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安部公房、好きだ。
この世界観、
面白い。
確かこれ、安部公房の最後の作品だったはず(多分)。
前衛小説らしく本当に意味不明な世界なんだけれども、
70近くになってのこの創造力が素晴らしい。
でも、根底に流れているのは確実に「死」だし、
病院のベッドに(本人に意識はないけれど)縛り続けられていたりと、
自らの人生の終りを意識している人間だからこその世界である。
そしてその死の捉え方が決して絶望や悲観ではなく、
あくまで笑ってしまっているところは重ねてきた年齢故だろう。
青臭い若者がさもわかったように死を語るのとは
根本的な違いがそこにはある。
そして非常に読みやすい。
と言うわけで、
安部公房は面白いですね。
次は何を読もうかな。
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「足からかいわれ大根が生えてくる」という前置きが読者を超現実の物語世界に誘う。飛んでくるイカや地獄の鬼たちが違和感のある滑らかさ、まるでパラパラ漫画を読んでいるかのような感覚、を伴って現れる。
カンガルー・ノートを考案した主人公が見舞われる災難は、人間存在の不安定さだけでなく、『第四間氷期』で提示された「残酷な未来」を発展させた「死としての未来」という境地さえ垣間見せる。
そこには「死ぬことが残酷なのではなく、死という未来が目の前にぶら下がることによって、それまで整然と存在していた日常の連続性が断裂されてしまうということが残酷なのだ」という安部公房自身の哲学が貫かれているように感じた。
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有袋類のノートに始まり、膝にかいわれ大根が繁茂したり、テーマは死であったりする。考えている自分を考えている自分がいたり、それは回帰的だったり永遠性だったり、終わりのない夢のような、あるいは走馬灯なのか、終わりがあることを知っているのに、その終わりが想像できずにいる。もうすでに終わっているかも知れないし、そうだとして、だからなんだってんだい。
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わたしには難しかった。読めば読むほど頭の中がパニック。
でも、なぜか続きが読みたくなる。
カイワレ大根が食べたくなくなった。
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変な話だなあ、と思った。
自分の夢を書いてみたら、
こんな感じになるんだろーな。
近いうちにもっかい読み直そう。
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次々に脈絡なく不条理な出来事が襲いかかってくる、夢をそのまま小説に落とし込んだような話。わたしはどうにも前衛芸術を解さない人間で(その頭の固さで損をしているなあと思うことも多いのだが、ともあれ)、この類の小説は本来、苦手な性質だ。今回も読み始めてすぐに一度は「あ、しまった」と思った……のだけれど、どうしたものか、ふと気付くと引き込まれて読んでいた。読み終わった後味も、悪くなかった。
いつもだったら「面白いは面白いけど、苦手な感じ」とかで終わっただろうに、何が違ったんだろうなあと考え込んだのだけれど、いっときしてから気付いた。理不尽なのは展開だけで、登場人物はみな優しかったんだ。優しいというか、人間味のある温かい人々だった。不条理ものによくあるような、よくわからない理由で主人公に難癖をつけてくるような怪物ではなかった。
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ある朝起きると脛にカイワレ大根が生えていた男。病院に行くが・・・。移動式ベッドに乗って温泉治療に向かう。賽ノ河原での小鬼。ドラキュラ娘との出会い。謎の施設での治療。
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足にカイワレ大根、というあまりにも強烈な出だしから、夢とうつつを彷徨いながら、黄泉の国を旅する小説。しかも、ベッドに寝たまま(笑)
最高に変、かつ面白い。タッチは軽いが根底に流れる暗さとうすきみの悪さがの二重構造に惹きつけられる。
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「死」が一貫してのテーマであることは分かっている。
遺作である事も承知している。
しかし、溢れるブラックユーモアについつい笑ってしまった。
まるで次々と表れる遊園地と併合したサーカスのようだ。
けれども、ラストには私は精神的に参ってしまった。
めまぐるしく変転する舞台装置の合間から、苦痛や悲鳴が頭に響く。
戯れたまま地獄釜に突き落とされる恐怖すら感じた。
・・・この辺の感覚は個人によるものだろうが。
もう一度この作品を手にするときは、安部作品をもっと読み込んでからにしたい。
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なんなの?と言われても、正直なんなのか整理ついてないけれど、何回も読んじゃってて、ずーっと頭にある本。凄く視覚的な記憶に残る。ふとベッドでの旅を思い出したり。硫黄やかいわれ大根や汗の匂いがよぎる。
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今まで読んだ安部公房作品の中で最も読みにくく最も理解できなかった。
でも、だからこそまた読みたくなるのが安部公房の不思議。
ぶっ飛んでる世界観なのに、妙な説得力があるんだよなぁ。そこがたまらん。
結局カンガルーノートの案はどうまとまったの?
気になるけど、理解はきっとできないんだろうな。
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足にかいわれ大根が生えます(笑)
カフカの変身を思いだす衝撃。
内容は荒唐無稽なんだが、細かい描写が
あぁーまぁ、確かに(笑)
というような表現があってシュールです。
雌烏賊との死闘は必見。
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安部公房最後の長編。
脛から≪かいわれ大根≫が自生し始めた男なんて、期待を裏切らない発想。
≪かいわれ大根≫は数本生えているくらいなのかと思ったら、どんどん成長してジャングルのように密生する。
読んでいてもなかなかグロテスクで、それを見た、朝食に納豆とかいわれの和え物を食べた医者は、吐き出してしまう。サウスパークっぽいな。ブラックな笑いでいっぱい。
自分の≪かいわれ大根≫を食べて生きていこうかなどと考えた場面は、『方舟さくら丸』のユープケッチャと繋がった。これまで安部公房を読んできたので、分かりやすい。
安部公房作品の中でも読みやすいほうだと思った。
受診した病院のベッドがドラゴンボールの筋斗雲のように主人公の男になついて、そのベッドに乗って、夢のような世界を移動する。三途の川や賽の河原も出てきて、あの世までネタにするのかこの人は、と笑うしかない。後半には、安楽死についての問題も出てきて、“死”がテーマとなっている。
いちばん興味深かったのが、ピンク・フロイドの曲が何度か出てきたこと。
安部公房は彼らの大ファンだったらしい。
安部公房の小説と、ピンクフロイドの楽曲、確かに繋がる部分がある気がしていた。
ドナルド・キーンが書いた解説も自分も共感する部分や、新たに発見するところが多く、面白かった。
安部公房は壁の向こうで待っている…
まだまだ深く読まなければ。
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安部公房は多分二作品目。独特な雰囲気。怪奇で幻想でシュールでナンセンスでホラー、という感触。文体は読みやすい。なのに全体として、単純に静かな、内なる狂気を表したものなのか、何らかのメタファーが込められたものなのか、ということすら解読しきれなかった。一つだけ、ベッド=カンガルーの袋なのかなとも思ったけど、だからなんだったんだ、という感じ。その辺含めて、楽しめた。時間掛けず一気に読み通すべき作品。
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足にカイワレ大根の生えた主人公が自走ベッドによって夢のような世界を巡る。安部公房、最後の小説。
安部公房らしいシュールな世界。明らかにテーマは「死」だろう。ただこの小説、あまり暗喩としての解釈は関係ないような気がする(ベッドや賽の河原などの分かりやすいものを除き)。夢のような雰囲気を味わうものなのだろう。かといって単なる意味不明な垂れ流しに感じないのは、あくまで主人公が状況を客観的に捉えているからだろう。
そしてブラックユーモアの底に確かに感じる「死」。こういう風に書かれると、何だかかえって悲しくなる。所詮、誰の「死」も(著者自身の「死」も)こんな程度だと著者に言われているような気分になった。