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自らの帰属すべき場所を持たぬ男の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。
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当たり前のように存在してる名前がなくなったら・・・
そんな風に始まる「不思議の国のアリス」のような話です。
カフカの「変身」にも近い。
存在しているとは一体なんのことを指すのか。
肉体?魂?名前?気持ち?生きているという事実?
夢ではちゃめちゃな夢を見ますよね、
その時の焦りや不安や孤独を思い出しながら読むと
臨場感が出てきます。
次は「砂の女」を読もう。
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芥川賞受賞作品『壁』
人のよりどころとする『存在権』
それは他人との習慣により確立されるが・・・
ユーモアという空間をどうぞ
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ふわふわと夢の様に唐突な展開と異形変身譚やグロテスクさ、
その奇抜さ故に酔っ払いそうです。
読んでるうちに主人公に感情移入して
自分までも存在に対する不安を抱きかねません。
突飛に出てく事物が何を示すかを全て読み解ける程の
理解力は無い私が読んでも、それでも面白い。
ただ読了後に、どの短編も何だか気持ち悪い不安が残ります。
好きなのは、一部。
展開の怒涛っぷりはアリス級のファンタジーかと…
滑稽なのにじんとくる怖さのある登場人物(?)たちもアリスチック。
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壁はあるようで、ない。
いや、やはりありますね。
延々と続く、壁なのです。
そしてその壁に、絶望の絵を描く。
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これは3つの短編からなる話だったのですが、とにかく面白かった。おもしろすぎました。なんでこんなに想像力があるのか、ただただおどかせられるばかりです。その設定がまず現実にはありえない、まさに空想上のものでした。そして、周りの人間をアイロニカルに描写するさまもみごとで、けっこうおかしかったです。今まで読んできたものよりもずっと読みやすかったのですが、すごい引き込まれてしまいました。安部公房にハマったぞ\(^o^)/
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父の蔵書に芥川賞作品集?があり、その中にこれを見つけて、当時、受験生だったワタクシは、気分転換?に読んだ。シュールな世界だった記憶がある。別の言い方をすると、つまり、さっぱりわからん、のである。でも、わかったつもりになって、いい気になっていた。
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解説を読んで「ふ〜ん」と思った程度。本文は難しすぎて、言わんとすることが、よく分からなかった。哲学的かつ観念的なので肌に合わなかっただけかもしれないが。ただ、作者の発想には驚いた。
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あたしの人生はこの一冊で変わりました♥
非現実と現実の境目がわからなくなるようなシュールで不可思議ででもなにかに共感できるような、そんな本です
壁の素晴らしさはもちろんですが、いっしょに収録されているバベルの塔も短編もすべてAwesome!!!!
一冊しか本をもてないとしたらあたしはコレをもつでしょう♥
そんだけあたしはこの本に引き込まれました♥
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安部公房の出世作であると同時に芥川賞受賞作である。
芥川賞受賞作である「S.カルマ氏の犯罪」、安部公房の世界をよく表している「バベルの塔の狸」、そして初期短編を集めた「赤い繭」の三部構成となっている。
特に「バベルの塔の狸」は、安部の社会に対するイメージをよく表現している名作である。こういう作家が日本にもいたということに驚きを持つであろう一作。
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表題作「壁」の中でも、「S・カルマ氏の犯罪」がとてつもなくお気に入り。
公房作品の中でもhui的トップ3に確実に入ります!!
詳しくは後日☆
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壁はなくして、ある。
魔法のチョークでその壁に絶望を描く。
世界が広がりを見せる。
世界の果てが、訪れるまで。
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>序
壁というものがある。こいつ絶対に思想なんぞではない。堅固な物質でできている現実の壁です。何のために、壁はあるのか。すくなくとも、空間を仕切るためのものであるわけがない。この狭い地上を、なにゆえにまたこまかく仕切って、光の通路をふさぐ必要があるのですか。それでも、壁がげんに空間を仕切っているという事実はどうにもならない。長いあいだ、壁は人間の運動にとってずいぶん不便な、不届きなものでした。というのは、位置の固定、すなわち精神の死であったからです。
壁について最初の名案を示した人物は、ドストエフスキーでした。壁のきわまで駆けて来ても、やけにあたまをぶっつけて、あわてて目をまわすにはおよばない。そこで曲がればよい。じつに単純な着想です。こういうことを革命といいますね。
>14
ドアのガラスにぼくの顔が映りました。その顔がただならぬ驚きの表情をうかべているので、これはすこし考えてみなければなるまいと思いました。しかし、このおかしな現象が、胸の中のからっぽな感じとなにか関係があるらしいと分かった以外、なんにも分かりませんでしたから、考えるのもやめました。「こういうことはいずれときが解決してくれるものだ。それに、分かってしまえばいつもたいしたことはないに決まっているのだから、これもきっとたいしたことじゃないにちがいない」と自分で自分に言いきかせました。
>31
プラタナスの並木の下で、さっきの画家がさっきのままの姿勢でじっとしておりました。その足元では浮浪児がやはりしらみをとっておりました。すれちがうとき、振向くと、カンバスはやはり真白のままでした。思わずぼくは聞いてみました。「何故お描きにならないんです?」「待っているんです」画家は真すぐ前を見たままぶっきら棒に答えました。「何をお待ちになっているんですか?」「何を待っているか、それが分かるくらいなら、誰も待ったりはしません」
>68
「死んだ有機物から 生きている無機物へ!」
>77
やはりおかしなことはなるべくないほうがいいものです。従来ぼくは理性は人間を不自由にするものだと考えてきました。しかしこんな目にあってみればそれも考えなおさねばならないではありませんか。こんな具合に理性が役立たなくなり、自由がなくなると、必然と偶然のけじめがまるでなくなって、時間はただの壁のようにぼくの行手をふさぐだけです。
>161-162
居眠りは歓喜を少しも弱めず、中和もしなかった。目を覚ますと、体中に鋼鉄のゼンマイが仕掛けられていて、ぴんぴん跳ねてしようがなかった。新しい日、新しい時……黄金の粒子でできた輝く霧に包まれた明日が、そして更にその明日が、もっともっと多くのかかえきれないほどの明日たちが、たまらいもせずに待ちうけているのだ、アルゴン君は幸福そうな、いくらか持て余し気味な微笑を浮かべた、今、この瞬間は、すべてが何事にもさまたげられず、あらゆる可能性の中で、彼の手によって創られようと持ちかまえている、輝かしい時なのだ。だが、その奥底に、かすかにうずく悲哀はなんであろう?多分、天地創造の寸前に、神が感じたであろう、その悲哀に相違ない、��笑んでいる筋肉の傍らで、小さな筋肉が微かに慄いた。
>220
人間は誰でも各々のとらぬ狸を持っている。そいつらが全部ここで育って行くのだ。だから、世界の人口と同じだけの数がいる。大きなものも小さなものも、様々だが、それはその年には無関係で、その人間の空想の量と質によるものだ。
>239-241
「人間の視線は私たちの存在を濃硫酸のように焼きつくす。ひどい目、いたい目、つらい目、こわい目、なさけない目、すべてこの目玉の作用から来た用法だ。私は人間の目が恐ろしかった。エホバを見たものは死ぬべしという布告を出して、私は人間の視線をさけようとしたが、人間はもはやそんなことではだまされなくなってしまった。私は天国にのがれた。しかし人間は下意識の世界で結束してバベルの塔をたて、私に迫った。私は更に天国をのがれ、身をやつしてあちらこちらを逃げ歩いた。そしてついに目玉の害を克服する方法を発見することができた。それは微笑ということだった。一見つまらぬことのようだが、これは偉大な発見だった。ジェームズ氏も言っているように、表情によって感情がつくられるのだ。ところで、一般に微笑はその字の示すごとく小さな笑いと考えられているが、それは間違いだ。その説明のために一つ、笑い、悲しみ、恐怖の各頂点とする三角形を想像していただきたい。これを表情の三角形と呼ぼう。さて、意すべきことは、無表情はやはり一つの表情で、ごく小さなこわばりだということと、しのび笑いはいくら小さくなっても決して微笑にはならないという点だ。では微笑とは何か?微笑こそ表情の三角形の中点、完全な無表情であったのだ。すべての表情が微笑に向って解放されてゆく。微笑こそ、完全に非感情的なものを意味する。人は微笑を通してその向うにある表情を読むことはできない。有名なモナリザの謎の微笑を想出してみたまえ。それから主人の前に出た下男の微笑を考えてみたまえ。微笑はどんな視線に対しても鉄の防壁となるのだ。この発見に力を得て、私は再び天国に帰った。」
>255
阿部公房のばあい、この砂漠は、同時にまた、壁と云い直すことができる。砂漠と壁、それはちょうど万里の長城を築きあげているレンガが蒙古砂漠の土からなっているように、いわば同質の素材からなる、同質の存在なのである。目路をかぎるものといっては、はるかな地平線のほかに何ひとつない広漠たる砂漠は、同時に、われわれのつい目前にあって、われわれの目をあえぎっている壁と同じものであり、目の前の壁は、同時に目をさえぎる何ものもない砂漠と同じものなのだ。云いかえれば、壁によって仕切られた内部の空間と、壁の外にひろがる外部の空間とは、まったく同質の素材からなる同質の空間ということになる。
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名前をなくしたカルマ氏。持ち物たちが独立を目指し革命を起こそうとする。
途中で挫折。
観念的過ぎてついていけなかった。
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カフカの変身より乾いてて形而上的・・・と思った昔の私。高校の頃読んだ時の印象とはまた別ものとなり、あの頃感じた衝撃はなかったが、それでも本当に面白い。