投稿元:
レビューを見る
読み終わって「何でこの本読み始めたんだろ…」と思うくらい、悲しい。。
「反社会的勢力取材の第一人者」という物凄い肩書きがプロフィールに書かれているノンフィクション作家が、「オレオレ詐欺の帝王」と呼ばれていた人物への取材を軸に、一連のシステム詐欺が誕生した経緯やエピソードを纏めた一冊。
優秀な頭脳が巨額のお金を騙し取ることに浪費され、中でのいがみ合い、当人たちも幸せとは言い切れないような状況(これは著者の味付けによる部分も大きいですが)、結局誰も幸せになってないじゃないか!
幅広い知識を得る目的で本を読んではいるものの、本著は読んでいてトップクラスに気が重い一冊でした。
ただ、現実としてこういう人の弱みを突くような犯罪が行われていること、その背景も含めて知り、目を背けないことはそれはそれで大事なことで、読んだコト自体は後悔していません。人にはオススメしませんが(笑
さて、幹部だと月収が億り人になる彼らですが、普通の仕事をしても優秀だったんだろうなぁと思わせるエピソードが多数出てきます。
巨大化した組織を上手くマネージし、暴力団と相対しても言い負けず、足がつかないためにあらゆる努力をして、詐欺のお金を引き出す末端構成員には防犯カメラを意識して顔を白飛びさせる高輝度のLEDライトをつけさせたり、ATMにとりつく前後の仕草を指示して個人が特定されないようにしたり。。
マジで余計なお世話のコメントでしかないですが、本当にもったいない。
終章の、日本人にはマネー教育がされていないから詐欺にすぐ引っかかるんだ、という論調は、そういう面もあるのかなと感じました。(どこか満たされない欠乏感と言うか、笑うせぇるすまん的な「心の闇」を生む社会も大きいとは思うのですが。)
ただ、電話1本で巨額を振り込むなんて騙してほしいって願ったようなモンだ、とか、偽造しやすいテレホンカードを作ったNTTが悪い、という記述については、著者のスタンスが取材対象に寄り添いすぎてるのでは…とも感じました。
いたちごっこのように新しい手口が生まれる詐欺ビジネス、当分続いてしまうのでしょうか。。
最後に1点。本著、中盤にリアルにゾッとする描写があるので注意です。。