紙の本
綺麗ごとではない世界情勢の1面を伝える内容充実の1冊
2017/05/28 22:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
イスラム国に後藤健二さん、湯川遥菜さんが殺害されたニュースは衝撃的でした。人間の命を交渉の材料として利用するに至った背景を今から20年ぐらい前の世界情勢からたどります。
身代金の決定プロセス、助かる人質と助からない人質は何で決まるのか、なぜ現地のリスクを理解しない若者が危険なエリアに次々と向かうのか、など興味深いテーマについて誘拐から生還した人や、身代金の交渉人などの当事者のインタビューから紐解きます。
「どこの政府でも人質の解放のためには多かれ少なかれ身代金を払っている」、「現地のリスクを正しく理解せず、正義感だけで現地から報道することは慎むべき」、「誘拐から数週間のうちなら数千ドルで解決できる」等々の生々しい証言が次々と明らかになっています。
シリア周辺での誘拐だけでなく、ソマリア沖で多発した海賊、EUへの難民の違法入国斡旋など人命をビジネスの対象とする多くの事象を取材対象としている本書は、ますます保護主義的傾向を強める世界の現状を理解するために大変参考になると感じました。
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【実際に人質救出交渉にあたった交渉人らが証言】一番金払いがいいのはイタリア政府。人質救出のためには最初の48時間で交渉せよ。誘拐とジハーディストの歴史と構造を活写。
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人質ビジネスについて、経緯、事例など詳しくまとめられていた。
21世紀の現代に起こっていることとは容易に想像できない、悲惨な現状を知った。
誘拐、海賊、不法移民などすべてつながっていて、犯罪組織の資金源となっている。日本も他人事ではない。
大変興味深い本でした。
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欧米人が誘拐された、解放された、というニュースの裏にある「人間が商品として取引されている」という事実。今まで知らなかったことばかりでした。人質を身代金目的と外交戦略目的とに使い分けるイスラム国、人質に優先順位をつける政府。
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メディア情報をいかに高度な技術で検証しようとも、しょせん我々は中東諸問題の上辺しか見れていないし、本質を理解することはできない。難民から搾取するために斡旋業者と国家がグルになる。オークションのように吊り上った身代金は、犯罪者の街を潤すばかりか流通する貨幣すらも変えてしまう。ジャーナリストにとって同志だと思われていた反政府組織が、金のために簡単に寝返る。想像するのも悍ましいぐらいだが、これが中東諸問題の実態なのである。冷戦が終わり、グローバリゼーションがもたらした世界を著者は「新世界無秩序」と表現する。海賊で悩むソマリアも、イスラム国のテロによる被害者も、シリア政府に弾圧されている人々も、人道支援や心情的応援はまったくありがたいと思わず、唯一忠誠を誓うのは「金」だけ。それを理解していない、正義感というエゴに取りつかれた「勘違いジャーナリスト」「勘違い人道支援者」が、犯罪者マーケットを潤すために、今日も中東を目指して飛び立つ。
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解説の池上さんが書いているとおり恐ろしい本だ。人間が商品として扱われている。海賊ビジネスから、人質ビジネス、さらに難民輸送ビジネスへと進化している。後藤氏が殺害されたのは、安倍政権がISに対して対抗心をむき出しにしたためだ。なるほど。
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イスラム国に後藤健二さん、湯川遥菜さんが殺害されたニュースは衝撃的でした。人間の命を交渉の材料として利用するに至った背景を今から20年ぐらい前の世界情勢からたどります。
身代金の決定プロセス、助かる人質と助からない人質は何で決まるのか、なぜ現地のリスクを理解しない若者が危険なエリアに次々と向かうのか、など興味深いテーマについて誘拐から生還した人や、身代金の交渉人などの当事者のインタビューから紐解きます。
「どこの政府でも人質の解放のためには多かれ少なかれ身代金を払っている」、「現地のリスクを正しく理解せず、正義感だけで現地から報道することは慎むべき」、「誘拐から数週間のうちなら数千ドルで解決できる」等々の生々しい証言が次々と明らかになっています。
シリア周辺での誘拐だけでなく、ソマリア沖で多発した海賊、EUへの難民の違法入国斡旋など人命をビジネスの対象とする多くの事象を取材対象としている本書は、ますます保護主義的傾向を強める世界の現状を理解するために大変参考になると感じました。
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「パイナップルアーミー」「MASTERキートン」で描かれた、世界のテロ・誘拐情勢をアップデートするのに適している。
資本主義に「人命は地球より重い」というスローガンが合わされば、必然的に生まれる、営利誘拐というビジネス。対するには「メメント・モリ」への意識転換が必要か。テロリストとは交渉しない(裏交渉もしない)、というのは、ダッカ事件の頃とは違い「国は助けてくれない」という認識が一般的になった日本なら出来そう。
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無政府状態で様々な組織が群雄割拠、欧州政府が巨額の身代金を払うため、食料や武器を買う金を得るために誘拐する。地域経済が海賊で回るソマリア。誘拐組織のしくみを難民の密入国輸送に転用、より容易に多くを稼ぐようになった。
グローバル化で世界のどこへでも安心して旅行できる、そんな状況がなくなっていることがわかりました。なぜ一般人や要人でなく人道支援家やジャーナリストがターゲットにされるのかも。
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「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの
支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるため
です。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺
各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」
2015年1月15日に安倍晋三が行った日エジプト経済合同委員会合
でのスピーチは、やはりISに拘束されていた日本人ふたりの殺害の
引き金になってたんだ。
前年の11月にはふたりが拘束されていることを、日本政府は把握し
ていた。それなのにこのスピーチである。
「人道支援」の部分を協調したかったのであろうが、「ISILと闘う
周辺各国」という文言が相手を刺激したのだろう。安倍晋三のこの
スピーチをきっかけとして、日本人2人は身代金要求対象の人質から
殺害対象に変更された。
本書ではジハーディストによる外国人誘拐・身代金要求の様々な
ケースを取り上げ、実際に人質解放交渉の最前線にいる人たちに
取材して、崩壊国家にはびこる人質ビジネスを詳らかにしている。
2016年の発行なので、シリアをはじめ中東の情勢には変化があるが、
大筋では今も変わらないのだろうな。外国人を誘拐し、身代金を
要求し、まんまと入手した身代金がテロリストの新たな資金と
なる。
ここまでは誰にでも考えられることだろうが、人質ビジネスで
の儲けを元手に今度は自分たちが生み出した難民の渡航斡旋
ビジネスに乗り出していたとは。
しかもシリア国内で難民が一番安全に通行できるのがIS支配地域
だと著者は言う。
しかし、人の命に値段をつけて儲けているのは中東のジハーディスト
だけではない。多くの難民が流入しているヨーロッパでも政府の補助
金目当てに難民ビジネスを行っている人たちがいる。
そして、人質ビジネスを行っているのは過激なジハーディストだけ
ではく、独裁政権及びそれに抵抗する反政府組織なのだ。
中東に崩壊国家・無法国家が生まれたのは、元をただせば欧米(勿論、
アメリカの言いなりの日本も含む)の誤った中東政策が原因なのだ
ろう。
その結果が、難民受け入れ国で軋轢が生まれることとなった。途轍もない
ブーメランが返ってきたようなものなのじゃないだろうか。
先進国の驕りがいろんなところで綻びを作っていやしないだろうか。
尚、欧米各国では人質にランクがあるそうだ。日本政府にも似たような
ランク付けがあるのかしらね。フリージャーナリストは見殺しらしいが。
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インパクトの強いタイトルだが、原題は「人身の商人」。難民たちの移動が「テロ組織」等の収入源になっていることなどにも頁を割いており、震撼させられる。一過性の議論ではなく、鳥の目で状況を見たい際にオススメ。厚いが読み易い。
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私たちの考える人質事件は犯罪としての認識だが、テロ組織にとってはビジネスとっては政治取引の手段でしかない。タイトル通り、犯罪もベースにした経済圏が成り立ってしまっている。そんな経済圏を成り立たせているのは実は先進国だということに気づいていない国が多い。そんな先進国のウィークポイントをうまく突かれているのが人質だという状況。不安安定な国では人権ではなく商品としての扱いが克明に記されている。
人質、移民問題。。悪を売り物にした経済圏はどこにでも成り立ってしまっている現代の怖さを知る一冊。
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タイトルの通り、人質に関する経済学。池上さんお墨付きだけありなかなかおもしろい。誘拐、交渉にもいろんな法則、データがあることを知れる一冊。
歴史的地理的背景も語られており、興味深い。
人質ビジネス、身代金ビジネスを分析する本
メモ
・9.11後のアメリカのマネロン対策により流れが大きく変わった。アメリカを経由できなくなったことにより、ヨーロッパで資金洗浄が行われるように。その流れでサヘル地域がとても危険な状況に。
・誘拐組織のみならず政府も人質一人あたりを値踏みし、値段づけを行なっている。
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【誘拐ビジネスを繁栄させる要素として、無政府状態、経済発展、そしてもちろん、強欲を挙げることができる】(文中より引用)
外国人の誘拐や難民の密入国といったテロ組織や犯罪集団が生業とする「ビジネス」に光を当てた作品。数々の犯罪の裏で資金がどのように動いているかを明らかにしていきます。著者は、マネーロンダリングに関する研究の第一人者として知られるロレッタ・ナポリオーニ。訳者は、上智大学を卒業し翻訳家として活躍する村井章子。原題は、『Merchants of Men: How Jihadists and ISIS Turned Kidnapping and Refugee Trafficking into a Multibillion-Dollar Business』。
単発のニュースとして終わりがちな誘拐などの背後に広がる経済面を活写したという点で高く評価できる一冊。人間が売買の対象にされるという恐ろしさだけでなく、その周りにいかにしてビジネスが形成されていってしまうかという過程をよく理解することができます。
訳もこなれており☆5つ
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衝撃的な内容。読んでいてなぜ誘拐がなくならないのかがよく分かる。私の周りではシリア近辺へ行きたがる人はおらず、自身も望んだことは一度もない。そのため欧米人のシリアに対する思いというか憧れが理解に苦しい。無邪気に訪れ、バンバン誘拐されていく様子が読んでいて怖い。しかもただのインタビュー本ではなく、誘拐がいかにしてビジネスとして成り立っているか解説しているため余計に恐怖感が増す。誘拐組織にとって、人質は拉致した瞬間から毎日毎日コストのかかる投資対象となるそうだ。外国人は国籍と職業に応じて値付けされ取引される。日本は全くの無関係とは言えないが、主にヨーロッパと中東の闇を覗いた気持ちになった。