紙の本
オーラルヒストリーの成果
2018/05/05 09:15
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投稿者:道南 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の一方のライフワークともいえるオーラルヒストリープロジェクトの成果です。
後藤田氏の方は講談社から市販本になりましたが、矢口氏の方は刊行物にはなったものの国会図書館や一部の大学の図書館でしか読むことができなかったので、矢口オーラルの内容に触れることのできる貴重な著作となりました。
お二人の業績に対する肯定的な視点が根本にあります。
著者はこの後、元最高裁判事や法制局長官のオーラルヒストリーにも関与されました。
なお、竹下宮澤両首相の同様のオーラル対比本と同時期に文庫化されたものですが、いずれも朝日新聞社刊行のハードカバー版から改題されています。
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司法官僚制に興味があり矢口洪一の文字にひかれました。最高裁判事の中でも裁判官出身の方のこの手の本はあまりないので、興味深かったです。
「超一流の裁判官は裁判をしない」ということは知っていたのですが、その理由は本書でようやくわかりました。
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後藤田の首相観がおもしろい。以下のようにある。「普通なら、戦後憲法は総理大臣により大きな権限を与えた、という言い方をするはずですが、後藤田は敢えて、明治憲法と同じだという言い方をしています。」矢口のリーダー論は後藤田とは異なる。「後藤田は、政治の上で内閣総理大臣のリーダーシップを政治的に強化することに反対して、むしろ明治憲法下の総理大臣と同じように、制度的に抑制していくことが重要であると考えていました。それに対して矢口のほうは、そうではない。戦後憲法の下で違憲立法審査権まで与えられた最高裁判所長官が、さまざまな悪平等主義に囲まれて、リーダーシップを十分に揮うことができない状況を改革しなければならないと考えているわけです。・・・政治ないし行政においては、旧来型の消極主義がいいということを、基本的に性悪説の後藤田は考えています。裁判所の矢口の場合、性悪説ではないけれど、性善説でもない。人間というのはなんでも放ったらかしにしておいたら、いまのまましかやらないから、少しでもこの状況を変えて、上からの主導権を強める形で裁判を活性化させなければならないというのが、彼の意見と見ることができます。
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後藤田正晴『情と理』の副読本として読むと、より『情と理』を深く楽しめる。学術研究そのものに使えるかはともかく、研究対象の時代が重なっていれば時代の様相を知る本としても有効。
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組織の要諦を知っていた大物官僚(後藤田は政治家としてのキャリアのほうが有名になってしまったが)の、意外に細心で綿密な言葉の数々である。