紙の本
書かせる欲求
2016/06/29 07:19
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し前に市民向けの文章講座を受講したことがある。
定員40名のところがそれ以上の応募があったという。参加してみると、開講日が平日ということもあってか受講生の多くがシニア層だった。
物語を書きたいと思っている人がこんなにもいるのかと驚かされた。
林真理子が朝日新聞に2014年5月から翌年3月まで連載したこの新聞小説も、自分のことを書きたいと思っている人たちの物語だ。
大手出版社が刊行する出版物にのることのないそういう人たちの熱望の受け皿として自費出版がある。自分でお金を出してでも形として残るものを出版したい。
その気持ちは痛い程わかる。だから、この物語は興味をひく。
物語の主人公は自費出版専門の会社に勤める太田恭一。50歳目前の彼は「あなた自身でご自分の人生を書いてみませんか」とセールストークを繰り返している。
そこに現れる有名女性作家の母親。母親の出版にあわせて母親と娘の確執まで浮彫になる。
さらに自費出版界を革新しようと大手出版社のはみ出し者辺見が現われ、太田の仕事に対するスタンスに微妙になっていく。
こういう世界でこの長い物語を創ることは可能であっただろうが、物語の中核をなすのは亡くなった夫の本を出したいという由貴という女性の話だ。
いつの間にか物語は彼女をめぐる色恋物語に変わっていくし、太田とのセックス描写もこの作品でどこまで必要であったのかわからない。
もちろん、この作品は林真理子の「私の物語」だから読者がとやかくいうことではない。
ただ惜しい。
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朝日新聞連載小説。
自費出版専門の出版社の編集者を主人公とした、林真理子らしくない、しごく真面目な雰囲気の小説。
自費出版の世界がわかった面白かったが、ラストは違う方向に。残念。
(図書館)
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構成に問題があるんじゃないかと思わず口出ししたくなった作品。著者の作品の中でこんな風に感じたものは初めて(涙)
主人公は自費出版を専門にする編集者。
彼のもとには様々な人生を送ってきた中高年が訪れます。
そんな中で自費出版を依頼してきたのは作家の母。娘である作家との「母娘の確執」についてが描かれていきます。
と、ここまで面白かったのに突如自費出版を依頼してきた元女優を中心とした話に変わります。
と言うことは自費出版を通して依頼人達の「マイストーリー」について次々に描いていくのか、と思い直しました。
そうしたら今度は元女優の話がずっと続いていくではありませんか。
それはそれで面白かったのでいいのだけれど、前半に描いた母娘はそれきり登場せず、作品全体のつながりがなくて、なんというか・・・肩透かしを食らいました。
話が絞れていない、というか絞りたくなかったのなら、例えば連作短編集にするとか、もう少し読み手が戸惑わない方法を考えて欲しかったです。
元は新聞小説で連載されていた作品なので、途中で急に路線を変えるよう指示があり、引き返せなくなったのか、とか深読みしてしまいました。。そんな訳ないよね…
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会社に勤める主人公(って主人公なんだよね)
の物語。
やってくるのは、無名の誰でもない人。
悲喜こもごもの話へと進むのかと思っていたのは最初のうち、思ってもいない方向へ。
女同士の確執や何かは良かったのだけれど…
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最初章立てを見て連作なのかな、と思いましたが違いましたね。読み終わってみると構成に賛否ありそうと思いましたが、単純に言えばなかなか面白かった。
主人公は男性ではあるけれども、キャラクターのやり取りだけではなくて地の文の描写のところどころに林さん独特の「女の意地悪い鋭い目線」描写の表現が散見され、ぞくぞくしました。
「書きたい人間は増え続けているけれども読みたい人間がどんどん減っている」のような文があり、本当にその通りの現状であるなぁとつくづく思います。
自分史が流行であるから生まれた話であり、最終章を読むと強烈に「アンチ自分語り」という主張を感じます。
語られない生、無名に消えていく生に意味はあるのかということを自分も考え続けていますが、語られない生の
「語られない由縁」の中に意味があるという人生もあるのだなと知りました。エンターテイメント小説ですが、ここには純文学のテイストが味わえます。
やはり力のある作家さんならではですね。
人には語られない人生の中にもたくさんのドラマがあるのですね。きっと。
最終章はそれまでの話とはトーンも内容もがらりと変わります。しかしここが本当に書きたかったのだろうな、という印象を受けました。
主人公が傷つき都落ちした故郷で初めて目にした父の足を見たときの涙の描写に、一緒に泣きました。
何と言うか、著者も還暦を過ぎたのだものなぁと何故か
しみじみ思いました。
しかしこの作品のほとんど大部分である元女優の一件、こういう「女が本当に嫌な女」を書かせたら、林さんの筆は冴え冴えとしていますね。
厚みを感じさせない面白さでした。自分史っぽいシンプルだけれどきれいな色の装丁も好きでした。
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まったく興味なかったけど、自費出版の業界も面白い!と思わせてくれたストーリー。でも男女関係はやっぱりどこでもややこしい…。
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自費出版の老舗ユアーズに勤める編集者と亡夫の思い出を出版したい訪ねてきた元女優とのトラブル。作家の母の体験記がおもしろい。
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自費出版会社に勤務する編集者・太田が、本作りに関わりながら、女に溺れる様を描いている。
出版界の裏を垣間みながら、自費出版を希望する人の気持ちはそれぞれでもあると感じました。
人生を終えるとき、人は何かを残したいものでしょう。
さて、私は?と思いつつ。
女とは魔物でもあるというお話もあり、さくさくと読めました。
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私は自費出版の経験はないが、自身の失恋を少し創作もいれて恋愛エッセイのコンテストに応募したところ、ちょっとした賞をもらったことがある。賞をもらえて嬉しかったけれど、それ以上に、エッセイを書き終えたときに、失恋の痛手がすっかり昇華されていたことに、自分自身が驚いた。
文字にするというのはこういうことか、と。
本書にはそんな自費出版に取り組み人々が登場。
他にも、男と女の修羅場だったり、年老いた父親との心の触れ合いなど、小気味良くストーリーが展開。最後まで飽きさせないのは、さすが林真理子さん。
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自費出版する人々とそれを編集する人々の話。
新聞広告で見たことはあるが、実際に自費出版する人というのはどのくらいいるのだろう。
出版なのだから、千冊といったようなまとまった数を印刷することになるんだろう。それを身内や知人に配るとしても千もいらんな。わざわざ出版社に頼まなくても必要数を自宅で印刷してとじるという方法ではダメなのだろうか?
まぁ、本人が満足しているのならば、周囲がとやかく言うことではないのかもしれないけれど……。
作家の母、映画人だった夫の妻という設定はどちらも面白かった。自費出版したい、するという人だから、人よりも目立ちたいという気持ちが強いところや周囲とゴタゴタするところが人間臭くていいやと思ってしまった。
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2015.1.11.自費出版の編集者のはなし。本は売れないのに、本を書きたい人は年々増えているという。そんな人たちの願望(欲望)を満たす自費出版社の編集者を主人公に様々な書き手のエピソードが書かれた作品。最近の出版事業や作家の待遇などかかれていてとてもおもしろかった。
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主人公が男性だからか、
林さんの本じゃないような気持ちで読み進めました。
そうかー
本を出したい人は世の中にゴロゴロいるんだ〜
そして、新人賞を取ったくらいじゃ
ゴーストライターみたいな仕事しかありえないんだ。
そんな中、長く一線で書いている人たちって、本当にすごいなぁ!
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すっごい久々に林真理子の新刊を読んでみた。
自費出版社ユアーズで編集をしている太田という50歳のバツ一の男性が主人公。死ぬ前に、もしくは一生に一度、本を出版してみたいと思う中高年を対象に営業をしていき、一冊300万円1000部で営業をかけている。
前半は芥川賞を受賞した有名作家の母親の自費出版の話。そして後半は、39歳の未亡人の自費出版の話。後半の方が面白かったなぁ。なんとなく二部に分かれていた感じがして、盛り上がりに欠けたような。
それにしてもこの主人公は本当にバカである。さっきまで冷静な気持ちで由貴を見れていたのに。ほんとなんなの。
出版界の話やテレビ界の話は面白かった。
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男に媚びる女が嫌う元AV女優さんの未亡人、そしてそんな女に引っかかる真面目で地味な50代の女房に逃げられた主人公の男、いかにも業界っぽい派手な口八丁手八丁で世渡りしてきた大手編集社で働きながら女遊びでちょっと躓いた男とか、いかにも世間にいそうな人を上手く描いている。主人公が結果的に実家に戻ることになり、最後に末期癌の父親の人生を書こうとしたが、頑なに語らなかったが、危篤になった時初めて自分を知る関係者に死んだらあってくれてとメモを渡した。人はやはり自分の人生を語り、記録に残したいものなのか。この主人公の父が部分がもう少し書き込んで欲しかった。しかし、さすが林真理子。飽きずに最後まで読めて楽しかった。
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編集者は狂言回しで、書きたい人が主人公という構成で、面白く読んでいたら、途中から編集者が主人公になってしまい、ありがちな中年男女の恋愛話と業界話がメインの通俗小説になってしまったのは何故だろうか?新聞連載での評判が悪くて路線変更したのかな?と勘ぐってしまう。ラストで郷土に戻り、強引に自費出版の話に戻す展開も取って付けたような印象があった。