紙の本
人間はランダム化が不得手、そこに勝機あり (但しわずかに)
2015/09/02 01:58
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投稿者:Michiyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
感想を一言で言うなら思ったよりも地味だった。更に副題のテニスに関する章は僅かに5ページ。拍子抜けしてしまったが、自分もテニスのプレーですぐに実践できそうな内容だったのでよしとしたい
人間は物事のランダム化や偶然の事象の認識が不得手で、本来ならば期待値が同じになる事柄でいくらか差が生じることがあり、そこを狙えば長期的に利益が他人を上回る事になるとのことだ。確実な必勝法はないし、自分一人だけが大勝することもない。あくまで統計的な勝率の差に応じての「勝ち」を扱っているのだ。
人によっては他者を出し抜ける必勝法を期待してこの本を手に取ったかもしれない。一応スポーツトーナメントや掛けの予想で他人の出方を踏まえた有効手段を紹介している章もあるが、それにはあまり期待しないほうがよい。著者は数学者で、確固とした数学的、統計学的裏付けを元にこの本を書いている。巷にあふれる株やギャンブルの安直な必勝法指南本とは訳が違うのだ。
この本で一貫して指摘されている人間のランダム事象取扱の不得手さだが、当たり前の事だと思っていたものの、改めて様々な事例から事実を突きつけられると愕然としてしまう。
コイントスの例は単純で気が付く人はすぐに見抜けるが、世の中様々なところで無意識のうちに人間の特徴的な列挙方法が顕在化してしまう。
興味深かったのは数字の偽造、操作の痕跡発見方法だ。
様々な数字の並びは「ベンフォードの法則」、若しくは「上一桁現象 (The first digit phenomenon)」と呼ばれる分布に従うそうだ。この法則は帳簿上でも同様で、人為的に手を加えた数字の分布はベンフォードの法則から乖離が出てくる。これを利用して、会計検査のスクリーニングにしているとのこと。
また他にも興味を引かれたのはスポーツにおける「ホットハンド」を巡る話だ。バスケットボールで選手がシュートを連続して入れられるような勢いのある状態を言う。いわゆる絶好調の状態だ。このホットハンドに入ると、そうではない状態と比べてシュート成功確率が上がると信じられている。
だが相当な数の試合を解析したところ、「ホットハンド」状態とそうではない状態とで成功率は変わらなかったという結果になった。どうも数本連続してシュートが入ると今日は調子がいい、と選手も周囲も思い込んでしまうようだ。
これはバスケットボールに限らず他の競技でも似たような事例があるだろう。
全体を通して、人が関わることに癖や確率分布の偏りが現れる事が狙い目であることが十分理解できたが、その勝率の違いも結局はわずかで、期待値に差はあるが大勝ちすることは少ないと実感した。しかも癖や偏りを見出すのも地道な集計や分析、確率計算によってやっと見えるものである。だいぶ労力が要るという印象だ。
ところで大いに勉強になった本書であるが、全体を通して文章自体に違和感を覚えることが多かった。翻訳のせいかもしれない。
説明が回りくどかったり、文章の流れが前後でうまくつながっていない箇所があった。こんな文章のせいでよりこの本の内容を地味かつ感想気味に感じたのかもしれない。やや難解な部分もあったのかもしれないが、もう少し読者が読みやすい翻訳を期待したい。
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数学と聞けばその場から逃げ出したくなる方も(それなりに?)居られる現在。
しかし、そんな数学でも「カジノで勝てる必勝法が〜」なんて話になると俄然世間の関心を引いたりします。
#そうでもないですかね?
さて、カジノと言えば賭け事。
賭け事といえばランダム、そしてランダムと言えば、例えばコイン投げです。
ここで表が出る確率50%、裏が出る確率50%のコインを10回連続で投げるケースを考えます。
その時、以下の2つのケースはどちらが出やすいのか?
A:裏裏裏裏裏裏裏裏表裏
B:裏裏表表表裏裏表表裏
表、裏ではわかりにくいですね。
では表を1、裏を0としてみると上の2つは
A: 0000000010
B: 0011100110
Bの方はランダムに見える一方、Aの方は余りランダムには見えないのではないでしょうか。
つまり、Aの方は余りに作為的に見え、よりランダムに見えるBの方が出やすい、つまり確率が高そうに見えませんか?
しかし、実はどちらの確率も1/1024と同じなのです。
この様に人間が考えたり感じたりするランダムさと本当のランダムさの間には違いが有るのです。
本書はこのランダムに対する人間の認識に注目した一冊で全22章からなります。
各章、それぞれに独立したテーマを取り上げており、例えば
ジャンケン(これ、実は例えば男性は最初にグーを出しやすいとか、3回連続で同じ手を出さないだろうとの思い込みが有るとか色々な攻略方法が有るのです)や、
マークシート方式のテストで何番目の選択肢が正解である可能性が高いかに始まり、
ロト6に代表される自分で数字を選ぶクジに数値の偽造を見破る方法(人間が作った偽造の数値には有るパターンが見られるそうです)から株式市場等、その内容は多岐にわたっています。
この様に色々と興味深い内容が多かったのですが、特に「人間はランダムにはなれない」という点が面白かったです。
つまり、これがロト6の場合ですと、個人視点ではランダムに数字を選んでいるつもりでも、ロト6の参加者全員が選んだ数字を見てみると極端に偏った数字の選ばれ方がされているという訳です。
ロト6についてはよくキャリーオーバーがどうとか聞きますが、みんな集団としては毎回同じ様な数字の選び方しかしていないのであれば、その数字を外してしまえばキャリーオーバーの連発しかありませんよね〜。
そして、選ばれていない数字の方が圧倒的に多いのです。
また、先日超能力に関するNHKスペシャルの舞台裏を記した本、「NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦」を読みましたが、その中では透視についても取り上げていました。
しかし、本書を読んでみて透視というのは、実は「人間はランダムに行動しているつもりでも、実際にはあるパターンに沿った行動をしているに過ぎない。そして多くの人はその事を知らない」と言う事実を利用したトリックなのではないのか?と言った考えも脳裏をよぎりました。
「本当の��ンダムって一体何だろう?」等、ランダムと人間の関係についてご興味を抱かれた方にお勧めの一冊です。
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先を読まれないようにするためには、まずランダム対応。
ただ人は、ランダム化はできない。なのでルールや乱数表の力を借りる。そうじゃない場合は、相手としては読むことが可能。前回の失敗は反転させる可能性が高く、うまくいった場合はそのまま同じ手を使う可能性が高い。
賞金が同点勝者で分けられるばあいは、ちょっと穴に手を出して、期待値をあげるのが重要。
数字は馴染みのある数字を使ってしまう。1、2、3あるいはカレンダーの日時、今の時間、最近のドラマで見た数字など。
超長期のファクターは知っていても対応できない。(しない)例えば高齢化とかか。
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科学で勝負の先を読む W・パウンドストーン著 無意識の法則性活用する方法
2015/2/8付日本経済新聞 朝刊
高性能コンピューターを使ったビッグデータ解析が盛んだが、データを集めてマーケティングに活用しようとする動きは1950年代からあった。その歩み、歴史を詳しくたどったのが本書だ。
クレジットカードの使用履歴から妊婦を割り出し、マタニティーグッズの売り込みをして成功した百貨店。売り出し前の株価を予測して巨大な利益をあげた個人投資家。どれも一見でたらめ、きまぐれな動きの中にある無意識の法則性を導きだしての結果だったという。
賭け事、スポーツの勝敗予想はもちろん、監査会社や金融当局が企業、投資会社の粉飾決算をどう発見し、追及していったかなども紹介されていて興味深い。自由に選べるパスワードには好みの配列、クセを見抜く方法が実はあるとされる。それと同様に、粉飾や詐欺行為にも必ず首謀者たちがはまるミスや落とし穴があるそうだ。その法則性は昔も今も同じ。現代は「コンピューター技術の進歩で割り出す速度が何億倍かに速くなっただけ」と著者はいう。
じゃんけんがおもしろい。相手が男なら「パー」を出せば勝てることが多いそうだ。男性ホルモンが影響しているらしい。○×式の試験では○が正解の確率は56%。その次も○が正解の確率は41%だという。松浦俊輔訳。(青土社・2200円)
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様々な具体的題材の中で行動経済学や心理学の知見に触れながら、我々人間の行動が自らが考えるような他からの独立したものではなく、呆れるほどに一定の、しかもその多くが誤謬や思い込に基づく様式に沿ったものであることを示す。特に真新しいトピックが紹介されているわけではないが、自らの知覚のランダムネスに対する脆弱性を改めて思い知ることができる。直訳風の文体にやや読み辛さを感じた。
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ランダムであるとはどういうことか。また、一見ランダムに見えるものに法則性がある場合、それをどう利用すればよいか、という本。
買ってから訳者が松浦俊輔だということに気づいたが、本書の訳は比較的まとも。
我々がランダムなものとして認識しやすいものは実際にはランダムでないことが多い。ランダムな配列をつくろうとしても、だいたい、考え方のくせがでてしまい、定量的に分析されると作為的なものであったことが明白になる(ベンフォードの法則にしたがわないとか、きりの良い数字があまりに出てこなすぎる、とか)
おもしろかったのはベンフォードの法則に関する説明で、これは指数関数的に増加するものについては基本法則として当てはまる。1000ドルを貯金して、それが増えていく場合、二倍になるまでの期間は最初の一桁が1。次に二倍になるまで(同じ期間)で最初の一桁は2,3。次は4,5,6,7、、、と、だんだん頻度が少なくなる。
指数関数的に増えないもの(成人男性の体重分布とか)には法則は当てはまらない。こういう場合は下二桁の数値などを調べて分布に偏りがないか(あるいは偏りすぎているか)を調べる
・ESPの実験でよく使われるゼナーカード。これも35%の人は最初に円を持ってくる。
コイン投げの結果をランダムに思い浮かべるように言われると、表表裏表裏というパターンが一番多い。8割の人は最初にはが表を選ぶ。あとは基本的に交互だが、全て交互だとかえってランダムに見えないので、一箇所連続させる、というのが多くの人の考え方
・一桁の好きな数、を選ばせるとだいたい7。一般的に偶数よりも奇数、端や真ん中でない数、が選ばれやすいため、7が多くなる
・マドフのファンドが問題になるはるか前の1991年、エド・ソープがこのファンドについての意見を求められた。ファンドがP&Gのコールを123口買った、という日に、実際の取引が20口分しかなかったことを知り、このファンドから資金を引き上げることを勧めたという。
・ルーレットで赤が続くと次は黒ではないか、というギャンブラーの誤謬(ものごとは長期的には確率分布に一致するという大数の法則が、ごく少数のサンプルにも当てはまる、という誤解に由来することから少数の法則、ともよばれる)。バスケットのフリースローが連続で成功すると次も成功するのではないかというホットハンド。この2つは本来ランダムなものに対する正反対な見方を代表している。機械的で人間の意思が及ばないものはギャンブラーの誤謬が、人間の意思や権限がかかわる場合はホットハンドの方が信じられやすい。
・オンラインショッピングで提示される値段は人によって異なる。クッキーを消去してからサイトに再アクセルするとぜんぜん違う値段や割引クーポンが表示されることは多い。毎回、クッキーを削除するのも大変なので、ブラウザをクッキーを受け入れるもの、受け入れないもの、二種類使うとよい
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サブタイトルは「投資からテニスまで先を読むため・読まれないための実践ガイド」となっている。著者は、「ビル・ゲイツの面接試験」、「囚人のジレンマ」、「プライスレス 必ず得する行動経済学の法則」などの著者だ。
この本で著者は、「自分の予測力を改善するための心理学の使い方を明らかにする。とくに、他人が予測しにくくしようとしている選択を予測することに焦点を当てる」ことしている。
多くの事例が並んでいる、じゃんけん、マーク式テスト、宝くじ、テニスのサーブ、投資詐欺、偽造した数など多岐にわたっている。
相場の格言に「人の行く裏に道あり花の山」と言うのがある。勝つということは人が選ばない方向を進んでいく必要があると多くの事例から見て取れる。それがよい意味でも悪い意味でも。
「多肢選択式テストを読む」の項目を見ると、SAT(アメリカで大学入学に必要なテスト、日本で言うところのセンター試験のようなもの)では、あまりに他の選択肢と違って浮いているものは除外するとある。何かの試験を受ける時に使ってみようかな。
先を読むのが簡単なら、占いやこういう本に頼らなくて済むはずだが、そうはいかないのが人生だ。少しはいい方向に役立てたいなあ。
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人はランダムに行動することはできず、何らかの偏りやパターンを持つ。そこを読みとったり計算して、偶然の勝負に対しても勝つことができる。
ジャンケンや宝くじやスポーツや株など、いろいろなケースが説明されている。
例えば、ジャンケンでは、グーかパーかチョキをランダムに出し合うだけだから何回もやっていればいずれ勝つか負けるかは半々になると思われるが、人は同じ割合では出していないし、何の次に何をだすかのパターンが出てくる。そこを読みとって、勝つ確率をほんの少し上げることができる。
宝くじで自分でいくつかの数字を決め、当たった人で賞金を分け合うロト方式の場合は、人が選ぶ数字に偏りがあるため、不人気の数を選ぶことで、当たった時の分け前をひとり占めできる。1000年くらい買い続けると、期待値が元手よりプラスになる。
おもしろい項目もあるが、株での例などわかりにくく退屈な章もあった。ここまで多くの例ではなく半分くらいの分量でもよかった。
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人間の認識するランダムは、本当のランダムではなく、本当のランダムはランダムに見えない。これを利用して、人の裏をかくことで勝つ方法等が書かれた本。この話自体は他でも読んだことがあり、目新しさはなかったが、再確認にはなった。
テニスが入っていたので期待したが、サーブの読みだけで、イマイチだった。
スポーツくじ他の記載は、アメリカ特有の話しで参考にならない。
株の運用も、理想は分かるが、われわれ庶民には実現が難しい。
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結局、求めている科学的というところは見当たらなかった。
筆者の意図とこちらの求めているところが違うということなのだろう。
タイトルで間違えて選んでしまったということか
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じゃんけんや宝くじなどのギャンブルから株式などの投資などのあらゆることの「先」は読めるのか。
非常に面白いテーマでした。
個人的には「ベンフォードの法則」は衝撃的な法則でした。
これを知っていると知らないでは世の中の見方が全然違うかも・・・と思いました。
非常に面白かったです。
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150214 中央図書館
数字の並びなどで原理上はランダムとなる系列を、人為的に生成しようとするのは難しく、真の系列か人為的なものかは、簡単に弁別できてしまう。特に人間がランダムを装うことを試みると、同じパターンの連続を少なめに、つまり過度のスイッチングが混入してしまいがちである。人間は本能的に構造やパターンを読み取ろうとするので、裏をかこうと意識するあまりにスイッチングという構造を埋め込んでしまう癖がある。
このことを利用して、ゲームにランダマイズを的確に導入して勝率を上げたり、問題作成者のパターンを読み取ったり、粉飾会計や横領犯罪の検査に応用できる。
ベンフォードは1938年に、各数字から始まる数の割合を表す公式を発表した。それによると比率は、
上一桁の数字が、12
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先を予測するという行為は人に特有であると何かの本で読んだことがある。もし他人より上手く先を読むことができれば、強力な競争優位となるだろう。
本書は、情報理論で有名なクロード・シャノンの作った先読み装置の話から始まる。表か裏か(0か1)を選んで当てるゲームだが、シャノンの機械の勝率は6割近く、人はたかだか16ビットの単純な機械よりも下手な意思決定をしてしまうということだ。
この拙い意思決定の裏には、行動経済学でいわれる様々なバイアスが多分に影響しているが、本書が特に強調するのは、ランダムについての錯覚である。
コインを10回投げて4回続けて表がでたら、どう思うだろう?コインのバランスを疑うとまでは言わないまでも、次は裏が出そうだと思うのではないか。当たり前だが確率はいつでも50パーセントである。
このような錯覚から、人は運とかツキとか、自分の能力を過大評価したり、詐欺師に騙されたりする。
本書は、じゃんけん、粉飾の検出、住宅価格、株式投資など様々な場面で、マシな戦略をとる実践的な方法を指南するという体裁を取っているが、実は人の無力さに気づかせるのが主旨ではないかと、そう読んだ。
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相手がじゃんけんで何を出すかがわかる。サーブをどっちに打ってくるかわかる。選択式問題の正解がわかる。パスワードがわかる。
これで、無敵じゃないか。
とはいえ、100%わかるわけではない。統計的に、この場合はこうなることが多い、ということが説かれている。
そして、「ホットハンド」、日本で言う「流れ」のこと。これが現実世界に影響し、いろいろな相場が左右されている。ホットハンドの逆を行くだけで勝てることも多いという。
僕は金融関係の投資はやらないが、ある程度までは科学的に勝てる見込みが高いのであれば、それはもはや最低限のリテラシーといえるのではないだろうか。
あんまり勝つ気も負ける気もないので、もう一つ真剣に読むことは出来なかったけれど、一つ一つの章は概ね短くさくさくと進んでいく。この繰り返しで、科学勝負脳が出来ていくかもしれない。
これを読んでその気になり、じゃんけんを仕掛けてみたら、負けた。100%なんて、当然ありえない。1回まけたら3回勝負に持ち込め、と。うーん、科学的!?