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以前読んだ辻邦生の西行花伝は物語風に西行が描かれており、平安末期の激動を生きる西行の生き方に魅せられた。本書は、西行花伝より西行の歌がよりたくさん出てくる。西行が棲んだ各地の草庵、訪れた歌まくらや遺跡に筆者も自ら足を運ぶ。遺跡ごとに、西行の数奇に生きた歌が生まれる。紀行文として詳細、随筆として自由闊達、歌の解説として分かりやすい。西行の歌と生き方の魅力が十分に味わえて、歌の素人の私にも理解しやすい。好きになった歌は「風になびく 富士の煙の 空にきえて 行方も知らぬ 我が思ひかな 」。良い本だと思います。
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願わくば花の下にて春しなむ その望月の如月の頃 …
静かで愛があって哀しくてほのあたたかい理想の死だな
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「光の王国」(梓澤要)で西行と秀衡の関わりが描かれていたので、果たして実録だろうかと本書を読んだ。
年たけて又こゆべしと思いきや命なりけりさやの中山
風になびく富士のけむりの空にきえて行方も知らぬ我が思ひかな
をぐら山ふもとの里に木の葉散れば梢に晴るる月を見るかな
都にて月をあはれと思ひしは数にもあらぬすさびなりけり
ねがはくば花のもとにて春死なむその如月の望月のころ
ねがひおきし花の下にて終わりけり蓮の上もたがはざるらん 俊成
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さらさらとした文章。「私はこう思う」と言い切るところが小気味よい。
西行をもっと知りたい、そしてまた白洲正子という人も。
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「現代人は、とかく目的がないと生きて行けないといい、目的を持つことが美徳のように思われているが、目的を持たぬことこそ隠者の精神というものだ。視点が定まらないから、いつもふらふらしてとりとめがない。ふらふらしながら、柳の枝が風になびくように、心は少しも動じてはいない。業平も、西行も、そういう孤独な道を歩んだ」(p.107)
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お坊さんて、禁欲無欲なイメージだったけど、そうでもないな。というのが大雑把な感想。
官僚社会なんて狭い世界で登りつめることばかり考えるのもばからしい。
旅して芸術に触れて、ここじゃ出会えない人に会おう。
そんなところに西行の原初的欲求があったのだとすれば、それは私自身とも大いに共通する部分がある。
ロックなお坊さんかっこいい。
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facebookの友人が読まれており、私自身も「おくのほそ道」を通じて西行に興味があったことから本書を読んだ。残念ながら和歌の素養はないが、著者の解釈と解説が、沁み込むようにすんなり入ってきた。武士から出家した西行だが、自然宗教的で、奔放な生き方に憧れる。
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白州正子流の西行像。いかなる観点から西行を評価するかということが評伝には求められているということか。
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白洲正子 「 西行 」 西行論の本。西行の出自から思想の推移、主な歌の著者なりの解釈が、一通り理解できる構成になっていて面白い。
著者が西行の歌で目を付けているモチーフは、桜と富士山。ここから、西行の無我の境地、待賢門院への思慕、自然信仰を抽出している。
著者が捉えた西行像は、歌から自然と人生の調和をはかり、善悪もわきまえず、悟りを求めず、ただ世の中をあるままに生き、あるがままに死ぬというもの。
特に印象に残る著者の西行像
*桜狂いの歌は 浄土信仰によるものでなく、待賢門院への恋愛歌
*心が定まらない 空になる心 から、無常な 虚空の如くなる心 までの変遷としての歌
*地獄絵を見て〜その苦痛を乗り越えて地獄へ堕ちた人を救いたい願望
*地獄絵を見ての27首は、西行が経てきた心の歴史
「西行の真価は〜はかなく〜無常迅速な人の世のさだめを歌ったことにある」
「風になびく富士の煙の空に消えて ゆくへも知らぬわが思ひかな」無我と不動の境地?
「そらになる心は春の霞にて 世にはあらじともおもひ立つかな」
無常な人生の中の強さ?
「春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり」待賢門院の死を予感?
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いろいろな本に西行が書かれているが、白洲正子氏のこの西行ほどのものはないであろう。
解説に書かれてあったが、まさに、西行を語ることは、歌について語ることであり、仏教について語ることであり、旅を語ることであり、山河を語ることであり、日本人の魂と祈りを語ることであった。
白洲正子氏が文章を書くと、そこには西行がいる。
いつか、白洲正子氏の本を手に、西行の足跡を辿ってみたくなった。
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白洲正子が西行の足跡をたどり歌を紹介しつつ、当時の時代背景や天皇家と西行の交友、待賢門院璋子との恋に触れ、自由奔放で風花と共に生きたその人となりや人生に迫る。直島や大磯を訪ねたり、芭蕉の奥の細道を辿って白河の関や平泉を尋ねていたので崇徳天皇の経緯や歌枕の成り立ちなどを知ることができて、良き旅の先達となる一冊だった。