紙の本
相続税回避と、堤邦子に興味があり…
2018/09/29 10:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にしかわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
杉並区に杉並区立郷土博物館分館があり、郷土博物館とは全く離れているのになぜかなと調べていたら、かつて堤義明家系の法人所有の邸が在ったと知り、この書籍に行き着きました。
西武鉄道グループが、堤家の個人資産を相続税から逃れるためにさまざま対策をしていたことは、西武鉄道グループ問題が露顕した頃さまざまに報じられていたが、相続税回避のため自家資産を法人の資産に付け替えたゆえに、グループの経営が傾いた途端失う結果になってしまったのは皮肉ではあるが、やっぱり御天道様はちゃんと見てるんだよと、あたかも童話のテーマかのような顛末でした。
また、辻井喬は折にふれて堤邦子さんのことを書いてはいたが、これにも記載があり、目新しい事実は無かったが、読んでいてまた堤邦子に興味が湧いて来ました。
投稿元:
レビューを見る
「不思議、大好き」「おいしい生活」というコピーを始めとしたセゾングループの文化戦略に身を浸しながら価値観を形成してきた世代なので、堤清二が日本人の生活に描いた物語を理解したい、という気持ちをずっと持っています。たまたま先日NHKの「あの人に会いたい」という番組でも、柔らかい淡々とした口調で自らの挑戦と挫折を語る生前の姿が放送されていました。同じ世代の著者によるインタビューを縦糸に構成されている本書で見せる語り口も映像の雰囲気と重なり丁寧な雰囲気なのですが、でも改めて特に強く感じるのは自尊心。例えば義弟、義明に対する気持ちとして屈辱という言葉を著者が投げかけることに対する反応。絶対、認めようとはしません。セゾングループの物語は父が一代で築き上げた西武グループを舞台にした血の繋がらない兄弟の物語であり、それぞれの実母、操と恒子の代理の愛情戦争なのでありました。そのエモーションを経営者という枠の外で発散したのが辻井喬というコインの裏表の文学者としての顔。でも清二の情念というかクレイジーな天才性が発揮されるのはやはり、堤というファミリーネームを背負った時なのだと思います。文学者というもうひとつの顔を持った稀なる経営者ということで認識していましたが、堤清二のクリエイティヴが発揮されるのは政治的動きであり、それは共産党時代から変わらぬものであり、さらには衆議院議長の父から受け継いだものであるという宿命。堤清二は堤「政治」なのだという感覚を得ました。
投稿元:
レビューを見る
実業家"堤清二"としての顔と文学者"辻井喬"としての顔を持った天才・堤清二と、華麗で業にまみれた堤一族のお話。
堤清二のインタビューをもとにした本なので、主に清二視点で話が進む。
清二の父・堤康次郎をはじめ、堤一族のことはよく知らない。
西武グループの創業者と言われて初めてピンときた程度。
そんな私が読んでもとても分かりやすく、楽しめるドキュメンタリーである。骨肉の争いや帝王学など、ドラマのような話の連続で、小説を読んでいる感覚だった。
明治から昭和、めまぐるしく変わる時代。彼らのような豪傑な実業家が世の中を引っ張っていったのだろう。
彼らのことをより理解するために、他の関連書も読んでみたいと思った。
投稿元:
レビューを見る
堤義明氏は知っていても堤清二氏はまったく知らなかった。かつての西武百貨店を成長させ、セゾングループの代表を務めた人なんだ。西武と言えば義明氏で、西武ライオンズ球団のオーナーになられた際に初めてテレビで見て、まあいかにも……失墜した方への言葉を慎まなきゃ。清二氏も相当ワンマンで難しい人のようだけど、よくもここまで重ねてインタビューに応じてもらえたなと感心する。東急の五島家にしても同じで、あまりに莫大な資産と権力を相続しても、決して世襲はかなわない。どこまで儲けようと欲望は青天井で、まして守勢は難い。清二氏の告白は精一杯抑えているふうで、最期を迎えるまで復権を夢見ていたことを窺わせる。
投稿元:
レビューを見る
「堤清二」というか「辻井喬」は好きな作家である。その作品はほとんど目を通している。
しかし本書で評価できるのは、堤清二の最晩年に長時間のインタビューをしたことぐらいと思えた。
堤一族の周辺エピソードは殆どが既に知られていたことばかりだし、辻井喬の感性や知性を際立たせる取り上げ方も週刊誌的手法の匂いが漂う。
これでもかと無理に「伝説」に持ち上げなくとも、辻井喬は「良い作家」で十分ではないかと思った。
投稿元:
レビューを見る
一気に読んだ。
まるで映画やドラマのようなエキセントリックな登場人物とストーリー展開。これがフィクションではないのだから、驚きだ。
誠二氏へのインタビューのみで綴られているので、そういう意味では他の堤家の人物に対してフェアではなく、バイアスがかかっているとは思う。それから、本書には著者の主観も含まれている。そういったものがなるべく排除された文献があれば読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
自伝と違ってノンフィクション作品は、客観的にその事実を知ることができるので好きです。
堤帝国と言われている西武・セゾングループ。堤兄弟の確執が生んだもの、失われたものが丁寧に書かれています。(大宅壮一ノンフィクション賞受賞だけのことはある!)
西武百貨店も社長交代劇でいろいろありますが、日本のファッションやライフスタイルの一時代を築いてきたのは間違いないので、もう一度面白い仕掛けづくりを期待したいものですね。
投稿元:
レビューを見る
著者 児玉博氏のインタービュー力は傑出 最近も東芝西田元社長「テヘランから」
堤清二という希有な事業家であり文化人 両者の併存を成立させたのは父康二郎への愛憎
能力は自分が圧倒的に上と自負しながら、父が弟義明を後継者とした事への大きな屈折
そのコンプレックスがセゾン王国を誕生させ、バブルと共に崩壊させてしまった
悲しすぎるストーリー
人間の幸せとは何か 考えさせられるというより、こういう人生はご免
阪急電鉄の小林一三氏☆☆☆
事業欲はずば抜けていた
金銭欲は低位においた
京セラ稲盛和夫氏に相当
康二郎氏はリクルートの江副浩正
稲盛氏は江副氏を嫌った
200502再読
コロナ対策で日本の本質が問われている
南原繁を読んで「個の尊重」
はたと「堤清二」の価値に思い至った
「セゾン」の構想の大きさに比べると
本書は「私小説」のような肌触り
家庭環境の大変さがベースにあるのを再認識した
それが「業」というもの
そこは私も理解するところがある
堤義明の単純さ・スケールは後継者指名だけある
堤清二は時代を創造 後継者では無く初代ベンチャー
投稿元:
レビューを見る
堤清二生前最後のインタヴュー。
実は、辻井喬の本はほとんど読んだことなくてー
とは言え。昭和の終わりから東京近郊で生まれ育った身としては、もっぱら、堤清二としての仕事ばかりを見てることになる。
子供のころ、船橋西武によく連れられ、PARCOのCMや無印良品、サンシャインシティに目を見張り、90年代前半は雑司ヶ谷に通ってて、池袋西武やセゾン美術館、リブロ、LOFTなんかに足繁く立ち寄ってたりしたので、ある意味、青春時代は堤清二/辻井喬の作品にどっぷり漬かってたようなもの。
彼は企業メセナとか、バブルを象徴するような人物なんだ。
若い頃は共産党活動してたとか、成金で俗物の父親が大嫌い、その事業と性格も受けついだ異母弟の堤義明のことは徹底的にこき下ろす、などと、語り口は温和なのに、割と精神的武闘派。そして努力する天才の常として、他人が自分ほどに出来ないと、努力が足りないと叱り飛ばす、て、まるで宮崎駿と同じニオイを感じるぞ…?
天才なのは確かなんだろう…ほとんど潰れかけてた池袋西武を立て直し、ついでにそれまで場末の町だった池袋そのものを繁華街にした。(でも池袋西武、トイレがショボいんだよなあ、隣の池袋東武のゴージャスなトイレと雲泥の差で。) PARCOや無印良品のコンセプトはやっぱりすごい。今となっては、もう、氏の立ち上げた事業はほとんど、他人の手に渡ったり、消えたりしたけれど。PARCOや無印良品なんかのブランド名が辛うじて残るのみ。
そんな彼が晩年になって、やっぱり父親ラブなのがどーにも。
その父、堤康次郎についてもかなり紙面が割かれてるけど、これがまた、それこそ「家政婦は見た!」なんかの昭和のドラマに出て来るような実業家のイメージまんまで笑えるくらい。結婚2回、他に愛人数人、妻の弟を愛人と結婚させてデパートの経営まかしたら放漫経営でガタガタに、そこに立て直しのために送り込まれたのが父の鬼っ子である堤清二…面白すぎるだろ、この展開。
文学者としては、三島由紀夫との交遊についてもちょこっと出て来る。敬愛する作家として三島を挙げ、彼の同人サークルのために制服をあつらえたりと。思想信条は正反対なのにね。
阪急グループの創業者・小林一三(阪急や宝塚、東宝作った大元だけど、松岡修造の曾祖父ってのが一番通りがいいかしら…)も実業家として尊敬する一人に挙げてるけど、小林もまた若い頃は文学志望だったんだそうで、…もしかしてマンションポエムの源流は彼なのか??(ついでに辻井喬も) ただし、辻井は小林の文学者としての才能は全く認めてないけどな!
堤清二が、自分の事業の原点である池袋西武を特に愛して、なかでもその本屋のリブロに日参して本を買ってた(そして彼の部下たちはいつでも彼に本の感想訊かれたら答えられなければいけない)とあって、あーもしかしてリブロで私も擦れ違ってたかもねーとふと思ってしまった。
投稿元:
レビューを見る
読んでいるときは面白かったのだけど、読み終わったあとで特に何も残らなかった。
本がつまらなかったというわけではない。相当面白かった。食い入るように読んだし。中身も書き方も、堤清二という人もその生きた時代も全て面白かった。だけど終わってみたら、何かどうでもいいという感じがする。
なんで? と思ってから、これが彼の生きた時代だったのだと思った。
投稿元:
レビューを見る
ちょっと堤清二について集中的に読んでみようと思って手始めにこれを。
なんというか、「堤家の隆盛と崩壊」ストーリーのような感じで、当初知りたいと思っていたこと(堤清二の人となり)とは違っていました。しかし、素の堤清二が父を、異母弟を、堤家自体を、どう見ていたのかを通して、堤清二の人間像が透けて見えるようで面白かったです。
義明氏をまるで評価していないところは笑ってしまった。
投稿元:
レビューを見る
セゾン関連の本はいくつか読んできましたが、晩年に堤清二本人が語った本音にリアリティーを感じました。
偉大すぎる父の存在、異母兄弟との複雑な人間関係、いずれも常人には想像を絶するものだったことが伺えます。
もっとも興味深かったのは、堤清二とは経営者の方向性が似ているようで、まったく性質の異なる小林一三に対する思いが述べられているところです。
会いたいと思いながら、本人に会わなかったのは、かつて小林一三が手掛けた小説の出来に納得できなかったからだそうです
確かに作家としても成功したのは堤清二の方ですが、会わなかった理由に意外性を感じました。
そもそも、会ったところで噛み合わなかったと思いますが。
投稿元:
レビューを見る
堤ファミリーという抜群に面白い素材を使いながら内容は…。
おそらく人間・堤清二にスポットを当てたかったんだろうけど、詩人や小説家として、更に共産党時代の話が薄いので、康次郎や義明への複雑な心境を伝えるに留まっている。序章で「清二を分かりづらくしているのが小説家・辻井喬という存在」とか書いておきながらそこを掘り下げないというのはいただけない。
最期の最期まで義明を見下した態度はさすがというべきか。天才・堤清二の最期の語録としての価値はあるが、ノンフィクションとしては凡庸な出来。
投稿元:
レビューを見る
題材のどぎつさの割に親族関係が複雑なんだな程度の感想しかなく輪郭のボヤけた内容という印象。
ビジネスも私生活も中途半端な浅さの掘り下げなことと堤清二の主観と著者の主観が両方同じようなボリュームで出てくることが主な原因かと思う。
終始著者の主観ぶっ放しにするか堤清二の言うことを淡々とまとめるかに振り切った方が良かった気がする。
変に他人が書くより堤清二本人が書いた方が味わい深かったかもしれない。