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電気技術などに天才的な才能を持ち、ナチスにその才能を買われたヴェルナーは孤児院で妹と暮らしていた。そこで、ヴェルナーは遠くフランスから聞こえてくるラジオで科学や工学を知った。
視力を失った少女マリー=ロールは、フランスで博物館の鍵の管理をしている叔父と暮らしていた。
遠く離れた大戦中は敵味方に分かれた二人が交互に描かれ、やがて敗北のナチスの戦場で二人は出会う。
出会いは、ヴェルナーが直した放送機器がきっかけであり、ヴェルナーが聞いていたラジオ放送は、マリー=ロールの大叔父だった。
奇跡のような出会いからマリー=ロールへの救い。そして、戦争の悲劇。
後年、ヴェルナーの妹とマリー=ロールの出会い、そして現代のマリー=ロールと描き続けられる。
ひたひたと押し寄せる感動と悲しみに、涙が止まりませんでした。
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新聞の書評に惹かれて読んだ本。簡単にいえば、マリー ロールという盲目の少女と、ヴェルナーという孤児院育ちの少年が、フランスとドイツで成長しやがて戦争に巻き込まれ、一瞬の出会いののち別れてしまう物語。だが出会うまでのなんて長いこと❗しかも出会いはほんの一日で、はっきり恋に落ちたかどうか定かではない。その後、ヴェルナーは戦死してしまうのが切ない。切ないといえばもう一人、ヴェルナーの士官学校の同期で、目の悪いフレデリック❗みんなからいじめのターゲットにされたあげく、廃人になってしまう。彼について書かれたところはあまりにひどすぎて胸が詰まる思いだ。
とても長い物語だが、ものすごく細かい章に別れていて、マリーロールとヴェルナーが交互に書かれているのがおもしろいと思った。
主人公たちの他にも、エティエンヌ、フォルクハイマー、ユッタなどの登場人物が個性豊かに描かれている。
「アウシュビッツの図書係」に続いて第二次世界大戦を舞台にした本をよんだが、戦争がいかに残酷なものであるか考えさせられる本だった。
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格調高い翻訳文学を久しぶりに味わいました。ヴェルナーとマリーロールの章が交互に現れ、二人の出会いへと上り詰める、静かな胸の高まりを感じました。出会いはほんの一瞬、でもそこまでに至る二人をじっくり見てきているから、素晴らしい時間だったのだと思えました。言葉をかわす二人の時間が永遠だったらどんなに良かったか、と思わずにいられません。こんな若い二人の生活、幸せを奪う戦争のむごさを改めて感じました。現代を描いた章もじつに印象的で、映画のラストシーンのように残りました。
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前半、恐ろしく読みにくかった 翻訳のまずさなのかな
ヴェルナーが軍に入隊したあたりから、ぐいぐい読めてきた ヴェルナーの友人で鳥好きのフレデリックの存在が良かった
マリーが疎開した叔父の家の手伝い人のマネック夫人がすごくいい人だったのが救われた
重厚な映画のような読み応えがあったが、前半の読みにくさで☆-1
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盲目のフランス人の少女マリー=ロールとドイツ人兵士のヴェルナー、遠く離れている二人を繋いだものはラジオだった。戦時下の話なので悲しい場面もあるし、嫌な人も出てくるけど、そんな中での日常のささやかな歓びや、人の優しさ、強さ、迷いを、静謐で、繊細、美しい筆致で描いていて、そこに伝説の宝石を巡るサスペンスも加わり、後半は先が気になって睡眠時間を削って読んでしまいました。長い時間をかけての二人の邂逅は一瞬で、だからこそ余計切なさがこみあげ、読み終えた後も余韻が残る。2016年に読んだ海外作品の中で一番好きな作品。
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ツイッターで、吉村萬壱先生がこの本を紹介していて、「こんなの書きたいぜ」とコメントしていたので、一体どんな本だろうと思って買ってみたのですが、疑う余地のない傑作でした。
1944年8月、ナチス・ドイツに占領されていたフランス、ブルターニュ地方のサン・マロという町にアメリカ軍が空爆を行います。
そのときこの町にいたフランス人の盲目の少女と、ナチスの若い兵士の物語で、少女と兵士の話が交互に語られます。
物語は時系列に沿って語られるのではなく、第0章では1944年8月7日、第1章では1934年、第2章では1944年8月8日、第3章では1940年6月 といった具合に、過去と現在を交互に行き来しながら1944年8月の焦点となるある時点を目指して物語がゆっくりと盛り上がりながら進行して行きます。
物語性と詩情を兼ね備え、厚い本なのですがラストに向かってぐいぐい引っ張っていく力のある本でした。
時間を割いて読む価値のある本だと思います。オススメです。
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この作品は間違いなく反戦を訴えていると思いました。少女と少年の奇跡的かつ束の間の出会いに心が揺さぶられるのですが、ナチの暴虐によって登場人物は一人またひとりとひっそりと表舞台から消えていく事実に胸が痛みました。物語の進行はどの場面も暗示的で緊張感に満ちています。久しぶりに充分な満足感に浸りました。
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ウンベルト・エコーの自伝的最後の小説を読んで、第二次大戦時のドイツが知りたく、行きついた本です。文がとにかく綺麗でこの調子大戦を書くのかとびっくりさせられます。無線機を隠している事と、博物館の宝物である宝石を隠している事の両方からそれぞれのドイツ兵が(片側はドイツに協力させられてる者)符合したように、大叔父とマリー・ロールの所にやって来ます。ここが圧巻ですね。 ところで地雷除去はドイツ兵がやったのでしょうか?
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このままいつまでも 終わらず
読み続けていたかった本でした……
長いけど 読んで損はないです
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人生の中でほん少しだけ交錯する2人の出会いを、壮大かつ緻密に、詩的な表現で描かれた作品。後半は特にページをめくる手を止められず、しかし溢れる涙もぬぐわねばならず大変だった。
ヴェルナーとフレデリックの友情の終焉はとてもつらく悲しいものだったし、フレデリックの身にその後起きたことを考えると本当に彼が不憫で仕方がない。
彼ら二人の奇跡のような美しい出会いが描かれる一方、戦争の残酷な日常も描かれており、リアリティを持って描かれていた。
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何から書けばいいだろうか、再現不能な色んな感情が押し寄せてきて、とにかく慎重に言葉を選びたい。
一様では言い表せない種類の、深度の、色彩のものがたり。
味でいったら五味の全てと、その名前のついたカテゴリーに至る隣同士のグレーゾーンの全て、といった感じの、全五感に働きかけてくる言葉の数々。情景。
ドイツ人少年とフランス人の少女と、関わる全ての人が物語の中できちんと生きていて、短い段落の集積があのような壮大なうねりとなり、時間も場所も超えて集約を遂げる。これは真に文章だから成せるワザなのでは、こういうのを小説と呼びたい、とまったくの素人ながら唸ってしまう本だった。
容易に映像化してもらいたくない物語。
単行本は厚みがあって、ポッケには俄然入らないが、ぜひ読んでもらいたいオススメの本。
(翻訳ものが苦手なのだが、詩情ある文章が、それ特有のまどろっこしさを緩和して、読みやすく、どんどんページ捲らせる。この本、訳者が素晴らしいな、と思ってプロフィールを見たら、ほぼ同世代で!
思わず仰け反った!
あ=、なんて仕事をしている同世代がいるんだろう!)
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短編小説が積み重なったように綴られる、静かな物語である。
物語の主な舞台は第二次大戦下のフランスの港町、サン・マロ。
戦火で壊滅状態になった街にわずかに残った建物の屋根裏で、盲目の少女が息を潜めている。パリから逃れてきた彼女は、今、ひとりぼっちだった。階下に侵入者がやってくる音がする。見つかったら命はない。
一方、別の建物、<蜂のホテル>の地下室には、生き埋めになった若いドイツ軍兵士がいた。年若いが利発な彼は、機械を扱う能力を買われ、国家政治教育学校から軍に送られていた。孤児としては異例の「出世」だった。爆撃のために仲間と閉じ込められ、出口は見つからない。このまま飢え死にするのを待つしかないのか。
およそ異なる境遇の2人の間に、無線の音声が行き交う。その発信器は、奇しくも、遥か以前から、少女と兵士をつないでいたものだった。
物語をつなぐもう1つのものは、「炎の海」と呼ばれるダイヤモンドである。海のように鮮やかな青だが、中心がわずかに赤味を帯び、しずくに炎を宿したように見える。その宝石には不思議な伝説があった。宝石を手にする者は永遠に生きるが、それを持っている限り、持ち主の身近な人々の身には禍が訪れる。博物館に静かに眠る貴石は、戦禍を逃れることが出来るのか。
少女と兵士の過去・現在と物語は行きつ戻りつし、あるいはパリに、あるいはドイツの炭坑地に、あるいはまたサン・マロにと飛ぶ。ときには彼女の、ときには彼の小さなエピソードは、それ自体が短編小説のようでもあり、詩のようでもある。
優しい父、生真面目な妹、博物館の職員、孤児院の先生、先の大戦で心を病んだ大叔父、癌に体を蝕まれ宝石を追う将校、レジスタンス活動に身を捧げる市民、鳥を愛する心優しい少年、脂ぎった香料商、ラジオから流れる謎の「先生」の声。
少女と兵士に関わるさまざまな登場人物が物語を紡いでいく。
大半が現在形で書かれた物語は、戦争の破壊をさえ静謐に描き、深い郷愁を誘い、悲しみを湛える。
少女と兵士はサン・マロで出会うことができるのか。
すべてが過ぎ去り、記憶を持つ者もいずれ消える。
けれどどこかに、その気配は残る。
美しい、静かな強い物語である。
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長編だが全然長さを感じない。要所で出てくるドビュッシーの月の光とかヴェルヌの海底二万里によって、読者と登場人物達が繋がる感覚がする。ラジオから月の光が聞こえるシーンで泣きそうになった。
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Twitterなどで流れてくる本書の感想に、ときどき「読み終わるのが惜しい」という言葉を見たが、たしかに読み終えるのが惜しい、けれど読み進められずにはいられない本だった。
「物語の力」という言葉はよく聞くけれど、これこそがその力なのだろう。
父親や周囲の大人たちに深く愛され、盲目ながら世の中というものを信頼しているフランス人の少女。両親に先立たたれ貧しい孤児院に身を寄せながら、同じく院の先生と妹からの愛をよりどころに、厳しい軍事訓練を耐えて前線に出るドイツの少年。
彼らにはどうしようもないところで誰かが始めた戦争が、じりじりとそれぞれの生活を侵食していく。
接点などないはずの二人が、いつどうやって出会うことになるのか、そこまでの道のりを、私たちは時に息をのみ、小さな喜びにほほえみ、そして涙しながら一緒にたどる。
ページをめくるだけの私の指先にも、盲目のマリー・ロールが感知するにおいを、感触を、空気の動きを察知させるその文章の見事さよ。
彼女を疎開先で受け入れるマダムが素敵だ。物資の少ない戦時下で手に入るもので美味しい何かをこしらえては、近所の弱った人たちに配り歩く。不安に震えるマリー・ロールの顔を温かな両手ではさみこむ。想像の中で、昔むかし私が下宿していたリスボンの大家さんが彼女の姿に重なる。
戦場ゆえのつらくむごい場面も容赦ない描写で私たちに見せるし、決して大団円のストーリーでもない。それでも温かなものが胸に深く残るのは、人の善意のうつくしさと尊さをゆるぎなく伝えているからに違いない。
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アンソニードーア「すべての見えない光」 http://www.shinchosha.co.jp/book/590129/ 読んだ。おおおお超絶よかった。。今年2冊目の今年の1冊。こんなに美しい物語を一年の終わりに読める幸せったら。今年の読書はこれで終わりたいと思ったほど(次のを読んでるけど)人としての尊い美しさ。小道具も好きだし(つづく
ラジオ、街の模型、宝石の言い伝え、ドビュッシーの月の光。強さや賢さや慈愛や、弱さへの後悔も含めて、人としてのあらゆる尊い美しさが凝縮されてる。緊迫の場面や感動の場面を書く、比喩を排除した短文の積み重ねもすばらしい。全体的に食べ物の描写が強烈。いやー読書を堪能した。いい本(おわり