紙の本
絶品の食べ物と飲食店にまつわる短編集
2016/04/10 21:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は短編16編を集めた小説で、一編ずつ食べ物に絡んだ話である。食べ物といっても家庭で食べる料理ではなく、レストランや料理屋で出されるメニューが中心となっている。また、集めたというのは不適当で、それを意図して神吉拓郎が描いたものである。
第一編に登場するメニューは虹鱒のムニエルである。第二編は中華街の朝食で豆乳と油条。どちらもカップルではあるが、前者は明るく、後者は暗い。出てくるメニューの食べ物はストーリーとは直接関係しないのだが、何か関係を持たせているのかもしれない。
以降、鰻、洋菓子、小学校時代の弁当、食材としての鮎などなど上げているときりがない。ただし、これらの食べ物とストーリーは直接関係していない。しかし、ストーリーのほとんどは男女の間の微妙なやりとりになっている。そこに添えられた背景がレストランや出された食べ物になっている。
もちろん、そこにはてんぷら、寿司なども登場するが、レストラン自体もストーリーに絡んでくる。それがまた食通には興味深いのではないか。同窓会的な年輩者の集まりも出てくる。昔話に花を咲かせるが、そこで語られる話はやや古い話が多い。小学校ではなくて、国民学校まで登場する。
ストーリーは、最近では珍しいほど含みを持たせたもので、その先は読者自身が考えるように作られていると思う。神吉作品を掘り返して読んでみたいという思いを起こさせる絶品の短編集であった。
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主題はのり弁やオムライス、そして上海蟹やフレンチなど多種多様な食材と料理。そこに男女の機微や洒落た人生模様が織り交ざった味わい深い短文集。おまけに「お職」なんていう言葉に出会えるのも嬉しい。
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表紙買いで
こんなにも上質の短編集に出会えると
自分の感性を褒めたくなります。
それはそれは美味しそうなものばかり。
アルミの弁当箱にぎゅうぎゅうに
詰められ 米粒がつぶれた白飯までが
神吉さんのペンにかかると
もう一度食べたくなる珠玉のごちそうに。
今はなき鎌倉書房がかつて出していた
季刊雑誌「四季の味」に
掲載されていたものをまとめて
新潮社から出されたのが1987年。
光文社さん
よくぞ文庫にしてくださった。
上質な言葉が品よく
落ち着いて並んでいる。
大人であることの
優越感を味わわせてくれる。
こんな心地よい一冊に出会えたことは
幸せの一語に尽きる。
ひとつひとつの物語を読み終えるたびに
ひとりの部屋でため息ついたり
快哉を声に出したり
忙しい読書になりました。
お料理のひとつひとつの新鮮な輝きが
まったく失われていないことに驚嘆。
少しも古ぼけていない。
過去の流行でも歴史の遺物ではなく
今も誰かの舌を唸らせているはずだと
確信できる。
美味しいものにも 普遍性は
内包されているのだと知りました。
それからもうひとつ心惹かれたのは
物語の中で美しい立ち居振る舞いと
質の高い会話を魅せてくれる大人の
男女たちが ほとんど
連れ合いをなくした独り身であること。
それなりの年月を
気の合った連れ合いと過ごし
子供や孫にも恵まれ
再び独り身になった大人。
その暮らしの
なんと満ち足りていること。
その描き方にこそ万雷の拍手を送ろう。
この本は是非とも
50代の大人たちに読んでほしい。
今年一番の 心弾む一冊だ。
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食べ物にまつわる短編集。
美味しい料理を絡めた素敵な大人達のお話。
どの話も風情豊かで、人生を積み重ねてきた大人の気取りのない格好良さが垣間見える。
気兼ねなく楽しめる行きつけのお鮨屋さんがあったり、紹介したくなるような天ぷら屋さんがあったり、何年経ってもその味が忘れられない洋食屋さんがあったり。
年齢を積み重ねるが故に見える景色には、きっと味わい深い世界が広かっているのだろう。
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17編からなる、料理または料理を出す店にまつわるエッセイ集。
登場する男女ともに、慎ましやかで、大人である。
失われた、良き時代というかんじで、このような作品が、読みやすい文庫で復刻されたことはとても嬉しい。
文章も美しく、本当に一編が短いのだが、読み終えたあと、しみじみとした満足感がある。
食べ物の描写も、上品で、おおげさな書き方をしていないのだけど、つばがわいてくる。
連れ合いを失った人物が多いきがする。
失った時代を懐かしむ話も多い。
そんな、ちょっとした、ほろほろとくずれるようなもの悲しさがただよっているようなところも魅力だ。
いろいろと、ほどよい。
解説が、私の感じたことをぴったりと言い当てている。
私も、向田邦子、思いだしたわ〜
五郎さん、思い出したわ〜
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it like a gourmet essay. anyway, it was lost El Liloron in Yokohama.
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浅学にて神吉拓郎は初読だが、なんと豊かな短編世界。なんの事件も起きることなく、ただひとつの季節のひとつのシーンがそっと切り取られて差し出されるのみ。筆力がないとできないですなー。
昭和のなかごろには、こんなにかっこうのいい男とっくに女がいたのね。
食べ物の描写は見事のひとこと!
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再読でも出てくる料理がどれも美味しそうでした。
美味しいご飯が食べたい…!魚料理が特に美味しそう。
この年代の作家さんなら自然なことなんだろうけど、登場人物たちが昔の友人や同級生と再会したら二言目には配偶者や子どものことを訊きがちなんだな…と時代の流れを感じました。そしてだいたい、出てくる女性が未亡人でほんのり恋の香りで。。
でも料理蘊蓄は無くて、健啖家の人も多くて好きでした。いっぱい食べる人はいいなぁ。
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一編が短くて隙間時間に読むのに丁度いい。
食べ物の描写は堪らぬ美味しさを伝えてくれるのに物語の邪魔にならないほど控え目で登場人物たちのささやかな交流を引き立てていて気に入った。
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美味しそうな表紙と、短編で読みやすそうだったので手に取りました。
美味しい料理と、恋愛小説というほど押しつけがましくないささやかな男女の機微が描かれている。登場人物がほとんど中年以降の人ばかりで、なんとも味わい深い小説だった。料理の描写も美味しそうでたまらない。カキフライ食べたくなります。あとがきで「孤独のグルメ」の感じと似ていると書かれていて、なるほど確かに、と思いました。ふらっと入ったお店が大当たりだった気分で嬉しい。
直木賞作家とのことですが、初めて知った作家さんでした。他の作品も読んでみよう。
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食事と人生のほんの一時を切り取ったような17の掌編集。
年配の登場人物が多いことから哀愁だったり郷愁だったり機微が漂っているような。
食事シーンでもその人のこれまでが会話に表れている。
食べ物の描写も上手くて美味しそう。
牡蛎フライとか本当に美味しそうだった、話はまるうとか好きだなぁ。
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紳士的本
本的紳士?
短編で
大きな展開もなく
物足りないなさも感じるが
逆に
そこに癒される
この方の他の作品も
読んでみたい
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解説通り、年齢高めの男女の会話が洗練されています。
品の良さそうな女性や未亡人が登場するのでオジサンが好きそうな作品集です。