投稿元:
レビューを見る
時代の空気を感じる。何せ昭和30年代となると、自分は生まれる前のことであって、作中に出てくる実在の人物や世俗も与り知らないところである。
けれど、いつであれ人情の悲喜交々には変わりないのだなぁ、と、読み進めていくうちに登場人物達に親近感が湧いてきた。
それだけに、話のたたみ方には呆気なさと物足りなさを感じてしまったのだけど。
旅客列車の行程はあくまで移動であり過程であって、終着駅も最終目的地ではない。そう考えれば、変化を描いて結果を描かない形も当然なのかも知れない。
投稿元:
レビューを見る
まだ新幹線が登場する少し前の、品川ー大阪間が七時間半かかった頃の、品川から大阪のある一本の片道旅程で起こるドタバタストーリーがこんなに面白いとは!
片道一本だけで読ませるとはさすが。50年ほど前の文章のはずなのに意外と読めるものですね。
考え方によっては、当時の花型?特急列車のお仕事小説とも言えるかもしれない。
当時の男女はある意味一発勝負だったんだなーと改めて思うのであった。
投稿元:
レビューを見る
品川を出て大阪に到着するまでの『七時間半』。この小説の舞台、特急ちどりで働く人たちと乗客たちがその『七時間半』に繰り広げる物語。1960年の1月〜9月まで週刊新潮に掲載されたという獅子文六の大衆小説。ラブありサスペンスありのコメディーです。舞台を現代に移したらタイトルは『三時間半』とかで乗り物は特急から新幹線に代わるのかな〜。
投稿元:
レビューを見る
獅子文六は面白い。とても50年以上前に書かれたと思えない。プロットもよいが、特に人物造形が素晴らしいと思う。ステロタイプにも感じられるけれど、それは50年を経た今読むからだろう。若い男女のみずみずしさが秀逸だと思う。
投稿元:
レビューを見る
サヨ子と喜いやん、有女子の恋の行方から、列車内での不穏な噂まで盛りだくさんに凝縮されていて、読み終わるとあっという間という感じ。(まに列車みたい!)
列車内の人々をとりまく出来事が次から次へと展開される。長い時間が過ぎているように思ってしまうけど、全て7時間半の乗車時間内に起こっているなんて。
駅弁片手に、鈍行列車でふらっと旅してみたくなりました(笑)
投稿元:
レビューを見る
えっ、これで終わりなの!?と、思わず乱丁を疑ってページ番号を確認してしまった。それまでの旅が楽しかったから余計に。
物語って素晴らしいねえ。
投稿元:
レビューを見る
2017.8.20読了。純粋に面白かった。タイトル通り7時間半の電車という密室の中でそれぞれの陰謀が渦巻いている!あなおそろしや!と思っていたらサブタイトルに『局地的紛争』と出てきて思わず吹いた!これは確かに紛争だ!特に意図してる訳ではないのだが、女性著者の作品を読むことが多いからか、ああ男性が書いた文章だなぁとしみじみ思った。有女子さんは凄い人だなー!特に恭雄に秘密のメモを忍ばせて返事をゴミカンへと指摘していたところなんか感心して舌を巻いた。色事の駆け引き遊べる人凄い…私には絶対できないわー。列車に即したストーリーのスピード感も人間模様もとても面白かったのだが、1つだけ残念なのはラストだ。列車が到着してあっさり終わるのは悪くないが、それぞれの結末をエピローグとして少しでいいから入れておいてほしかった。喜一とサヨ子はどうなるかなんとなく想像ができるからまだいいものの有女子はどうなったのか?想像の余地と言ってしまえばいいのかもしれないがムズムズする終わり方だった。解説にある文言で「今となっては決して書かれないであろうタイプの小説となっていたのです」はなんだかはっとした。昔を舞台にした物語はこれからも書かれるかもしれないが、昭和30年代をその年代を現代として生きてる人に向けて書かれる小説は今後新たに出てくることはないのだ。そういえば昭和が舞台の物語は初めて読んだのかも?表紙は昭和らしいテイストのデフォルメが効いた登場人物達が上下左右もバラバラに描かれており浮遊感がある、さらに背景に薄っすら黄色の水面の様な模様があることでまるで沈没した船から投げ出された人のようでこれから無くなるちどりと翻弄されていく人物達を表しているようだ。フォントも昭和らしい丸が印象的なフォントを使っており全体的に昭和らしさと物語のわちゃわちゃ感がよく出ているいい表紙だと思う。
投稿元:
レビューを見る
ホテルのシェフを夢見る食堂車助手の青年の細やかな心の動き(特に、ホテルの皿洗いから始めるのは無理と気づくあたり) 、通称BB、有女子のギャグにしか見えないキャラ、絵にかいたような個性キャラの指輪のマダムが最高。ちどりが廃車になるとわかり、死ぬとわかった病人が不摂生するような暴れぶり、「薄毛の男は案外胸毛派よ、なにも知らないのね」とかどこまで礼儀正しいのか下品なのかわからない。最後、どうなるのか楽しみに読み進めたが、スリが捕まる以外は何も解決していないのだが?!
投稿元:
レビューを見る
映画になりそうと思ったら、ずいぶん昔にもう映画になってるんですね。
自分が人にどう思われるかということを気にする人がどこにも出てこない。
みんな自分のしていることにちゃんと責任を持ってそれに対してクヨクヨしたり、どうせ自分なんかって言って最初から自分を守ったりしない。
それはこの時代だからなのか、獅子文六だからなのか。
まっすぐで清々しくて、心のひだに隠れた気持ちを書くときだって、獅子文六の手にかかると、ああ、ことはこんなにシンプルなんだなぁと思えてくる。
色々思ったり考えたり、もっと自分に責任と自信を持って自由にやっていい。
そう言われてるみたいだなぁと思った。
投稿元:
レビューを見る
いやぁ~面白かった!
ぶらぶら本屋を行ったり来たり彷徨うこと3時間(笑)
書店員さんの熱烈なオススメで手にしたのだけれど、
コレは読んで良かったなぁ~。
1960年に書かれたとは思えない、
(昭和35年といえば、東京オリンピックが開催される4年前で、JRがまだ国鉄で、東海道新幹線もなく、ビートルズもストーンズもまだデビューする前ですぜ!)
歯切れのいい、竹を割ったような文章と、
(古さからくる読みにくさは僕は感じませんでした)
ジェットコースターのように
ハラハラドキドキを撒き散らしながら転がるストーリーとスピード感。
乗務員や乗客たちの恋の鞘当てをコミカルに描いたガーリーなポップ感。
昭和のホームコメディドラマを彷彿とさせる安心感。
しかも獅子文六は
当時70歳に近い年齢でこの作品を書いたっていうんだから、驚きです!(笑)
ちくま文庫の帯には、
『今まで文庫にならなかったのが奇跡、こんなに面白い小説がまだあるんだ!』
っとありますが、
この売り文句がまんざら大袈裟じゃないくらい、
ページをめくる手が止められなかったし、
近年再評価著しい伝説の女流作家、尾崎翠が
この作品の著者である獅子文六を好んで愛読していたことを知り、
余計にこの作品にのめり込んだのでした(笑)
舞台は品川~大阪間を7時間半で結ぶ豪華特急『ちどり』。
働き者のウェイトレスとコックの恋、
それをなんとか阻止しようと企む美人乗務員、
そしてその美人乗務員を今日こそ射止めようと列車に乗り込んだ
大阪のコテコテの商売人社長と大学院生とその母親。
さらには総理大臣を乗せたこの列車に
あろうことか爆弾が仕掛けられているという噂が駆け巡り、
車内はパニックに…。
登場人物たちの恋のゆくえはどうなるのか?
走る列車内での爆弾事件の結末は?
たくさんの乗務員と乗客たちの人生模様を同時進行で描いた
ロードムービー風エンターテイメント群像ラブコメです(笑)
(なんのこっちゃ)
登場人物は、
往年の女優、田中絹代に似た、
給仕係リーダーの23歳、藤倉サヨ子。
仕事熱心で誠実、一本気で喧嘩も強いが
唯一ドモリの欠点がある、
食堂車コック助手の矢板喜一。
華族出身でフランスの女優ブリジッド・バルドーに似た
美人乗務員で『ミス・ちどり』の22歳、
今出川有女子(いまでがわ・うめこ)。
浪速の商人でハゲ頭の
『ブリンナーさん』こと、岸和田社長。
東大の大学院に籍を置く27歳の気弱な学生、甲賀恭雄と
藤倉サヨ子の働きっぷりに惚れこみ、
恭雄との縁談を画策する恭雄の母、甲賀げん。
そして岸和田社長に近づく、謎の美女と、
食堂車に陣取り、不穏なひとりごとを漏らす謎の酔っぱらい男。
(他にメインキャラではないけど、矢板喜一の上司で兄貴分のチーフ・コック・渡瀬さんの男気に僕はシビれたし、いちばんのお気にいりキャラでした)
この一癖も二癖もあるメインメンバーが、
入り乱れ、画策し合いながら
果たして列車が大阪に着くまでの7時間半の間に
それぞれの恋は成就するのか?というのがひとつの見どころです。
(この設定だけでもワクワクするでしょ笑)
そして、もう1つの見どころ(読みどころか笑)は、
列車という特殊な環境で働く人たちの裏側が覗ける点。
ウェイトレスや売子さんや
GI帽にスチュワーデス風のセクシーな衣装に身を包んだ『ちどり・ガール』と呼ばれる美人乗務員や
食堂車に勤務するコックさんや車掌まで、
さまざまな仕事をこなすスペシャリストたちの仕事っぷりや苦労、
職員にしか分からない裏側がリアルに描かれているので、
NHKの潜入ドキュメント番組を観てる感覚で楽しめます。
そしてなんと言っても、
物語の舞台を、
走る列車内に限定し、
7時間半の間に爆弾事件を解決し、
恋の結論を出さなきゃいけないという設定が
コミカルな物語に程よい緊迫感を生み、
手に汗握らざるを得ない、
実にいい効果をもたらしています。
列車や飛行機という乗り物は、
何があっても車と違って好きなところで降りるわけにはいかないし、
スピードを出して走るので、
速い乗り物に乗るときの『潜在的不安』っていうのが
必ずあるんですよね。
終盤、列車内に爆弾が仕掛けられているという噂が駆け巡り、
自分がもしや死ぬかもしれないという危機感から、
登場人物たちの心に
さまざまな変化が訪れるのも面白いし、よく練られています。
死を覚悟した若きウェイトレスたちが、
列車に電話が装備されてないことを呪う場面は
さすがに時代を感じさせて、
今がいかに便利かをあらためて、考えさせられました。
(けれど、携帯電話やテレビやネットがないからこそ、楽しい時代でもあったんですよね。旅を楽しむ乗客たちの会話にもそれが窺えます)
便利は想像力も、
創造力さえも奪っていくのかな~なんて
しみじみ考えたりなんかして。
何もない時代に、
これだけ面白い小説が存在してたことに驚きを禁じ得ないし。
恩田陸の群像コメディの傑作『ドミノ』や、
(実は恩田さん、かなり影響受けてるかも笑)
キアヌ・リーブスを一躍スターに押し上げた映画『スピード』が好きな人、
旅行や鉄道好きの人、
ハラハラドキドキに飢えてる人(笑)、
にやりと笑えて面白い小説をお探しのあなたに
オススメします。
投稿元:
レビューを見る
えっ、何も回収しないまま終わりとか…
ただひたすら回りくどく
昔の匂いを感じる事くらいしか
面白い点なく。
時速70キロの特急って車より遅いし、
今なら豪華列車にならなきゃ
この舞台はないけど
母親が子供の時代だからなぁ!
お話としてはとてもつまらなかった。
投稿元:
レビューを見る
グランドホテル型のドタバタ劇。
これを執筆したのが70歳間近という年齢だったとは驚き。
当時の世相を知れて面白いし、人物描写もお茶目でキュート。
ただ、ここまでサヨ子と喜ぃやんを追いかけてきた読者のために、もう少し結末に二人の行く末を描写してほしかったかな。
投稿元:
レビューを見る
実に面白かった!
1960年の昭和文学であるが、登場人物のユニークさ、キャラの濃さ、彼らに起こるどたばた騒ぎと恋愛悲喜劇、登場人物の思い、悩みは現代においても輝きを失うものではない。緻密な描写で、トコトコ走る特急列車の車内、仕事、人々の活動の様子がありありと伝わってくる、実に読んでいて楽しい小説でした。
投稿元:
レビューを見る
これは好きだー。たしかこれも山内マリコの本で紹介されていて、初の獅子文六チャレンジだったと思う。この本を皮切りにどハマり…笑
女の子たちの葛藤、一度決心したつもりで何度でも迷う様子など、きめ細やかに描かれている…
投稿元:
レビューを見る
特急”ちどり”
東京 大阪間七時間半の間に起こる物語。
鮮やかにその時代を感じられ、
次々と通過する駅の間に物語が進行し、
次々と展開してゆく。
話が続いていると思ってページを捲ると
そこで話がお終いだった程引き込まれる作品。