紙の本
ピアノ調律師のお話。センチメンタル過ぎるかな。
2017/12/27 18:09
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
追いかける対象の宮下奈都さん。
要所で語られるきらきらセンテンスが好きなのだが、本作では
ちょっとセンチメンタルに振りすぎた感じがした。
ファンはいいとして、これから読もうという方は別の作品から
入ることをお勧めする。
外村は山間の育ちで、高校はひとり暮らしをしながら通っている。
普段から頼みごとをされやすいと自覚している。
断らなさそうだし、暇そうだし。そんなところか。
高校を卒業したらなんとか就職口を見つけてなどと、
あやふやな毎日だ。
その日も、来客を体育館に案内してくれと頼まれた。
江藤楽器の板鳥と名乗ったその人は、茶色のジャケットと
大きな鞄を提げていた。体育館のピアノをというので連れていくと、
さっそく作業に取りかかる。
外村はすぐに帰るつもりだったのに、帰りぎわに背中で響いた
ピアノの音が妙に気になる。弾いているのではなく、いくつかの音が
点検しているみたいに鳴らされている。
それなのに楽器の音というより、何かもっと具体的な形のあるものが
立てる音のような、懐かしい何かのようなとてもいいもの、
そんな感覚が去来する。
外村は立ち止まり、黙ってピアノのそばに立った。作業が始まる。
ピアノは羊毛で作ったフェルト製のハンマーで、鋼の弦を叩いて
音を出す。
トーン、トーン。
外村はピアノを響かせる木の筐体に、森の深みを感じる。
調律が進むにつれ、音の景色がはっきりしてくる。
このときの感覚が、外村を調律師へと駆り立てるのである。
外村は、こころに映る深い森の音を求め、美しい音色と和音を、
一弦ずつのチューニングへと結びつけていく。
家庭のバランスのいい調律と、コンサートの観客・弾き手・会場に
あわせた繊細な調律。どちらも理由があり、絶対的な調律は
ないことが分かる。
結局、調律がすべてではないこと、いろいろと折り合いを
つけていくさまも蘊蓄が深い。
調律された一音一音に、喜びも悲しみも込めようとしているが、
それはさすがに背負わせすぎかなと思う。
調律にかける熱い思いは伝わった。
でもセンチメンタル過ぎる部分もあり、調律でそこまでできるのかと、
少々違和感も感じてしまった。
おすすめ程度は、時間があればという感じである。
紙の本
静かに燃える思いに、熱くなる。
2017/11/21 11:23
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投稿者:ぼぶ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアノで食べていくんじゃなくて、「ピアノを食べて生きていく」という言葉にはっとさせられた。自分で何かを選んで生きていくってこういうことか、と腑に落ちた感じ。
物語自体は静かだったけれど、いろんな人の燃えるような思いが感じられる本だった。
紙の本
ぼちぼちかな
2017/02/10 20:53
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投稿者:てくちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
調律師だけではなく他の職業の方も同様にお客様のニーズに応えられる様に努力」しています。でも、この作品では、仕事に対して慣性が感じられる作品でした。
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投稿者:ワガヤ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひたすら静かな物語に感じた。小説の世界に入り込んで、その中にしずかに浸り、自分自身も平穏な気持ちになれる。
紙の本
好きな雰囲気ではありますが・・・
2016/05/25 22:14
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投稿者:RIN07 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアノの調律という音楽関連のテーマや、登場人物と文体が醸し出す透明感というか、淡々とした雰囲気はとても好みなのですが、話の盛り上がりとしてもうひとひねりなにかあれば、という読後感でした。ここで終わりなの?という感じです。それだけ一気に読めたとも言えますが。
どうも今回は雰囲気だけで人気を博したような感じが否めません。同じ著者の他の作品も読んでみようと思いました。
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宮下さんの書く本ってなんとなくいいものが多い気がする。ほとんどの本、読んでますけど。なんとなくいい。なんかいい。核心的ななにかがないけど、ほっとして、なんかすごくいいって本ばかり。
最新刊のこちら「羊と鋼の森」は、タイトルからしてものすごくよさそうなにおいがしており、また読み始めて、外村がピアノに、ピアノの音色に出会ったあのわずかな瞬間、ページで、ああこれはすごくいい本だと確信した。
高校でふとした偶然で調律師板鳥さんに出会った外村は、ピアノを黒い森と評し、調律師をめざすこととなる。学校を卒業し、板鳥さんが働く店に就職が決まり、見習いから、本物の調律師になるなかで様々な客、そして様々なピアノに出会う過程を描いた物語。
厭な人があまり出てこないというのもよかった。や、厭な人はいるのだけど、どこか優しくてどこか憎めない。ちょっと扱いづらいだけ。それがまたリアルだった。
あのふたごが、和音が奏でる音色を聴いてみたいと思った。哀しい話じゃないのに涙が何度も出た。美しすぎて、儚すぎて、静かで少しさみしくて。本当に森みたいな小説だった。ピアノ、もう十年以上触れてないな。調律もずっとしていないピアノに触れたくなった。
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ピアノ。調律師。山。森。高校生の頃、体育館のピアノを調律する場に居合わせたことで世界が開けた青年の話。仕事に真摯に向き合う、でも何に対して真摯になっているんだろう、をずっと考えて探ってる。とても丁寧で優しい話だった。
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『羊と鋼の森』・・・まずこのタイトルに惹かれますよねー♪
それから装画と装丁も素敵で好き♪
そして、そして、この小説ですが、表現やら比喩やらなんやかや、とにかくすべてが、ムカつくくらい美しいw
いやー、素晴らしい!!
このあいだ、小川洋子さんの小説を読んで、こーゆー作家さんって他にはいないな~、と思ったのですが、あ、ここにいたかも・・・と言う感じ。
北海道で過ごした一年があったからこその小説、なのかなー?だいたい、北海道に、家族でぽーんと渡っちゃうのが、まず凄すぎですよねw
いやいや、宮下さんからはホント目が離せない感じですわ~!!!!!
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ピアノの調律師さんの物語。
昔,私もピアノを習っていて,調律師さんにも来ていただいてました。
そう短くない期間ピアノに触れていたにもかかわらず,この物語を読んで,初めてピアノに羊の毛が使用されていることを知り,調律によるピアノの微妙な音色なんか意識しなかったことを思い,やはり私の生きる道は音楽の道ではなかったことを改めて認識しました。
宮下さんの小説の中で,今でも一番好きな「スコーレ№4」の主人公も,美しいものを見出す目を持ち,どうしてもこだわってしまうものを追い求める性質を持っていましたが,その意味では本作の主人公外村君も似ていて,宮下さんらしさの溢れた小説だと思いました。
物語は淡々と進むのに,外村君が何を掴み取っていくのか,先が気になって一気読みでした。
宮下さんの小説の特徴でもありますが,物語はときには壁にぶつかったりするだろうけど,輝かしい未来を想起させて終わります。
とても読後感は爽やかですが,もうちょっと先を読みたいなと少しだけ物足りなさもあるので,☆4つです。
やっぱり宮下さんは,もがきながらも懸命に自分の好きなことを見出していく小説が秀逸ですね。
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ピアノを弾く人には、すぐにピンとくるタイトル。
音楽ものの小説って、主人公は「才能がある特別な存在」とか、「型破りな個性派」という設定のものが多いと思いますが、本作の主人公はいたってフツー。
真面目にコツコツ努力してすすんでいく様は、フツーの人たちに元気を与えてくれます。
でも、「真面目にコツコツ」というのも、一種の才能なのかも。
宮下奈都さんが、こういう若者を描いてくれたのが、主人公の同世代としては本当に嬉しい。
全体的に淡々としていますが、その中にピアノへの熱量がこもっていて、単純なお仕事小説や成長物語とはまた一味違う物語でした。
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「風景だったピアノが呼吸し始める。」
なんとなく生きていた青年外村くんがひとりの調律師のピアノの調律に立ち会い、良い音とは、美しい音とは、調律師としてどこを目指していくのかを探究していく物語。そう、外村くんにとっては当たり前のようにそばにあった森に、無意識ではあるのだけれど、深く深く影響を受けながら今の彼がある。なんともそれがうらやましい。
憧れが大きいと、その大きさに圧倒されてつぶれそうになってしまうこともある。でも、それにふりまわされては本末転倒なのだ。もっと確かなものを、自分の手で見つけていく。それが外村くんと外村くんを見守る先輩調律師たち。私も才能や憧れという言葉に惑わされ過ぎないように、「確かなもの」を見つけていかなくちゃ。
久しぶりにあぁ、出会ってよかったと思えた1冊。読み終えて、ふーっと深いため息がでた。宮下さんの書く世界は、生きていくことへの圧倒的な信頼というか肯定があるような気がして、とても深いところがそっと揺さぶられる。
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私が私であることを許されている。宮下さんの小説を読むと、いつもそう思う。
何かになりたいと思い、何かになろうと頑張っていて、それでも何にもなれない自分を不安に思い、この先どうしたらいいのか迷い、進むことも戻ることもできずにいる。そんな、森の中で迷子になっているたくさんの人たちに、自分を信じてこつこつと一歩一歩進んでいこうよ、とそっと寄り添ってくれる。いつか何か見つけられる時まで、きっとずっと寄り添ってくれる。そんな一冊。
これは音楽の、ピアノの調律師の物語だ。羊と鋼が奏でる美しい物語だ。だけど、読む人それぞれが心の、身体のなかに持っている森を、ほらっ、と取り出して見せてくれる。あなたにもあるでしょう、森が。あなたを包み、あなたの全てを許し、そして身体の隅々にまで行きわたっている森の泉があるでしょう、と。
あぁ、そうだ。宮下さんが紡ぐ言葉は静かに湧き出る泉のようだ。透明でさらさらと美しくて、のどの渇きも心の渇きも癒してくれる。私の中でいつまでも消えることなく泉のまま存在する、そんな言葉たちだ。
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調律師の話。
登場人物がみんな魅力的で素敵な物語だった。
宮下さんの小説は好きだ。嫌なところがないから安心して読める。
読後感は爽やかなんだけど、しばらくするとどんな内容だったか思い出せないんです。
でも好きな作家です。
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ピアノ
鍵盤から築かれる音楽は
森のように奥深く
入る者の心を奥へ奥へ連れて行く
調律師という視点から
描かれる
演奏者とピアノという相棒
ひとりの青年の成長と
普遍的な感覚
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ピアノの調律師をテーマにした作品。主人公である外村が1人の人間として、そして、調律師として成長をしていく。そんな作品である。ピアノを習った事がないため、定期的にピアノを調律しないといけないというのを初めて知った。調律師という職業があるのもこの作品で知った。調律師という職業の奥深さ、難しさなどを作品を通して知る事ができ、非常に良かったと思う。