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平将門と同い年の同僚だったのに家族も捨てて出家した西行。その生き方と死にざま。桜といえば西行を思い出す。
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そらになる心は春の霞にて
世にあらじともおもひ立つかな」
『西行』(白洲正子著 新潮文庫)
いきなりの歌から始まり戸惑いを隠せない。
歌の素養もなければ、西行の知識もない。
私の頭こそ「空」なのだ。
その歌に続く解説を読んで初めて分かる。
「出家のための強い決心を表している」歌で
「春霞のような心」がそのまま
「強固な(出家)の覚悟」に移っていくところが西行の特徴と
解説されている。
23歳で出家した西行は50歳の秋
讃岐(香川)白峰の崇徳院の御陵を詣でるために
修行にでる。
その西行の旅のあとを、白洲正子が讃岐を訪れ
歌とともにその時のことを
『西行』の中の「讃岐の旅」として書き綴っている。
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先日放送された白洲次郎のドラマで、中谷美紀演じる白洲正子が、『西行』を執筆するシーンがあった。今まで、白洲正子の作品は読んだことがなかったので、これを機会にと思って手に取った。いわゆる人物評伝だが、文献におさまらず、実際に筆者が旅しているのでリアルな感動がある。紀行文としても楽しめる。
内容的に、西行の歌の解釈が中心になっているので、歌の部分をじっくり自分でも考えてみないと、おもしろくない。時間があるときに、高い酒を味わうように、じっくり楽しみたい。
どこかに旅に出たくなる、魅力的な一冊だ。
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高校のときに同級生に
<如月くん>
ていう名前の男子がいたので、古文の先生がしきりと感心して
「願わくば 花の下にて 春死なん その如月の望月の頃」
の有名な句を引用して、講釈していたのが西行との出会いでした。
15歳ごろの私にとって、西行=世捨て人、坊主、出家=おじいさん
なイメージだったのですが、
30歳過ぎてこの本を読むと、
同年代で、自分の中の衝動に正直で出家せずにはいられなかった若々しい自由人の姿が浮かび上がります。
(はー自分も歳をとったものだ)
専門家ではないながらも、西行の歌や伝承を追いながら、西行の真の姿に迫ろうとする白洲正子の筆が非常に好感を持て、また古文や歴史に強くなくてもまあまあ読みやすい一冊です。(すごく読みやすいわけではない)
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桜が散る前に読みたくて。〈桜狂い〉であった西行は〈空気のように自由で、無色透明な人物〉で〈とらえどころがないばかりか、多くの謎に満ちている〉西行の足跡を辿って全国を取材した伝記のような紀行文のようで著者と共に旅した気分になれる。奥州への旅路は芭蕉の「奥の細道」の幻想空間と重なる。芭蕉は西行に憧れて旅をし、西行は能因法師、在原業平の跡を辿る。詞書付きで引用された和歌の数々は花鳥風月を愛でながらもそこに込められた激しい想いが伝わってくる。73歳で没しているのでかなり長生きだ。激動の時代を生き抜いた人生。
待賢門院璋子への激しい恋情をさくらの歌に歌った。身分違いの許されざる恋なれど片思いでなく契りを交わしただけにより忘れ難かったのかもしれない。激動の時代で親しくしていた人々の死もまたいかばかりの哀しみだったことか。保元の乱による同じ数寄の道の崇徳院の配流ときょうし狂死、悪左府頼長の死、源平の争乱と義経の死。
〈桜への讃歌は、ついに散る花に最高の美を見出し、死ぬことに生の極限を見ようとする。〉女院の死を散る花にたとえて心中したいとまで歌う。ひとりの女をここまで愛せるとは。
「春風の花を散らすと見る夢は
さめても胸の騒ぐなりけり」
「青葉さへ見れば心のとまるかな
散りにし花の名残と思へば」
「たぐひなき思ひいではの桜かな
薄紅の花のにほひは」
大河ドラマ「平清盛」を思い出す。あれは面白くていいドラマだった。
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中々難しく、読むのに時間が掛かった。でもやっぱり西行好きだ。そして、白洲正子さんの文章がかっこいい。
西行に益々興味が沸いた。
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白洲正子という広く深い教養を備えた人が観た西行の姿を描いている。歴史の考証を踏まえているけれど、描かれた西行の姿は論文の対象ではなく、乱世を生きた人である。そのスタンスは小林秀雄に近い。西行に興味を持って読んだのだけれど、私にとっては、白洲正子という文才を見いだしたという意味も大きかった。
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なぜか西行には興味がなかったのだが、これを読んで山家集とか読んでみたいなと思った。
三夕の歌などの存在もこれで知った。
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「人間は孤独に徹した時、はじめて物が見えて来る、人を愛することができる」P109
が、白州さんらしいと思った(いや、人となりをよくは知らないけれども)。
今回の西行の歌の発見は、
木のもとに住みける跡を見つるかな
那智の高嶺の花を尋ねて
でした。
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静かな気持ちになる本だ。穏やかな気持ちとは違う。悲しい気持ちになる、とも違う。読む前までは、読みたくて読みたくて仕方なかった。読むときも「ぐいぐい」吸い寄せられるように読んだ。そんな読む迄の気持ちとは反比例するように、静かな気持ちになる。西行法師という人は、もともと武士だったからなのか、それとも生きた時代の要請なのか、なんともエネルギッシュな人だといわざるを得ない。自分をもてあましながら、都を離れて都を恋しがり、自分の生き方とはなにか、を求めた求道者なのだった。また、そのうち、読み直してみたい。
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お金持ちのお嬢様が自分の知識と価値観で書くとこういう本になるのかな。ノンフィクションが高度に発展した現代社会では取材・検証不足は否めないが、これで良かった昭和はある意味豊かな時代だったのかも。ただ、オレにはこの人の文体に馴染めない。
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何年か前の大河ドラマ「平清盛」で、私に一番の印象を残した登場人物が、藤木直人演ずる西行でした。
ドラマで描かれた以上に、自由でふわふわ生きる西行の足跡は非常にきれいだと思いました。
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西行といえば桜。それくらいしか知識のない私でも楽しめた一冊。それはひとえに、白洲正子氏の筆の力だと思う。
この本は西行が数々の歌を詠んだ、その時の時代背景と西行の気持ちを著者なりの読み解き方で綴っていく、「白洲正子の西行」。
歌の意味がすべてわからなくても、彼女の文章とともに、歌を唇に乗せてみればなんとなく伝わるような気がするのは、彼女の文章の力のおかげだと思う。
西行初心者にも楽しめる、情緒豊かな一冊。
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(2012.11.01読了)(2006.07.02購入)
【平清盛関連】
「西行」に関する、「伝記とも紀行文ともつかぬもの」(304頁)です。
西行が行ったと思われる場所、住んだと思われる場所には、できるだけ足を運んだようです。その際には、郷土史家などに案内を頼み、同行してもらったようですし、なかなか場所がわからない時には、その辺に住んでいる方々に聞いてみると、結構わかることが多いようです。寂れて、忘れられているのもさみしいけれど、よく整備されて、昔の面影をしのぶことのできない、と言うのも困りものという、ジレンマもあるようです。
類書の「白道」瀬戸内寂聴著、を先に読んだのですが、「白道」は、西行と待賢門院璋子に重点があったので、内容的に重複している感じはありませんでした。
写真や地図なども割と掲載されているので、この本を頼りに、西行の足跡をたどる時にも、役立ちそうです。198頁には、西行と平清盛との交流を裏付ける書状も掲載されています。
【目次】
空になる心
重代の勇士
あこぎの浦
法金剛院にて
嵯峨のあたり
花の寺
吉野山へ
大峯修行
熊野詣
鴫立沢
みちのくの旅
江口の里
町石道を往く
高野往来
讃岐の院
讃岐の旅
讃岐の庵室
二見の浦にて
富士の煙
虚空の如くなる心
後記
西行関係略年表
数奇、煩悩、即菩提 福田和也
●西行が殴られた時に作った歌(21頁)
うつ人もうたるる我ももろともに
ただひとときの夢のたはぶれ
●西行の出家の理由(38頁)
彼は世をはかなんだのでも、世間から逃れようとしたのでもない。ひたすら荒い魂を鎮めるために出家したのであって、西行に一途な信仰心が認められないのはそのためである。荒馬を御すことはお手の物だったが、相手が自分自身では、そう簡単に操れる筈もない。それに比べると、天性の歌人の資質は、彼の心を和らげるとともに、大和言葉の美しさによって、「たてだてし」い野生は矯正され、次第に飼いならされてて行ったであろう。
●吉野の桜(99頁)
西行以前に(吉野の)桜を詠んだ歌が少ないのは、平安時代までの吉野山は、山岳信仰の霊地として、めったに人を近づけなかったためで、行者道や杣道が細々と通っているだけの険阻な秘境であった。稀に桜を詠んだ歌はあっても、いずれ遠望するか、話に聞くだけの名所であって、西行のように花の懐深く推参し、花に埋もれて陶酔した人間はいないのである。
なにとなく春になりぬと聞く日より
こころにかかるみ吉野の山
吉野山梢の花を見し日より
心は身にもそはずなりにき
●奥州藤原氏(154頁)
奥州の藤原氏と西行は同族で、秀衡とはほぼ同年輩であったから、平泉ではいろいろ便宜を計ってくれたに相違ない。
●高野聖(186頁)
高野聖というのは、早く言えば伊勢の御師や熊野比丘尼と同じように、津々浦々を遍歴して、高野山の宣伝につとめる半俗半僧の下級僧侶である。彼らは民衆のなかに入って、寺の縁起や物語を説くことにより、勧進を行った特殊なグループで、芸能に優れていたので後世の日本の文化に大��な影響を与えた。
●保元の乱(202頁)
忠通は、忠実の長男で、実直な父親とは違って、奸智にたけた政治家であった。一方、次男の頼長は、愚管抄に、「日本第一の大学生」と称賛されたほどの大学者であったから、父親に愛され、兄の忠通とはことごとに反目し合っていた。どちらかと言えば、一本木で、融通のきかない忠実・頼長父子と、天才的な策士である忠通との二派にわかれた摂関家の内紛が、皇室の内部にまで影響を及ぼし、保元の乱の要因となったことは疑えない。
●讃岐に流された崇徳院(214頁)
保元物語その他が伝えるところによれば、最初の三カ年がほどは、後生菩提のために、(崇徳)院は自筆で五部の大乗経を書写し、安楽寿院の鳥羽陵へおさめることを希望されていた。「浜千鳥」の御製は、都へお経を送ったときのものだといわれている。が、その望みは、断固退けられた。後白河天皇、と言うよりその側近の信西入道によって、突っ返されて来たのである。讃岐の院は、烈火の如く憤り、この上は三悪道に堕ちて、大魔王となり、子々孫々まで皇室に祟りをなさんと、それより後は爪も切らず、髪も剃らず、悪鬼のような形相となって指を喰いちぎり、その血で経巻の奥に誓詞を書かれた。
☆関連図書(既読)
「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
「平家物語(下)」吉村昭著、講談社、1992.07.13
「清盛」三田誠広著、集英社、2000.12.20
「平清盛福原の夢」高橋昌明著、講談社選書メチエ、2007.11.10
「海国記(上)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
「海国記(下)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
「平清盛-「武家の世」を切り開いた政治家-」上杉和彦著、山川出版社、2011.05.20
「平清盛 1」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2011.11.25
「平清盛 2」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.03.30
「平清盛 3」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.07.30
「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
☆白洲正子さんの本(既読)
「巡礼の旅-西国三十三ヵ所-」白洲正子著、淡交新社、1965.03.30
「能の物語」白洲正子著、講談社文芸文庫、1995.07.10
「遊鬼 わが師わが友」白洲正子著、新潮文庫、1998.07.01
「いまなぜ青山二郎なのか」白洲正子著、新潮文庫、1999.03.01
「白洲正子自伝」白洲正子著、新潮文庫、1999.10.01
「十一面観音巡礼」白洲正子著、新潮社、2002.10.25
(2012年11月7日・記)
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大河「平清盛」を観て、西行に興味をもち手にした本。
「願わくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月の頃」・・は、あまりにも有名だけれども、こんなに謎に満ちた人物だったとは。
北面の武士として仕えていた23歳の時に出家し、平安末期を生きた西行。西行が詠んだ歌を、白州正子さんなりに解釈し、その足跡をたどりに現地へおもむき、たたずまい、風景の中に西行を探す。とても静かに、面白く読めました。
それにしても、白州正子さんの文章は、潔くて、かっこいい。