紙の本
人間にとって大切な事をおしえてくれる
2020/02/18 07:49
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界各地にある「姥捨て」伝説のアラスカインディアンの版
一味違うのは捨てられた老女二人のたくましさ。
以前は文句ばかり言っていた老女がたくましく生き延びていく
各地にある姥捨て伝説では老人が「知恵」を授けて若者を救うのだが、アラスカの伝説は知恵はもちろん「備蓄してあった食料」という現物で若者を救うのが何ともたくましい。
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アラスカ・インディアンの部族で、足手まといになる老女二人を置き去りにしたが、その二人がとてつもない頑張りを見せて見事生き残るという話である。
うん、すごくおもしろかった!
こういう、見くびられ疎まれた老人が活躍する話は大概おもしろいとは思っているのだけど、しかしその中でもおもしろかった!
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"アラスカの先住民の伝説。日本では楢山節考という映画があったが、生きていくために生活している集団での、口減らしのために老人を切り捨てる過酷な世界で生き延びた二人の老女の話。
生きていくために必要な知恵が随所にちりばめられている。
例えば
感謝の気持ちを忘れていては、いずれ見放されることになる。
リーダーとの対立がどんな結果をもたらすか。
その結果を恐れて自分を引くのか?あるいは、自らの正義を貫くべきか。
見捨てられた仲間との和解。
いずれも、こうあるべきだという説教めいたことではなく、淡々と語られる物語。
選択肢は、いくつもあり、何が正しかったかはわからない。
でも、二人の老女がとった行動は、困難な道であるがゆえに、生きることの意味、人生とは何か?という深い問いかけが生まれてくる。"
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北方民族の民話、神話に興味があったので手に取ってみたら、これはアラスカインディアンの一族のグループ、グウイッチン・グループの中で語り継がれてきた物語だった。
狩猟、採集の生活ということは、獲物を求めて移動する生活になる。大きな獲物のムースの群れに行き合わなかったりすれば、グループは飢餓に陥る。そこでグループのリーダーは、真冬の最中に、老人ふたりを残して移動すると決める。
80歳のチディギヤークと、75歳のサ(星という意味)は、こうして残された。サは、死を受け入れないと、半ば諦めていたチディギヤークを説得する。かつては男のように狩りを楽しんだサは、文句ばかり言う老人だったことをやめ、その知恵で生きようと決心する。ふたりは痛む体に鞭打って、夏のキャンプ地だった川へと向かう・・・。
淡々と語られる物語を、想像力を動員して読み進むと、老女が置かれている状況がどんなに過酷なものか驚く。食べるものや、極寒で生き延びる知恵、自然のスケールの大きさ。それでもだんだん光のさす方向へと向かう物語は、最後に素晴らしい結末を迎える。
地味な本だが、大人も子どもも、ぜひ読んで欲しい物語だと思った。これは英雄の物語でもあるし、老人の持つ知恵の物語でもある。作者は現在も、狩猟、採集の生活を続けながら執筆しているという。
余談ながら、草思社文庫のラインナップを見ると、面白そうな本がいくつかあった。