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太平洋戦争末期のレイテ島を舞台とした小説。孤独にさいなまれ、死が目前まで迫り来る極限状態において、人間はどのような心理状況に陥るのかがまざまざと描かれる。
普段の生活における前提がひっくり返ってしまうと、良識までひっくり返ってしまうものなのだと、強く印象に残った。
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実際に戦争を体験した著者による戦争文学。
戦争が日常か非日常か判断出来ない時代の、極限の飢えの中で人食に踏み切れなかった心理と理論が心に迫る。
淡々と語られる言葉と描写は圧倒的で、私の中のありきたりの戦争心理を変えてくれた。
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太平洋戦争を経験した著者が、平凡な一人の男性の異常な戦争体験を描いた作品。人肉嗜食に踏み切らなかった男性の葛藤もさることながら、フィリピンの鮮やかな自然の描写も印象的。再び通らないであろうと思って見る景色は、もしそこにカメラマンが同行していても決して撮ることのできない風景でしょう。(詳しい感想は→http://blog.livedoor.jp/chako67k/archives/50916448.html)
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フィリピン島での過酷な生存状況。生きる為には食うべきか…
理性と本能の狭間に立たされた人間の生々しい姿。これが戦争の実態なのだ。
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小説を貫く得体の知れないずっしり重いエネルギーが読後も残る。文体はヨーロッパの文学や詩のようで、単純に血と汗と土の匂いしかしないような戦争文学には思えなかった。
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リアルだった。
絶対体験したくない。
文章がほんのり難解だが、その文章を読んでも頭に浮かぶ世界は空想。
実際の体験がないから、空想以上のものが出てこない。
実にリアルだった。
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初めて表紙や中身がぼろぼろになるまで読み込んだ思い出の作品。戦争と云う非日常的な世界。其の中では、狂気にかられた異常者が正常だと思われていた。最後まで、正気を保ち続けていた主人公は終戦後精神病院に収容された。何が正常で何が異常なのかが分からなく世界。主人公が見たのは、真実なのか、狂気で彩られた幻想だったのか。今もその答えは見つからないまま。
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なんとまぁ、重苦しくて救いが無い事か。
食べる・食べないの選択は数ある問題の一部分で、主人公は単純に諦められなかっただけなんじゃないかな。
08.04.08
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・自分は手を汚さずに「猿の肉」だと知って食べてるわけで、この主人公は生きたいのか生きたくないのかわからない。生き延びたいという希望すら持てない状況がこうさせるのか。
・「神」の存在を持ち出しているけど生に正面から執着できない幼稚な発想の帰結にしか思えなかった。
・人肉食に対して強いタブーを持ちながらも生きるためにその方法を選んだ「アンデスの聖餐」とどうしても比較してしまう。生きることに最後まで執着したのはアンデスの方。
・戦場において何一つ任意では行えないってのがすべてか。
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国語の教科書に一部載っていて続きがめっさ気になって読んだ。
衝撃だった。戦争とはこうも人を変えてしまうんだと思いました
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第二次世界大戦。レイテ島に配置された「私」は病気を理由に隊から追放され、野戦病院に厄介になることもできない。そしてアメリカ軍からの攻撃を受け、生き延びるべく密林をひとり逃げる日々が始まる。孤独と飢えと、そして殺人――
自らを天使と信じ、狂気に陥った「私」が綴る物語。
* * *
感想は言えない。
絶句。何をどう言えばいいのか分からないくらいに凄まじい。
初読から数年経ったというのに、私はいまだこの作品について語る言葉を持ち得ない。
素晴らしい作品。
戦争物ですがこの物語の主題・核はそこではないと勝手ながら思っている。なので戦争物に興味がない人も読んでみて欲しい。
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「何だ、お前まだいたのかい。可哀そうに。俺が死んだら、ここを食べてもいいよ」「声はなくとも、死者は生きている。個人の死というものはない。死は普遍的な事件である。死んだ後も、我々はいつも目ざめていねばならぬ。日々に決断しなければならぬ。これを全人類に知らさねばならぬ、しかしもう遅い。」
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高校の国語の教科書に一部が載っていたのを記憶しておられる方も多いと思います。
生々しい太平洋戦争の描写から1つの「生命」を感じることができます。
名作です。
平穏な生活に刺激の欲しい若い方にお勧めです。
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太平洋戦争の敗残兵の物語です。
描かれている内容は、すさまじいものです。
と同時に、描き方が、すさまじい。
描いている日本語が、すさまじいのです。
これは、大岡昇平の日本語というよりも、
『野火』の日本語です。
ここにしかない、日本語なのです。
ちょっと、とっつきにくいですが、
なめるように読んでみましょう。
日本語という言葉は、ここまで表現できるのです。
興味深いのは、アメリカへの若干の遠慮が見られる部分です。
いったん投降しようとした「語り手」ですが、
目の前で、フィリピンのゲリラに日本兵が殺されます。
アメリカ兵はそれを制止する役目になっています。
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フィリピンのレイテ島で、敗北が決定的となり孤立した部隊から放り出される田村。
彼の体は結核に冒されており、病院も彼を受け入れる余裕などない。
戦場を彷徨いながら、やがて同じ日本兵の死体の肉に惹かれていく。
戦争の恐ろしさ、極限状態の心理状況、宗教観、そんなものが渾然一体となり、一種哲学的な内容となっている。
淡々とした印象もあるが、それでも手を止めずに最後まで読ませる力がある。
物語性がやや薄いこと、けれど結末は物語としての形を保とうとしていることが、ややちぐはぐで少しだけ残念。