紙の本
ひとつの光から始まる選択の物語
2015/03/21 23:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ユンコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「灯台もと暗し」とはよく言ったものだと思う。しかし、うっかりその言葉をこの物語に当てはめてしまってから気づくのは、深い哀切に他ならない。
これは、小さな島に灯台守として赴任した一人の男と、その妻の元に、ある日流されてきた赤ん坊の運命を巡る物語だ。
二人の出会い、そして穏やかに育まれる愛情は美しく、広大な空と海に輝く一筋の灯台の光のように読者の胸に明かりを灯す。風を感じ、波を感じ、誰よりも規則正しい時を刻みながらも、その場所は時間の流れを感じさせない。まるで世界から隔絶された小さな世界であり、ひとつの宇宙のようでもある。
でもそんな特殊な世界だからこそ、人間本来の営みが際立つのかもしれない。
この物語にはたくさんの選択がある。赤ん坊を育てるという選択、愛する人の笑顔を守るための選択など、すべてそうせずにはいられなかった選択だが、それらの選択によって別の女性の人生も変わっていく。
中盤からは物語が一気に加速する。しかし読む速度は自然とゆっくりになっていった。早く続きを読み進めたいのに、徐々に明らかになり深くえぐられていく過去を知るにつれ切なくなり、読者としての自分の身の置き所に困ってしまったからだ。通常の物語なら主人公に感情移入し応援するものが多いのだが、困ったことにこれは、複数の主要人物を応援してしまう。人物描写の巧みさから、それぞれの人物像が感覚的に伝わってきて、苦しくて、切なくて、応援してしまうのだ。
ひとつの選択によってもたらされる幸福や絶望、信頼や裏切り。そのたびに選ばれなかった「もしも」が頭をかすめてしまうけれど、彼らの選択を、誰が間違いだと言えるだろうか。皆、必死にその時を生きて、懸命に大切なものを守ろうとしているだけなのに。
この物語はこれからも決して古びないだろう。人間の営みも人生の選択も、そして愛情も、かけがえのない奇跡であり永遠の光なのだから。
ゆっくりとじっくりと読みたい名作だ。読み終えた後は大きく息を吐き、誰かと話したくてたまらなくなる。
紙の本
正義とは…
2015/09/01 23:57
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投稿者:Chocolat - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆる、産みの親か?育ての親か?
という物語だけど、江戸のお裁きの人情物にもあったような…つまり、古風!
西洋版でいくと、ディケンズ風とでも言いましょうか、、、「神の前で正義とは何か?」みたいな問いをされると、やはり東洋的に分かりにくい物を感じます。
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うつくしい物語ということを、理解できていなかった。
ぶっちゃけ、あー映像化しそー、アカデミー賞ねらっちゃいそー、ていう感想だったわけで。貧しい感性、それをカバーできる表現力の欠陥、てなことを突きつけられたという意味で、忘れられない一冊になりますた。
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第一次大戦で心に大きな傷を抱えたトムは復員後、南海の孤島ヤヌス・ロックで孤独な灯台守の職を得る。たった独りで生きていくつもりだったトムだったがイザベルという娘と結婚し幸せな生活を営み始めるがそこにボートが漂着する。ボートには既に亡くなった男と生まれたばかりの赤ん坊が。
前半は明るい日差しの弾ける物語、そして後半は大型船も遭難するかのような大嵐の物語。
そして訪れる最終章。鏡のように凪いだ海に太陽が沈むかのような感動が押し寄せてくる。
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20世紀初頭、オーストラリアの孤島を舞台に描かれた灯台守の夫妻の物語。3ヵ月に1度の定期船があるだけ、本土に戻れるのは3年に1度のみという閉じられた環境で、簡素な生活ながらも、愛し合いいたわりあう、完璧な二人であったのに・・・。
悲劇的な結末が予想される内容で、ドキドキしながら読みました。でも、凡庸とまでいうと言い過ぎでしょうが・・・予想を裏切らない、ある意味「ありがち」な結末で、個人的に残念でした。
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またしてもすごいものを読んでしまった。
人は揺れる、人は迷う、人は間違えたり、憎んだりもする。誰がわるいとかわるくないとか、何が正しいとか正しくないとか…起こったこと全て、受け入れていくしかないんだなあ。母性は全女性にここまで無条件にかつ無尽蔵に備わってるわけじゃないよ、とは思うものの、イザベルとハナのひたむきさは理解出来る。
灯台は照らし続ける。灯台をもってきたことで物語の調性は決まったと言えると
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舞台は、第一次世界大戦が終わったころのオーストラリア。戦争で心を疲弊して帰国したトムは、孤島の灯台守として赴任する。3カ月に一度の休暇を過ごす村で出会ったイザベルと結婚し、二人で灯台の島で静かで幸せな日々を送っていた。ある日、島に流れ着いたボートに生まれて間もない赤ん坊とその父親とみられる男が乗っていた。男はすでに亡くなっていたが、赤ん坊は一人泣いていた。さっそく本土に報告しようとするトムをイザベルが止めた。実は、その直前にイザベルは島で流産をし、子どもを亡くしていたのだ。
ためらうトムを説き伏せ、二人は赤ん坊を生まれた子どもだと偽って育て始める。ルーシーと名付けられた子どもは、島ですくすくと育つ。
しかし、海で亡くなったと思っていた赤ん坊の産みの母は、本土の村で自分の夫と赤ん坊を探し続けていたのである。
前半は、トムとイザベルの出会いから幸せな結婚生活が美しい絵のように描かれ、ルーシーの登場で小さな波が起こるが、それも収まり3人家族として穏やかに過ぎていくかのように思われる。それこそが、後半の悲劇への大きな伏線で、大きなうねりのような変化に翻弄される。
責められるところは本当に山ほどあり、それはトムも十分に承知している。その上で、大きな愛でイザベルを守り、ルーシーの本当の幸せを考え続ける。
最後が安易なハッピーエンドになっていないところが、悲しくはあるけれど、心に残るストーリーとなっている。
映画化が決まっているそうですが、きれいな映画になるのだろうなあ。
いやはや、久しぶりにボロボロ泣いてしまいました。
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子のない母と子を探す母の物語。孤島の灯台守という狭い中で助け合って暮らしてきた家族が崩壊・・・?
夫の深い愛情で立ち直ったのか???
途中ちょっと投げ出したくなって少しおいてから読み終わりました。
最終章は少し涙腺が緩みました。
あくまでも最後まで彼女は母だったのでしょう。
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人に薦めたい一冊。
オーストラリアの自然の描写が美しく、登場人物の心情が細やかに描かれている。それぞれの行いは例え間違っているとしても充分理解できる、ゆえに切ない。町の人々の憎悪に満ちた偏見でさえもだ。
読み進めるにしたがって辛くなるけど、最後は救いがあって心にしみた。よかった。
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前半はオーストラリアの孤島の自然描写と共に、トムとイザベルの恋物語。美しく話が進む。ルーシーを得た後からは、ジワジワ暗い陰がついてまわり、遂にその日が来た後は読んでいても辛かった。最後は救われた終わりかたで良かった。
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我が子への、母であることへの執着。
幸いにも、無事に母になれた私にはわからないし、語れないことだけれど。
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それぞれに苛立ちを感じてそれぞれに憐憫の情がわく。正しい正しくないという価値観もわからなくなって、煩悶した。
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自分がイザベルならどうするか 夫のとった行動を許せるか 自分がハナならどうするか 子供の幸せを一番に考えるべきか それとも、情にに流されず自分が正しいと信ずることを成すべきなのか
オーストラリア人のドイツに対する憎悪が凄まじい それに対して、フランク(オーストリア人)の強さと優しさに感銘を受けた
愛する両親に引き裂かれたルーシーの気持ちが辛すぎる
泣いた、泣いた、泣いた・゜・。
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絆が生み出す幸福と苦しみの物語。
まさにそういう物語。
灯台守の孤独と、絶海の孤島での暮らし。
子供を亡くした妻の絶望と、希望。
子供と夫をなくした女の哀しみと、失った時間。
映画向けの本ですね。
映画もみてみたい。
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灯台の光は船乗りを導いていく。
時に迷っても、時に航路を失っても。
人生という道程が途中、暗闇で閉ざされようとも我々を導く光はいつか現れる。
愛と赦しの物語。