紙の本
弱い社会派
2017/05/18 01:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は、シリア生まれのアイ。アメリカ人の父と日本人の母、つまり養子である。国際的には、富裕な人々が貧困な国の子供を養子に迎えることは珍しくない。ただアイは、自分が養子になって幸せ故、他のシリア人の誰かが不幸になったのではないか、極端に言えば紛争の犠牲になったのではと悩み続けている。物語はアイの中学時代から始まるが、彼女は高校に進んでミナと親友になる。ミナは同性愛者。ここで血の繋がりという問題が生じる。ベースには9:11、東日本大震災、ハイチの地震など、世界的な悲劇が背景になる。直木賞を獲った「サラバ!」に似た、社会はと言えるが、掘り下げが浅いのが難点か。
投稿元:
レビューを見る
西さんの描く世界はどうしてこんなにもパワフルなのだろう。。デビュー作から一貫しておもうのがそのパワフルさ。言葉もだけど、絵も。
そのパワフルさは年々増している。ものすごい強さで、熱を帯びて。メッセージ性が強すぎて目眩を覚えるほどに。
直木賞受賞したサラバから2年なのか。サラバはめちゃくちゃで、めちゃくちゃすぎるのだけど本気差に圧倒された。強い。
今作は繊細なのにやっぱり強くて、サラバの時よりも真面目さが優っている気がする。茶化せない。熱い熱い想いがこう中から溢れてくるような、言葉の1つ1つが響き弾ける。
すごくうわーってなったのは、アイが失った子どもを一週長く偽ってしまったところ。一週長く偽ったことを恥じ、そしてその一週長く生きていた世界を想像するところ。
人間らしさが強く露呈されすぎていていてくらくらした。
ラストミナとアイがLAのビーチでシリアのアイランクルディを想って花束を流すところ。そしてアイが下着までも剥ぎ取ってしまうところはサラバのラストとかぶったかな。
西さん、どこまでいくんだろ。どこまで行っちゃうんだろう。次は何を書いちゃうんだろう。イラン・テヘランで生まれエジプト・カイロ、大阪で育った西さんだからこそ書けるのかな。次回作もその先もずっと楽しみです
投稿元:
レビューを見る
自己肯定感が低いのは外的要因じゃないかと思うし読んでてやっぱりこの両親は好きになれない。
ここまで突き詰めて自分の存在意義を考えてたら一生眠れなくなるよって思いながら、でもやっぱり自分ってなんだろうって一生思いながら生きていくんだろう。
投稿元:
レビューを見る
アイがとってもピュアでハラハラしながらよんだ
次の展開がこうなるだろうなーって想像できても
血の繋がりってもともと夫婦だって他人だもんね
アイ人生はまだまだもっともっと色んなことがあるから
私もこころして生きていかなくっちゃ
投稿元:
レビューを見る
メディアリクエスト
「この世界にアイは存在しません。」
という言葉が忘れられない、ワイルド曽田アイ という名前を持つ女の子。
米国人の父、日本人の母を持つ、シリア人。
この最初のさわりで、なんだ?すごそうな話?と引き込まれた。
後半、私がだんだん理解できない感情になって、うーん、でもトータルでは、よかった。
権田美奈ちゃん、いい友だちがいて、アイは救われたと思う。
投稿元:
レビューを見る
シリアで生まれ、比較的裕福なアメリカ人の父と日本人の母の、養子として育ったアイ。養子として選ばれ、世界中で日々起こる死に選ばれなかった、彼女の目を通して描かれた世界を読む。
苦しみながらも、大切な人と出会い、「この世界にアイは存在する」ことを知るに至る物語。
投稿元:
レビューを見る
良かったー…
とにかく良かったー…
西さんの書くパワーが本のページを突き抜けてこっち側まで伝わってきた。
愛は存在するんだ!!と、大きな声で叫びたい!!
当たり前に昔から言われている愛についての話とか、正直今更感がどうしてもでてしまうことが多いけど、このiは、そんな当たり前の愛の存在についてを凄いパワーで叫んでいる。だからこそ一瞬で引き込まれた。
2016年の締め本はまさにこの一冊だな。
投稿元:
レビューを見る
なにごとにも何かしら色がついていて、
濃淡があって、見えかたはそれぞれある。
自分の色はどうか。
手が届くところ、今は穏やか。
未来を信じられない状況は不穏。
投稿元:
レビューを見る
自分に起こった本当につらいこと、大事な人の痛み、考えてることって、完全には分かり合えないだろう。その痛みは私だけのもの。あなただけのもの。
でも、理解出来なくても愛し合うことは出来る。
その人の痛みや苦しみは、本当には理解することはできない、どんなに切実に理解したくても。でも、想像することはできる、非力でも。
愛する人の、または全く知らない人のために心を痛めたっていいんだ。力になれなくたって、その想像力が、きっと何かになるんだ。何も恥じることなんてない。
そして、それが出来るのは、今私が生きているからなんだ。
生きるって何か。存在してるって何か。家族って何か。そんなことについて真剣に考えさせてくれる本だった。
なんて共感出来るんだろう!私はシリア出身でも養子でもないのに。なんて巧みな感情描写だろう!アイと一緒に悩み、救われ、でもまた悩み、でも最後には知るんだ。
自分が今ここにあること、ずっとあったこと、だから今私がここに生きていることに。
投稿元:
レビューを見る
「人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。」
サン=テグジュペリの言葉が蘇る。
忸怩たる思いに押しつぶされ、アイデンティティの確立もままならない主人公。
若さだな、だけで解決できない出自ですが、やはり解決してくれるのは時間かな。俯瞰して世界を見られるには。
投稿元:
レビューを見る
「この世界にアイは存在しません。」
これは主人公のアイが高校時代に衝撃を受け、その後折にふれて思い出すことになる言葉。本書を貫くキーワードでもある。
この世界に「アイ」はあるのか?「アイ」=愛とは何か?
「アイ=i」自分とは何か?
世界中で起こる自然災害や事件、事故による人々の死。死者の数をアイはただ、記録する。圧倒的な死者の数に対して「私」は無力だ。それでも「生きている」。
特定の「神」を持たない私だが、祈りにも似た気持ちで読み終えた。重いけれども大切なテーマを飄々と描くことで読後感は暗くなり過ぎず、寧ろ腹が据わるような一冊。
投稿元:
レビューを見る
西加奈子には何度も打ちのめされてきた。何度も何度も心を打ちぬかれ、叩きのめされ、そしてしなやかで強い心を育てられてきた。だからもうちょっとやそっとじゃ打ちのめされない自信はあった。あるつもりだった。なのに、そんな自信はあっけなく崩れ去った。
いままでも「この本で救われる人がいるだろう」と思うような小説はたくさんあったけど、この「i」は「いるだろう」や「いればいいのに」ではなく、まちがいなく「救われる人がいる」そう確信する。
アイが自分自身の存在に、その養子になった境遇に、そして育った環境に、ずっと抱いていた違和感。自分が今、享受している幸せは、だれかほかの人から奪い取ったものなのではないかという思い、自分が本来受けるべき不幸から逃れてしまっているんじゃないか、という不安。
幼いころからそんな中で生きて来たアイの、その絶望の中の幸福が胸に刺さる。敏感で繊細で、そしてあまりにもまっすぐなそのこころが壊れてしまわないか、心配で不安で仕方がなかった。
そんな中での二つの出会い。ミナとユウ。2人がアイにもたらしたものは「自分の存在に対する絶対的な祝福を受け入れること」。自分が自分であること、今ここに生きていることの意味、そして
それを幸せだと素直に感じる素晴らしさ。
ラスト、海でアイは再び生まれた。新しい自分(I)が愛するすべてへの祝福とともに。
この圧倒的な力で迫って来る壮大なラストに、私もまた新しく生まれ変わった気がする。
「この世界にはIもアイも愛もある」
投稿元:
レビューを見る
シリアで生まれ、アメリカ人と日本人夫婦の養子となった「アイ」の物語。何となく、展開は「サラバ!」と似ていて、そんなに新鮮味がなかった。ただ、悲惨な自然災害やテロ事件、戦争などで多くの人々の命が亡くなっていくことに心を痛めるアイの姿にはとても共感できた。「なぜ、失われる命が自分ではないのだろう?」人の死に接して、常々感じる気持ちが本に描かれていて、同じように感じる人が他にもいるのかもしれない、と救われる思いがした。
投稿元:
レビューを見る
内容的には自己の存在意義の証明。西さんは作家として次の段階に行った感じがする。「読みやすさ」で言えばサラバ迄。「読了感」で言えばサラバ以降。西さんの作品はどれも肯定される言葉があるので読了後に救われる。ただやっぱり笑いの部分が欲しかったかなぁ…。
投稿元:
レビューを見る
養子、命、
実際の死者の数が記されていることをはじめ、
テーマが重いけど、読んで良かったと思える
後半は感動で涙。
以下は自分の中の答えなのでネタバレといえばネタバレになっちゃうかも?
—————————————
戦争や不慮の事故、災害で
これまでに亡くなった人に対して、
なんて思えばいいのかずっと分からなかった
自分の気持ちから目を逸らしたり、
心を痛めたり
それを忘れていく自分を責めたり。
自分の生に感謝するのが正しいのか?
私も未だに何が正しいのかは分からない
でも解決はしないけど、想像することが大事で
人間は想像することをあきらめてはいけない
想像しかできないけど、
それを止めてはいけないんだ
悲しいニュースは苦しいけれど、現実は知りたい。
それで苦しく思うのだったら、
苦しい思いをすればいい
読み進めるうち、知らない間に想像してた
無念に亡くなった人、
子どもが宿るという奇跡、
自分がいるという奇跡、
養子になった人のアイデンティティについて、
子どもを願う人、堕す人、
何を本当の家族というのか、
事実を伝えるジャーナリストはどんな気持ちなら正義なのか、
震災があった時自分が被災者ならどう思うか、、
ひとくくりにはできないけれど。
亡くなった一人一人の名前を覚えていることはできないけれど、
すべては、すべての人に
生まれてきてくれてありがとう
アイは、両親の願うアイになったんだなと思った