紙の本
作者を反映している主人公?
2016/09/22 19:30
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投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
そこそこ普通の舞台立てで、若者の通過儀礼が描かれる。
2/3程までは平和な雰囲気なのがまた怖い。
トニーが出てきて、雰囲気が不穏になった部分で逆に安心できるほど。
彼女の未訳長編の翻訳刊行が続いて嬉しいです。
紙の本
じわりじわりと物語に魅せられるほど、見えてくる闇
2016/10/24 16:29
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投稿者:ましろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
じわりじわりとこの身と心を追い込むのは、他者ではなく自分自身なのか。そうして追い込まれた心をやがて解きほぐすのも、結局のところ、他の誰でもない自分自身なのか。そこに辿り着くまでのすべての出来事も巡らせた思いも、あまりに儚く感じられるほど、少女の家族内や大学での立ち位置、それに伴う友人関係も虚しく、逃れようもなく孤立を生むその心を支えるすべは、現実よりも非現実、幻聴とすら思える世界と近しく、若い自意識と孤独を浮き彫りにした。けれどその物語に魅せられ、惹きつけられる分だけ、通ずる思いを誰もが抱え得る闇を思う。
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『くじ』や『たたり』などで知られるシャーリイ・ジャクスンの初期長編。
実際に起きた女子学生の失踪事件をモチーフにしているが、後期の長編に見られるゴシックホラー的な要素は無く、一見すると女子大生の青春を描いている一般文芸のようにも見える。が、主人公が持つ危うさは、後の長編に通じるものがあった。
因みに東京創元社からも文庫で刊行予定があるようだ。本書は文遊社の単行本だが、同社からは『日時計』が出ている。
そう間が開かずに、2社から同じ長編の邦訳が出るのは珍しいなぁ。
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のっけからずーっと、船酔いのようにして読んだ。厭なタイトル、鬱陶しい家族、居場所の定まらない寮生活…少女世界に付き物の不穏な空気が、どこが地面だかわからなくさせる。明るさや正しさが、逆に奇妙に感じられてくる。
ラストはシャーリイ・ジャクソンらしからぬ?と感じられ、私にはちょっと驚きだった。
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「鳥の巣」の訳者と違い、合わねえなと思いながら読み進む。が次第に、この陰鬱さが訳によるものではなくて、原作そのものだと言うことに気付く。どよーんとした世界がこの主人公特有のもので、寮の女子や近所の人なんかは快活に描かれている。非常にイライラするな。充分に恵まれた環境であるのに、どこに行っても誰と何をやっても満たされない癖に、何かがやってきて、自分を別世界に連れ去ってくれると期待する。自分から一歩踏み出すことはせずに、内側に入りこんでゆく。ニートという言葉のない時代に読んだなら、違った印象を受けると思う。
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今回のジャクスン先生は難しいし、読みにくい。日時計が面白かっただけに、挫折しかける。先生特有の何かこいつやだわー、みたいな面白い登場人物がいない。晩年の長編の方が面白いのか、それとも今作が自分には外れだっただけなのか。家族があまり特徴が無いというか、あまり印象に残らなかったな。弟くんはもうほとんど影のような存在だし。大学に行くまでの家庭での閉塞感、何かはまだ読めたのだけれど、主人公が大学に行った後ともう最後の方はファンタジックな感じが多すぎて、難解。大学で何となくハブられてるなぁ、とか教授が女学生とお楽しみしてる、とかも何となく推測出来そうな感じだけど、もの凄く抽象的な文章で溢れている。主人公自身がちょっと不思議ちゃんなのか、それとも日々の生活があまりにも窮屈すぎておかしくなってしまったのか、どちらなのか。今回は少し残念な読書体験に終わる。