投稿元:
レビューを見る
他者を"本当に"理解することはできない。それがいかに大切な人であり、強い絆で結ばれていたとしても。だがその深い関係の前後で自己が別の人格になっていることに気づく。あるいは、失われてから時間をかけて気がつく。本当の(関係性や社会性を取り払ったものとして)自分とは何か?と自己と他者と愛の微妙な関係性をから問うてくる作品。
投稿元:
レビューを見る
年中行事となった、ノーベル文学賞受賞なるかって話題になっていた10月に文庫化された短編集。
同じモチーフで書かれた一連の6作。
酒と音楽とセックスとふしぎちゃん。どれをとってもTHE村上春樹。
シェラザードの話の続きが気になって仕方がない。
投稿元:
レビューを見る
【男たちの恋の傷跡をなでる失恋ストーリー短編集】
る女性を深く愛した後、色々な理由でその人を失ってしまった男性達の失恋ストーリー集です。
当時前作(長編)が難しい評価だったこともあったのか、他の村上作品と比べると、暗示的なたとえや凝った心情描写などはいくらか控えめに感じました。シチュエーションは比較的ライトで生活感のある印象ですが、お決まりの比喩表現は“健在”です。
評価は正直分かれるところだと思います。過去、特に若き日の作品と比べると星1~2減るかもしれません。
過去の村上春樹作品に長く親しまれた方であれば、既視感や物足りなさ、あるいは軽い嫌悪を感じる方もいるかと。具体的すぎる性描写や少し偏った自己愛表現もわりと主題の周囲で頻繁に顔を出してきますので、受け付けない方には違和感が残りそうです。
一方、今回は文庫版ということで、あまり村上ワールドに親しまれていない方には、男女ごとの妙と傷みの物語を小洒落た文章ででサラッと楽しめるのではないでしょうか。また、私自身はエッセイ「職業としての小説家」で作家としての姿勢・意気を感じられたことで、初版14年当時と少しこの小説の読み方も変わりました。
各短編についてはハードカバーレビューを参照されれば良いですが、初めての方のために簡単にご紹介だけしておきます。
【ドライブ・マイ・カー】
過去の事故と視力の問題で運転できなくなった主人公が、“みさき”という女性に自分の車を運転してもらい、棘となっていた昔の妻の浮気の理由を彼女とのやりとりの中で紐解いていきます。ちなみに、「ドライブ・マイ・カー」はビートルズのヒットアルバム「ラバーソウル」の一曲目。主人公とみさき、妻と主人公、の関係性からタイトルを照らすと、新たな意味が浮き上がる、という解釈もできます。
【イエスタデイ】
主人公谷村は村上春樹と出自がそっくりで、存在自体が若干ジョーク。また、木樽という明るい関西弁の浪人生が登場し、これまた東京出身なのにを勉強して関西弁を会得したという変わり者。こちらも関西出身の著者と絡めているのか、含みがあります。この木樽の結末には希望がありました。そしてこちらもやはり言わずと知れたビートルズ。
【独立器官】
女遊びが派手な医者が、いい年になってから真面目に恋に落ちるも・・・というストーリー。ちなみにこの編でも、谷村という男(前編と同一人物かどうかは不明)がこの医者の語り手となっています。
【木野】
美術館の裏手の路地に、脱サラしてバーを出した男の話。生きとし生ける物たちの摩訶不思議なパワー、東洋的な神秘の力を感じさせます。
またまたビートルズが初巡業時に宿泊したBambi-Kino(バンビ・キノ)からとったとかとらないとか。
【シェエラザード】
ある部屋に閉じ込められた男と、そこに通う世話係の女の、文字通り「千夜一夜」の話。かなりハードな表現もあります。そして、とにかくやつめうなぎを押してきます。明日を知りたいから、今日も生きる。そんなことを感じさせます。
【女のいない男たち】
この単行本のための���き下ろし。元彼女が自殺したという知らせを元彼女の現夫から聞かされて、物思いと葛藤にふける主人公の話。村上節が全開ですので、好きな人には好き、苦手な人にはかなり苦手、という印象です。
風の歌を聴け、ハードボイルドやノルウェイの森と比べると最近は、、という印象も多少ありますが、60歳半ばの著者は書き手にしか知れない長い長い格闘を続けているのかもしれません。
さて、次はどう来るか。
投稿元:
レビューを見る
短編集全6編。
村上春樹は長編のほうが断然面白いのであまり期待せずに読んだので、まあ期待通りという感じ。
『ドライブ、マイ・カー』が好きだった。運転が上手い女が出てくる。
村上春樹作品でよく描かれる、日常的な行動(この場合は運転)を丁寧にこなす人の描写が好き。
---
139
急いで無理をしないこと、同じパターンを続けないこと、嘘をつかなくてはならない時はなるべく単純な嘘をつくこと、その光が彼のアドバイスの予定だった。
186
彼は読むのにできるだけ時間がかかり、何度も読みかえす必要がある本を好んだ
投稿元:
レビューを見る
シェエラザード
これを読んでいて思ったんだけど、いつも僕が思ったり感じたりしていることをはっきりと目の前に言語化してくれているんだ。だから時々読みたくなるし、読み出すと止まらなくなる。それは、心の中の何かを救い出してくれているかのようだ。
投稿元:
レビューを見る
ものすごい久しぶりに村上春樹を読んだような気がするけど、それ以前にこの本なんで単行本買ってないんだろうって疑問が渦巻いてるんだけど、私やっぱりこの人の文章が大好物。まえがき1カセット読んだだけで「そう!コレ!(笑)」って思わずニヤニヤしちゃう(結果には今ひとつ自信が持てない〜のとこ)。思いがけない角度から飛んでくる比喩表現も、割とすぐ男と寝ちゃう女も、出てくる度にドッグイヤー。生きてるうちにノーベル賞とってほしいな…なんてわりかし純粋に思ったりしている春樹ファンでした。
投稿元:
レビューを見る
どこまでも村上春樹な短編集。
この人の本の主人公ってみーーーんなおんなじ性格な気がしてきた。
まあ文章に力があって綺麗で飽きさせないところはすごいのだけどね。ピッタリ4。
投稿元:
レビューを見る
前半3作は一応完結したと思ってもよいが、後半3作はまったく終わっていないし、最後の表題作にいたってはまだ始まってすらいない。今後の長編につながるものと期待しておけばよいのか。しかし、これだけ性的に倒錯した人物を登場させるのは今までになかったことではないか。谷崎や三島との多少のつながりが感じられる。個人的には「イエスタデイ」がさわやかに終わっていて好ましいが、「シェエラザード」や「木野」の続きが知りたいという思いの方が勝っている。木野は「人間が抱く感情のうちで、おそらく嫉妬心とプライドくらいたちの悪いものはない」と考えている。そして、木野自身は、そういったものに再三ひどい目にあって来たそうだ。私自身は、誰かにひどい目にあわされたわけでなく、自分自身の嫉妬心とプライドに、なんども嫌な思いをしてきた。たぶん、そう思う。歳をとって、そうそう胸がこがれるような思いをすることは減ってきたが、渡会医師の気持ちも分からないではない。嫉妬心とプライド、それは生きるエネルギーにもなるし、その逆にもなりうるのかもしれない。ユーチューブで「夏の日の恋」を聞いてみた。(そういうタイトルだったんだ。)まあ、この曲を聴いて性的に昂揚することはないな。たぶん。そういえば、むかしおんぼろアパートで暮らしていたとき、隣の部屋からベッドのきしむ音をかき消すように、いつもユーミンの曲が聞こえてきていた。そんなこともあったなあ。
投稿元:
レビューを見る
村上春樹の短編小説。女がいない(おんながいなくなってしまった」男たちの話である。短編なので、そこまで深く物語が進んでいかないと思っていたら大きな間違いで、いなくなった女たち、そこに残された男たちの深層心理に痛々しくも触れることができる作品。性描写等激しくも荒々しい部分もあるが、リアリティを追求する中で、効果的な文章となっている。短編小説は若かりし自分を思い出させてくれさえするので好んで読むのだが、長編をじっくり読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
圧倒的に木野が好き。
何故だかわかりません。
ただ、よくわからない、ふんわりとした抽象的な世界観が好きです。
何かに傷ついたり、何かを失った人書くの本当にうまい。。と思う
投稿元:
レビューを見る
従来どおりの作風による、安定した物語群。
本作をもって新たな読者を獲得するのかはわからないけど、これまでの読者を落胆させることはないでしょう。
投稿元:
レビューを見る
毎年恒例のノーベル賞騒ぎ、いささか食傷気味のところであるが、文庫化されたので一応読み。
6短編中『木野』が、その登場人物それぞれミステリアスで、この後の展開が知りたいとの思いから、一番印象に残った作品。
投稿元:
レビューを見る
6つの短編集。村上春樹独特の文体で、「村上春樹の短編、好きだったな」と思いだした。どの話も静かに進んでいきます。昔の村上春樹が好きだった方へ特にお薦めです。
投稿元:
レビューを見る
ひさしぶりに、ムラカミハルキを読む。
あいかわらずやなぁ。というのが 感想である。
『いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、
あるいは去られようとしている男たち』の物語
ドライブ・マイ・カー
『家福』という 暗示 がありそうな名前。
俳優で、女優の奥さんをもっていた。その奥さんは亡くなった。
俳優は、演技していると自分以外のものになれる。
そして、それが終るとまた自分自身にもどれる。と思っている。
もどれない時が あるようだ。
家福は、妻が亡くなってから、
どこにもどっていいのか分からなくなったのだろう。
家福は浮気はしなかったが、奥さんには浮気した男がいた。
寝取られた夫の話である。
そして、寝取られた男と酒を飲んだりしてつきあうが、
なぜこのような底の浅い男と つきあったのだろうか?
底の浅い男とは正直だが奥行きにかける弱い男。
奥さんは意志が強く、底の深い女性だった。
なぜ?と 家福は 問う。
ドライバーのみさきは言う。
『心に惹かれていないから寝たんです。』
奥行きの深い女は フィジカルなセックスを好む。
イエスタデイ
関西生まれで、東京の言葉になれた谷村。たぶん ムラカミハルキ。
田園調布生まれで、阪神ファンであるために大阪弁を駆使する 木樽。
まさに 生まれたところの文化の入れ替わり。
木樽には、幼なじみのきれいなガールフレンドがいた。
子供のママで、大人になりきれない木樽。
木樽は、谷村に自分のガールフレンドとつきあえよと言う。
ずっと、昨日のママで、今日がおとづれない。
独立器官
度会という整形外科。収入もあり、安定していた生活。
それが、悪魔の瞬間に組み入れられた。
『自分が一体何ものなのだ』と問いかける。
恋愛が 失恋したことで、自分の存在意義を失う。
まぁ。お坊ちゃんなんでしょうね。
シェエラザード
普通の白い下着をつけて、ちょっと贅肉がつきはじめた
おばさんが、配送サービスとデリヘルをかねる。
単に、セックスだけでなく マクラ話が 楽しみだった。
そのおばさんは やつめうなぎの 生まれ変わりだと言う。
おばさんは 若い時に『愛の盗賊』だった。
木野
出張を予定より1日早くかえったら、妻が会社の同僚と同衾していた。
それで、別れ、バーを 経営し始める。
大きな柳があり、猫が住み着き、本を読みに来る男が来る。
それが、何かが違って、そのバーからはなれるようにいわれる。
旅をしてるうちに、イカのように身体が半透明になってしまう。
女のいない男たち
14歳の時の エムへの恋。
その頃、作りたての健康で、西風が吹くたびに勃起していた。
自殺する女が 好きな男の話。
喪失感という現象を 言葉と比喩を費やして 説明する。
日本の作家は 風がふくと 勃起し、本を書く。
アメリカの音楽家は 風に吹かれて ノーベル賞をもらう。
投稿元:
レビューを見る
旅行の移動、新幹線の往復用に購入。
ちょっとした短編を読みたいと思っていたので
内容、分量としても丁度良かった。
短編というだけあって、ほどよい内容の小品だと思う。
しかし「木野」の後に「表題作」の描き下ろし作品での
幕引きには戸惑う。「木野」がミステリアスで、しかも
パワーの感じる作品なだけに、どうなのかな。。