紙の本
知の巨人たち
2023/08/15 06:28
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
遠野に息づく伝承を学問へと体系化した、柳田國男の偉業が伝わってきます。生物・博物学にまで手を伸ばした南方熊楠、人間的にも魅力だったんですね。
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南方熊楠氏の「神社合祀に関する意見」には強烈な印象
2022/05/04 22:41
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
南方熊楠、柳田國男、折口信夫、宮本常一という民俗学の巨人たちの傑作選。南方熊楠氏の「神社合祀に関する意見」には強烈な印象を受けた。神社合祀の目的は、神社の数を減らし残った神社に経費を集中させることで一定基準以上の設備・財産を備えさせ、神社の威厳を保たせて、神社の継続的経営を確立させることにあったというが、それに南方氏は噛みつきまくる。「海幸を守る蛭子社を数町乃至一、二里も陸地内に合併されては、事あるごとに祈願しえず」と憤り、「敬神思想を薄くし、民の和融を妨げ、地方の凋落を来たし、人情風俗を害し、愛郷心と愛国心を減じ、治安、民利を損じ、史蹟、古伝を亡ぼし、学術上貴重の天然記念物を滅却する」と糾弾する。まっとうな意見である、この愚策を推し進めた役人たちの頭の中に分け入ってみたい
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やっぱり民俗学は最高だな!
2019/08/30 19:11
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投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
順々に読んできた池澤全集、ここにきてまさかの民俗学巻でテンションが上がる。
民俗学の巨匠達の文章をたっぷり読めてお腹いっぱいです・・・
最初の南方熊楠がとっつきにくいと思ったら後半から読めば良いと思います。
『土佐源氏』がただの下ネタかと思ったら最終的に超良い話でした。
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第5回配本、第14巻『南方熊楠/柳田國男/折口信夫/宮本常一』2015年4月12日発売開始!
民俗学は文学のすぐ隣にいる。ではそこまで文学の領域としてしまおう。実際の話、
境界はないのだ。──池澤夏樹
熊楠「神社合祀に関する意見」、柳田「海上の道」、折口「死者の書」、宮本「生活
の記録」など、卓越した知性と想像力で日本像を再構築した巨人たちの文業から、
傑作29篇を精選収録。
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熊楠「神社合祀に関する意見」、柳田「海上の道」、折口「死者の書」、宮本「生活の記録」など、卓越した知性と想像力で日本像を再構築した巨人たちの文業から、傑作29篇を精選収録。
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日本民族学の大家の4人の作品集
南方熊楠・柳田國男・折口信夫・宮本常一
南方熊楠は、『神社合祀に関する意見』
各地の神社が廃止されていくことに強い危機感を
もって意見書として書いてあるもの。神社をはじめ
日本における宗教的施設の役割や重要さ、もしくは
それが亡くなってしまう場合の民族として失う
ものを体系だてて整理して書かれてある。
少し難解ではありますが、とても趣のある内容で
あると思います。
柳田國男は民族史や古代からの日本の成り立ちに
ついての考え方や意見、考察がのべられている。
『海上の道』『根の国の話』『何をきていたか』
『酒ののみようの変遷』
折口信夫は、『死者の書』貴族の生活と仏教感
日本人がとらえる宗教感や死生観が美しく
語られているのですが、少し難解。
『我が子・我が母』『声澄む春』『神 やぶれたまふ』
は鬼気迫った感じで戦争に対しての憎悪が語られている。
宮本常一は、対馬や九州。日本各地の漁村・や寒村
の老人から語られる話をもとに、日本の原風景
や生活風景を克明に語られている内容。
私が子どもだったころ、うっすらとそういうこと
などがあったようなことを覚えていることが
何点かありましたが、もうなくなってしまった
日本の原風景・風俗・生活なのであろうと思います。
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柳田國男
根の国の話、根の国の意味は地底深くの死の世界を表しているのではない、富士の高嶺の根である。出発点とも中心点とも解すべきもの
亡き人に逢える 常世の国と根の国
とこよ 富と長寿 上利浦島の子
とこよ 常夜経く国 闇かき昏す恐ろしい神の国
死の国 常暗の恐怖の国
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南方熊楠の論文は初めて読んだが、大変ロジカルであり、また先駆的な手法に基づいた内容であると感じた。さすが天才たる所以だと思う。
「死者の書」は、飛鳥時代を舞台にしながら素晴らしいリアリティ。文学作品として非常に質が高いと思う。
「土佐源氏」も同様。ノンフィクションとはとても思えない高度な短編小説として読めた。
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「海上の道」柳田国男
柳田の最後の著書であり、様々な論議を呼んだこの論文を私は初めて読んだ。「日本人の祖先が、南方海上より流れ着いた人々であった」という論旨そのものは、現在では明確に批判・訂正されているので、改めて読むモチベーションがなかなか持てなかったのである。この全集では、まず「文学」として読もうとしている。「科学」と対立する文学という意味で、私も確かに文学であると思う。構造はほとんど随筆だからである。柳田は、青年の頃拾ったヤシの実からこの論を立てている。私は勘違いしていたが、ヤシの実を沖縄の浜辺で拾ったのかと思いきや、伊勢の浜辺で拾ったのである。そこから、様々な思いと民俗事象を述べた後に、中盤で初めて「宝貝」がキーワードであったと学術的な根拠を述べる構造は、もはや文学であろう。文章は美しい。だから、最後まで読めてしまう。思うに、柳田国男を文学者として読み直す作業は、まだ始まっていないのかもしれない。
「死者の書」折口信夫
いろいろとわからない語句や展開もあるけど、詰まりながらも、なんとか最後まで読み通した。誤解していたのは、古代の黄泉の国描写が半分くらいあるのかと思いきや、それはほとんどなかったこと。有名な「した、した、した」という擬音が、もっと全編を覆っているのかと思っていた。むしろ、発表当時としては、非常に先進的、もしかしたら現代でもまだここまでの水準に達していないほど考証のしっかりした奈良時代小説になっていた。
地の文自体が、古代人の目線になっていて、例えば「片破れ月が、上がってきた。それがかえって、あるいている道の辺の凄さを、照し出した」「月が中天来ぬ前に、もう東の空が、ひいわり白んできた」(218p)というような言葉の選び方は、もう誰も到達できぬ高さである。
しかしこれは民俗学ではない。純粋に小説だろう。
「土佐源氏」宮本常一
(「忘れられた日本人」(1960)より)
池澤夏樹に「小説よりおもしろい」と言わしめる作品である。私もインタビュー記事を書いたことがあるのでわかるが、これだけの内容を聞き出すとすれば、優に4ー5時間を2回は繰り返さなくてはならない。もちろん信頼関係が出来上がってからの話だから、本当は数日かかる。私は、民俗採取の真似事をしたこともあるが、1時間じっくり話を伺って使えるのは一言二言分しかない事ばっかりだった。ところが、記録によれば、宮本常一の村への滞在はたった1日の数時間だったらしい。信じられない密度である。小説よりおもしろいが、これは明らかに民俗採取である。馬喰や盗人宿、こうぞつくり、夜這い、etc。今は無くなっている豊かな民俗がここにある。それから10数年後に書かれた「生活の記録」の中に、単に男女平等と云うことではなく、生き生きとした女の民俗が記録されているのは、そんな「採取」ができるのは、決して偶然ではない。
「神社合祀に関する意見」南方熊楠
我大学在住の折、常民文化研究会に所属し、フォークロワフィールドワークの真似事をす。民俗学は科学か、文学か?講師と論議し、不明に終わる。突如その会話思い出しぬ。それより35年。民俗学は常に脳中不可忘。数年前、和歌山南方熊楠記念館を訪ねる。小字で埋め尽くされたノート、紙、凡ゆる標本、博覧強記、南方曼荼羅我を圧倒す。
この小文、日本エコロジー論嚆矢也と世に云う。無論、我同意。唯、八割かた神社合祀政策反対論拠を(1)敬神思想を薄くし(2)民の融和を妨げ(3)地方の凋落を来たし(4)人情風俗を害し(5)愛郷心と愛国心を減じ(6)治安・民利を損じ、と論じ、輿論に訴え、政治家を説得す。文中、和歌山県並びに全国の合祀神社事案のみならず、水戸光圀、定家、西行、白石、他多くの日本古典を挙げ、モンステキュー、孔子、その他欧米の様々な地方を引合いにす。正に、博物学そのもの也。
(7)史蹟・古伝を滅ぼし(8)学術上貴重の天然記念物を滅却す、と論じるに及んで、例えば次のように記す。
わが国の神林には、その地固有の天然林を千年数百年来残存せるもの多し。これに加うるに、その地に珍しき諸植物は毎度毎度神に献ずるとて植え加えられたれば、珍草木を存すること多く、偉大の老樹や土地に特有の珍生物は必ず多く神林神池に存するなり。(45p)
この後、怒涛が如く珍草木珍生物の名前出ず。全ては我は知らず。果たして絶滅せしか。
守護の要は、金でも政策でも無し。敬神思想であり、民の融和であり、地方であり、人情風俗であり、愛郷心と愛国心であり、治安・民利である。蓋し、民俗学の核心也。民俗学は、日本文学か否か、元より日本文学なり。その謂、日本文学とは日本の文なれば也。
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私の好きな池澤夏樹が企画し編集したこの文学全集の中でも、取り上げる対象が南方熊楠、柳田國男、そして宮本常一というこの表紙だけで、購読を決めた。
宮本常一という人の、日本にかつてあった人々の普通の暮らしを描きとり、描写のみならずそこから俯瞰して、その後の発展との関係を導く巧みさ。
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神仏合祀、民俗学の芽生えから、小説、聞き書きなど多角的な内容。日本民俗学の芽生えや成果を知ることができる
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『南方熊楠/柳田國男/折口信夫/宮本常一』というのが、この本のタイトル。しかしこれは日本文学全集の一つ。彼らの足跡はいろいろなところに残されているから、ここではそれぞれの作品うんぬんよりも、やはりこれを文学全集に選んだ池澤夏樹を称えるほかない。チョイスももちろん、解説が、素晴らしいから。
日本の民俗学はとりわけ文学に近いところで育った、それは日本人がとりわけ文学に依ってものを考えることの多い民だからかも、というのが池澤の見立てだ。柳田國男は風通しの良い疎林だが、折口信夫は密林である、とも。
とにかくこの本はまず解説を読み、気に入ったら買うべきである。新しくないが、でも新しい文学に出会える。
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230824*読了
これもまた文学と言われると、そうなのだろうと思う。
国学者、民俗学者など、日本のことを深く知り、伝えようとと尽力された人たち。
一番、名前も知らなかった宮本常一さんの女性史がおもしろかった。今だって、不平等さというか女性であることの大変さを感じることはあるのに、昔なんてもう…。その時代に生まれなくてよかったと思わずにはいられない。
宮本常一さんは人の話を聴いて、引き出すのがお上手な人なのだと思う。一人ひとりの生涯が浮かび上がってくる。
南方熊楠さんの「神社合祀に関する意見」は昔、神社の統合があったことも知らなかったし、文章がまずすっと入ってこなくて、大変ではあった。ここまで日本の歴史や国土を大切に思える熱い気持ちはすごいと思う。
柳田國男さんは名前は知っていたし、折口信夫さんはこの日本文学全集で知った。
調べて、書くということ。知ったことから想像して書くということ。事実を見たわけでないけれど、こうであろうと決めて、文章にしていく。
そういったことは今の時代もいろんな学者さんだったりがしているわけなのだけれど、改めてこの時代にここまで調べて、文章にまとめていくことのすごさに関心せずにはいられない。
折口信夫さんの「死者の書」は不思議だったなぁ。
文学は小説だけではない。これも文学と繋がっているのだ。人の暮らしと文学は切り離せない。