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教科書に載らない歴史は面白い(耳鼻削ぎのシンボリズム)
2015/06/21 09:57
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「耳鼻削ぎ」というテーマで新書が一冊仕上がるとは驚きです。とにかく日本で、中世から江戸時代まで、普通に「耳鼻削ぎの刑」が行われていたこと自体驚きました。
いきなり、第1章の冒頭で、「貧窮問答歌」は盗作、「慶安の触書」は偽書と衝撃の真実(受験勉強は一体何だったのでしょうか)。第2章では、「耳なし芳一」や芥川の「鼻」、そして「徒然草」(第53段)のストーリーに潜む耳鼻削ぎの風習を検証しています。第3章では、戦国時代における耳鼻削ぎの社会的意義の変容、第4章では、いつ耳鼻削ぎが行われなくなったのか(いつ日本は文明国になったのか)、そして第5章で各地に残る耳塚・鼻塚伝説の意外な真相に迫っていきます。
数百年にわたる耳鼻削ぎの歴史を歴史書や文学作品を通して緻密に分析、そして全国各地の塚の跡を訪ね丹念に検証し、耳塚・鼻塚の真実に迫っていくという、教科書に載らない「裏」の日本史を十分に楽しめます。表題のイメージのみで敬遠せずに、日本史ファンの方は是非手に取ってみてください。その意外な真実に必ず満足できると思います。
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耳鼻削ぎの日本史
2016/06/06 10:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:korota - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても興味深い内容でした。今まで歴史の本は読んできましたが、この様な内容をとりあげているものはなかったので、資料としても良いかと思われます。ただ読んでいると、鼻耳が痛く感じます。
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好感の持てる論説スタイル
2015/10/04 09:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
南方熊楠と柳田国男の論争を軸に「耳鼻削ぎ」の実態に迫る。テーマが明確なので非常に読みやすかった。氏の得意とする神盟裁判的な考察をあえて避けているのも好感が持てる。壮大なテーマを設定しているわりに途中で論旨が不明瞭になってしまう歴史著述家が多いので、こうした若手研究者のクレバーな語り口は評価すべきだと思う。やや考察に浅いところもあるので4点ということで。
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中国では前漢の時代には肉刑が廃止されていたが、日本ではその後1500年近く行われていた耳鼻削ぎは何のために行われていたのか、時代とともに変化した耳鼻削ぎが書かれている。
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<目次>
はじめに 耳塚・鼻塚の伝説を訪ねて
第1章 「ミミヲコイリ、ハナソソギ」は残酷か?
第2章 「耳なし芳一」は、なぜ、耳を失ったのか?
第3章 戦場の耳鼻削ぎの真実
第4章 「未開」の国から、「文明」の国へ
第5章 耳塚・鼻塚の謎
終章 世界史のなかの耳鼻削ぎ
<内容>
前半は間違いなく面白かった。柳田国男、南方熊楠の論争から教科書の「阿氐河荘民訴状」や山上憶良の貧窮問答歌などの話、「耳なし芳一」の耳もそこに関連するなど。中世までは男は斬首のところが女性は耳鼻削ぎになる、という話には納得した。戦国期以降はわかる感じ(でも、削ぎ方が鼻全部ではなく、頭骨の部分を避け、口髭の部分を含んで削ぐ、というのは目から鱗…)。江戸期の話で、会津藩が保科正之の決定故、その残酷さを残し、岡山藩が池田光政の決定で早くにこれをやめた、というのは面白かった。
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新書の一番大事な事はタイトルであろう。その次は?と聞かれたら間違いなく序文であろう。数ある新書の中でタイトルに惹かれ、1ページ目からめくっていくときにワクワクするか。それだけで購入は決まる。
そういう意味であれば本書は非常に優秀である、全く専攻の違う素人を食いつかせるさわりはよく書けている。
しかしその期待に全く答えられていない。冗長な文章は明らかにページ数を稼いでおり、内容は著者の専門分野のみに留まっている。序文の内容であれば、もう二三人の共著者を加える必要がある。専門分野に囚われてしまい新書の立ち位置が分かっていないと言わざるを得ない。
しかしながら著者の誠実な論理展開には好感を持て、この分野への興味が沸いた事から一定の効果はあったと言える。
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古式ゆかしくもグロテスクな日本の「伝統」である耳鼻削ぎの変遷。死刑の減免という意味合いから、首実検の代用、見せしめになり、17世紀末を境に無くなるまで。独特なテーマは新鮮で読みごたえがある。
現代に残る耳塚には実際に戦国時代まで由来を遡れるものは無い。形状などから名づけられたものに後世の人々が慰霊・治病の物語を仮託していく。ストーンヘンジのごとくか。
一方、中国では紀元前の前漢・文帝の時代に耳鼻削ぎは廃止しているという。あちらはあちらでもっとエグイ刑罰があるが。
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現代の目線で過去を見ると本質を見失う。理不尽な死と常に隣り合わせであった中世、耳鼻削ぎは「命だけは助けてやる」宥免措置だった。しかし助けられるのは本当に命だけ、最早人間としては扱われない。それでも人々は人としての死よりも獣としての生を選んだ。
論理と立場が明快でたいへん理解しやすかった。本書の中ではとりわけ、耳や鼻を欠く姿がハンセン病患者と重ねられた、という指摘が衝撃。罪人と宿痾者(と見られていた被差別民)の織り成す差別再生産機関……。地獄だ。『徒然草』で有名な、戯れで鼎を被って耳鼻を失う僧の話も、耳鼻削ぎの意味がわかった今ブラックユーモアで済ますには余りにむごい。五章で示された事実根拠のない耳塚たちにも思わず手を合わせてしまいそうだ。
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恐ろしい題名だが、実際に頻繁にあったと知るとゾッとする。多くの文献を渉猟し、耳削ぎ鼻削ぎの行われた背景というか状況を時代ごとに紹介し、この行為の持つ意味が変化していることを知った。理由が何にしろ、このような残虐な行為が長くあったことは、それぐらい殺伐としていたことだし、徳川中期には無くなったようなので、やはり平和というか文明の発達は偉大である。
興味深いのは、中国には去勢の習慣があったのに耳鼻削ぎは紀元前に無くなっていて、周囲の国々にはあったというところである。
耳鼻削ぎが、暴力が幅を効かせる世界ではどこにでもあったつまり誰にでも思いつく普遍的な肉刑行為であるならば、今後もどこかで発生する可能性があるわけで、時代が逆行しないことを願うだけである。
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日本社会は古代において中華文明の強い影響のもと脱耳鼻削ぎの姿勢を貫いていたが、独自の政治・文明路線を歩むや、中華文明の周辺地域として、耳鼻削ぎ刑を採用した。中世においては、死罪より一つ低い刑罰として、主に女性や僧侶に執行されていた。中世から近世に移り、秀吉や江戸初期の政治がまだ盤石でなかった時代には、耳鼻削ぎ刑は見せしめの意味が大きくなる。この刑がほとんど執行されなくなったというか、禁じられるようになったのは、徳川綱吉の時からである。生類憐みの令は、無益な折衝や流血を厳しく戒めるものであったのだ。殺伐とした戦国の遺風を断ち切り、平和と安穏の時代を開いたのである。秀吉の朝鮮半島での耳鼻削ぎは、日本のことを他国に持ち込んだということで筆者は批判している。また、全国に残る耳塚,鼻塚は、歴史名的な根拠には乏しいそうである。古墳がそう言われたり、耳がよくなるなどという民間信仰から来ているようだという。
しかし、鼻削ぎってなんかグロイよなあ。実際には、鼻梁は削がず、小鼻と鼻の頭を削ぐだけのようだが、でもねえ。
それにしても、清水克行さんは面白いことを研究する!
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耳鼻削ぎとい言えば、まず思い出すのは『阿氐河荘百姓言上状』(あでがわのしょうひゃくしょうもうしじょう)、皆さんはやはり『耳なし芳一』でしょうか?
その『阿氐河荘百姓言上状』の有名な一文”ミミヲキリ、ハナヲソギ・・・・”、そう段々思い出してきましたか?え?まだ思い出せない?おい、ぼーと生きてんじゃ(略
確か中学当時、結構えぐい百姓さんのその訴え文を教科書で知り、昭和生まれで良かったと適当に思っていたような記憶が適当に蘇ってきました。
Amazonさんからお勧め本としてこれが出てきた時に迷わずクリックしましたが、私は何なんでしょうか、猟奇的な彼氏みたいもんでしょうか、エログロ系が好きな事がAmazonさんにはバレてしまったようですね。
で、本題。この耳鼻削ぎ刑は中世では女性に対する刑罰でして、男性ならぶっ殺される所を当時のジェンダーにより女性は命までは取りませんよという女性に優しい『宥免刑』だったようですね。ん-、や、優しいですね・・・
鼻については根元からがっつり削ぎ落すのではなく、軽く先っちょを削ぐらしく、それなりの技術、ノウハウがあったようです^^;アイヌの方の鼻削ぎ後の写真が添付されておりましたが、どうみてもナオコ・研でした。本当にありがとうございました。
実は、女性のみの刑罰ではなくお坊さんに対しても耳鼻削ぎだったんですねー。これもまた宗教観からか、悪いお坊さんであっても殺してはいけないという不文律があったんでしょうね。それが耳なし芳一に繋がるのです。詳しくは読んで下さい。
戦場では打ち取った首の数が評価されますが、さすがに首だと量が嵩張るので、耳鼻を削いでお持ち帰りされてるようで、この場合の鼻の削ぎ方は唇からごっそり削るみたいです。殺しにいってますからねー。『小牧長久手合戦図屏風』にはがっつり鼻を削がれた戦死者が描かれております。一度ご覧ください。どうです、ワクワクしましたか?今夜は素敵な夢でも見て下さい。
とは言え、グロ差を全く感じれらないライトな内容です。
当時の体の一部を切り取るというのは、今ではヤクザ屋さんぐらいですが、よくある行為だったようです。読んで納得しつつ、当時の我慢強さに感服です。
深爪にビビる私は現場から以上です。
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興味深かった。
耳鼻削ぎはただの残酷な刑罰だと思ってたけど、どうやら「優しさ」のあるものらしい。後には見せしめの意味を持ったが。
日本史選択だったから知ってる資料ばかりで楽しめた