電子書籍
南方熊楠
2021/01/26 00:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々な伝説が伝わる豪快な、南方熊楠の評伝。伝説の真偽に関わらず、その伝説が生まれるほど豪快な人であったと記すなど、南方熊楠に寄り添った評伝。
南方熊楠の人生から、その思想の解説まで充実している。
投稿元:
レビューを見る
まさに「ぶっ飛んだキャラクタ」である.常人とは脳の構造が違っていたようだ.観察力と思考力の両方に並外れたものを感じる.
本書では,多数の文献をもとに少年期にはじまり各時代の「南方熊楠」を示してくれる.
投稿元:
レビューを見る
一般社会の評価枠に収まらない人は、いるところにはいるのだろう。
条件が揃ったからこそ、名前を残されたが、こうはならない可能性もあったのではと思う。
投稿元:
レビューを見る
まさしく<何も足さず、何も減らさず>といえる評伝。
等身大の熊楠がよく描かれているように思われる。
投稿元:
レビューを見る
枠にはまらない人であった。南方曼荼羅についてはまだわからないことが多い。またネイチャー誌が当時どのようなものであったかが窺い知れるのが面白い。
投稿元:
レビューを見る
「南方熊楠 日本人の可能性の極限」唐澤太輔
----------------------------
百科事典を丸ごと暗記、二十以上の言語を解した、キューバ独立戦争参戦といった虚実さまざまな伝説に彩られ、民俗学、生物学などに幅広く業績を残した南方熊楠。「てんぎゃん(天狗さん)」とあだ名された少年時代、大英博物館に通いつめた海外放浪期。神社合祀反対運動にかかわり、在野の粘菌研究者として昭和天皇に進講した晩年まで。「日本人の可能性の極限」を歩んだ生涯をたどり、その思想を解き明かす。
「BOOK」データベースより
----------------------------
会社の部長から「南方熊楠は面白い!」と教えてもらいまして、概要を聞いたら確かにかなり面白そうな人だったので買ってみました。
とりあえず南方熊楠の本を検索し、お手頃価格でわかりやすそうなやつを適当に買ってみたんだけど、作者を確認したら、1978年生まれですって(・Д・)
まさかの同じ学年。。。
こういう本を書く人って、自分よりご年配の方々と勝手に思ってしまっていたので、同年代かーーと思うとなんかこう、ビミョーな気持ちだわ。。。
さてさて、話を戻して「南方熊楠」です。
確かに熊楠、めちゃくちゃ面白いです!
この本の作者は、熊楠のことを「極端人」と表現してます。
また、熊楠と一時期、親交があった柳田国男は、彼のことを「日本人の可能性の極限」と表現していたそうです。
この人をトータルで表そうとすると、だいたいそんな感じになるみたいです。
なんだろ、学術的にも超すごいんだけど、人間的にハジけてて、エピソードがちょいちょい笑えます。
いくつか、振り切ったエピソードを抜粋。
----------------------------
さらには 、夢についても同様のことが言えるのである 。熊楠は 、睡眠中の夢の世界と覚醒時の現実の世界との区別がつかず 、夢見心地のまま 、家族に何か言う (怒鳴る )ことがしばしばあった 。また嫌な夢のせいで 、終日怒りが収まらないこともよくあった 。さらに恐ろしいことに 、熊楠は夢見心地のまま友人を刀で斬りつけようとしたこともあった
----------------------------
↓
なんでしょう_:(´ཀ`」 ∠):
基本、精神は不安定傾向だったっぽいです。狂人にならないよういろんな研究に没頭したけど、没頭しすぎちゃって、今度は、精神と現実の区別が曖昧になっちゃうみたいな。
----------------------------
ところで 、熊楠が 「てんぎゃん 」以外に 、後の和歌山中学校時代に付けられたあだ名がもう一つある 。それは 「反芻 」である 。熊楠には 、食べたものをいつでも自由に吐き出せるという 「奇癖 」 (武器 ? )があった 。
----------------------------
↓
ついたあだ名「反芻」ってwwww
しかもその理由wwww
実際、ムカついた時に反吐を吐くということをちょいちょいやってたみたいで(笑)
----------------------------
和歌山県主催の夏季講習会に参加していた 、神社合祀推進派の県吏に直接会うために 、熊楠は会場へ乱入 、大声を出して 、持参していた菌類標本入りの信玄袋を投げつけるなどの暴行におよんだのである 。このとき熊楠は 、酒を飲み酔っ払っていた 。しかし捕まっても 、ただでは終わらないのが熊楠という人間である 。彼は入牢中 、獄内でステモニチス ・フスカという粘菌の原形体を発見している 。
----------------------------
↓
酒の失敗、数え切れず(笑)
この他にも、
アメリカの大学行ったけど喧嘩して辞めちゃったり(しかも2回も!)、
そのまま戦争中のキューバ行っちゃったり、
イギリス行ったら大英博物館で喧嘩して出禁になったり、
とりあえずもうめちゃくちゃ破天荒で面白いです。
で、振り切った感じが面白いというのももちろんなんですが、熊楠は学者としても超すごい人でして、とりわけ粘菌については世界レベルで認められてるくらいすごい人でした。
粘菌といえば!
ナウシカ(漫画版)ですよ。
映画版ナウシカでは王蟲や巨神兵だけですが、漫画版にはすごい勢いで増殖する粘菌という不気味なヤツもでてきます。
私も漫画を読んだときはかなりの衝撃を受けました。
私に熊楠を教えてくれた部長も言ってましたが、
宮崎駿は南方熊楠の影響受けてあの漫画を描いてるな、、、
と思っちゃいましたわ。
ナウシカの世界観、熊楠の世界観とかぶるところが多々あります。
宮崎駿だけじゃなく、庵野秀明も思想的に南方熊楠の影響受けてるよね?!っていう箇所がチラホラ。
そんななので読んでて興奮しました。
熊楠、思考と視野の幅が変幻自在という感じがして、それがすごいなーと私は思いました。
粘菌の世界という超小さい世界を見ながら世界の根源的な部分を考えたり、
ある出来事があったときに、その出来事の渦中にいても、ものすごいたかーい位置から俯瞰して出来事を捉えられる感覚があってそれが本当にすごい。
クドカンあたりに脚本書いてもらってNHKでドラマ作って欲しいなぁ。
南方熊楠の時代が確かにこれから来そうな気がする。。。
時代はまだ熊楠に追いついていないですわ。。
ワタクシ的名文
----------------------------
世界各国にとって最も重要なことは 、その国々の独自性 (特色 )を伸ばし 、それらを認め合いつつ競合 (あるいは協合 )することなのである 。決して各国の特色 (長所 )を踏みつぶしてはならないのである 。
----------------------------
↓
思うわ〜。めっちゃ思うわ。
個人レベルでも国家レベルでも、価値観押しつけるの、マジで勘弁してほしい。
正義とか正論な体で、考え方押しつけるのとか超タチ悪い。
なんだろ。人も国も、尊敬と感謝と信頼で繋がることはできないもんなのかなぁ。。
----------------------------
老いなり病なり (苦 )によって 、人間が死ぬという事柄は 、つまり 「人心 」が身体 (物体 )という目に見える 「物 」とともになくなるということでもある 。しかし 、その心は集積し (集 ) 、その基たる 「精神 」 (熊楠は 、それを 「神あるいは鬼などと言い換えてもよい 」という )となり 、さらに 「心 」の集積である 「精神 」は 、それらを消して 「霊魂 」へ移行することが可能である (��� ) 。この 「霊魂 」は 、再び 「精神 」となることもあるし 、解脱への 「道 」を通り 、 「大日 」という根源へ復することもあるのだ (道 ) 。
----------------------------
熊楠が考えてた、南方的生命の樹。
いやー、これを読んだときに私はビビビッときましたよ。
あ、エヴァじゃん?!って。
エヴァを見てたから割とすんなり理解できました。
これあれだよ、人類補完計画でみんな生命のスープになって、綾波に帰る的なヤツですわ、多分。(←もうただただオタクの独り言www)
熊楠、オススメ!
投稿元:
レビューを見る
熊楠については何一つ知らなかったし、名前聞いたことあるな~くらいの認識であったにも関わらず、すらすら読めて尚且つ、面白かった。
天才であるし、常軌を逸しているその行動ぶりから、変人・奇人扱いを受けるけれども、その実とてもシャイな性格で、人前で話すのが苦手で、お酒を飲んで柳田国男と会わないと話せないなど、可愛げのある人だなと、くすっとしてしまったほど。
今でいえば発達障害の類に類するのかな?とも思ったけれど、子供が統合失調症を患ったこともあり、なにかしら、特異な才能等があるのは否めないと感じました。
幽霊と幻覚の考察も面白くて、垂直or平行の違いってそれほんと?って思ったり、夢に対しての探求であったり、予知めいた経験をしていたりと、不思議体験系の話も面白かったです。
人間が直観力を失わずに生きると、もしかしたら熊楠のようなまま生きていたのかもしれないし、熊楠が正常で我々が異常なのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
読みやすくはあったが、結局熊楠の何が評価されているのかは、よくわからなかったというのが正直な感想。熊楠が極端な人物であることに焦点を当てていることから、この本は2冊目以降として読むものなのかもしれない。
金物商をしていた熊楠の父親は、西南戦争で巨利を獲得し、金貸し業を経て、酒造業を起こし成功した。熊楠は学問で世を過ごすべしと考えた父は、1887年に私費でサンフランシスコの商業学校パシフィック・ビジネス・カレッジに留学させた。半年で退学後、ミシガン州立農学校(現ミシガン州立大学)に入学したが、1年で退学する。その理由として、熊楠はアメリカの学問が日本より遅れていることを知ったと書いている。デトロイトの南西にあるアナーバーに移住し、大学には入学せず、植物採集や科学雑誌の購読に精を出した。この間、植物の目録を編纂したり、アルプスやアドリア海沿岸の動植物調査をしたスイスの博物学者コンラート・ゲスナーの伝記を読んで共感し、「日本のゲスネルとならん」と記している。1891年には4ヶ月間キューバに滞在して、地衣類の新種を発見している。
1892年にアメリカからロンドンに移ると、フィールドワークから転じて、大英博物館の円形閲覧室を中心に書籍の筆者と研究に励んだ。旅行記、民俗誌、説話、自然科学、セクソロジーなどを対象に、1900年までに抜書きしたノートは52冊に及んだ。この間、2度の暴力事件を起こして博物館から追放され、その後は南ケンジントン博物館や自然史博物館の図書館で研究を続けた。
1899年から始まったイギリスと南アフリカにある2つの共和国との間でボーア戦争が始まり、ケンブリッジ大学で日本学講座を持つ話が立ち消えになったことに失望した熊楠は、1900年に帰国した。弟の常楠宅などに数カ月滞在した後、常楠が経営していた南方酒蔵の支店を応援する名目で那智勝浦に移り、3年間大阪屋という旅館にとどまって植物採集などを行った。この間、人に会うことも話すこともなく、精神変態を起こすようになったため、1904年に田辺町に移り住んだ。1906年には結婚した。
1906年、第1次西園寺内閣が神社合祀政策を励行し、熊楠が粘菌の新種を発見した糸田猿神祠も合祀と鎮守の森の伐採が決定される。熊楠は反対運動を起こし、諸草木相互の関係(エコロジー)や、神林伐採により鳥獣が絶滅して害虫が増えることなども説いている。2004年に世界文化遺産に認定された「紀伊山地の霊場と参詣道」の田辺から本宮へ向かう中辺路の継桜王子社の境内にある「野中の一方杉」と呼ばれる巨杉群も30本以上が伐られたが、熊楠などの働きかけによって9本を残すことができた。
1922年には、「南方植物研究所」設立のために東京で募金活動を行ったが、発起人に名を連ねていた常楠と対立したために実現しなかった。1925年、息子の熊弥が精神病を発症したため、生活費を稼ぐために翌年、「南方閑話」「南方随筆」「続南方随筆」の単行本を立て続けに出版している。
投稿元:
レビューを見る
昔から気にはなっていたけれど、なかなか読めていなかった
南方熊楠さんを読む入門として手に取る。
百科事典などを自分の中に刷り込み、
自然観察/交わりや本の渉猟でその知を複合的に組立て
粘菌への興味へと繋がる。
驚くべき知の力を発揮する人には、この
博学丸のみとも言えるエピソードの共通性も気になる。
空海の虚空蔵求聞持法も記憶術の一種かと思うが、
熊楠はとにかく百科事典の挿し絵まで書き写し、刻み込んだ。
グーグルで気になることを
さっと検索できるこのご時世でも
頭の中に知の回路/記憶の回路を作っておかないと
思考が深まることはきっとないのだろう。