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2017.7.5
私のからっぽに栓をしてほしかった。
これはすごい。みひろの気もちに共感できてしまう自分がこわいくらい女だって自覚する。
好きだって気持ちだけでは納得できないくらいに、女にも性欲があるんだって思う。
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なかなか読まないタイプの小説で、新鮮だった。視点が順番に変わっていくので、飽きずに一気に読めた。ちょっと狭い世界でドロドロ過ぎなので、読み終わってすっきり感はない。
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人なら誰しも経験があるだろう、みっともない恋の思い出とか思い返しても身悶えするような恥ずかしさとか、そんなままならない感情を、窪さんの文章は的確に表現してくれる。人は基本的に優しくできている。各パートのタイトルも秀逸。最初は好感もてなかった圭祐、幸せになってほしいなあ……。
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登場人物それぞれが小さな秘密を抱えている。とても生々しくて目をそらしたくなる。でも、それが ほんとうのこと なのだろうなとも思う。
p.25
私のからっぽに栓をしてほしかった。
p.104
同情している、というポーズで自分の身を守りながら、皆が皆、他人の家で起こった火事に油を注いでいた。
p.120
今思えば、あの人を見た瞬間、僕はもうあの人に心のどこかを強くつかまれてしまったのだ。だけど、そのみひろの震えるような声を聞いていたら、そう思った自分が急に恥ずかしくなった。そして、自分の気持ちをしまい込んだ。心の奥にあるいつもの場所に。鍵付きの小さな箱の中に。
p.134
誰にも遠慮はいらないの。なんでも言葉にして伝えないと。どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまうよ
p.197
2人の女のことが俺の頭の中で溶け合い、混じり合い、その境目がよくわからなくなっていた。さて、どうしたらいいのだろう。そう思いながら、すぐには答えを出そうとしない自分の汚さにちょっとがっかりもしていた。
解説(尾崎世界観)
どんなに繋がっていても相手を疑ってしまう瞬間がある。繋がっていることすら信じられなくなってしまうとき、信頼が甘えに形を変えて裏切りや憎しみに取り囲まれるとき、どうしても楽をして孤独に逃げてしまう。それでも、生きている以上は誰かと繋がっていなければいけない。いつだって喜びや安心は、誰かと繋がっている状態でしか得られなかったから。
窪さんの作品を読むと、誰かと繋がっていたくなるから困る。諦めていた本当のことに向き合ってしまいそうで苦しくなる。そして、そのことに安心する。
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なんともモヤっとしてムラっとするけど、直接的なエロではなく、女性作家特有の内省的な性表現が作品全体に良い具合に練り込まれていました。
表題作の他に5編収録されているけど、作り的には、主人公と時間軸を変えて、小説全体でひとつなぎのストーリーって構成でした。
「よるのふくらみ」というタイトル的に、男と女のドロドロエロストーリーなのかと想像して読み始めてみたものの、実際のところはエロうんぬんよりも、割とはっきりとした重いテーマが盛り込まれている作品なんだなぁって思いました。
性欲、兄弟、夫婦、不倫、浮気、妊娠、子供、人妻、、
それぞれの事柄がそれぞれに、ちょっとづつ上手くいかないままに、それぞれの関係と混じりあっていく過程を表現するのが絶妙に上手いんですかね、、収録されているどの作品を読んでも、どれも違う角度からモヤモヤが来るというか、、、
テーマは重いのに嫌な気分になる訳でもなく、なんだかどことなく寂しくなるような良い小説でした。
結局最後はみんなが全てを受け入れたってことなのかな、、。
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幼馴染のみひろと圭佑、裕太の兄弟、3人の恋愛小説。しっかり者だがインポテンツの長男圭佑、みひろと婚約するが破局、そして奔放な次男裕太と結婚。。。みひろの母の不倫、圭佑裕太の父の不倫と、狭い社会のリアルな恋愛事情が描かれる。大阪に転勤した圭佑は、風俗嬢と付き合い教会へ、終了。生きてる空気が伝わるが、弟が兄の婚約者と結婚、どんな理由があろうともゲスい。
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学生時代から思いあっていた二人が、色々ありながら最後はくっつく話。
それだけ聞くと、少女漫画にもなりそうな展開。
でも、実際はくっついたり離れたりの心の揺らぎも、体の関係も色々あって、これがリアルかなと思わされた。
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精神とは独立したものではなくて、肉体的なあれこれとどうしようもなく結びついたものなんだと、窪美澄さんの小説の中で感じる。
親しい人の知らない見えない一部によって結びついたり離れたり。
わけも分からず、導かれるように、丸ごとの大きな流れの中に今日も身を浸す。
ほんの少しだけ他人の人生をしょっと背負ったような不思議な勘違い的体感を経て
じゃあ自分の人生はどうだろう、自分の人生の周囲の人達にはどんな見えない一部があるのだろうなんて。
その見えない一部がどんな風に作用して自分に降りかかってくるだろう。
何を取り零すだろう。
分からないまま生きる。
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「みひろ」も、奔放な彼女の母も、マリアさんも、里沙さんも、彼女たちは一見違うタイプのようだけれど全員どこまでも女だ。
生ぬるいやさしさよりも求められることを選ぶ女。
そんな彼女たちに男たちがアクセントを加える。
そして、露呈する「恥ずかしい部分」。
でも、そっと拾ってくれる人がちゃんといる。
残酷で、やさしい、そんな話。
釈然としない結果も、読み手しだいなのだろう。
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性的な表現が多かった。生々しいのでそういうのが苦手な人はよくないかも。
ただ、そんな人間の正直なところがリアルに出てる良くも悪くも人間の本質に迫るものだと感じた。
そんな中、素敵な言葉が2つありましたので抜粋して書きます。
一生のうち本当に好きになれるやつはそう何人もいない、出会えないやつも多い、出会えただけで幸運
誰にも遠慮はいらない
なんでも言葉にして伝える、どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまう。
この2つの言葉は良かった!
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今年一番の本。大人の恋愛小説。主人公みひろの圭祐、裕太兄弟への揺れる心を描く。文章も3人を取り巻く登場人物の描き方も素晴らしい。章ごとに語る人が変わり、それぞれの心の内側が良く分かるため、人物が生々しく描かれているのは流石!「ふがいない僕〜」と同じ構成です。
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とある商店街で育ったみひろ。同じ商店街で育った裕太と仲良く育つが、裕太の兄圭祐に告白され、結婚を前提に交際を続ける。
各章ごとにみひろ、圭祐、裕太等それぞれの視線で物語が進んでいく。
狭いコミュニティーで生活していく中での息苦しさがよく描かれている。
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商店街で育った男女のお話。家庭の事情やらも商店街の人たちみんなが把握していることとか、すごくありそうな話だと感じた。
なかなか自分の気持ちに素直になれないもどかしさを、それぞれの視点で描かれていて、読みやすかった。
女性にも性欲はあるのだと、大好きな人に抱かれたいのだと、まざまざと感じさせられた。
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長男としてみひろは許せん!(笑)
最後は圭祐も少し報われ(つつあっ)てよかったな。 窪氏の物語を読むといつも思ってしまうが、恋愛とはすれ違いと思い込みの交差点にあるんだな。本作でも強く強く、そう思わずにはいられかった。
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「愛の形」
なんて、安っぽい言葉だけど、それでも人はそれを探すのにいつだってご執心なのだ。
探しても探しても見つからない、そんな「絶対」みたいな、「神様」みたいな不安定であやふやなものを探すことが僕たちが生ていくうえでの命題なのかもしれない。
登場人物と自分を重ねながら読んで、こんな恋愛するんだろうなぁ、してきたなぁ。
そんなことを考えて、涙腺が緩む。
辛いけど、また立ち上がって、挫折して、そしてまた自分の形は変わらないと決め付けて、変わろうとする。
繰り返し、繰り返しで、僕たちは成り立っている。
後悔ないように生きることを教えてくれる大切な一冊。
文庫版あとがきの尾崎世界観さんがとても面白い。
ぜひご一読を。