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介護は年をとる以上誰もが避けては通れない問題。介護をする側、される側。双方のこころの葛藤がこちらの良心にビンビン響いてきて、辛くて悲しくてやり切れませんでした。
同時に善と悪について深く考えさせられ、大きな社会問題に哲学的な問いを乗せた重みのある小説でした。で、しっかりミステリーなんですよね。感動もするし。そしてラスト一行の意味深さに戦慄させられました。読み終えて作品の完成度の高さにしばし放心しました。これがデビュー作とは素晴らしい作家さんですね。
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第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作
新しい作家の作品も読んでみようか、と軽い気持ちで選んできた。
だが暗いくらい話だった。
犯人探しのミステリだが、背後は介護問題、老人介護で追い詰められた家族におきる殺人事件は、救いがたい深さと暗さを持っている。
直視したくない現実は、常に目や耳には入ってくる。このような情報も軽い気持ちでは聞くに堪えない場面が多い。
それが今では次第に身近になってきている。
事件というだけでも辛いのに、それに携わるヘルパーや経営者、終末期医療の問題。なんともやりきれない。
間近に、いやでも目の前には迫っているが、知らなければいけないのに知りたくない、気づかない振りをしていたい、というのが偽りの無い気持ちだろう。どうしても逃げられないその渦中になって初めて気がつき苦しむことになる。
全てに当てはまることではないと思うことが一日を穏やかにやり過ごすコツかもしれない。
生きることの終わり方の持つ、それぞれの問題はこういう形であって欲しくないと思うような話だった。
核家族が増え、高齢になった親をどうするか、考えることはあってもそれが現実になったとき、時間とともに重さが増す。
高級介護ホームに入れる家族もある。そこでの至れり尽くせりの介護でも、この小説では入居費用は3億円。聞くところによると億単位の入居金とは別に生活費が要る。
そういうところに任せられる家庭がどれだけあるだろうか。
という、行き詰った現場で起きた事件。
もちろん理由はどうあれ犯罪には違いない。
思いがけない展開と、犯人の人生観や境遇、それも突き詰めて言えば、介護政策のありかたにある。安易に出発した甘い政策の始まりが、現実にぶつかって改正された。甘い見通しの上に重なる改悪。
ますますの高齢化で国の負担は増える、それにつれて介護現場への締め付けが厳しくなる。
税を増やし年金から有無を言わせず徴収しても、膨らんだものを縮めるのは、待たざるものが常に貧しいことよりも辛い。
豊かさしか知らない人たちはこういった現実をどのくらい理解できるだろうか。
見たくないでは済まない現実に目を向けさせられた、辛い話だった。
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結構に重い現代の課題を提起してくるミステリー。どうやら人々の喪失をケアすると言う自分なりの意図を持って大きな罪を重ねたきた某を数値データで検証して捉えた検事 大友。意外にも某はスラスラと重ねてきた数々の罪を証拠も含めて自白するのだが、そこには現代が抱える高齢化社会と、介護される側 介護する側の底深いズシリと重たい実態が浮き彫りになっている! この本の骨は序章で全て述べられていることが読み終えて判る。ニクいね 葉真中さん(笑) 2012年 第16回の日本ミステリー文学大賞新人賞 受賞作品です。
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綺麗事では済まされない介護の現状とキリスト教の教義。生まれながらに善なはずの人間が、善であるが故に歪んでいく。悪事を成した自覚はありながら、正しいことをしたという認識は揺るがない。人の尊厳を守るということは、人として生きて死ぬということと同義なのか。生き方、死に方を選べない人を救うには、どうするのが正しいことなのか。人でなくなった人が生き続けることは、不幸でしかないのか。
余談。『斯波』って、逆にすると『ペルシア』。
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〈彼〉のしたことは本当に悪なのか。
介護の大変さ、その裏に潜む闇はなんとなくわかっているつもりだったけど、こんなにも穴があったとは。
時代も変わっているし、これが現実なのかはわからないけど、真剣に向き合っていかないと。
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今日の空はこんなに青いのに、私の心はブルー。『blue』読んでもブルーにならなかった私だが、この本読むと超ブルー。要介護の老人ばかりを狙った43名大量殺人。認知症や介護、未経験の私でも対岸の火事ではないことくらい十二分にわかっている。わかっているからこそ、ここまでブルー、陰鬱な気分になるのだろう。この犯罪・犯人からはリアルを感じ、裁く検事からは『綺麗ごと』を感じてしまった私はおかしいのだろうか?倫理観が問われ、日本の未来を憂う物語。ミステリーとしてはミスリードが過ぎるが、面白かった。
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介護制度に切り込んでいる。
善と悪という二元論ではかれない人間を、二元論で裁かなければならないのが人間社会。
宇宙人はもっと良い方法をもっているのかな。
「彼」は救世主?
介護地獄といま縁遠くても、急に当事者になりえると警鐘する作品。
意表をつく展開もあり、頁を繰る手が止まらない。
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重度介護老人の大量殺人、そこには介護者と被介護者をめぐる闇があった…。「絆」は「絆し」でもある。絆が呪いとなる原因はそこにある。少子高齢社会を迎えている日本、介護はだれにとっても他人事ではない。考えさせられた。読みごたえのある社会派ミステリー!
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絶叫を読んだ衝撃のまま、作者のデビュー作である本書を手に取りました。老人介護の社会現象への問題提起。人を殺めることはあってはならない。けれど今そこにある介護に直面している人にとっては、その人が亡くなってくれることを望んでしまう…。人間の心の闇の葛藤。切実な問題を絡めた秀作のミステリー。
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絶叫を尾野真千子さんが演じている見て、衝撃を受け、葉真中さんの作品を文庫で読みたくなりました。
僕はかつて自分がだれかにしてほしかったことをしたんです。と彼は主張していた。
日本が抱えている介護の問題を根底にした社会派ミステリーだと感じた。真面目すぎると息詰まりを感じて長く働けない…なんか妙に納得してしまう。
主人公の検察官である大友が、事件を解決していくが、どんな流れで犯人を捕まえようとする手順が少しだけ理解できた。憧れだった佐久間に父の有料老人ホームを紹介してくれたのに、転落していく人生と、犯人が明らかになっていく後半とで引き込まれた。
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いったいこの〈彼〉にどう言う。何を言えるだろう。
「安全地帯にいる」と言われながらも、面会の最後に叫ぶ大友の声が胸を打つ。
これで児童文学も書かれているとは。
葉真中顕さん、俄然興味が湧いてきた。
ロスト・ケア、請う人は少なくないんじゃないだろうか。
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これまで読んだことのない作家でここまで面白いと思うことは久しぶりで、だからこそ、これは良い読書体験だったと、読み終わって鮮明に感じているのだと思う。
読み物として面白いことを期待して読んで、実際にすごく面白かったけれど、それ以上に、介護の話はいつかやってくるものだと分かっているのに、自分事で考えられていなかったし、いつかやってくるもの、という考えのままではうまくいかないのだろうというところまで思い至ることができた。
200617
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凄い。この本は凄い。
私は介護の仕事をしているから、年を取りすぎるのは幸せではない という現実を知っている。
そして、仕事で接するのと家族として接するのではまるで違う。
「この世には死が救いになるということは間違いなくある」
あまりに哀しい問題提起に心が震えた。
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こちらもお盆用にブックオフで仕入れてきた一冊。
以前、「絶叫」という作品を読んだ時、この作家さん凄いなぁ~と思ったのを記憶していた為作家名で購入。
戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。
その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―
悔い改めろ!
介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味・・・。
テーマは日本社会における、介護問題。
やむを得ない状況で、自宅介護を強いられ、痴呆等に苦しむ家族。
介護の為に仕事の時間を削り、貧困になるという負のスパイラル。
働けるからという理由で、生活保護も受けられない。
これは単なるミステリではなく、社会システムや、善悪を考えさせられる作品。
兎に角先が気になり、ついつい読書に没頭してしまう。
物語としてもかなり面白かった。久々自分の中では大ヒット!
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初見の作家さん。初めの認知症老人の描写の生々しさに読了の不安を覚えたが、社会派でかつ本格派のミステリとしての魅力に唸らされた。
特に検事2人がケアセンターの顧客データから殺人の可能性をデータ分析により浮かび上がらせるシーンは見事だった。
現状の介護・高齢化問題に対して、作者は1つの考えを押し付けるだけでなく、各人物の信念を通して多種多様の考え方を見せることにより、この問題の難しさを明らかにし、避けて通れないことを強く主張している。
大友に対する批判の声が多くみられるが、確かに大友の正義は極論すぎるとしても、これから現代社会で生きていく我々が犯人側の諦観に共感しているだけで良いのだろうか。環境整備はお役所の仕事だろうが、市井の我々がそのシステムを悪用して利潤だけを求めるのは間違っているし、ビジネスで社会制度を変えていくことはできると考える。