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『#見えないものを見る カンディンスキー論』
ほぼ日書評 Day783
20世紀を代表する現象学者のミシェル・アンリが、抽象絵画を理論・実践共にリードしたワシリー・カンディンスキーの絵画論に関する考察。
Day780で基礎を作っておかねば、全く理解できず、途中で挫折していたことだろう。
一般には抽象画の代表のように言われるキュビズム以降のピカソ、そうした絵画は、それがいかに描かれた対象(バイオリンや人の顔)と一見かけ離れていても、それは対象物を描いている時点で具象画である…(かなり意訳すると)そんな序から論が始まる。
身体中に矢が突き刺さった男は聖セバスティアヌスであり、赤い服と青いマントを身にまとった女は聖母マリアであり、矢の線や赤や青の色は、そこに描かれる対象を表現し、その奥にある信仰心に訴えかけるための手段だった時代から、描かれるもの自体に意味を見出し、さらにその表現手法に様々な工夫を凝らす時代を経て、カンディンスキーにいたっては線(フォルム)や色自体が、厳然たる意味を持つことになる。
カンディンスキーいわく、
フォルムは内的な内容の外的表現である。
黄色と三角形の持つ音色は、いずれも同じく「鋭い」「やかましい」「とがった」である。
最終的に全ての具象画は抽象画に包摂(最近流行りのインクルージョン)される、なぜならば言葉やダンスも含めて表現自体が抽象となるがゆえに、表現されたテーマ(具象)はそこに包摂されると結論づけられる。
万人にオススメできる一冊ではないが、読み応えのある本を探している方は是非。
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