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台所のラジオを聴きながら、食べ物にまつわる短編。
シェフとソース会社社長のケンカで、
いっとき味が変わってしまった紙カツ。
棒パンを愛す抜き打ち検査感。
亡くなった内縁の夫が、好んでいたさくらの海苔巻きの真相。
毎日食べるものについて、架空旅行で見つけた油揚げのきつねうどん。
同級生と久しぶりに食べにいくことになったビフテキ。
店が変わっても味は同じだったマリオのコーヒー。
入れ替えた冷蔵庫と編み物ばかりしてきた毛玉姫とソース焼きそば。
冷凍食品の子羊のローストとひとしらべでわかってしまった西島君と僕の真実。
なくした財布と思い出したアリス
お店の生姜焼き定食。
部屋探しの斡旋屋が思いを寄せてしまったアズキと鰻重。
事件がはじまりそうな予感を、ファミレスでハンバーグを食べながら待っているとき。
パン屋の役者に憑依したまま戻れなくなった彼女とお茶漬け。
読むの、つ、疲れた。。。
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秀逸な短編集。それぞれの話が少しづつリンクしている。
「マリオ・コーヒー年代記」が一番よかった。
マリオとの出会い、お互い少年から大人になり取り巻く環境が変わりながらも、「僕」はマリオのつくるコーヒーが好きで、ずっと店に通い続けている。
その不変性と信頼関係が微笑ましい。
どの話に出てくる食べ物もみずみずしくて、魅力的。
心が穏やかになれる作品ばかりです。
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短編集。どのお話も食べ物とラジオが出てくる。食べ物はだいたい地味で庶民的。でもおいしそう。ソースで真っ黒の焼きそばとか。ラジオはアナウンサーが静かな声で日常のことを話す。一番好きなのは「マリオ・コーヒー年代記」。おいしそうなコーヒーと、主人公がその都度目的というか、趣味生きがいを見つけるところがよかった。
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お初の作家さん。
12編の短編集ですが、ラジオから流れてくる静かな声の女性アナウンサーの番組と、何かしらの食べ物がどのストーリーにも登場します。
不思議で独特な世界観。正直よくわからない印象が強めですけど、読んでてイヤじゃない世界。
恐怖じゃなくて不思議。
とても静かでゆっくりした時間が流れている世界です。
夜間押ボタン式信号機と<十時軒>のアリスが印象的でした。
ラジオ聞いてみようかな、、 読み終わった後にふと、そんな気持ちになりますね^^
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少し寒い遅い朝、暖かな布団の中でヌクヌクと色んな物語を思い浮かべる。そんな風に生まれた小さな話が所々でつながって、すべてに共通するのは台所に置かれたラジオから流れる柔らく優しい女性の声。そして紙カツ、ハンバーグ、油揚げ、海苔巻き、高級では無いけれど美味しい料理たち。
いかにも吉田さんらしい物語です。
ちなみに最後の料理は冷えた白米にお茶を注いだお茶漬けでした。
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紙カツと黒ソース、さくらと海苔巻き、毛玉姫、〈十時軒のアリス〉、明日世界が終わるとしたら、が好き。
私の住んでる街のどこかにはありそうでなさそうで、こんなお店あったらいいな、こんな人いたら面白いな、そんな風に思う世界観が文章の隅々むで広がっている。
そしてこの本に出てくる吉田さんの料理の描写も、いつもながら本当に美味しそう。
紙カツ、海苔巻き、油揚げ、コーヒー、ヨイッパリベーカリーのパン、仔羊のロースト…読んでるとお腹がすく。
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紙カツにじゅわっとソース。その日は早速ロースを叩いてできるだけ薄くし、豚カツにしました。かと思えば、美味しそうなものは、それくらい。台所のラジオは多くのおうちでさり気なくそこに置かれているもの(らしい)で、この本にもそうやって登場してきた。そこまで台所にまつわるものでもなく。ふんわりとした登場人物の、ふんわりとした短編集。日々時間に追われる自分には、中二病にも見える苦手な人たちだらけだった。
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短編。台所から流れるラジオを、どこかでも同じように聴いているひとがいる。
ホラーもあり。
C0093
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吉田篤弘さんは「つむじ風食堂の夜」や「それからはスープのことばかり考えて暮らした」など読んだことがあるが、この方の書く食べ物はどれも美味しそうで、個人的には食べ物の描写だけでもツボに入る。紙カツ食べたい。
台所のラジオが流れる情景でつながっている、ちょっと不思議な短編が12篇入っていて、それぞれはすぐ終わるし、大きな盛り上がりはなく淡々と静かに進んでいくので寝る前に読む本にオススメ。
同時に「革命のファンファーレ」を読んでて、あんなふうに攻めた生き方もすごいなと思うけど、やはり個人的にはこういう静かな世界に憧れるなと、再確認した。
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図書館で借りたもの。
それなりの時間を過ごしてくると、人生には妙なことが起きるものだ―。昔なじみのミルク・コーヒー、江戸の宵闇でいただくきつねうどん、思い出のビフテキ、静かな夜のお茶漬け。いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、美味しい記憶。台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。
不思議な職業や物が出てくるので、なんだか現代の話じゃないみたい。
「女優洗浄機」とか「ひとしらべ」、「旅行話屋」など。
どこかファンタジーな空気だけど、嫌いじゃない。
ラジオっていいかも。
押し付けがましくないっていうか。
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何も見つからないってことは、無限の可能性を手にしてるとも言えるのかな。
完成した「未完の小さな物語」集。
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その名の通り、台所にひっそりと置かれたラジオと日常的な食べ物が出てくる短篇集。
ちょっと不思議な職業や変わり者と言われる人たちが暮らしているのを覗き見している気分。
物語が終わったその後も生きているんだろうなと想像してしまう。
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夕方にひとり、ラジオを聴く。
家の台所で。
静かな声の女性アナウンサーのお喋りを、食事をとりながら心穏やかに聴く。
いなり寿司、棒パン、黒パン、お茶漬け等、聴き手により食べるものは様々。
12編のショートストーリーが、時に登場人物を交差させながら進んでいく。
『さくらと海苔巻き』『油揚げと架空旅行』『明日、世界が終わるとしたら』が特に好き。
「明日から無人島へ行くことになったら、今夜、何を食べるか」
ラジオから聴こえてきた質問に、私も思いを巡らせてみる。
女性アナウンサーは子供の頃に好きだったハンバーグ、との答え。
さて私は何にしよう…美味しいと評判の〈丸山レストラン〉の紙カツなんていいかもね。
もちろんカジワラ印の黒ソースをかけて。
「おそらく男も女も年寄りも子供も、すべてのひとを笑顔にできるのは旨いものだけだ。食いものには、それを果たす可能性がある」
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昔なじみのミルク・コーヒー、台所のラジオと
夜更けのお茶漬け、江戸の宵闇でいただく
きつねうどん、子供のころの思い出のビフテキ…。
地味深く静かな温もりを胸に灯す12の美味しい物語。
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台所にラジオが置かれている世界、の短編集。
ひとつひとつが素敵な短編なので個別に感想を…
①紙カツと黒ソース
恋は甘酸っぱいウスター・ソースの味、なんて。
夏美の行きつけ<丸山レストラン>の店主と常連のソース工場社長の仲違いから、にんまりするエンディングが待っているとは意外でした。
定職につかず「悲しみをしまい込む箱」を作る彼氏なんて、という思考は余計。
②目薬と棒パン
フランス・パンを棒パンと呼び、バターをバタという「かれ」に、「きみは私の相棒にふさわしい」と密談を持ちかけられ、<抜き打ち検査官>をしている「ぼく」。
この作品に限ったことではないけど、日常の風景でも視点や表現を変えると秘密めいてわくわくしてくる。吉田篤弘さんならではというかんじ。
③さくらと海苔巻き
恋人に先立たれた三十六歳の多江の再出発。
寂しさはあるけど前向き、じめじめしてない。
④油揚げと架空旅行
元教員の野口から中島君に宛てた手紙。
<木曜薬局>とか、ネーミングセンスがありすぎる。
ガングリオンを検索したら実在していた。愉快。
⑤明日、世界が終わるとしたら
「明日から無人島へ行くことになったら、今夜、何を食べるか」
ラジオから聞こえた話題に、自分なら何を挙げるだろうと考える美々のもとに幼馴染みの直人から電話がかかってくる。
①といい、こういうテイストの話も書くんだなぁと、読んでるこっちも身構えていないから不意打ちでにやにやしてしまう。
⑥マリオ・コーヒー年代記
「世界の真ん中でコーヒーをつくるひと」マリオ(仮)と、「僕」の一人称の変化および人生の年代記。
⑦毛玉姫
近頃の冷蔵庫には<予測機能>がついているんですね。「たまには、お料理をしてみませんか」とか「今日もお昼ごはんは海老ピラフですか」とかしゃべるんですね。
冷蔵庫と恋におちるのかと思ったら違った。
⑧夜間押ボタン式信号機
SF?都市伝説?Gはゴキブリのことではない。
⑨<十時軒>のアリス
むかし通ったあの店はいま、というやつ。①と⑤もそう。
学生時代の財布のなかから<十時軒>の名刺大のカードを見つけた美也子は、三十年ぶりに行ってみることにする。お店はまだ営業しているのか。
⑩いつか、宙返りするまで
子どもの頃の劣等感を克服すべく<トランポリン倶楽部>に通う登戸と、「亀は時間なんです」というアズキ。
関係ないけどエンデの『モモ』に出てくる亀のカシオペイアを思い出した。
⑪シュロの休息
物語の中の探偵の悲哀、みたいな。
⑫最終回の彼女
ドラマで演じたパン焼き職人が抜けきらず女優を辞めてパン屋になった美咲と、美咲のために<女優洗浄機>の製作をしている僕。
なんでもそろっているバイキングに、ほんとうに食べたいものはない。