紙の本
複雑な免疫システムを最新の科学的知見を使って分かりやすく解説してくれる一冊です!
2020/02/15 14:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、免疫という身体の複雑な作用について分かりやすく解説した一冊です。同書によれば、20世紀末から21世紀にかけて、免疫の常識が大きく変わったということです。何が変わったのかと言えば、自然免疫が獲得免疫を始動することが判明し、さらに従来の考え方に自然炎症という新たな概念も加わって、免疫システムの詳細がわかってきたというのです。そこで同書では、最新の科学的知見をもとにして、免疫という複雑で動的なシステムを解説するとともに、そのシステムの中で多くの細胞がどう協力して病原体を撃退するのか、その流れを丁寧に追っていきます。
電子書籍
免疫の仕組み
2021/02/03 05:10
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
免疫の仕組みについて詳しく書かれている。免疫が作動し攻撃を始めるまでに自己の細胞と病原体を区別するためにダブルチェックが行われるなど複雑な仕組みになっていることにすごいなと感じた。一方でそれでも自己を免疫が攻撃してしまう病気も数多くこれらの原因を特定するために医学の発展が必要だなと思った
電子書籍
ノーベル賞クラスの研究者による入門書
2015/10/24 22:50
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投稿者:okadata - この投稿者のレビュー一覧を見る
一度かかった病気には二度かからない。かかったとしても軽くすむ。免疫の考え方は2500年前から知られていた。しかし、そのくわしい仕組みは19世紀の段階ではよくわかっていなかった。しかし最近新しい発見があり例えば2011年のノーベル賞は食細胞が病原体を認識するセンサーを持つことがわかった。著者の審良(あきら)静男氏も同じ発見をしていたのだが論文に時間をかけすぎ一歩遅れたそうだ。東大阪出身では江崎玲於奈、山中伸弥両氏がノーベル賞をとったが審良氏もあと一歩、他にはゴルフを始めて1年で89を出したOLEDの城戸淳二氏もいる。
白血球の一種のマクロファージなどの食細胞は、病原菌だけでなく細胞の死骸や老廃物など何でも食べる。ただし正常な細胞表面には食べるなと言うサインがあるので手を出さない。これが自然免疫の基本になる。病原体を食べた食細胞はサイトカインと言う警報物質を出す。中には食細胞を呼び寄せるものがあり、食細胞を活性化するものもある。食細胞が集まって活性化した状態、それが炎症だ。
細菌による感染症であれば抗生物質で菌を殺し、抗炎症剤で炎症を抑えるとことになるが、かぜの場合はウイルスに対する免疫ができるのを待つことになる。インフルエンザワクチンはウイルス表面のタンパク質を認識させるのが目的なのだが、変異が激しいため必ず効くとは限らない。ともあれ細菌を見分けるセンサーは細胞膜にありウイルスのRNAを見分けるセンサーは細胞内部にある。そして新しい発見があったのはこのセンサーが食細胞だけでなく全身の細胞にあることがわかったことだった。免疫は免疫細胞だけが関係しているのではない。
抗原と抗体というのがよくある免疫のイメージだがこれに関係するのが樹状細胞で、病原体を食べた樹状細胞は活性化し最寄りのリンパ節に移動する。この時食べたタンパク質を分解してできたペプチドを樹状細胞の表面でキャッチし枝をいっぱいに広げリンパ節でこれが抗原だと宣伝するわけだ。活性化した樹状細胞の寿命は数日で抗原がいなくなれば免疫反応も治まる。過剰反応を起こさないための大事な仕組みだ。
樹状細胞が提示したペプチドはナイーブT細胞の受容体が認識するのだがこの細胞は自己の細胞にはほとんど反応しない。病原体を認識すると増殖し、マクロファージを活性化させる。この時獲得免疫と自然免疫の双方が働くことがダブルチェックとなって病原体を攻撃する仕組みとなっており、同時に自己細胞には反応しない仕組みにもなっている。
最近がん細胞にだけ提示されるペプチドをワクチンとして使う研究が進んでいる。もともとはがんとは言え自己細胞なので反応しないのだが、特異的にワクチンが効く人がいるらしい。マウスの実験ではある系統のマウスに自然免疫を活性化するアジュバントと言う物質と自己の心臓由来のペプチドを投与すると100%自己免疫性疾患が起こることがわかった。がんに効くワクチンと自己免疫性疾患の仕組みは同じ免疫反応の表裏のようなものらしい。他にも体の中で結晶を作る物質に対する免疫反応がいろんな病気の仕組みになっている、例えば痛風は尿酸結晶を食べようとして免疫が過剰に反応し炎症を起こした状態だ。
わかりやすく書かれているがなかなか理解がついていかない。しかし免疫の仕組みが解明されれば世界が変わりそうだ。免疫を高めるXXはほとんど信じていないのだが。
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しっかり理解するのはかなり難しいが、メディカルリテラシーをあげるのにはとても良い。
人間の体に備わっている免疫の素晴らしさに感嘆する。
同時にこのような難しいしくみを研究し解明していく学者さんたちを尊敬し、頭が下がる思い。
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電子書籍で買って読んだ同居人がめっちゃおもしろいと言うので、私も図書館で(紙の本を)借りてきて読む。この本のキモは、「まえがき」にダイジェストされている。
▼20世紀のおわりから21世紀の今日にかけて、免疫の〝常識〟は大きく変わった。
たとえば、自然免疫による病原体認識という段階がなければ獲得免疫は始動しないことがわかり、従来の、自然免疫=下等なシステム、獲得免疫=高等なシステム、という図式が崩れ去った。自然免疫と獲得免疫は、どちらが上、下という関係でなく、相互に補完してわたしたちのからだを病原体から守っていたのだ。
一方、最新の研究では、糖尿病、痛風、動脈硬化、アルツハイマー病など慢性炎症がからむ病気は、免疫システムによって引きおこされる自然炎症が原因とする説が有力になりつつある。そうなると、わたしたちがかかる病気の半数以上は、本来は病原体からからだを守る存在である免疫システムが原因となっている可能性が高い。(p.3)
20世紀終盤のブレークスルーは、それまで"ただなんでも食べるだけの原始的な細胞"と思われていた食細胞(マクロファージや好中球など)が、病原体を感知するセンサーをもっていると分かったことだ。そのセンサーであるTLR(トル様受容体)と、この受容体に結合する特定の物質(リガンド)が、リポ多糖(細菌の細胞壁成分)の認識するTLR4の発見をきっかけに、一気に解明された。
このTLRのほかにも、RLR(リグアイ様受容体)、CLR(Cタイプレクチン受容体)、NLR(ノッド様受容体)などの病原体センサーがみつかった。驚くべきことは、分布の濃淡はあれど、こうしたセンサーが、食細胞のみならずほぼ全身の細胞に存在していると分かったことだ。
▼従来の免疫の見方では、わたしたちのからだを病原体の侵入から守っているのは「免疫細胞」とよばれる特定の細胞だった。ところが、細菌やウイルスを認識するセンサーが全身の細胞に分布しているという事実は、この見方を一変させる。からだのいたるところで病原体が感知され、警報物質が放出されるのだ。免疫は、免疫細胞だけがつかさどるギルド的なシステムではなく、全身性のダイナミックなシステムであることが明らかとなったのである。
TRLをはじめとするセンサー群の発見は、自然免疫に対する見方だけでなく、免疫そのものに対する見方までを大きく変えたのであった。(pp.35-36)
21世紀目前に新たに判明した「TLRなどのパターン認識受容体で病原体を認識した自然免疫が、獲得免疫を始動させる」(p.175)というストーリーに加え、さらに「TLRなどのパターン認識受容体は、病原体に共通する特定の成分だけでなく、一部の自己成分も認識していた」(p.175)ことが分かった。
▼そうなると、マクロファージ、好中球などの食細胞は、病原体だけでなく内在性リガンドを認識しても活性化し、炎症をおこすことになる。病原体がおこす引きおこす炎症に対して、病原体がかかわらないこの炎症を「自然炎症」という。(p.175)
「まえがき」にあったように、「糖尿病、痛風、動脈硬化、アルツハイマー病など慢性炎症がか��む病気は、免疫システムによって引きおこされる自然炎症が原因とする説が有力になりつつある」(p.3)という話が10章で書かれている。
要は、体内で結晶化したもの(痛風を引きおこす「尿酸結晶」、アルツハイマーを引きおこす「βアミロイド繊維」、動脈硬化を引きおこす「コレステロール結晶」、2型糖尿病を引きおこす「ヒト膵アミロイド繊維」などは結晶構造をとる物質である)は、食細胞が消化しきれずに、結晶が体内に残り、それを処理しようとまた新たな食細胞が食べにきて、消化しきれず…という状態が繰り返されて、どんどん炎症が起こる、「つまり、消化・分解できない結晶は、自然免疫系を過剰に活性化してしまう」(p.181)ことが、こうした病気の原因ではないかというのだ。
▼TLRなどのパターン認識受容体は、病原体も内在性リガンドも認識し、自然炎症もおこせば、獲得免疫も始動させる。そして、自然炎症が行きすぎると炎症性の疾患を引きおこし、獲得免疫に誤作動がおこると、自己免疫疾患を引きおこす。(p.185)
いまでは「免疫と炎症」が大きな学問分野を形成しようとしていて、学会なども「免疫と炎症」名が多くなっているそうだ。
新たに分かったこともある一方、免疫機構にはまだまだ分かってないことがいっぱいある。その分かってないことを探していくところを、この本で垣間見た感じ。「まえがき」には、動的なシステムだということも書かれていて、ヒトのからだの仕組みの不思議を思う。
▼免疫はきわめて「動的」なシステムである。
無数の免疫細胞が常にからだじゅうを動きまわり、病原体がきたら協同して撃退し、いなくなればすーっと散って、またからだじゅうを動きまわる。天文学的な数の細胞が動きまわっているにもかかわらず、常にからだ全体で調和がとれている。
さらに、無数の細胞が入り乱れて動きまわる「動的」なシステムであるにもかかわらず、〝アクセル〟と〝ブレーキ〟が整然と階層化され、システムの始動と停止がみごとに制御されている。
免疫を真に理解するためには、時間的なアプローチと空間的なアプローチの両方が必要だ。どのような細胞が「いつ」「どこで」「どのように」コミュニケーションをとってはたらいているかを、根気よく追いかけなければ真実は見えてこない。
この複雑さこそ、免疫研究の困難さの象徴であり、また魅力の源泉でもある。(p.4)
著者のお名前「審良」は「あきら」とよむ。著者お二人とも阪大を拠点に研究活動を続けているそうだ。
免疫関係の本といえば、やはり同居人(当時は別に住んでいた)が「めっちゃおもしろい」と言うので私も買って読んだ多田富雄の『免疫の意味論』がある(本棚から出してみたら、もう20年以上前の本である)。免疫と、「自己」「非自己」の関係の話。久しぶりにこれも読みなおしたいし、『新しい免疫入門』の巻末に参考文献としてあがっていた中からは、同じブルーバックスの『現代免疫物語』を図書館で借りてみた。
自分が習った頃の教科書に、免疫がどう書いてあるかを読みなおしてみたい…。
(3/23了)
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詳細な理解にまでは及ばなかったが、長い時間の中で築き上げてきた生き延びていくためのシステムが人間には備わっていることに心動かされた。
また、この複雑なシステムを解明するため、日夜研究に勤しむ科学者の皆さんの格闘にも敬服するし、まだまだ未開の地平が広がる分野であることもわかった。
免疫を扱った他書にも手を伸ばしてみたい。
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身近な事ほど、よくは分かっていないんだなという事が分かる。
わかっている事、わかっていない事を明らかにしている点は素晴らしい事だと思う。
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免疫の“常識”が大きく変わった。極めて複雑で動的な免疫システムの中で、無数の細胞がどう病原体を撃退するのか、わかりやすく解説。
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かなり詳細まで免疫の仕組みに踏み込んで説明されている。ブルーバックスってここまで詳細だったっけ?素晴らしい、今わからなくても、他の類書を読めば、この本とどんどん繋がりそうなハブになる一冊。
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免疫学の大家の先生が書かれた一般向けの新書であるが、免疫と関わる仕事をしている自分にとっても知らないことがあったり、マクロな視点で全体を捉え直すことができた。
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自然免疫は、病原菌を食べたマクロファージはサイトカインを出して好中球などの食細胞を呼び寄せる。獲得免疫は、樹状細胞が病原菌を食べて活性化し、抗原提示を行うことでナイーブT細胞を活性化させる。ナイーブT細胞はナイーブヘルパーT細胞となり、マクロファージをより活性化させるようにサイトカインを放出する。また同時並行的にB細胞も活性化される。B細胞は抗原を食べて抗体を産出する。そのほかキラーT細胞とか、いろいろな登場人物が現れる。やはり免疫は難しいな。でも体のなかでこのような仕組みが日々動いている。進化の結果とはいえ、すばらしい!
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若干専門的だが、免疫の働きについて、詳しく解説してくれる本。免疫の働き方から、腸で細菌が活動できる理由や、がんの免疫療法治療まで幅広くカバーしてくれる。
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大学の生物学の先生に課題としてお薦めされて読みました。文庫本ですが、内容は複雑で、何度も読み返したりノートにまとめたりしながら読みました。さらっと読むものではなく参考書を勉強するような感覚で読む本だと思います。免疫学について歴史や基礎的な仕組みについて詳しく書かれており、炎症や痛風、がんなどの病状にどう免疫が関与しているかなど病態の観点からも書かれています。少し専門的な内容まで突っ込んでいるので、初心者にはハードルが高いように感じました。
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素晴らしい。専門的に感じる人もいるだろうけど、とても分かりやすく面白かった。自分の免疫の知識は高校レベルに付け焼き刃の毛が生えた程度だったけど、いかに表面的、硬直的だったかを痛感。まだわからない部分も多いようだけど、動的かつ複雑な仕組みを解き明かしていく研究者たちを尊敬する。
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コロナ禍で免疫学を少しでも知りたく免疫学の本を初めて読んだ。生物が進化した過程でこれほどまで複雑な免疫システムを獲得したことが興味深かった。まだ未知な部分も多くこれからも発展する分野だが、自身や家族の健康に関わることであり、全ての人が基礎的な学問として学ぶ必要があると感じた。