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0125
2019/07/22読了
碌さんのダメっぷりがかわいい。
かわいいじゃ済まされないこともしているけど。
悦ちゃんのおてんばも良い。ませていてもまだまだ小学生らしいかわいいところもある。大人にはない、したたかさを持ってるところも好き。
なんだかんだみんな幸せになるところが獅子文六作品の好きなところ。
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獅子文六、素晴らしい。めちゃくちゃ良い。メチャクチャ良いです。ドPOPと軽妙洒脱の極み。この素敵な軽さ、なんなんだろう。ビビっちゃう。
本当にまあ、驚きでしかないのですが、コレ、第二次世界大戦前の作品なんですよね。この作品が、リアルタイムで新聞連載されてたのが、1936年(昭和11年)7月から1937年(昭和12年)1月まで、だそうです。おっとろしい。昭和10年代の作品なのか!?コレが。有りえないよ、って思う。なんなんだこの古びなさは。奇跡的です。
個人的に勝手に思うだけなのですが、この作品の舞台設定に、スマホとネットとあとなんか最近のもんをシレッと登場させて、2021年新春注目の新人作家の作品です!って明日から売り出したら、多分、売れると思います。昭和10年代の作品が。この2021年新春の目玉新作として。「何これ?これオモロいやんか!」って。それぐらいに、なんだろう?本当に、なんというか「圧倒的に瑞々しい」ってね、思いましたね。ええ。あくまでも勝手に思っただけですが。
あと、音楽で無理やり例えると、獅子文六って、「永遠のポップス」だと思います。ビートルズやビーチ・ボーイズより以前の雰囲気があります。すなわち、オールディーズ。1950~60年代の、アメリカンポップス。ロックンロール、ではない感じ。とにかく、ポップス!ポピュラーミュージック。って感じ。問答無用の大衆娯楽。いわば、いっちゃん凄いヤツ。
ニール・セダカ「恋の片道切符」。コニー・フランシス「バケイション」。ポール・アンカ「ダイアナ」。エルビス・プレスリー「冷たくしないで」。ジーン・ピットニー「ルイジアナ・ママ」。などなどね。
あっこらへん。あっこらへんの時代の、珠玉のポップソングと似ている。もうね、オールディーズのゴールデンポップスと相通じまくり。ここには永遠に古びない何かがある。マジでそう思う。自分が、そんな音楽ばっか流れてる職場で働いてるんで、そう感じるのかもしれませんが、、、
めちゃくちゃ失礼なこと言いますけれども、オールディーズの名曲の歌詞って、ホンマにしょーもないんですよ。良い意味で。バリ牧歌的。ばんばん平和。「海だの山だのバカンス遊びたい~♪」「可愛いあの娘にフラれてツラい~♪」「俺の彼女はマジ最高~♪」「一晩中パーティーナイトでガハハしようぜ~♪」みたいな。
バンバン単純。あっけらかん。「むう、、、人生とは、、、なんぞや、、、?意義のある人生とは、、、人はいかに生きるべきか、、、」なんて、なーんも考えてないんですよ。お気楽極楽一直線。だがそれがいい。そのお気楽極楽さが突き抜けて、永遠の魅力を得ている訳ですよ。それがオールディーズ。
で、ホンマに失礼ですけど、獅子文六の作品も、「七時間半」「コーヒーと恋愛」「悦ちゃん」と三作読み進んできましたが、おっとろしく、良い意味で、しょーもない内容なんですよね。バリ平和。めちゃ深刻に書けるであろう内容を、テーマを、ここまでお気楽極楽にスチャラカに書くかね?という平和さ。この「悦ちゃん」も、意味わからんほどホノボノご都合主義。なんなんその展開?ってのばっかり。
でも、それ���おそらく、わざとですやん?ワザと、獅子文六、このお気楽路線で書いている。プロとして。「あっしの作品、シャッチョコばらずに、すっかーんと楽しんで読んでおくれやす」みたいな、私はあなたを楽しませますよ!的な決意を、感じるんです。勝手に。
ええ、勝手に感じました。あくまでも僕が勝手に。勝手に感じてゴメンナサイね。でも感じるんだから、しゃあないやん。すまんですね。
なんなんだろうなあ、この文章は。自分は、町田康の文章が、文体が凄く好きなんですよ。で、それと獅子文六の文章は全然違うと思うんですが、なんらかの共通してる感じの「個性」は、バンバン感じますね。勢い、というか。文字が活きている。みたいな。活きの良いとはこのことか、みたいな。ホンマにね。ピチピチしてるんですよ、文章が。というか文体が。というか文字が。この文章は文体は、魚で例えると刺身だな、みたいな感じ。煮たり焼いたりしてない。海から獲ってきたそのまんま。謎な表現ですけど。凄いな、って思う。なんでこんな文章を書くことができるんだろうなあ。
獅子文六、おっとろしい人ですね。いやもうなあ。温故知新とはこの事です。ちょっと、この人の作品に出会ったのは、2020~2021年における個人的な最大のエポックメイキングな気がする。いやもうね。感動。間違いなく、ええエネルギーを、くれてます。それってもう、いっちゃん素敵なことですやん?いやもう最高だよ獅子文六さん。一生、この人のことを、尊敬しますね。
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1936-1937年に報知新聞に連載された作品。新聞掲載一回分ごとに文章が区切れているので、通勤電車の中で読み継いでいくのにちょうどよかったです。落語を聞いているような読み心地。当時の音楽業界や銀座のデパートの裏側がかいま見えるのも面白いです。
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どういうわけか私、獅子文六って関西の作家だと思っていました。
だからお母さんがいなくてお父さんとふたり暮らしの小学生の女の子・悦ちゃんって、じゃりン子チエのイメージだったんですよ。
悦ちゃんは東京生まれの東京育ち。
中野に住んでいますが、ショッピングに行くのは銀座のデパート。
あ、これ昭和11年に発表された作品なんです。
お父さんは歌謡曲の作詞者。
ただしあんまり売れてはいない。
なのにそろそろ再婚しよっかなあ、なんて思って、金持ちと結婚した姉を頼る。
万事に頼りなく、人任せなのである。
で、大銀行の一門の出で、学があって、美人のお嬢さんに惚れられて、さくさく婚約となる。
いや、悦ちゃんが反対しているからさくさくではないか。
悦ちゃんは悦ちゃんで、新しいママは欲しいのである。
だってまだ10歳。
甘えたいお年頃なのだ。
だから悦ちゃんは自分で新しいままを見つけてきた。
銀座のデパートで働く鏡子さんだ。
昭和11年の新聞小説なのですが、思った以上にハイカラ。
2.26事件の起こった直後で、日本が急激に軍国主義に傾いたと習ってきましたが、悦ちゃんは「パパ」「ママ」と言う。
後に悦ちゃんは歌手デビューしますが芸名は「日本のテムプルちゃん」。
当時シャーリー・テンプルが人気だったのね。
ジャズを聴いたりダンスを踊ったりのシーンもある。
悦ちゃんが見つけたママ候補の鏡子さんもまた、幼い頃に母を亡くし、継母に育てられる。
けれども義理堅いお藤さんは、実子のお琴ちゃんよりはるかに鏡子さんを大事にする。
”何事でも、鏡子さんファーストである。”
え?この文章、昭和11年の文章?
金持ちの従兄弟たちと悦ちゃんを比較して
”悦ちゃんを胡椒(パプリカ)娘とすれば、ふたりは砂糖息子にキャラメル娘というところだろう。”
昭和11年にパプリカがあったんだ…。
デパートに海水着を買いに来た悦ちゃんが試着するシーンでは
”やがて彼女は、ドレスを脱ぎ始めた。クリッパーも脱いだ。最後に、おズロも脱いでしまったのは、まア子供だと思って、大目に見て頂きたい。”
おズロっていうのはズロース、つまりパンツのことだと思うのだけど、クリッパーがわからなかった。
多分前開きのシャツ(下着)のことなのではないかと。
悦ちゃんは言葉使いが悪い。
「ママは天国へ行ったッて、この前、いったじゃないか。じゃア、地面の下にいるわけはないぜ。ハッキリしてくれよ」
これが大人になると鏡子さんのように
「あら、そンなことありませんわ。お琴ちゃんだって、年頃になれば、きっと綺麗になりますわ。まだ子供ですもの、そンなこと仰有ったッて、むりですわ」みたいな喋り方になるのだろうか。
ふり幅ひどくて戸惑っちゃう。
笑っちゃったところ
”ウむ、腹が立つ……ヌケヌケと自分をだました柳の奴が憎いが、ここにいるこの女も、可愛さあまってすこぶる憎い。二人とも平均して、めちゃくちゃに憎い!”
それって平均するものなの?笑
いろんな意味で楽しめました。
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通勤中に読む何か軽い読み物をと思って、獅子文六の初期作品。可愛らしくもおマセな10歳の女の子「悦ちゃん」が父親の再婚相手選びを巡って東奔西走大活躍する。ユーモアとバイタリティに溢れた悦ちゃんが何とも魅力的で、戦後、決っして楽ではない生活を送る多くの日本人に元気を与えた物語ではないだろうか。
獅子文六と言えば相場師を描いた「大番」ほか何作かを読んでいるが、いずれも面白くて気に入っている。もう何作か読んでみよう。
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私は常々、まだ読んでいない面白い本(私にとっての名著)がもっともっとたくさんある、出会ってないすばらしい文学がまだまだあると思っている。あったあった!獅子文六。子供時代に聞いたことはあるけど、読んだことがない作家だ。昔の流行作家というイメージだった。なんて面白いのでしょう、悦ちゃん。文体のリズムもいいし、人物造形もすごく味わい深い。もちろんラストは予想できるんだけど、次々に起こる予想外の事件が楽しい。麻布から江戸川まで電車で7銭、夕刊一部2銭、かけそば10銭。昭和11年ころの生活も興味津々です。