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昔なじみのミルク・コーヒー、台所のラジオと
夜更けのお茶漬け、江戸の宵闇でいただく
きつねうどん、子供のころの思い出のビフテキ…。
地味深く静かな温もりを胸に灯す12の美味しい物語。
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台所にラジオが置かれている世界、の短編集。
ひとつひとつが素敵な短編なので個別に感想を…
①紙カツと黒ソース
恋は甘酸っぱいウスター・ソースの味、なんて。
夏美の行きつけ<丸山レストラン>の店主と常連のソース工場社長の仲違いから、にんまりするエンディングが待っているとは意外でした。
定職につかず「悲しみをしまい込む箱」を作る彼氏なんて、という思考は余計。
②目薬と棒パン
フランス・パンを棒パンと呼び、バターをバタという「かれ」に、「きみは私の相棒にふさわしい」と密談を持ちかけられ、<抜き打ち検査官>をしている「ぼく」。
この作品に限ったことではないけど、日常の風景でも視点や表現を変えると秘密めいてわくわくしてくる。吉田篤弘さんならではというかんじ。
③さくらと海苔巻き
恋人に先立たれた三十六歳の多江の再出発。
寂しさはあるけど前向き、じめじめしてない。
④油揚げと架空旅行
元教員の野口から中島君に宛てた手紙。
<木曜薬局>とか、ネーミングセンスがありすぎる。
ガングリオンを検索したら実在していた。愉快。
⑤明日、世界が終わるとしたら
「明日から無人島へ行くことになったら、今夜、何を食べるか」
ラジオから聞こえた話題に、自分なら何を挙げるだろうと考える美々のもとに幼馴染みの直人から電話がかかってくる。
①といい、こういうテイストの話も書くんだなぁと、読んでるこっちも身構えていないから不意打ちでにやにやしてしまう。
⑥マリオ・コーヒー年代記
「世界の真ん中でコーヒーをつくるひと」マリオ(仮)と、「僕」の一人称の変化および人生の年代記。
⑦毛玉姫
近頃の冷蔵庫には<予測機能>がついているんですね。「たまには、お料理をしてみませんか」とか「今日もお昼ごはんは海老ピラフですか」とかしゃべるんですね。
冷蔵庫と恋におちるのかと思ったら違った。
⑧夜間押ボタン式信号機
SF?都市伝説?Gはゴキブリのことではない。
⑨<十時軒>のアリス
むかし通ったあの店はいま、というやつ。①と⑤もそう。
学生時代の財布のなかから<十時軒>の名刺大のカードを見つけた美也子は、三十年ぶりに行ってみることにする。お店はまだ営業しているのか。
⑩いつか、宙返りするまで
子どもの頃の劣等感を克服すべく<トランポリン倶楽部>に通う登戸と、「亀は時間なんです」というアズキ。
関係ないけどエンデの『モモ』に出てくる亀のカシオペイアを思い出した。
⑪シュロの休息
物語の中の探偵の悲哀、みたいな。
⑫最終回の彼女
ドラマで演じたパン焼き職人が抜けきらず女優を辞めてパン屋になった美咲と、美咲のために<女優洗浄機>の製作をしている僕。
なんでもそろっているバイキングに、ほんとうに食べたいものはない。
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台所に置かれたラジオから、静かな声の女性が、世の中の大きなことではなく小さなことについて話すのを聞いている主人公たちの短編集。台所のラジオ故、食べ物にまつわる話でまとめられている。
個人的には「さくらと海苔巻き」が素朴で良い話で好き。
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コーヒーを飲みながらゆっくりと味わうように読めるすてきな短編集。同じラジオをきいている人々の様々な生活そして人生。無性に知らない誰かをいとおしく思えてくるような、そんなお話の数々。美味しそうなものがたくさんでてきて、今週末はちょっと足を伸ばしてなにか美味しいものを食べにいこうかなぁと、ふと思った。
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他の小説とリンクしている?
・名探偵「シュロ」→おやすみ、東京?
・「人工降雨機」→つむじ風食堂の夜?
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特別でなく、なじみの食べ物がとても美味しそうに描かれていました。紙カツ、海苔巻き、きつねうどん、コーヒー牛乳、世界一旨いホットドック、昔ながらのオムライスとか。毎日同じことをし続けることに安心する、ということではないだろうか、食べ物にも。思い入れ、こだわりがなくても、この味だから毎日食べられる、というのがいい。食べ物、日常、人生へと繋がっている気がした。懐かしさと美味しい話。
シンプルで温かくて切ない「さくらと海苔巻き」は泣けた。ぼんやり読んでいると置いてゆかれそうな章もあった(流れがそういってそこへいって気づきに辿り着いたり、ちくんとズキンときたり、個性にとんで奥が深かった)。連続して読むと頭を切り替えるのが少しなんぎ。マリオ・コーヒー年代記、毛玉姫、十時軒のアリス、良かった。台所ではラジオ派なのでこの雰囲気は好き。ラジオからの問いに、私なら、まだ答えは出ない。
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H&Fという、ちょっとおタカいお茶の専門店を教わった。
流行りのFlavor Tea。マンゴーとか、ピーチとか、、、普段は苦手に感じてしまうような少し変わった香りのルイボスティーが売り。
安いティーバックのハーブティーは試したことがあったけれど、苦手に感じたままそれきりになってた。
そもそも珈琲党だし、ノンカフェインなんて、という思いもあったりして。
でも、薦めてくれた妹のセンスは正しくて、確かにここのは美味しい。
ちょっと、高いだけのことはある。。。
感心して、ハマるとつい全部試してみたくなっちゃう癖が出て、今はいろんな味を並べて毎日、順に楽しんでる。
透明感があって、パッと見たところ大して変わったところもなさそうで、、、
スンナリ飲めて、ふーん、って通り過ぎちゃうだろうと思ったのにな。
すっかりファンになって、またエンゲル係数が上がっちゃった。
ちょっと、似ている。
1話ごと、どうかすると1頁ごとに、ひっかかってそのままスルーできないフレーズに出会っちゃう。
その時に感じたことを直に書き記しても、書く端から嘘になっていくような感覚。
ちょっと困ったナ・・・ちょっとした感想くらい、スグ書けると思ったのにナ。
最初に戻っては同じことを繰り返すけど、今度は違う場所にひっかかって立ち止まってしまったりする。
今まで出会ったことのなかったタイプのモノ。
「何何みたい」が思いつかないだけでこんなにうろたえてしまう自分を、自分でも少し持て余し気味。
前からこんなだったかなぁ。
記憶を辿ろうとしても、この本に登場する十時軒が「時間が来ないと出現しないよ」とでも言いそうな気がするのと似て、どうも釈然としない。
何でもそのまま、「こういうのも、あるんだぁ!へぇ!」って、感じたまま受け入れることを自分に許せちゃう、ある種のピュアさみたいなものを、いつの間にか失くしてしまっていたのかもネ、なんて、曖昧な結論めいたことを書いて、読み返してやっぱり違うなと思っていたりする。
そうそう、まるで、九州に行くたびにお世話になっていた、東洋医学を学んだ整体の先生みたいかな。
首が痛いと言ってるのに、思いもよらない、全然違う身体の部位を押して、起き上がったら嘘みたいに軽くなっていることに驚く私に「カラダはねぇ、全部繋がってるんだよぉ」と笑ってたっけ。
全身をほぐしながら、さりげなくいろんな話を聞いてくれる彼が、ほぐしてくれていたのは外側の筋肉だけじゃなかったんだろう。
お金のかかる子育てのために転職したと聞いたけど、先生、元気かな。
こういうヒトにはこういう応酬。こういう奴にはこんな盾。こんな人にはこういう鎧。
無意識にたくさん着込んでガードしてたはずの隙をついて、ココロの一番柔らかいところをギュッと押されちゃった感じ。
そういう感じかな。
明日読み返したら、やっぱり違うな、と思うかもしれない。
さて、どうしようかな。
やっぱりもう一度読んでみよう。
いや、しばらく離れてみよう。
でも気になっちゃうかなぁ、、、ホントは、苦手なのかも?
きっとそうだ、、、きっと、そうかな。
うーん…そうかな?
…やっぱり好きなのかもしれないな。
そぅっと、この人の、他のも開けてみようかなぁ、、、
と、思っているところです。
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凛と鎮座し、落ち着いた女性の声を響かせるラジオをモチーフとした連作短編集。
まだ良く知らない吉田氏であるが、どちらかというと『イッタイゼンタイ』的な世界観。
どの編にも登場する台所のラジオを核とし、ゆる~いキーワードや印象で繋がっているのだが、個人的な好みとしてはもう少し強い関連性を持ってくれている方が分かり易くて好き。
それでも全体的に描かれている”食”の確かさというか包容力と、ぎすぎすした現実世界からの逃避話に安らぎを感じ、心が落ち着く。
”シュロの休息”が一番好きかな。
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★何も見つからないこともひとつの結論なのだと思う。(p.268)
【感想】
・雑然としていて、雑然とたのしめる。
【一行目】
〈丸山レストラン〉の紙カツの味が変わったのは、ほかでもない自分のせいなのだと夏美は知っていた。
【内容】
・さまざまな短い話があり、共通項は台所にラジオがあることと、食べ物が出てくること。
▼簡単なメモ
【青空軒】ヨーヨー町(揚々町)にあるカレー屋。美々と木島が生まれ育った町。うん? どっかで聞いた名前やとメモを調べてみた。『電球交換士の憂鬱』に出ていた。そっちでは「名古屋の北の方にある揚々町のカレー屋。『死ぬまでに絶対食べたいカレー・ベスト5』に入る。食べたときはそうでもないが後になって、人によっては翌日になってから辛さがよみがえってくるのが病みつきになる理由。」とメモしていた。
【青空荘】相楽くんが住むアパート。裏に沼がある。
【アズキ】登戸が部屋を斡旋した女性のひとり。暑いのが苦手。なのにコーヒー農園で働いていたそうだ。
【アリス】美也子と桃子が学生時代にそう呼んでいたレストラン「十時軒」の主人。午後十時から午前二時までしか営業していなかった。当時すでに四十八歳が
【イバガサキ】抜き打ち検査官の師匠。
【うまいもの】《ほんとうにうまいものは、人間に反復運動を促します。》p.83
【演技】《みんな、云ってみれば演じてるようなもんです》p.261
【お好み焼き】野口の考える「完璧な食べ物」。
【おれ】「僕」→「私2」が三十代を終わる頃になった姿。図書館で本の修繕を専門的にするようになっていた。
【カエデ】シュロの助手。病弱な上に骨折しやすい。ハンバーグとサラダとライスさえあればよい。
【梶原】ソース工場の社長。
【柏倉】登戸の友人。
【紙カツ】丸山レストランの代表メニュー。元々は丸山の父、初代がその日余った豚肉を紙のように薄く延ばして自宅の食事に供していたもの。カジワラ印の黒ソースが決め手。
【悲しみをしまいこむ箱】相楽くんが作ろうとしている。
【彼女】西島君がひとしらべをしたターゲット。気づかれたあごくへんな調子になった。
【亀】アズキが働いていたコーヒー農園の八十二歳の園長からもらった。亀は時間だと言われたらしい。
【ガングリオン】野口の病気。
【観覧車】マルフク遊園地にある。「かれ」と「ぼく」が抜き打ち検査をしたあとに問題があったら観覧車のなかで話し合う。
【木島直人】美々の友人。眼鏡をつくる会社に勤めている。
【久保田】「わたし」の知人。古道具屋。ラジオを買った。腹話術が趣味。トムという人形を使っていてそのセーターは「わたし」が編んだ。
【毛玉姫】「わたし」のことを新しい冷蔵庫はそう呼んだ。日々新しいセーターを編んでいるのに自分のセーターは毛玉だらけなので。
【光一】多江の恋人だった。喫茶店「ヒカリ」をやっていた。七年前に死んだようだ。海苔巻きが好きだったが多江は知らなかった。コーヒーとホット・ドッグの天才。
【相楽くん】夏美の恋人。ときおりおかしな発明に夢中になる。
【咲子��桜井の叔母。占い師をやってるいとこの母。長く入院したあと回復して丸山レストランに行った。
【さくら】光一の遺した謎の名前。
【桜井】ラストの話の語り手。機械設計士。お茶漬けを食べながらラジオを聴いているといいアイデアが出ることが多い。
【G】西島君がひとしらべをする対象の分類のひとつ。特殊な分類で、もともとGタイプの人間というのではなくGになるという分類。とあるスーパーで売っている子羊のローストと関係がありそうだ。
【しのはら】野口の通うお好み焼き屋。「オコノミー」登場で苦境に。
【十一月/じゅういちがつ】「わたし」が久保田さんに引き取ってもらった古い冷蔵庫を買っていった若い男。
【シュロ】名探偵。かなり有名。わけのわからないことを言うが。どうやら左側に誰かいるらしいが誰にも見えない。《僕はただ、どこのドアもあけられない鍵に魅かれるだけで》p.236
【女優洗浄機】桜井がつくろうとしているマシン。
【多江】光一にはもう一人恋人がいたと思っていた。
【小さなオーケストラ】「私2」が始めた。
【地下鉄の歌い手】地下鉄駅構内か車内で、ちいさな声で一度かぎりの唄を歌う流しのシンガー。かれの六番目の仕事。
【つばめ】美也子の実家近くの喫茶店。
【鉄火丼】野口がお好み焼きの次に毎日食べることにした。「丸木食堂」に通った。
【天才】《多江、あのね、天才くらいヤバいものはないのよ》p.62
【独身者】《独身者のつくる料理は最低か最上かの両極端になる。》p.161
【トランポリン倶楽部】登戸が入会した。
【十和田】光一の友人。地元で居酒屋をやっている。
【中島】野口が手紙を書いている相手、以前の教え子。若くして「伊呂波ぶみ賞」を受賞した。
【夏美】丸山レストランの常連。紙カツのファン。書店でアルバイトしている。
【夏美の祖父】脇役専門の俳優だった。
【習志野】「私2」の司書の先輩。自分を解放するのはバイク。
【なんでもある】《「何もない」と「すべてがある」ことは、どうも同じような気がしてならない。》p.267
【西島】「僕2」の知人。律儀な人間で「なんとなく」なんてことばは使わないはずなのだか。料理人でないのが不思議なくらい料理がうまい。職業は「ひとしらべ」と自分で言った。
【ニッキ】カエデが出雲さんから預かっている賢い犬。
【抜き打ち検査官】いろんなことの抜き打ち検査を依頼され抜き打ち検査をする。「かれ」と「ぼく」が従事している。
【眠い】《眠いというのは、それ、現実逃避のことですよ》p.250
【野口】六十過ぎの男性。架空旅行記をしたためたい。『南都坊目誌』で「伊呂波ぶみ賞」を受賞した。めまいのあとガングリオンができその後料理に目覚める。
【登戸/のぼりと】アッセン屋。女の子にある物件に特化して部屋を斡旋する。
【ハシモト】木島直人くんが急にビフテキを食べたくなって美々を誘ったたぶん二人の地元のステーキ・ハウス。今は新幹線で行く距離。
【羽根島】桜井の父、明良が土地を買った辺鄙な場所。
【ハルカ】カエデの友人。
【ブルドッグ・パーラー】マリオが「ミランダ」の次に働いた店。D町にある。すごく広くて無数のさまざまなタ��プの机が並んでいた。その店の中にもうひとつコーヒーの店があるようなつくり。
【ヘリオトロープ】百貨店の地下にある、野口がコーヒーとエクレアをいただいた喫茶バー。
【速い】《なせ、速いことをよしとするのか理解できない。いまでも、まだよく判らない。》p.54
【棒パン】「かれ」のよりどころ。ブラックチョコレートを挟んで食べるのも好み。
【ぼく】仕事は「写真館のひと」で内山写真館のあとをついだ。同時に抜き打ち検査官もやっている。
【僕】マリオの店に通った。
【僕2】人生の大半が「なんとなく」でできている。まあ、多くの人がそうだろうと思う。
【木馬の修理人】マルフク遊園地の回転木馬の修理をする。「ぼく」の元の仕事。
【堀川美緒】夏美の大学時代の演劇部の後輩。
【ほんとうのこと】《ある程度、人生を前にすすめたら、あとはもう「ほんとうのこと」について考えるだけでいい。》p.78
【前原京子】木曜薬局の薬剤師? 昔風の麗しい女性。
【待つ】《じっと待っていれば確実に時間はやってくる。》p.172
【マリオの店】正確にはコーヒースタンド「セブン」。U駅構内にある。十七歳の「僕」にとって「マリオ」は「世界の真ん中でコーヒーをつくる人」であり、ここのミルク・コーヒーは世界でいちばん旨い「コーヒー牛乳」だった。マリオという名も「僕」が勝手につけた名前とある。そして「僕」と同じ年だった。店長はほかにいて卵の化け物のようなタイプだった。マリオは次に「ミランダ」、その次に「ブルドッグ・パーラー」、次に「ミモザ」で働いた。『それでも世界は回っている(Ⅰ)』にマリオという人物が出ていて「『マリオ・コーヒー』の店長。いつも、そしてずっと右腕を吊っている。」とメモしていた。あっちにも電球交換士が出てくるが同じ店かどうかはわからない。
【丸木食堂】野口が鉄火丼を食べるために通ったが店主が交通事故で療養することになり終わった。
【マルフク遊園地】観覧車が有名だがじつは回転木馬もある。「ぼく」が以前やっていた。
【丸山レストラン】《材木置き場の裏の川べりにある小さな安食堂》p.6。紙カツが名物。
【美咲/みさき】澤田美咲。桜井が尊敬を寄せている女性。女優だった。「ヨイッパリ・ベーカリー」で主役を演じた後その役が抜けずパン屋になった。
【水色の目薬】かれが憤ると使う世の中への対処法。
【見つける】《何かを見つけることだけが大事なのではなく、何も見つからないこともひとつの結論なのだと思う。》p.268
【美々/みみ】三十路半ばの女。ターミナル駅の旅行会社で働いていたがつぶれた。共同生活をしている叔母は五十歳を超えて若々しく木曜薬局の薬剤師をしている。学生時代にフェンシングをしていた。前原さんかもしれない。
【美也子/みやこ】重たい財布を落としたフリーのライター。大学では新聞部だった。
【宮田】でぶの宮田。意外な男。「かれ」に今の仕事「抜き打ち検査官」の仕事を紹介した。
【ミモザ】マリオが働いた。
【ミランダ】T百貨店地下一階にある喫茶コーナー。マリオが働いていた。ホットドッグも旨い。
【モノローグ病】登戸がかかっている病気? 自分の状態をモノローグする。
【桃子】美也子の大学時代の友人。今は雑誌の編集長。
【安江】「わたし」の知人。図書館の食堂で働いている。宇宙の子とにとても詳しい。
【優子】ときどき勇子になる。多江の友人。
【幽霊】いるけどいないのか、いないけどいるのか。
【夜の自転車乗り】「私2」が自分を解放するために始めた。二重生活をしているような気分になるために。
【旅行話屋】旅から帰ってきた独身者から旅のみやげ話を聞く。そして入手した旅の話を忙しくて旅に出られない独身者に聞かせる。「かれ」の三番目の仕事。
【冷蔵庫】「わたし」の新しい冷蔵庫はよくしゃべる。しかも予測機能とやらが実装されていてちょっとした未来予知までできる。
【わたし】編み物が得意でそれを職業にした。若々しいものや瑞々しいものが苦手。
【私1】→野口
【私2】「僕」の五年後。図書館司書になっている。五十代になってもう一度「私」に戻った。
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遠い場所にいても、同じラジオを聞いている、それだけで繋がってるように感じる
「いつも心に勇敢なショートカットのおばさんを」
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吉田篤弘先生の読み落としていた本。
巡り会うべく会ってしまった本と言えるでしょう。静謐でそれでいて賑やかで、初めて会うのに昔なじみの人達で、知らない街並みなのに何故かそこで毎日過ごしている~そんな
矛盾を抱えながらもやけにしっくりくる時間。それを象徴するのが例えば台所できくラジオなのですが、私にとっては篤弘先生のほんを手にして深呼吸する時間がソレです。
かけがえのない安らぎってちょっとした贅沢ですね。
毎日忙しいくてつまらない顔をしている人(もちろん自分も含めて)にぜひともよんで頂きたい!
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吉田ワールドに最近ハマり出した。 なにやら心地よい不思議さ。 静かな夜にコーヒーでも啜りながらよみたい本。『さくらと海苔巻き』が良い噺でした。
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“台所にラジオがある風景”をテーマにした、12の物語。
どの話も、浮世離れしているけれど、どこか懐かしくて疲れた身体と心に染み込んでくるような心地よさがありますね。
一つ一つは独立した短編ではあるのですが、ちょいちょい別の話とリンクしている部分もあって、その辺のつながりも楽しめます。
リンクといえば、「シュロの休息」に登場した名探偵のシュロって、『おやすみ、東京』に登場した彼ですかね・・?なんて具合に吉田ワールドを堪能する私です。
出てくる食べ物も、紙カツ、オムライス、ソース焼きそば、海苔巻き、ビフテキ、そして“女は黙ってハンバーグ(名言ww)”等々・・。といった、庶民的だけど妙に心の琴線に触れるような“レトロ美味い”チョイスなのもそそられます。
台所に置いてあるラジオから流れてくる声に、耳を傾けたり傾けなかったりといった、懐かしく日常的な情景と、不思議な雰囲気が混ざり合った独特の世界を味わえる一冊かと思います。
個人的には「マリオ・コーヒー年代記」「最終回の彼女」がお気に入りでした。
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12の短編集なのだけど、そのどのお話にも静かな女性の声がゆるやかに台所のラジオから流れている。まるで別々のお話を繋ぐように。
別々のお話だけれど、人の行いや考えること感じることはまるで違うけれど、だけどどこかで繋がっている。まるで知らないところでわたしたちは緩やかに繋がって人知れず助けたり助けられたりして人は生きていくものなんだなぁ。
どのお話も、美味しいものが絡んでいる。
食べることは生きることだもの。
特に好きなのは、『紙カツと黒ソース』『さくらと海苔巻き』『マリオ・コーヒー年代記』『<十時軒>のアリス』。
今回も星新一さんと小川洋子さんをふと連想した。
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あとがきにあったけど、どの話も物語の「起承」あたりまでしか書いていないらしい。この先何が起きるのか、想像するのが楽しい。ちょっとだけリンクしてる話もあったり。表紙の絵にもなっている、ハシモトの話が好きだった。