面白くて面白くて・・・
2013/10/14 20:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんず86 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人がばたばた死んでいくかなり悲惨な話?読むには覚悟がいる本…と思いましたが
結果をいうと全くそんなことはありませんでした。
反対に、これほど読むのをやめるのがつらい本はついぞなかった。
時間さえ許せば、ずーっと没頭していたかった。
事実、読んでいるあいだ家のなかのことはあとまわし状態^^;
なぜ私はあの時あの場所にいて、なぜあのように行動したか——その意味は時間がつけてくれる、きっと。死んでみて初めて、悲しむ人の数で人の真価がはっきりするように。
2003/08/06 19:22
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFの話ができないものだから、アリソン・アトリーを出してきたり、ページを繰る手を止めさせない手腕は、かのJ・オースティンばりかな…などと、他ジャンルの少ない持ち駒のなかからの発想になってしまう。
けれども、この本はあの本より面白いとか優れているといったランクづけは苦手である。もちろんどうしようもない本に行き合うこともあろうが、こと作家のもつ個性が感じ取られる場合には、身をしばしその人の揺籃に預けて夢見るより他にない。気持ちよければ、いずれにも価値(その時々の私が好ましいと感じるもの)があると思うから、順位というのはどうでもいい気がする。
それでも比較対照は、読み手として積極的に本を堪能するためには有効だ。互いの特徴を分析することで見えにくいものが見えてきたり、言いにくいことを言い得たりする場合がある。
作家ウィリスが本書で進行するドラマを2つのままにしたことにも、その比較対照の効果である。女子大生ギヴリンが行き着いた14世紀のドラマに力点を置いて壮大な仕掛けにすれば、ももちろん読みごたえある小説に仕立て上げることが可能だ。だが、作家はギヴリンを『時の旅人』のような時間旅行者にはしなかった。そこには二重の意味が読み取れると私は思う。
ひとつは、14世紀を代表する王とか貴婦人、領主など名の通った人びととは接触させず、オックスフォードの町近郊の小さな村にヒロインを派遣するという設定。そこには、「○○年の戦争では、死者が数十万人に達した」という1行で言い表さざるを得ない「歴史的記述」への物言いがあると思う。
歴史というものは大きなうねりを中心に書き表され、うねりの象徴となる英雄たち一握りのものであるかのように伝承されてきた。英雄主義的なものから庶民へ、それも抑圧された下層民や女性への視点の転移は、網野史学を想起させる。
庶民一人ひとりがどのような宗教心で教会の教義を支えていたか、そこから来るモラルで社会をどのように成立せしめていたか。また、生活のどのような不便が技術への需要となっていったか。エリザベス女王の王冠に意匠された真珠の数よりも、生活の変遷を知りたいと私たちは時に思う。ウィリスはそれに応えている。
いまひとつ、ギヴリンに村の人びとの介護者としての役割を与え、彼女の存在する21世紀の半ばと旅先の14世紀に広がる病災に対し、人間の成し得ることを問うた点である。ペストほかの伝染病による危険度が高い中世を旅するに当たり、ギヴリンは予防接種を受ける。しかし、薬品や注射器などは持ち込まない。歴史に影響を与えてはいけないという時の旅人のルールに従い…。わずかに、記録のための小さなレコーダーを骨に埋め込んではいるものの。
そして、ごく短い期間ではあるがお世話になった人、心を通わせた人たちのために、いかな科学の助けもなく、素手で病災害に立ち向かう。このとき、彼女がやってきた世界ではあっけないほどに人が死んでいくのに、彼女が手をかけた人たちは
意外にもしぶとく生きながらえる。科学的ではない良薬を彼女の魂の中に託した作家の思いは、現代の様々な技術や社会現象へとつづいているかのようだ。
「萌え」を感じた登場人物たちの魅力を書く余裕がない。テーマか、技術の卓抜さか、人物像の織り成すドラマか、ここには私自身の比較対照が働いてしまった。
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テーマが大変重いのに、思い返すキャラクターたちは笑みが浮かんでしまうエピソードで彩られています。
各所に用意された伏線がひとつに対峙した時は驚きでした。すごい作品です。
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おりしも、送り出した側の現代イギリスでもインフルエンザが爆発的に流行し、重要人物も倒れていく。キヴリンの指導教官と亡くなった女医さんの甥っ子はどうする。
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どんな時代であれ、生があり、死があり、その時代に生きる人々のささやかな喜びや悲しみがある。タイムトラベル先の14世紀のイングランドの片田舎で、ペストの蔓延により、知己が次々と倒れていくなか、キンバリーは身をもってそのことを思い知らされたのでは。歴史とは、後世に名を残すこともなく生き、死んでいったこの人の、あの人の人生の集まりなのだと。
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上巻読んでいたときは「だから担当教授の言うことはちゃんと聞けよ!」とか、教授に対しても「愛弟子が心配なのは分かるけれど、倒れた同僚にももっと優しさを示せよ!」とか思ったけれど、下巻はそんなことを思う間もなく事態が進んでいく、という感じ。読み終わって泣きはしなかったけれど、遣る瀬無さ無念さが胸に沁みる。
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内容(「BOOK」データベースより)
21世紀のオックスフォードから14世紀へと時をさかのぼっていった女子学生キヴリン。だが、彼女が無事に目的地にたどりついたかどうか確認する前に、時間遡行を担当した技術者が正体不明のウイルスに感染し、人事不省の重体に陥ってしまった。彼女の非公式の指導教授ジェイムズ・ダンワージーは、キヴリンのために、新たな技術者を探そうと東奔西走するが!?英語圏SFの三大タイトルを独占したコニー・ウィリスの作。
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2009/07/12読了。
上巻のドタバタ劇、日常からの連続のような笑い混じりの展開から打って変わって、まさかまさかのジェノサイド、というか大量虐殺という日本語の語感こそふさわしいストーリーになり、心底びっくりした。
こんなにあっさり固有名詞のある登場人物が死ぬ小説は、なかなかない。
パンデミック、怖いな。というかペストの威力が凄すぎる。
いったい、この時代のヨーロッパはどうなっていたのか。(中国とかアジアでも半端無い死者をだしたとも言うが)
評価がそんなに高くないのは、タイムスリップものに私が期待する、センチメンタルな余韻がほとんど無かったからである。
タイムスリップのお約束と言えばそれまでなのだが、せめてキブリンにはタイムスリップした先の墓を発掘するくらいのロマンを期待してたのに。(天河ですね)
(もしくは、キブリンがそのまま自分の意思で帰ってこないとか)
おそらく、著者がわざとそうしたのだろうが(それとも訳者のせいなのか)、大量に固有名詞のある登場人物が死ぬにもかかわらず、失った悲しみなどはかなり乾いて、突き放した描写で書かれていたこともその原因だと思う。
14世紀ペストの時代だったら、現代的感覚が通じない「時代的感覚」の表現の一つとして読めるのだが、25世紀?のオクスフォードで暮らす、我々の日常とほぼ変わらない描写で描かれている人々の死に対しては、もう少し何か書いても良いのではないかと思う。
25世紀も、何らかのパンデミック後ということなので、こうした大量死に、彼ら未来人も慣れているのかもしれないが、そうであるなら、そうした「死」に対する我々との感覚のズレを感じたかったと思ったりもした。
14世紀、ペストによる大量死の描写はとにかく圧巻である。
ただ、「すごいもの読んだな〜」という気持ちしか残らない作品であることも確か。
それ以上の、登場人物の成長とか、悲劇とか、人生の意味とか、時間の不可逆性への悲しみとか、後を引く「何か」は無い。
解説によると、主義主張や教訓めいたことを小説の上で表現したくないタイプの作家らしいので、こうした読後感になるのだろう。
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最後までちゃんと読み終えてよかった! 何度涙ぐみそうになったことか…。
昨年の新型インフルエンザ騒ぎの前に読むか、後に読むかで、だいぶ没入感が違うのではなかろうか。
しかし後半の展開はすごい。痛い胸を抱え、呆然として読み終わった。
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SFは全く読みなれていないので評価は避けます。読むのに結構時間がかかりました。はいあのう、力作だと存じます。
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ページを閉じて逃避したくなるほどの死ぬ死ぬラッシュ…
しかし読み終わったときにはやはり読んでよかった、と。
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壮絶で胸を打つ展開。コニー・ウィリスを知らなかったって、なんてもったいないことしてたんだろ。英語で読みたいと思った作品。
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SFでいっぱい賞を取った名作。中世史を研究する女性がタイムマシンで、1320年にいくはずが、手違いでペストの流行する年へ。現代の方も疫病が流行し、助けにいけないという話。
SFというより、文芸作品という感じ。死を前にした時の、神の沈黙と人間の尊厳は、遠藤周作の「沈黙」につながるものを感じた。
また、主人公の女性が思う、「イエスキリストもタイムマシンでやってきたが、送り出した側が座標を特定できなくなり、迎えにいけなくなった。それでキリストが見捨てたのか、と叫んだ」という想像は、なんか真実味がありました。
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それ以前がのほほんと見える程、後半1/2が盛り上がって面白い。が、やはりそれまでが長い。
それでも上巻に比べると現代パートが短めですっきりしていて読みやすい。もっとも、現代パートはキャラでもたせてるとしか思えないが(そして、何者なんだウィリアム)。
固まった吐瀉物とかが平気で出てくるあたり、キレイなだけではない、作者の意思を感じる。
救いはコリンにある。そして、コリンのちょろまかさを表現している大森望がいい仕事をしている。
ダンワージーは確実に自分を責めすぎである。
最後、キヴリンが口数が少なく、ちょっと怖い感じで終わるが、もっとゆったり語って終わって欲しかった。最後だけいきなり早送りで見せられた気分。
キヴリンに関して言えば、世の中の不条理さを知って成長するのではなく、不条理にずっと怒っている。なのでちょっと怖い。
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下巻でようやく話がわかって面白くなってきたが、それにしても、このストーリーにこんなに長い文章が必要?と、疑問。もうちょっとすっきりとさせてあったら、もっと楽しめたかもしれない。この著者の他の本も薦められたが、時間のある時に読んでみたい。