し付けがましさはありません。
大企業を強者に、中小零細企業を弱者と見なせば、生き残りの戦略が見えて来るでしょう。
都会を強者に、地方を弱者と見なしても、同様に様々な生き残りオプションが思いつきそうです。
今、関心を集めている安全保障について考える際にも役立ちそうです。
キーワードはやはり①群れる②逃げる③隠れる④ずらす―です。
凡百のビジネス書に手を出したり、怪しげなセミナーに参加している場合ではありません。
生き物から大いに学びましょう。
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自然界に弱者と思われる生物が生き残っている戦略を紹介。群れる、逃げる、隠れる、ずらす。ニッチはナンバーワンになれるオンリーワンの場所ということ。弱者は複雑さ、変化、悪い条件を好む。産む量を増やすr戦略と強く少なく産むK戦略。撹乱耐性型のR戦略。強さをひけらかすリスク、スニーカーやサテライト戦略、偽物の戦略、家畜になる戦略。
自然界って、生命って凄いな。
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自然界から学ぶことは、何も珍しいことではない。科学技術は自然を眺め自然を法則化してきた。
工学も自然を観察してヒントを得てきた。日東電工がヤモチの足の裏をヒントにした粘着テープや、2000キロを移動するアサギマダラ(チョウ)の羽の形状にヒントをえて作った扇風機など枚挙にいとまがない。芸術でもアール・ヌーヴォーは、自然の美を再現したいとの欲求に動かされているとの説がある。
ならば、社会システムは自然に習うことができないのだろうか。こういう発想に立って著述を繰り広げられている代表者は養老猛司氏だが、氏の著書に劣らぬくらいの刺激感あふれる一冊だった。
自然界に住む生き物は、「弱者」であるがゆえに弱者の戦略を持つ。
私のような地方政治家の視点で見ると、自治体の生き残り戦略に通じるヒントが散りばめられている一冊だった。カテゴリーをあえて「ビジネス」とした所以である。
2時間もあれば読める。だが、ここに書かれている内容は、咀嚼に耐えうる。
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人間はつくづく、動物の一部なんだなあと。進化を辿れば、人は常に弱い動物でした。逞しき弱者の子孫なのです。長生きする動物よりも、多様な卵をつくって世代交代を早めるほうが、生き残る可能性も高くなります。弱い動物ほど”短命に進化”します。政府の少子化対策は、出生率を高めるより、出産を早めて20年で世代交代する政策のほうが、人口減少対策には効果的なのかもしれません。一番強い者は、自分の弱さを忘れない者です。
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強い者が勝つのではない。勝った者が強いのである。
「弱者」は複雑さ、変化を好む。単純な世界は「強者」のひとり勝ちである。
オンリー1の世界でナンバー1になることが大事。
昆虫で最強なのは「蟻」。蟻に擬態する蜘蛛。
群れる。逃げる。隠れる。ずらす。
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多種多様な生物の生存戦略。単純な力の強さではない戦略にフォーカス。
ニッチトップ戦略が基本。ニッチにはひとつの適合社しか生き残れない。環境が安定している状況では、強者が他を蹴散らし生物の種類はむしろ少なくなる。中程度以上のかく乱要因がある環境がニッチを多く生みニッチトップの生物の数が結果として多くの種類の生物を生む。
群れる、逃げる、隠れる、活動時間/エリアをずらす。
例えば、ナマケモノは動かないことで動体視力の良い捕食動物に見つかりにくく、カロリーを消費しない低コスト生活を送る。食物も毒性の高い植物を食べることで競合しない。
また、多く生む、短い寿命は環境変化の度合いの大きい場合に有効。ペンギンはひとつしか卵を産まないが、これは南極の環境が厳しいが実は安定しており、既に環境に適合しているペンギンにとっては安定したニッチを確立しているのである。
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とても面白い一冊。
あちこちにちりばめられたマメ知識が秀逸で、資料としても役に立ちそう。
郊外でセイヨウタンポポを見かけない訳は?戦国武将たちが愛した雑草という植物の弱者や、生き残る戦術など色々面白い一冊です。
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先日、稲垣 栄洋 氏 による「弱者の戦略」を読み終えました。
新聞の書評欄を見て興味をもったので読んでみた本です。
「弱者」に焦点を当てた視点は斬新で、多くの新しい気づきを得ることができました。
自然界は「弱肉強食」の世界だと言われますが、現実的には「弱い」とされる生物も数多く生存しています。
「弱者」は、さまざまな知恵と工夫で生き残ってきました。そのキーワードは「変化への対応」です。変化を受け入れその困難を乗り越えたもののみが生存競争を勝ち抜くことができるのです。彼らは「たくましき弱者」なのです。
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ビジネス本ではなく生物学の本。草食動物や昆虫、植物のような弱い生物はどうやって生き残っているのか?がテーマ。行動時間や餌を天敵および競争相手とずらすニッチ戦略が最終的に弱者の強みになるというのが奥深くて面白い。飼い犬の原点が原始時代に人に寄ってきた弱いオオカミという説は目から鱗!
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生物学的な観点から展開されている本書。
難解な表現も少なく、軽快に読み進められる。
一方で、ビジネス的な観点からの考察が少し甘かったように思う。
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面白かった。こんな話を聞きたかった
とくに動けない植物の戦略が自分にささった
以下好きなところを抜き書き
「他の生物がナンバー1になれない場所をさがす」「戦いに勝つには大きいほうが有利。小さい土俵で立ち入ることさえさせない」「南極は不安定な環境ではなくきびしい状態で安定」「女装したオスは強いオスに攻撃を受けることなくメスに近づく」「完全に撃退すると相手も進化する。しかし逆にソフトだと対応策を発達させにくい」
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弱ければ生き残れないはずの弱肉強食の自然界。しかし弱者には弱者なりに生き残るための戦略を駆使している。
天敵や他種が生存できない厳しい環境をあえて選択することで、自分だけのの「ニッチ」を獲得する。そこでは「ナンバーワンでありオンリーワン」でいられるのだ。
同種間の競争でいえば、強いオスだけが遺伝子を残せるのではなく、弱いオスも遺伝子を残す為の戦略がある。
メスに偽装して強いオスもメスすらも騙して思いを遂げる弱いオスがいたり、別種かと思うほど個体を小さくして目立たないように強いオスの隙を狙って掠め取るオスがいたり。
人間界においても置き変えられる戦略が多く、ビジネス本として読むのもありかと。他人がやらないニッチを探す。最終的には変化に対応できる者が生き残るのだ。
『強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだ』ベッケンバウアーの至言が響く。
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植物の戦略
1植物のCSR戦略
Competitive Stress tolerant Ruderal
2生物のrK 戦略
rN(1-N/K)
赤の女王仮説
「 最も強いものが生き残るのではなく最も賢いものが生き延びるのでもない唯一生き残るのは変化できるものである」
「 1番強いものは自分の弱さを忘れないものだ」
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“小さなニッチ オンリーワン” 変化のある不安定な環境こそ、弱者にチャンスである。 群れる、逃げる、隠れる、ずらす。 ストレス耐性とルデラル(臨機応変に対応する。) 大きいか、小さいか。 が生き残り、中間は生き残らない生物界。山旅行から帰って来て、森の生態系を思い出しながら読んだ。『雑草魂』に学び多し。
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食物連鎖の下位にいる生物は擬態で敵を欺くということは知っていたが、
同じ種属の中でもそのようなことが行われていることを初めて知った。
それは体が小さくて弱い生物が遺伝子を残すための戦略だ。
暗闇で息を潜めて待ち構え、強いオスの鳴き声に引き寄せられたメスを横取りしたり、
メスに擬態して強いオスを油断させ、その隙にメスに近づいたり。
移動することができない植物も、鳥や昆虫に種を運んでもらうために、
甘い蜜や木の実を用意する。まさに戦略である。
生物が自分の遺伝子を次世代に繋ごうとする、果てしない努力。
それはビジネスや人間の生き方にも通じるものがあり、
したたかで力強く、いじらしささえ感じた。