紙の本
独裁者世界
2017/10/31 18:14
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2次世界大戦中のドイツの社会体制が理解できる。独裁者は一人で台頭するのではなく民衆がその思想を受け入れることが脅威に結び付く。反対者が戦後もなお迫害を受けることになっていたとは日本のものはもちろん西洋諸国でもわからなかったようだ。我々がどのように為政者と向き合うのか考えさせられる必読の書だ。
紙の本
勇気をもてるか?
2016/01/26 00:53
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投稿者:ちょりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナチスの支配した時代というと、息もつまるような恐怖政治家と思ったが、実は迫害された人以外にとってはそうではないようだ。まぁ、外見上は選挙に勝ったのだし。だからこそ余計に、ヒトラーのナチスの思想は甦るという予言が怖い。
そして、そうなったときにここに登場する人達のように、自分は勇気を持てるか?と問わずにはいられない。
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良心に基づき命を賭して反ナチ行動を取った市民たち。彼らは戦後一転評価を得たわけでなく,長らく同胞から裏切り者呼ばわりされ,報われることはなかった。よく考えるともっともな流れではあるけれど,この事実はかなりショッキングだ。反ナチという点で彼らと同じ立場であった占領軍も,占領政策の都合上,反ナチ抵抗運動については故意に黙殺した。力をもつものと力をもたないものの差,といってもいかにも酷な話だし,勝者が敗者である全ドイツ人にドイツの犯罪の責任をかぶせることで,逆に個々のナチ同調者の責任を稀薄化してしまう結果となっている。
この本で紹介されているように,有名な白バラ事件と7月20日事件のほかにも数々の無名の市民がユダヤ人救援や体制打倒を目指す反ナチ抵抗運動に身を投じ,多くの刑死者を出している。戦前から戦中にかけてドイツ国民の大半は,ナチ支配体制から現実の利益を得ており,ユダヤ人虐殺などの事実に目を向けようとはしなかった。奨励される密告も反ナチ運動拡散の妨げとなった。そのような絶望的な状況の中,いくつものグループが存続していたというのはそれだけでも凄いことだ。
結局ヒトラー打倒は実ることなく外からの暴力により第三帝国は崩潰。それは多くの反ナチ市民が,ジレンマを感じつつも望んだ,唯一の現実的な解決だった。そんな彼らの胸のうちを思うと何とも言えない気持ちがする。再評価の機運が高まっているというのは良いことなんだろうな。
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良くも悪くも新書レベル。ナチの政策に反旗をひるがえすという意味でユダヤ人保護から直接的なテロまで様々な集団を網羅しているものの、それらを有機的に結びつけるような論理はなし。 個々の事例に関しては、門外漢なので詳しくは知らんが既知の情報も多く読書の快楽はあまりない。トンデモ社会学のようなことは言わないのである意味で誠実ではある。
戦時中の独裁政権に対する反抗は、洋の東西を問わず戦後言説で美化されがちだとばかり思っていたのだが(『言論弾圧』のように)、ことドイツ人に関しては案外そういった自分語りはしてないのだなと、色々と思うこともあったり。
こんなにも素晴らしい人々が!と手放しで浮かれる前に彼らが戦時下では少数であったことの意味を考えたほうが良い。
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反ナチ運動を「クライザウ・サークル」を中心に紹介。
詳しく知らない分野だったので、なるほど…という感じだった。
ヒトラー支配下での活動に加え、戦後の状況、遺族はどうなっていったか、というところも書かれており、反ナチ運動が長く正当に評価されていなかったことも分かった。
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意外だったのがヒトラーに抵抗した人々が戦後積極的に名乗り出たわけではなかったこと。あれだけ支持された政権であったわけだから名乗り出ることは即「売国奴」「第五列」の烙印を押されるわけで…。
「白バラ」など聞きかじった程度の話もまとまった分量が読めて良かった。
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ヒトラーの圧制時代に、勇気を持って抵抗し続けた多くの人たちと、クライザゥサークルや白バラ運動、ローテ・カペレ、教会、等の考え方の異なる複数の団体があったことに初めて気付かされた。彼らの、祖国ドイツを愛して危険を顧みない気高い行動に心をうたれた。また一方では、ヒトラーのナチが小市民的なドイツ国民に圧倒的に支持されていたことも驚きだった。人間社会はいつでも、我欲に流される人々と、人としての尊厳を守り続ける人がいることを再認識させてくれた。人としてどう生きるかを考えさせる本だと思う。
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ヒトラー、ナッィスへの、抵抗運動者にはキリスト教信仰の厚い者が多数認められる。戦後の西ドイツ及び統一後のドイツでキリスト教民主同盟が大きな存在感を示しているのと関連性があるのかどうか?
司法界に第三帝国時代、ナッィス党員が多かっただけでなく、戦後のドイツでも元党員司法官が多数いた(1950年で西ドイツ全体で15,000なや判事と、検事の66-75%は元党員だった!p.233)とは驚き。
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政権初期には毅然としてユダヤ人への暴力行為を止めに入るドイツ人住民もいた。だが反ユダヤ主義の嵐の中で見て見ぬふりをする態度が一般化し、極貧の中で飢えと病に苦しむユダヤ人犠牲者を助ける人々の姿は表立って見られなくなった。密告が常態化していからである。密告社会においては国民的な反ナチ運動は生まれない。だが全ての人々が大勢に同調し続けるということではない。少数といえ、自分自身の価値観によって事態を見つめ問い考える人がいる。とくにポグロム行こう、普通の市民の反ナチ的地下活動が各地に自然発生的に生じるのも、このためである。不安や恐怖に打ち克つことは、もちろん容易ではないだろう。しかしそれを乗り越えた人々には、もはや他人にどうみられるかではなく、自分たが何をすべきかが問題であった。ナチ支配の不法な実態が都都逸社会に露わになったことが、決定的なきっかけである。
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これが大学時代に勉強したかったことだと実感しながら読み進めた。
ヒトラーを選んだ大多数の国民に対し、その中でもユダヤ人への迫害を冷静な目で見つめ、現実を自分で考え、正しく捉えた人の姿を紹介してた。
衝撃だったことがいくつもあった。
その一つはその人たちが戦後も裏切り者と言われ続け、反抗した事実を口にできなかったということ。国民が芯までナチスに浸り、善悪を判断する精神を取り戻すまで非常に長い時間がかかっていたことである。
もちろん、戦中にナチスに反抗するための新政府の策略を練っていたこと、暗殺のチャンスが何度もあったことなど、このテーマはより深く学んでいきたいと思わせる本であった。
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第2次大戦中のドイツ国内でナチに抵抗した人々についてまとめられた、有益な一冊。ユダヤ人を匿ったり逃した人々、反ナチ活動を行なった人々の様子が余すところなく網羅されている。それ故当時う人物や団体名も多く、できれば年表だけでなく各グループ名と判明している参加者ごとにまとめた図でもあるとありがたかったかも。第2次大戦後これらの活動が語られなかったのは、当事者があえて声高に言わなかったこともあるが、ナチ抵抗者たちが社会から裏切り者的な扱いを受けていたこと、戦後の占領国の政策の都合上多くのナチ関係者は国の中枢に戻り、抵抗活動の資料が破棄されてしまったことが大きいという事実に驚いた。ドイツ観が変わった。この2、3年ナチ追求者について映画化が続いていてこうした事情も描かれているが、より深く知ることができる一冊である。
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ナチスやヒトラーの犯罪性を見抜き、戦後構想の先見の明の高さ、行動する自己犠牲精神の気高さや高貴さに胸が打たれた。良書です。おすすめ
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◆ヒトラーに抵抗するという、良心的かつ勇気を持った人々に対する戦中・戦後における処遇。戦争の持つナショナリズムの愚昧と悲劇、普遍的価値や利益に対して人々の眼を曇らせてしまう様を鋭く開陳する◆
2015年刊行。
著者は秋田大学名誉教授(教育学)。
自由と平和という観点から見れば蛮行に明け暮れたヒトラーは、「ドイツ人」には広く支持されてきた。しかし、この蛮行に違和感や嫌悪感、反感を持つ者もいて、彼らは消極・積極にナチス政権に対する反旗を翻した。
それは、巨視的に見ればドイツ人の良心とも言えるが、彼らの悪法は法に非ずという姿勢・態度は遵法的な様とは乖離し、戦時下ドイツでは敵性扱いを受けることとなった。本書はその反ナチ行動をとった人物を広く粗描し、間接・直接の反ナチ行動の内実を開陳する。
トム・クルーズの「ワルキューレ」。この映画に代表されるように、反ナチの中でもヒトラー暗殺事件などは様々な形でフィクションの題材に挙げられるし、いわゆるユダヤ人救援活動もまた同様かもしれない。
ただここで何とも言えぬ思いに駆られたのは、
➀ ナチスの様々な抑圧と蛮行に対して、自己保身と経済的利得に狂喜しつつ、自己保身のために見て見ぬふりであったを大多数の「ドイツ人」の中、
➁ 反ナチ行動が、戦時下ドイツでの敵性行動とされた上、
➂ 戦後ですら、かかる抵抗運動の典型のヒトラー暗殺7月20日事件を肯定的に評価する比率が、過半数を下回る40%。
➃ もしナチス抵抗運動がなければ、ドイツが第二次世界大戦に勝っていたと考える層が、「多分」という条件付きの回答を含めると、40%にも及んでいる
という指摘である。
ルール策定権と暴力組織(基本的には警察)が掌握されている中、死に直結する逮捕監禁の危険を省みず、悪法を否定し行動する人間、すなわち著者の言うツヴィル・クラージュ(市民的勇気)を持つ人々を顕彰し得ない様に、僅かばかりの経済的利得に眼が眩んだ人々、人間の尊厳を守ろうとしない国家との距離感をはき違える心性に対し言い知れぬ寂寥感を覚える。
そういう意味で、読破中、負の感情が起きたものの、この事実を赤裸々に語る第五章が卓抜である。
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"機会があったら、いつでも人には親切にしなさい。助けたり与えたりする必要のある人たちにそうすることが、人生でいちばん大事なことです" 他人にどう見られるかではなく、自分が何をすべきか
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最初から最後まで読み応えのある内容だった。
反ナチ市民を中心にした時系列の章立てのおかげで、市民側が望んでヒトラーを求めたこと、なぜ望んだのかという背景的な社会問題も明瞭に説明されている。
ヒトラー内閣成立後、より激しくなる暴力、略奪経済、消耗戦。
密告が常態化しているなか、個人レベルの消極的な反ナチ活動はあり、慎重に活動の輪を広げてネットワークを成してユダヤ人をかくまい逃がそうとしたり、理想の未来「もうひとつのドイツ」に着目して燃える市民がいたりする。
第五章での、レーマー裁判の裁判長バウワーの論告には、言葉の持つ「智」の力を感じた。
最後にまとめられていた年表は、関連情報がまとめられていてわかりやすかった。