投稿元:
レビューを見る
朝井さんの作品は、読み終わってから本の人物やその内容をもっと深く知りたいと思わせる作品が多い。ホントに知らないことだらけだ。
投稿元:
レビューを見る
朝井まかてさん、前読んだのもたしか植物が関係していたけど、お好きなのかな。
淡々と読んでいって、明治天皇について語られた思い出に、ぐわっと泣いた。だってあまりに「人間」らしいから。
150年先のために森をつくる、その途方もないドラマの入り口部分を切り取った作品。どんな状態からどんな木を植えていくのか、疎い私は植物の種類を聞いてもうまく想像できないので、こういうのは映像でみてみたい。
江戸時代の「お殿様」とか、維新後は皇室の方々、私たちは何かおおきな存在がいつもそこにあって見ていてくれると信じている、そうじゃないと不安になる。個人的に宗教は好きじゃないけど、名前が違うだけで始まりは似たようなものなのかも。
投稿元:
レビューを見る
都内に住む人にはとても馴染み深く、誰もが一度は訪れたことがあるであろう明治神宮。
幕末から明治、大正と日本が大きく動いてゆく中で、天皇陛下という存在がどのように日本国の象徴として日本国民の心の中に在られたのか、そして、その明治天皇を奉る明治神宮の創建に、どれほど多くの人の想いが込められていたのか。本当に知らない事ばかりだった。
天皇という存在を少し身近に感じられ、且つ改めて明治神宮に詣でてみたいと思わせる一冊。
投稿元:
レビューを見る
少し前にNHKでも紹介された、明治天皇崩御直後に立案された明治神宮の森の造営を背景にした長編小説です。
探索で得た醜聞をゆすりネタに使うことも厭わない三流新聞の記者・亮一が主人公。同僚の女性記者・響子が必死で追う神宮の森造営の取材に付き合ううちに、明治天皇そのものに興味を持ち、独自に調査を始めます。
当時の世相を反映した三流新聞内部の様子や、150年後に完全な自然な森となることを目指して設計された壮大な神宮の森の造営計画、さらに当時多くの庶民が慕った明治天皇の生き方。二兎ならず三兎を追いかけている感じで、どこか焦点が定まりません。何となく最初は神宮の森で行くつもりが、途中から朝井さんの中で明治天皇に対する興味が膨らみ、付け足してしまったように感じます。
とは言え、登場人物は端役に至るまでみんな生きているし(特に最初と終盤にちらりと顔を出すだけの情報屋・市蔵など)、多くの人達の努力で欧米による植民地化を逃れた明治時代、そしてその末期から大正にかけての様々な世相などが見事に描かれています。
ちょっとテーマは発散したけど、なかなか読める歴史小説でした。
投稿元:
レビューを見る
名もなきプレスの新聞記者が、明治神宮を明治天皇のために建立することを記事に!と追っていく物語。首相が、教授が、若き林学を主とするもの、日本国民全員が、明治天皇のために全力を期してすすめていくプロジェクト。
人間を軸にしているもののためにこんなにも頑張れるのか。この時代の天皇の存在を一国民ながら、圧巻の極みであり、それ故に恐ろしくも感じてしまう。
歴史を繰り返すと日本としては最後の戦争であるWW2で、日本国民として天皇を神の様に扱わずにはいられなかった歴史を見た後ではこの時代の天皇の立ち位置は、恐ろしすぎる。私としては、著者からそういった警告のメッセージも受け取ったと感じた。
投稿元:
レビューを見る
朝井まかて『落陽』(祥伝社)
明治天皇崩御から明治神宮創建の物語。
“150年の計”というべきか、その明治神宮の森、明治神宮造営・創建に関わる人々の話を新聞記者の姿を通して描かれる。
先人の知恵、100年後を見据えたその見識に唸らされる。
筆者には、珍しく(?)江戸時代の庶民の姿を描いたものではなく、明治〜大正という時代、そして、新聞記者という設定。
明治時代以降、いかに激動の時代だったのかというのは伝わる。
テーマはおもしろいと思ったが、登場人物の描き方が今一つ物足りない。
造営に関わる人物で無く、第3者である新聞記者という視点で描かれているためか、少し散漫。
もうすぐ元号が変わり、渋沢栄一も登場していて、絶妙なタイミングでした。
時代が変わるということ。
代替わりするということ。
そして、「明治神宮造営へと人々を向かわせたその根源は、いったい何であったのか」ということ。
投稿元:
レビューを見る
徳川による統治から変貌を遂げつつも、数多くの矛盾を抱えた明治という時代、見知らぬ土地で、前例のない役割を課せられ、それでも自らを黙して語らなかった明治天皇。その崩御に際して、天皇を奉る社を森から作り出す。令和元年のこの時に、日本的立憲君主制での天皇制が存在できる理由に想いを馳せる。
投稿元:
レビューを見る
初・朝井まかて。
明治神宮造営がテーマ、
明治天皇に思いをはせる記者が主人公。
やや、食い足りなさを感じるけど、
もう少し、まかてさんを読んでみようかな、
という気にはなった。
投稿元:
レビューを見る
三流新聞社東都タイムスの記者瀬尾亮一は、上流階級の醜聞をタネにちまちまと小銭を稼ぐ日々を過ごしていた。
ある時聖上陛下(明治天皇)の危篤の報を知る。
崩御後、東京に聖上陛下をお祀りする神宮を造る計画が持ち上がっていると、同僚の女記者伊東響子から聞かされた。
神宮造営の顛末を追う中、亮一の中にある思いが芽生えてゆく。
明治神宮造営のプロジェクトX的な物語なのかと思っていましたが、少し違いました。
もちろん、明治神宮を造るにあたり、周囲に森を作る過程が描かれているのだけれど、それをこの物語の主人公亮一が追う中で、明治という時代とは何だったのか、民たちの心を惹きつけた明治天皇とはどんな人物だったのか、という思いが芽生えます。
プロジェクトX的な側面もあるけれど、明治時代や明治天皇とは民にとって何だったのかを問うた物語でした。
神宮の森造営のプロセスは、伊東響子が記事にしていきます。東京女子高等師範学校、現在のお茶の水女子大学を出た優秀な彼女は、優秀であるゆえの苦労をし東都タイムスに流れてきました。
この伊東響子は創作の人物なんだろうけど、明治時代にも仕事をバリバリとこなす女性もいたのかもな、そして現代にもこういうタイプの女性は結構いるだろうなと思いました。
亮一は、同じく同僚の田中の遠い親戚に明治天皇に仕えていたという女官がいることを知ります。
響子もまた造営関係者の信頼を得つつ、記事執筆に燃えますが、事態は意外な転機を迎えます。
果たして、神宮の森は造られるのか、そして亮一の問いの答えは出るのか。
もしかしたら、朝井まかて作品の中では地味目の部類に入るのかもしれないけれど、皇族とは、皇室とはという問いが世の中に立っている令和の今だからこそ、読むべき一冊なのではないかと思いました。
投稿元:
レビューを見る
そこここに、明治から大正にかけての情景が散りばめられていて、興味深かった。
例えば。喪に服する衣装がかつて白であったこと。下町では半裸の人が普通に居たこと。
明治天皇を国民がどのように思っていたのかや、開国後の天皇と政府の大変さについて、簡潔にわかりやすく書かれている。
明治神宮がどのような意図で建てられたのか初めて知った。100年経った明治神宮を見に行きたくなった。
投稿元:
レビューを見る
新聞記者瀬尾亮一が天皇崩御と明治神宮造営を記事に書き、どのように造営していくかを綴った物語。当時の人々が100年計画で森林を植えていく壮大な計画、それがいかに大変なのかという思いがよく分かった。戊辰戦争、ヒノキ、針葉樹、本田静六、加藤清正、ベルサイユ条約、本郷高徳、明治神宮に行ったときは意味するところをよく考えてみたい。