電子書籍
ミステリアスなアナスタシア皇女の秘伝・悲恋物語、御手洗の推理はおまけのよう
2018/12/05 09:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一通の手紙から始まるこの物語はアナスタシア皇女秘伝といったもので、彼女の辿った過酷な人生ととある日本人軍人との純愛物語が描かれています。もちろんアナスタシア皇女の日本にまつわる話はフィクションですが、その他の部分は史実で、彼女(アンナ・アンダーソン)がなぜ裁判で母語であるはずのロシア語を話せず、時計も読めず、計算すらできなかったのかということを医療的観点からアプローチし、「偽皇女」とされた彼女はやはり本物だったのではないかという論を展開します。頭蓋骨が陥没するほどの酷いけがを頭部に受けていれば脳に障害が出ても不思議ではありません。ただ、アンダーソンの死後10年を経た1994年に、イギリスのFSS(Forensic Science Service)が彼女の小腸標本からのミトコンドリアDNA鑑定を行いましたが、これはアレクサンドラ皇后の姉がイギリス女王エリザベス2世の夫君エジンバラ公の母方の祖母にあたることから、エジンバラ公・ロマノフ家の一員であることが確認されている皇女・アンダーソンの三者のミトコンドリアDNAを較べるという科学的な検証でした。その結果、エジンバラ公と遺骨のDNAは確かに一致したが、アンダーソンのDNAはこのどちらとも一致せず、その代わりにフランツィスカ・シャンツコフスカの甥のカール・マウハーとはDNAが一致しました。アンダーソンの正体はポーランド人農家の娘フランツィスカ・シャンツコフスカ(Franziska Schanzkowska、1896年12月16日生 - 1920年3月失踪)である可能性が少なくとも99.7%である、と学術誌『ネイチャージェネティクス(Nature Genetics)』に発表されています。なので、ケガによる高度脳機能障害を考慮に入れるにしてもアンナ・アンダーソンがこの作品で主張されるように本物のアナスタシア皇女であった可能性は極めて低いということになります。まあ、使用された小腸の標本がアンダーソンの者ではないという説もあるようですが。
まあ、そういった無骨な検証を脇に置けば、ミステリアスなアナスタシア皇女の秘伝・悲恋物語として十分にロマンチックで感動的に仕上げられています。御手洗の幽霊軍艦に関する推理はちょっとしたおまけみたいな感じです。
投稿元:
レビューを見る
ロシア最後のプリンセス、アナスタシア。
自分はアナスタシアだと名乗る一人の女性の物語。
日本の芦ノ湖に現れ一夜で消えてしまったロシアの軍艦の写真。
レオナのもとに届いた手紙と、この写真から
御手洗が自称アナスタシアの女性の謎を解き明かしていく。
殺人とかあるわけではなく、歴史ミステリーって感じ
なんだけど、とても面白かった。
というか、こういう女性が実在していたことすら知らなかったので、びっくりした。
投稿元:
レビューを見る
おもしろかった! というか、すごく興味深いお話だった。こういう形での推理モノもあるんだなあ…。もう一つのも買ってみようと思いました。
投稿元:
レビューを見る
湖から一夜で消えた軍艦。秘されたロマノフ朝の謎。
箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして"密室"から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた――。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。
投稿元:
レビューを見る
”ロシア幽霊軍艦事件―名探偵 御手洗潔―”島田荘司著 新潮文庫nex(2015/01発売)
(イラスト:toi8 2001/10発売 原書房、2004/01発売 講談社ノベルス、2004/10発売 角川文庫もあり)
・・・箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして"密室"から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた――。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。(公式サイトより)
・・・実在の事件(アナスタシア生存説)と架空の事件(幽霊軍艦騒動)を虚実織り交ぜて展開。
(本人の解説に実在部分とフィクション部分の説明あり)
探偵御手洗が解き明かすアナスタシアの真実は”実際にそうなのでは”と思わせる説得力がありました。
投稿元:
レビューを見る
これはまた大作だ。
導入部に石岡先生が語るとおり、奇抜なトリックや奇怪な館や凄惨な殺人事件に巻き込まれるわけでなく、なのにこれまでの作品に優るとも劣らない大きな謎と壮大なストーリーが秀逸な異色作。石岡先生曰く、御手洗探偵の学者としての一面を垣間見たというけれど、こちらとしては著者の知性と問題意識、学者性を垣間見たというかんじ。
第一次対戦下、ロシア革命とロマノフ政権、処刑された皇帝一家の生存者と名乗る女性の真偽。史実に残る不可思議から、戦争と政治に翻弄された女性の壮絶な生涯を描き出した見事な作品。後書きもとても有意義。ほんとなんでも書ける方なんだなー。
投稿元:
レビューを見る
かなりファンタジー満載な作品。
ミステリーというより物語。
でも嫌いじゃない。
御手洗シリーズにしては夢物語でした。
単品の話で良いかと。
ちょっとした恋愛小説に近いかもしれません。
投稿元:
レビューを見る
大正時代の日本、箱根芦ノ湖に突如現れ、一夜にして姿を消した巨大軍艦の謎に御手洗潔が挑む。相変わらずスケールが大きくて夢のあるミステリだなあ。ロマノフ王朝最後の皇女、アナスタシアの生存説も、ロマンがある。
自らをアナスタシアだと主張した「アナ」という女性が実在したことは知らなくて、読み終わるまで島田さんの創作かと思っていた。思ったより史実が含まれていて驚いた。
(小説内の)真実は切なくて、救いがなくて辛い。アナスタシアの過去はただでさえ重たいのに、ちょっと描写がくどいかも・・・。ところどころ展開が無理やりな感じもしたけど、歴史ミステリーとしても楽しめた。
投稿元:
レビューを見る
箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして“密室”から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた―。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。
投稿元:
レビューを見る
【あらすじ】
箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして“密室”から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた――。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。
【感想】
投稿元:
レビューを見る
かつて箱根の富士屋ホテルに信じがたい写真が飾られていた。そこには芦ノ湖に浮かぶロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた湖に巨大な軍艦が浮かんでいるのということも謎だか、その軍艦は突如として出現し、一夜にして消滅したという。果たしてそのトリックとは…
御手洗潔シリーズを読んだこともなければ著者のファンでもない自分が、この本を読んだきっかけは、フィラデルフィア実験として知られるアメリカの駆逐艦エルドリッジの瞬間移動実験をネタ元として書かれたと何かで読んだ記憶があったからだ。
この真偽のはっきりしない実験に何か新しい見解でも示してくれるかと期待したが、トリックとしてはフィラデルフィア実験とは全く違うものとなっていて、「なんだそのくだらない方法は!」と、ちょっとキレた。(自分が勝手にフィラデルフィア実験がネタだと思い込んでいただけだけど…)
それでも最後まで読んだのは、後半からは皇女アナスタシアと日本軍人の悲恋の物語としての展開に引き込まれ、虚実を織り交ぜての逃避行がなかなか興味深かったから。
義経ジンギスカン伝説と同じで、アナスタシアが日本に逃げてきたなんてのこともないだろうけれども、小説としては面白かった。
投稿元:
レビューを見る
アナスタシアの真実の謎を解決する話。アナアンダーソンが本人なのかどうか、推理していくのですが、私には退屈だったようで途中何度も眠くなってしまいました。最後まで読んでも起伏があまりないのと、最後のあたりで真実の残酷さにちょっとつらくなりました。
投稿元:
レビューを見る
ロシア最後の皇帝ニコライ2世の四女アナスタシア「生存説」を下敷きにした歴史ミステリ。実在の「アナスタシア」僭称者のアンナ・アンダーソンをめぐる描写は一応史実を元にしているが、ロシア革命・内戦やシベリア出兵の時代考証や、(「生存説」の「証明」に援用する)脳科学・脳障害の理解は、いかにも付け焼刃の知識の継ぎ接ぎで、あまりにも大雑把すぎてつっこみどころが多い。表題の「幽霊軍艦」のトリックは「よくぞそこに目をつけた」と感心する事実がネタ元だが、これも実は(物理的にも歴史的にも)無理がありリアリティを欠く。フィクションとはいえ、歴史修正主義や陰謀論の手口(部分的に正しいピースを恣意的なフレームに当てはめる)で作られた歴史像は非常に危険である。
投稿元:
レビューを見る
整理しながら読むと、分かるストーリーだが、少し難しい本だと思う。でも、どんどん謎が分かっていくたびに少し興奮して、面白かった。
投稿元:
レビューを見る
『アナスタシアは少なくとも2人の男性に愛されていた、そこにロシア皇女としての力と気品を感じるのである。』ロマノフ王朝最後の皇女アナスタシアの数奇な人生を余すところなく描写した。ロシア帝国のボルシェビキは皇帝ニコライ二世の目前で皇女達を凌辱した上で殺害した。この遺恨を胸に生き延びたアナスタシア。彼女が日本軍人と共に箱根の芦ノ湖に巨大な軍艦と共に現れるミステリーの真相は奇跡としか言えない。ボルシェビキに凌辱されてできた子どもの遺恨が時空を超え、憎悪と愛情が噴出する。幽寂とした中に一閃を感じ取れる傑作だった。