紙の本
イギリスの離脱を前に
2019/03/12 18:57
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスのEU離脱が決まってから読みました。
この本が書かれた頃にはもう徴候が現れていたんだと納得。
イギリスがいないEUはドイツの独壇場になるのか?
そのドイツも一枚岩ではない。
不安だらけになってしまった。
紙の本
EUの正念場
2016/01/06 20:59
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ギリシャ危機・難民問題・テロ等により動揺するEUの現状を、分かりやすくまとめています。
内容は、第1章は民主主義の歴史について、第2章はEUの利益について、第3・4章はギリシャ危機について、第5章はドイツの現実について、第6・7章は難民問題について、第8章はテロとナショナリズムについて、終章は日本の選択についての9章で構成されています。
特に、難民問題の経過を時系列で丁寧に追っていますので、当初から安い労働力が手に入れることができると喜んでいたドイツと他国との温度差や、その後のドイツの見通しの甘さによる変わり身の早さやEU他国との軋轢等が良く理解できました。またテロ犯が自由に広域を移動している状況を鑑みると、経済的繁栄の目的のみで国境を取っ払うことは正しいことだったのか良く分からなくなりました。
ただし、終章の「日本」に関する浅い考察は余計でした。むしろ、第8章までの現状認識を踏まえ、EUの今後の展望等にかかる川口氏の見解を示してもらいたかったです。「日本」を語ってお茶を濁した印象です。結局、本書はヨーロッパの現状認識を示しただけであり、川口氏が専門家ではない限界が露呈し、残念でした。
2009年のギリシャ危機に端を発し、EU崩壊もありうるとの論評が数年前からありますが、私は半信半疑でした。が、人権問題等は見て見ぬふりをして中国に媚びへつらうイギリスやドイツの姿に、EU諸国の窮状を見るような気がしますし、ドイツが独り勝ちする構造を孕むEUは、今後バラバラになる可能性も否定できません。
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EU内部の実情がよく分かる!
2016/08/21 07:04
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投稿者:たなゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本での報道だけでは分からないEU内部の実情が詳しく書かれております。現在のEUの状況を正確に知る上でとても参考になりました。
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ギリシャの金融危機や難民問題に直面したEUは,各国が自国の利益を死守しようと懸命になっており,「1つのヨーロッパ」という理念はもはや消え去っている。また,テロの脅威から,排外主義が叫ばれ,国民の自由に対する広範な制限が正当化されかねない状況が現れている。本書は,最近のヨーロッパが直面する問題の歴史と背景を簡単に振り返ることができるというだけでも,一読の価値がある。
また,著者は,ヨーロッパの危機について叙述するだけでなく,日本人の危機感のなさにも警鐘を鳴らしている。仮に隣国で政変が起これば,大量の政治難民が日本海に押し寄せることになり,しかもそれはあっという間に抑えがたいものになる,と。また,TPPとの関係でも,エネルギーと食糧の自給率は安全保障の観点からも絶対に確保しておくべきであるのに,そのことを分かっていない者が多すぎる,と。
ちなみに,著者の基本的な主張は,「私の好きなオットー・フォン・ビスマルクの言葉」 として引用されている次の文章に,端的に表れているように思われる(217頁)。
「名誉と独立を好む国民はすべて,自国の平和と安全は自分自身の剣によることを意識すべきである」
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欧州連合(EU)は、いつの間にか多くの国々が加盟していますが、現在(2016.1)では、28か国の欧州の国々が加盟しています。今では東ヨーロッパ等のかつての社会主義国も加盟して、欧州地域が一つの国になったような気がします。
しかし、経済格差の異なる国々が一つの貨幣を使うことには、EUに加盟している国も疑問を呈している様ですね。この本は、ドイツに在住して、EU問題を肌に感じている川口女史による、EUに関する最新情報を紹介した本です。
経済の立て直しに苦しむ、EUの一部の国々だけでなく、唯一の勝ち組と言われるドイツにも、様々な問題が起きているようですね。そのキーワードになるのが「難民」のようです。
難民の受け入れに関する合意事項は、海に面している国に不利な内容になっている様で、それが問題となってEU崩壊も起きるかもしれないような気がしました。
この本で新たに気づいたのは、国境を無くすためにEUを結成していたはずが、難民を締め出すためとして、新たに国境(ベルリンの壁の様なモノ)が、築かれ始めた、という記述には驚きました。
以下は気になったポイントです。
・1981年、ギリシアはECに加盟、ユーロ加盟は2001年である。その際、巧みな粉飾があったことは、当時も知らなかったとは思えない。感づいてはいたが、欧州の祖であり、民主主義の本家でもあるギリシアをECに加えたいばかり、見て見ぬふりをしたのではないか(p5)
・冷戦下において、ギリシアの隣国は悉く社会主義、同時にギリシアは、イスラム文化圏に対する防波堤でもあった。1453-1829年まで、オスマン帝国の支配下にあったこの国が、再びイスラムに引きずられてはならないと考えられた(p5)
・ギリシアのユーロ圏離脱が起きれば、EUは一気に弱体化する、まさに民主主義の崩壊への第一歩を意味する(p18)
・アテネでは、政治に参加できるのは、18歳以上の成人男子のみ、紀元前430年当時、3万人。アテネ市民の人口は12万(p22)
・1829年、ギリシアはほぼ2000年ぶりに国として復活するが、首都アテネの人口は4000人程度(p23)
・日本で明治維新が起こった時、天皇を玉座から引きずり降ろそうと思いついた人は存在しなかった(p26)
・2004年と07年の東欧国のEUへの参画は、驚くべき出来事であった。東欧、バルト海の国々も、NATOに組み込まれた(p34)
・EUは7年の枠で予算を編成する、現在の枠は、2014年から2020年。予算が決定したのは、2013年2月だったが、EU歴史が始まって初めて予算が3%も縮小された(p49)
・EUに納めている額と受けている額をプラスマイナスしたとき、持ち出しの国は、ドイツ・デンマーク・ルクセンブルク・イギリス・スウェーデン・オランダ・ベルギー・オーストリア・フィンランドなどの12カ国、あとの16か国は実入りが多い。一人当たりで最も多く貰っているのが、ポーランド(p50、51)
・イギリスはサッチャー首相時代の取り決めで、拠出金の66���を免除されている、これはイギリスの同意なしには変更できない(p54)
・イギリスは、リスボン条約でも多くの例外を勝ち取った、イギリスは、内務と司法の分野においては、どのEU法律を採用するか、しないかを選べることになっている(p62)
・ギリシアのチプラス党首の圧勝を見ていくと、選挙前のギリシアの国状と、ヒトラーが台頭したときのワイマール共和国の国状とが、似ているように感じる(p81)
・ユーロ国は自国のための金融政策がとれないので、ドイツにとってはユーロは常に安く、輸出しやすい環境となり、貧しい国にとっては、ユーロは常に高く、国際競争力は弱まる(p115)
・スイス国立銀行は、2015年1月15日に突如、スイスフランとユーロとの連動を解除したので、スイスフランは一夜で値上がりした(p117)
・難民に適用されるのは、シェンゲン協定ではなく、ダブリン協定である。難民は、最初に足を着けたEU国で庇護申請をしなければならない。なので、イタリア・ギリシア・ハンガリー・トルコ(200万人)に難民がたまったのは当然(p131、151)
・ハンガリーは、増え続ける難民に困り切り、150キロにわたるセルビアとの国境に、高さ4メートルの鉄条網の柵を作っている(p154)
・スマホは難民の最重要ツールで、あっせん業者との連絡支払いは、すべてオンライン。一般のインターネットではなく、犯罪者の使う秘密ラインで、ダークネットと言われる(p160)
・ドイツが国境検査を行い(2015年9月から)、オーストリアはハンガリー国境に軍隊派遣、チェコもオーストリアとの国境を監視、これは往来自由な、シェンゲン圏内である。シェンゲン協定、ダブリン協定も停止したのは、ドイツであった(p162)
・美しい理念で始まったEUは、難民というかたちで内外価格差が可視化された途端、当初の目標であった統合はそっちのけになった(p178、186)
・EUもアメリカも、自国の農家を巨額な補助金で支援している。EUの予算で一番大きい項目は、農業に対する補助金で、全歳出の45%を占める(p214)
・第二次世界大戦前、ワイマール政権は、あまりにも模範的な民主主義に没頭して、国民の反感を買い、ヒトラーの台頭を招いた。メルケル首相の難民政策は、一つ間違えば、当時の国民感情の再現を促す危険を包有している(p217)
2016年1月31日作成
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Brexitもあり、既に事態はさらに先に進んでしまっているが、欧州の混迷の状況や原因がよくわかる。
いわゆる知識人による上から目線の知ったかぶりの解説ではない地に足がしっかりと着いたもので、本邦においても他山の石として活かすべき教訓を意識しているところがいい。
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第1章 民主主義の理想を追い求めたヨーロッパ
第2章 「EUの利益」とはそもそも何なのか
第3章 ユーロという爆弾を破裂させたギリシャ
第4章 それでもギリシャを締め上げるドイツ
第5章 「強すぎるドイツ」も内実はボロボロだ
第6章 ドイツに押し寄せる大量の経済難民
第7章 そして難民問題がEUを破壊する
第8章 テロの嵐、甦る国境とナショナリズム
終章 「国境を超える枠組み」と日本の選択
著者:川口マーン惠美(Kawaguchi, Emi M?n, 1956-、大阪府、作家)
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やはり本来なら異なる経済政策をとるべき国々が共通通貨を持つのは問題があると改めて認識。ドイツはこのメリットを享受し、ギリシアへの救済金をはるかに上回る。あとで追記。、、
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ギリシア危機を乗り越えようとするEUも、押し寄せる難民を前にレイシズムを標榜する極右勢力が台頭し、国境が復活するなど、EUとしてのまとまりが解けようとしている現状を報告しています。強欲な既得権益層が富を集中させる一方で、怒りのはけ口を求めるエネルギーが溜まり続けています。世界情勢はキナ臭く、過去の歴史に照らし合わせたとき、モヤモヤした不安は膨らみます。
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著者の手になる書物を初めて拝読しました。
正直、己の不明を恥じました。文章が上手い。行間より教養の高さをひしひしと感じます。すごいもんだと。流石に音大生美大生達で功なり名なりを挙げてひとかどに成られる才媛たちの英気を覚えるというのか。普通に「教養人」というものでしょう。活計の足し以上の世界があるのだとこちらが頭を足れる。憧れというものです。
著書の内容的には非常に重たいです。
日本人でよかったという安堵感とやるせなさを感じます。
欧州発祥・欧州が世界分割により持ち込んだ擾乱を、現代以降において、こころの呵責と引き換えに受け容れざるを得ない理想主義「人権」という方便、この理想は祭壇に祭られたまま現実の庶民は我慢のかぎりを超えてしまっていた。
救いようもない悲劇・・・
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「出口の見えないXX問題」という難問は世界にこれまでもあったし、それでもなんとかやってきた感はあったけど、もうダメ感しかない難民問題について知るために読んでみた一冊。
受け入れか拒絶かという二項対立で人が二分され、欧州が壊れていく初期の様子が丹念に描かれていて、現状を理解するのに役立った。
日本も難民が押し寄せることへの準備を怠れば、受け入れても受け入れなくても地獄なのだと思う。
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理想を追い求めたが、結局欲得、格差が広がり。
理想と現実の狭間で崩壊しつつあるEU。
怖いのは、そこから日本が何を学ぶかってこと。
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日本の出羽守さん達はヨーロッパは民主主義的で平等で素晴らしい!とよく褒めるが、難民問題やコロナでのロックダウンであっさりシェンゲン協定を放棄する様を見ると、全く胡散臭いものだと思う。
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著者はドイツ在住、音楽学科卒の日本人。本は2016年1月出版。
理想を掲げたEUとその実現困難さーEUの複雑なシステム、ギリシャ危機、2015年欧州難民問題、同難民問題に伴うナショナリズムの高まりなどーが、ドイツで生きる1人の日本人が感じたこととして語られています。
システムや問題の分析的な記述と、生身の人や生活への影響などの身近感のある記述のバランスが結構とれていて、肩肘張らずに読みやすい本だと思います。
難民もギリシャ危機もEU内の大きな課題ですが、難民の問題は中東の紛争の問題でもあり(ギリシャ危機は不勉強でノーコメント)、EU外の世界とどのように向き合うかという課題でもあります。
自分と他人、自分の家族とほかの家族、自分の町と隣の町、自県と他県、自国と他国。
「自分達」と考えられるのはどういう条件や要素なのか、そんな「自分達」と違う人達とはどのように向き合えばよいのか。
苦悩するドイツ、EUの姿からは、そんなことを考えさせられます。