紙の本
身近であり遠い存在であった「木」を知る
2002/01/10 23:49
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投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西岡常一さんと小原二郎さんの共著。西岡さんは宮大工で、現場での豊富な経験から法隆寺を千三百年にわたって支えて来た木について語り、小原さんは、農学博士で建築学科教授などを遍歴されている方で、いわゆる学術的な面から木や建築を語る。
本の構成としては、はじめの70ページぐらいを西岡さんが語り、その後150ページほどを小原さんが引き継いで、西岡さんの語りを学術的にフォローしていくというものだ。
西岡さんの語りの部分は、『木のいのち木のこころ(天)』(新潮OH!文庫)の内容とほぼ同じと言ってよいと思う。すでに私は『木のいのち木のこころ(天)』を読んでいたので、特に新鮮な印象は受けなかったが、続く小原さんの解説となる文章は、木について徹底的に教えてくれるもので、小原さんの解説を読むと西岡さんの語りが益々生きてくるというすばらしいものだった。
小原さんは、まず、針葉樹と広葉樹の違いを詳しく説明してくれる。顕微鏡写真や図を多用して、「木」と一言で言ってもその構造は随分と違っていることを教えてもらった。そして、それぞれの木が持つ性質を述べて、「…だから法隆寺にはヒノキが使われている」と言われると、「なるほど。なるほど」と納得できる。木造の輸送はどのような方法で行われていたかも検証されており、その知恵と執念に驚き、戸惑いすら感じた。世界的に見た木の分布や、それぞれの国での木の使われ方を知ると、日本人の木に対する特異とも言えるかかわり方が見えてきた。
宮大工という人に興味を持って、西岡常一著『木のいのち木のこころ(天)』、小川三夫著『木のいのち木のこころ(地)』を読み、続いて読んだのが本書。これらを読んで、「すべての生命は永遠の時間の中でつながっている」という、仏教の輪廻の思想が自分なりに実感できたと思う。良い経験をさせてもらった。
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[ 内容 ]
最後の宮大工といわれた西岡氏と建築学の小原千葉大教授という、木を扱ってきたプロと木の専門家の組合せによる木の知識を与えてくれる好書である。
檜は材になってから200年は力学的強度を増すことなど、古代の宮大工の経験知の鋭さを指摘している。
[ 目次 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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手先が器用なだけじゃダメなんだ。
自然を知り尽くすこと。
自然のありがたさを知ること。
長い間保存されているこういう寺院には、
素晴らしい職人さんがいるからこそなんですね。
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針葉樹と広葉樹じゃ、断面の構造が違うらしい。
針葉樹が、均一で柔らかいのは、
仮道管一種類だからだそうだ。
木の種類を特定していくのもいろいろ方法があるんですね。
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無垢の用材で建てられた木造建築の耐震性や耐久性、健康や情緒への影響などを盲目的に信頼し、崇め奉る人は日本には結構いる。
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30年以上前に書かれた本なので、情報は若干古い。
が、私の木の見方を変えてくれた本。
基礎知識をもう少し蓄えてからもう一度読みたい。
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前半部分は私の大好きな宮大工、西岡常一氏のことばを主に展開。
世界最古といわれる法隆寺を軸に、法隆寺大工として西岡棟梁に受け継がれた口伝と経験から発せられる考え方は感慨深い。「古いものにも良いものがある」ということをあらためて思い知らされる。
後半部は西岡棟梁の「木」、主に「檜」であるが、について語られたことを学問的に検証し証明している。
西岡常一氏に関する本を読んだのはかなり久しぶりであったが、本書を読んで私は、「木造建築が好きでよかった」とあらためて思った。
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古いお寺などが、途中で火事に遭うことはあったとしても、今もそのまま残っているのは、単に木でできている建物は丈夫だからだろう、くらいに考えていましたが、それは大きな間違いだということが分かります。
木を長持ちさせるために、昔の人たちがいかに木の特性を知り、それを生かしていたかがよく分かりました。例えば、その木材が、木のときに南を向いていたのはどちら側かなどということも、分かって上で使う必要があること、あるいは、気が使われる建物とその木の産地が近いほうが、気候が似ているため条件がいいなどというのは、今まで考えたこともありませんでした。
私の住んでいる家もそうですが、木と木の接合部分に金属やボルトを使っていると、何となく丈夫になるような気がしますが、それは間違いで、かえって金属が錆びることで、木もダメージを受けてしまうそうです。
改めて日本の、木を使った建築の素晴らしさを知るとともに、今後は、良質な木材が不足しており、何かあったときに、古いお寺などの修復や再建が難しいというのもショックな話です。日本の文化遺産を、何とかして後世に残していきたいものです。
前半は宮大工の方のお話、後半は学者の方の考察という構成ですが、やはり、現場の方の声は印象的で、読み手の心を打ちます。