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サブタイトルの通り、自動車の運動のうち旋回に特化した内容となっている。定常円旋回、ハンドルを切った時の応答性能、限界コーナリング、減速時・外乱発生時と様々な旋回の場面における自動車の動きを運動方程式として導き、何が起きているのかを明らかにしている。安定性を必要とする外乱については、斜面(バンク)だけでなく轍(わだち)についての状態変化にも触れている。運動方程式を組み立てて解くという構成のため数式ばかりであるが、はじめにどのように力が働いてその動きとなるのかを言葉で説明してから式の組み立てに 入っているので理解しやすいと思う。また、各パラメータについて最初に全部定義を明らかにし、新しいパラメータが必要となった時も都度定義をしているの で、いきなり新しいパラメータが出てきて勝手に議論が進むということはない。
後半はこられの結果を踏まえたうえで、ドライバが感じる力について考察している。コーナリング時に腰に感じる力、ハンドルからの力やハンドルの動きをどう感じるか。さらに視覚的に感じる動きも考察の対象としている。これらはドライビングの楽しさ、気持ちよさの設計の基礎となる考え方である。本書では自動車の旋回について、機械の側面と人間の側面から考察しているが、ただ曲がる、あるいは勝手に曲がらないだけであれば機械の側面だけを考えれば良い。しかし、それはすでに当たり前となり、運転のしやすさ、あるいは楽しさ、気持ちよさが求められるようになった。直進性能、加速性能も運転の楽しさ、気持ちよさに影響を及ぼすが、思った通りに曲がるというのは非常に気持のいいものである。後半での考察は、コーナリングの気持ちよさを設計する最初の一歩であり、今後より発展していく領域ではないかと思う。