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突然、記録から姿を消した“白い魔女”の謎を追うボブ・リー・スワガーが、“白い魔女”の最期の狙撃地で彼女の銃で狙撃をするという出来過ぎた話ではあるが、謎解きと緊迫した追撃戦、そして感動的な幕切れに超満足
2016/12/07 10:39
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
全く期待を裏切らない面白さでした。68歳位の老・元名スナイパー(ボブ・リー・スワガー)の戦いや如何にと思ったら、何と主役は第二次世界大戦時の独ソ戦における赤軍美女スナイパー“白い魔女”だったとは。突然、記録から姿を消した“白い魔女”の謎を追うボブ・リー・スワガーが、“白い魔女”の最期の狙撃地で彼女の銃で狙撃をするという出来過ぎた話ではあるが、スパイ絡みの謎解きと、緊迫した追撃戦、そして感動的な幕切れ(出来過ぎですが)に超満足でした。
1942年のスターリングラードで、独・ソ連のスナイパーの息詰まる一騎打ちから始まる。ロシアのスナイパーは絶世の美女・愛称ミリ(リュドミラ・ペトロワ、“白い魔女”)。この対決は、ドイツのスナイパーが右肩を撃たれて終わるが、ミリも脚を撃たれるらしい。この短いプロローグからいきなり現在(2014年)に変わり、キャシー・ライリー(ワシントン・ポスト紙モスクワ特派員)からスナイパーに関する事項で相談を受けたボブ・リー・スワガー(名スナイパー)が、狙撃銃モシン-ナガン91から徐々に“白い魔女”=ミリに関心を持って調査を始めることになる。話は、1944年の独ソ戦の中で、ミリの行動を追う話と、ボブ達が英雄であるべき“白い魔女”=ミリが1944年7月を境に記録が完全に消え去ってしまった理由を追う現在との間を交互に展開される。“白い魔女”=ミリが、何やら独・ソ間の途方もない陰謀に巻き込まれ、独・ソ両方から抹殺対象にされたらしいところまで進んだ段階で、突然モサドが登場し(上P-186)、ボブとキャシーが車にはねられそうになり(上P-198)、70年も前の事件が現在の大きな陰謀に関係しているらしいことを示唆させる。更に突然、何の脈絡もなく1944年7月のドイツ特殊部隊によるソ連側戦線内における橋爆破作戦の話が出てくる。ム、これはひょんなことから孤立無援のミリに対する救世主にするための布石かなと勘ぐるが、結末になって正にそのとおりであったことが判る。
下巻でも、過去を調べるボブが70年前にミリが狙撃を行った場所を特定するための推理に並行する形でミリの戦いが活写される。70年前にミリが運命のドイツ軍将校狙撃(1000mの超長距離狙撃)を成功させたその場所で、ボブは遂に姿を現した謎の陰謀組織との死闘を展開することになる。なお、狙撃に成功したミリは結局ドイツ軍の手に落ちるが、予想通りドイル軍特殊部隊に助けられて、共に中立国であるスイスへと亡命して生きながられることになる。ちょっとハッピーエンド過ぎるきらいはあるが、純粋に使命を全うする人間でおまけに美人とあってはこれ位のご褒美があっても良いでしょう。
なお、何故ミリが両方からの抹殺対象になったかと言うと、スターリンの右腕とも言うべきソ連軍高官がナチス軍高官の反ユダヤ思想に傾倒してユダヤ人大虐殺という点で共鳴し、ナチスのスパイとしてナチス軍進出地域におけるユダヤ人名簿を渡していたという事実を独ソ協力して隠蔽しようとしたということである。但し、ミリ=“白い魔女”がどうやってその事実に気付いたかに関しては何も触れられていなかったように思うのだが・・・・・・・・、読み落としたのかな。
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過去の戦争と現在の事件とのかかわりで物語を紡ぎだしているので、そもそも今の調査が何故、このタイミングで今の陰謀に繋がるのかという意味合いで、強引な展開ではあるが、それがないと物語が成立しないので、強引過ぎるとは思いながらも目をつぶって読んでいただきたい。一番、肝要なのは、主人公が記者に女スナイパーに惚れたのかと問われるシーンがあるが、一番、惚れたのは作者だろう。
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弾丸降り注ぐ戦場シーンは迫力満点。だけどそれを上回る緊迫感を味わわせてくれるのがクライマックスのたった一発の弾丸。
ソビエト赤軍とナチスSSに追われる美人スナイパー「白い魔女」の設定といい、とことん上手いね、スティーヴン・ハンター。
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上巻は銃器関係の薀蓄が多くて読み辛い部分がありましたが、下巻からストーリーの流れは良くなります。
しかし、この手の小説では、ある程度のご都合主義があるのはしかたのないところですが、流石に今回はちょっと酷すぎますし(野外に残された70年前の銃器が完璧に使えるとか)、毒ガス製造を企む悪人とその末路のエピソードは物語に本当に必要だったのかさえ疑わしいです。
また、オチにしても、そこまでしてハッピーエンドにする必要ないんじゃないか?と思いました。
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前作『第三の銃弾』でダラスを舞台にJFK暗殺の可能性としての新説を試みたハンターという作家。狩猟を趣味とし銃器に造詣が深い作家ということでオリジナルな道を歩んでいる昨今であるが、そもそもが傑作『真夜中のデッド・リミット』に代表されるような本質的には冒険小説作家である。強い権力に反発し、弱く、庶民の側であり、無名のヒーローに、命がけの活躍物語を与えることを得意とするのがハンターの神髄であると、ぼくは見ている。
ボブ・リー・スワガーが名うての射撃手としてベトナム戦争を闘ったが、今では作者の分身のように60歳後半の老境でありながら、老いに逆らい今でも好んで冒険を求めて、歴史の謎に迫ってゆく。今回は第二次大戦中、独ソ戦において活躍した女性スナイパーの存在について個人的に惹きつけられるものを覚え、彼女の痕跡が消えた土地ウクライナへとスワガーは向かう。
女性スナイパーは別名<白い魔女>と呼ばれる金髪碧眼の美女。彼女の存在については、モスクワ在住のジャーナリスト、キャシー・ライリーがスワガーに持ち込んできた。二人はウクライナで謎の妨害に合いながらも真相を求めて危険な追跡行を展開してゆく。彼らの捜査行と並行して交互に語られるのが過去の白い魔女の時代1944年の夏の物語だ。現在と1944年を交互に行き来しながら語られる物語は、ドイツ側のユダヤ人虐殺に深く関わる上位指導者の暗殺や、大物スパイの存在へと近づいてゆき、スリリングである。
独ソ戦でのスナイパーを描いた映画『スターリングラード』を観ていたので、<白い魔女>の登場シーンであるスターリングラードでの市街戦の様子は鮮やかに眼に浮かぶようだった。そしてヨーロッパがナチに蹂躙され、ソ連がスターリンの粛清に怯えながらも、東部戦線は累々と屍の山を築いている頃の話だ。あまりに情報の少ない国、ウクライナを舞台にした本編は、伝説のスナイパーの人生を辿りつつ、鏡のように時代を超越してシンクロナイズしてゆくスワガーという名スナイパーの現在の冒険とクロスして、一発の銃弾という一点にすべてのエネルギーを集約させてゆく。見事なクライマックスである。
そしてこの架空ではあるが、そんな存在があったとしてもおかしくない1944年の英雄、<白い魔女>は周囲の巨大な陰謀やスパイを巻き込んで、驚くべき結末を見せる。さらに現代にも、イスラエルの情報機関モサドの分析官のもとに、この物語と関連するであろう遠い事件が襲来して、それらが挿話として各所に挟まれているが、これまたハンターの仕掛けである。
やはりこの作家は銃器を専門とした物語を紡ぎながら、基本的には名もない一人一人の人間の知られざる活躍を描くのが何とも巧い。ホロコーストの恐怖と時代への怒りを登場人物たちに投影しながら、作者は平和への勇気と名もなき兵士たちの命がけの行動への祈りを捧げているのだろう。
作者あとがきで明らかになるが、実際にハンターはウクライナに赴き、キャシー・ライリーという実在で同名のガイドに連れられ、あの時代のことを丹念に足で調べたという。68歳という巨匠の熱い心は今なお健在である。
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現代の悪役が弱くて、ヒリヒリする緊張感には欠けるが、70年前と現代のストーリーが交錯する語り口は安心して楽しめる。
しかも途中の伏線から期待できる通り、強引なハッピーエンドまでつけてくれてサービス満点。
年寄りは元気だ(^^)
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最初は「何でスワガーがWW2時代の、しかもロシアのスナイパーを調査せなアカンねん」って思ったのだが、下巻のラストで答えを導き出したところがスティーブンハンターの上手いところだったな。上下巻で一気読みするくらいに面白かった。個人的には作風は違うが、極大射程より面白かったかもしれないな。
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スワガーサーガ、久しぶり!
でもさすがにちょっと質が落ちてるなぁって感じします。
70年前の武器、使えるか?錆びるやろ湿気るやろ。どんだけの保存状態やねん、とか
ウクライナなんとか谷の村人たち、その伏線使ってないやん、とか
映画かドラマを狙ってるっぽい演出だろうなぁ、確かにそれはそれで良いのだけど、WW2当時の話に特化させて、ボブが出てくる現代劇はなしで良かったんじゃないかなぁ。
カメオ的に最後だけちょっとオーストラリアで…とか、そんなんの方がファン心理くすぐられたように思うけどなぁ。
良くも悪くも大味なアクション小説です。
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ロシアの女性スナイパーの足跡を辿る話。その下巻。
スナイパーのミリはナチス高官の暗殺を命じられ、ウクライナに潜入するが、本国高官の裏切りに会い、殲滅されかける。しかしスナイパーとしての執念により不可能に思える暗殺を実行する。
対して、過去の真実に到達しようとするスワガーたちにも真実の解明を阻む輩が立ちふさがる。
そんなバリバリのアクション大作。
最後に全ての糸が繋がり、ハッピーエンドにするのは見事。
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前作「第三の銃弾」が好評だったからか、今回も過去の狙撃事件とのクロスオーバー。JFK暗殺と比べるとスケールとしては見劣りするものの、ストーリーは緊張感に溢れている。またドイツ軍内にも誇り高き武人がいたという設定は目新しいものではないが好感が持てる。とはいうものの、その分現代のストーリーでのボブの活躍が少なく不満は残る。しかも最後の最後に直接的明記はないものの勝手に個人的判断でスナイプしちゃってますけど、立派な犯罪ですよ!?ということで少々評価は低め。
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失礼しましたーっ!ボブ・リー、おじいちゃんになっても面白いです!!やっぱりスナイパーとして深く描かれるところに良さがあるんですね。現在と過去にまたがる陰謀の交錯具合、スナイパーとして「白い魔女」の活動を解き明かしていく様子、最高に面白かったです。2015/10読了。
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前作「第3の銃弾」が上手いことツボにはまったのか、同じ路線で来ましたね。
今度は第2次世界大戦時のソ連のスナイパー、愛称「ミリ」、恐るべき狙撃技術から「白い魔女」と呼ばれた女性が第2の主役。
歴史に埋もれた最後の狙撃が今、スワガーに依って白日の下に晒される。
導入部はいいです。スワガーの事件の関わり方が相変わらず弱いとは思いますが。
「白い魔女」はいったい誰を暗殺したのか?成功したのか?失敗したのか?70年前の狙撃を解き明かすことが、何故現在のスワガーへの妨害に繋がるのか?
この辺が解き明かされていく様は、実にスリリングです。
話が現在のスワガーに、1944年のウクライナに、ドイツに、ソ連に、と目まぐるしく変わるのですが、意外と読み易い。
極端な場合、2~3頁で場面転換してしまうのですが、同じ謎を追う形になっているので話が繋がるんですね。
スワガーの銃撃戦よりもミリの狙撃の方が面白い、と言う逆転現象が起きてしまっていますが。
老スワガーが無理やり事件に巻き込まれるよりは上手に話が展開します。まぁ、面白ければ何でもいいですが。珍しくハッピーエンドですし、後味はいいです。
この調子で次回作もお願いします。
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ハンターもボブと同じ68歳なのかぁ。スワガーサーガもっと読みたいなぁ。白い魔女の”ミッションを成すだけ”という諦観にはハラハラ。でもこれが活きてくる往年の冒険小説のテイストも味わえ大満足です。面白かった!
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さすが、スティーブン。
シンクロする現在過去
を交互に場面転換して、
ひとつのシーンを視点
を変えて輪唱すること
で、
複雑なプロットを無理
なく理解させます。
美貌の狙撃手と彼女を
助ける男たち。
その並み居る魅力的な
登場人物たちの個性。
第二次大戦の東部戦線
における惨たる戦場の
数々。
闇のなかで蠢く現代の
国際テロ。
そして最後に待つ最高
のロマンス。
おもちゃ箱をひっくり
返したような内容を、
全く散らかすことなく
感動的なラストに収斂
させる筆致は、
世界的ベストセラーの
なせる技ですね。
捕虜と敵軍将校として
出会うミリとカール。
そこで交わされたごく
短い会話。
二人が恋に落ちたその
瞬間にグッときました♪