紙の本
血、足首、赤、つまさき。
2020/02/06 17:53
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投稿者:kittihei - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1詩集、第2詩集が全篇入って、プラス他の詩集からの抜粋入りの詩集。もし気に入れば、超お買い得。書店でジャケ買いする時はギャンブルだ。大当たりか大ハズレか。幸いにも、私にとってかなりのヒット。
三角みづ紀。1981年生まれ。れっきとした現代に生きる詩人。だが、なんだか、萩原朔太郎を読んでいる気分になった。「プレゼント」という詩は出だしから先制パンチ。
「今朝は
足首が見つからんから
あなたのもとへ、行かれない」
読んでて、自分の体が痛む。血、足首、赤、つまさき、肉の切れ目。なかなか恐ろし気な言葉があふれている。だが気持ち悪くならない。不思議な非日常に入り込める本。
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『オウバアキル』や『カナシヤル』など、刊行済の複数の詩集から構成された現代詩文庫版。
一貫して陰鬱で自傷気味、心に闇を抱えたような病んだ印象は拭えない。男とのやり切れない関係や、とても良好とは言えない母との距離感に独りもがく自分。死はいつでも隣り合わせ。繊細な心の内に秘めた鋭利な刃の向かう先は他人か、はたまた自分か。読んでいる先から、深く深く自分の殻に閉じこもっていく感覚。
内から湧き出す空虚、喪失、自棄を「詩」というかたちで表現していなかったら、彼女は一体それらを自分のどこに抱えておくつもりだったのだろう。
読むと心が軽くなったり背筋が伸びるような力強い詩と触れ合ってきた私としては、異質な世界だった。
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三角みづ紀という詩人のことを知ったのは高校生のときだった.学校の図書館にあった『オウバアキル』という詩集をたまたま見つけて,たまたま手に取った.それまで詩集なんて読んだこともなかったのに.
オウバアキル.
そのタイトルの意味を,読み方を,高校生のわたしは知らなかった.ただただ本のなかに綴られた詩に衝撃を受けた.高校生のわたしには強烈な感性だった.
この本には上記の詩集以降に発表された詩集も収録されているのだけれど,ずっとおなじ感性のままで詩作をされているのかといえば,もちろん違う.
ときがたつにつれて,ひとは変わる.
三角さんの詩も,ただ鋭利で薄暗くて冷たくて脆かった印象からすこしずつ,しなやかさややわらかさ,あたたかさ,光のようなものを感じるようになったと個人的におもった.
オウバアキルのときの衝撃は,いまのわたしには刺激が強すぎてきっと飲み込むことができない.高校生という特殊な年頃だったからこそ惹かれたのだとおもう(これはいまがいい・わるい,とかいう話ではなく).
いまでもわたしにとって三角みづ紀さんはちょっととくべつな詩人.そのわりに初期の作品しかちゃんと読んでいないので,こんどはまた別の詩集を読んでみようとおもう.
ちなみにこの本にはエッセイもすこし収録されているのだけど,三角さんのエッセイ,とてもすきだとおもった.