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サンタクロースのルーツになったのはキリスト教の聖人「聖ニコラウス」だとされているが、現在の(とくに日本の)クリスマスで子どもたちにプレゼントを配る赤い服を着た陽気な老人からはイエス・キリストについての宗教的なメッセージは全く感じられない。
筆者は、漠然と違和感を覚える中で出会った「サンタ・マップ」に、「日本では布袋和尚がサンタクロースの役割を果たしている」という記述を見つけ、サンタクロースのルーツを探る旅に出ることを決意する。
前に読んだ「愛と狂瀾のメリークリスマス」や若林ひとみ『クリスマスの文化史』などにもある、聖ニコラウスをめぐる伝説や、聖ニコラウス祭の様子、子どもとのかかわりなど、既知の情報もありましたが、実際に現地を訪ね、それぞれの場所での祭祀を体験した筆者のコメントや考察は、臨場感と説得力があると感じました。
日本でサンタクロース(あるいはクリスマスというイベント)がどのようにして受け入れられてきたのか、という部分については「愛と狂瀾のメリークリスマス」のほうが詳細に記述・分析されている面もありますが、クリスマスへの嫌悪感が無い分だけ、本書の方が読みやすい(読んでいて抵抗感がない)と感じました。
なかでも、冬至祭とのつながりから、秋田県のナマハゲにも関連性がある、という部分は非常に興味深く読みましたし、ナマハゲが「子どものための行事ではない」ということも初めて知りました。
「悪い子はいねが」と子どもをこわがらせる「しつけ」のイメージのみが強いナマハゲですが、その祭り全体につきそい、関係者との話をふくめて記述してくれていて祭祀全体のイメージやねらい、その歴史なども知ることができて(サンタクロースには直接関係がないかもしれませんが)とても参考になりました。