紙の本
話させる才能
2017/03/26 17:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
菊子を目の前にすると誰もが自分の事を話したくなる。そんな菊子と菊子の才能を見込んだ編集社社長と社員のドタバタ劇です。
読み継がれる名作を出版したい二人に流されるままコメント取の仕事を淡々と続ける菊子さん。でも、彼女なりの悩みもあって。
編集者だけに社長と社員はたくさん文学を読み込んでいます。社員は文学オタク。
様々な文学作品を織り交ぜてストーリーは進みます。
難しい作品はなし。童話がほとんど。童話じゃなくても誰もが読んだことある有名作なので大丈夫です。絡め方も絶妙です。
『おやゆび姫』のように流されまくり、『シンデレラ』のように居場所が向こうからやってくる。
そして『赤毛のアン』のようにチャンスは自分でつかむ。菊子さんの成長の物語でもあります。
登場人物みんな一癖二癖あるけど優しいです。たとえヤクザの親分でも優しい。
読後爽やかな一冊です。
投稿元:
レビューを見る
これも大山ワールド。読んだ後ほっこりする。
三巴企画という社長の戸部と社員の桐谷二人だけの弱小編集プロダクションに、たまたま通りかかったお弁当屋をクビになった原之内菊子が加わるところから話が始まる。多くの人が自分の話を聞いて欲しがっている。こんな世の中だから菊子を求めている人は大勢いる。人は人に心の中に貯まったものを吐き出さないと自分の心が苦しくなる。菊子自身がそうだ。でも、彼女は心の拠り所である祖母に久しぶりに会い、自身の心は救われる。祖母に会ったことで自分の聞く力が世の中にとってどんなものか理解した菊子、前向きに仕事に取り組もうとする。シリーズ化しての続編に期待したい。社長の戸部や社員の桐谷のキャラクターも好き。桐谷に幸せが来るのかも気になる。
投稿元:
レビューを見る
猫弁とは違った楽しさのある小説。
読みながら楽しくて楽しくて、次はどんな人の人生が菊子に語られるのだろう、と待ち遠しくて。
でも、そんないわゆる「隠し事を知る楽しみ」ではなく、その人の全てを知ってしまうことの大変さや秘密を背負うことの重さに気付きました。誰かの全てを知ることって本当に辛そうで。そんな「聞き女の血」を持つ不幸を思ったり。
けれど「人に語られる」チカラというのが何か特別なことではなく、人を信じ人から信じられる菊子の天性によるものだと分かった瞬間、もやもやが消え、菊子の魅力が増したような。
菊子、いいね。会ってみたい。会って聞いてもらいたい。あんなことやこんなこと。そして私も菊子の話を聞いてみたい。あんなことやこんなことを。
投稿元:
レビューを見る
大人になると本音と建て前を使い分ける・・・、そんなことが当たり前の世の中です。そしていつの間にか建て前だけの社会になったような気がします。一方で、人の話を聞かない、あるいは信じない・・・、そんな空気が蔓延してる気がします。「牛姫の嫁入り」「猫弁シリーズ」「あずかりやさん」などの大山淳子さんがそんな世の中に警鐘を鳴らした作品「原之内菊子の憂鬱なインタビュー」2017.1発行、社会性、娯楽性、そして人間の本質に迫る感動作です。「腹の内聞く子」さんは、人を信じる女性です。信じるから、人が自分の本音を語ります!
投稿元:
レビューを見る
本音を話せる人がいるのか、自分は人の話を聞いているのか。都会ほど菊子を必要としていることが、寂しい。
投稿元:
レビューを見る
聞くことで相手を幸福にする稀有な才能を持つ菊子.彼女の力に目をつけた凸凹二人組の戸部と元大手出版社にいた東大卒の桐谷.この3人の突撃インタビュー的本心暴露の内容がとても面白く,周りの人物も温かみがあっておちゃらけているようでしんみりさせられた.桐谷の姉のことを知った時母のあり方が素敵だと思った.
投稿元:
レビューを見る
何とも不思議なヒロインだった。
え?
ヒロインなの?悪いけど…
と最初は思った。
おたふくだし、スタイルもずんぐり。
むすっとして口は重いし、表情もどんよりしている。
彼女が話さないので、もっぱら周りの人間が語る状況で話が進む。
ますます菊子は謎に包まれている。
社長・戸部の関西弁のせりふがテンポよく、さすが生まれついての芸人・大阪人である。
たった一人の社員・桐谷は東大出のエリートだが、本の虫で、童話と赤毛のアンをこよなく愛している。
正反対の意見を戦わす二人の会話は、最高の漫才とも言える。
文藝漫才だ。
戸部の太宰治論や、ライ麦畑論も面白く、桐谷の「メロスは無情」論も目からうろこ。
一方、話さない女・菊子は、話さない代わりに『聞く女』である。
誰もが彼女を見ると本音を話してしまうので、戸部の編集プロダクション「三巴企画」にスカウトされた。
この作品は、彼女が、もてあましていた自分の力を乗り越え、本当の意味でのインタビュアーになるまでの物語だ。
…と書くと、スマートすぎてありきたりだけど。
みにくいあひるの子のお話でもあり、シンデレラストーリーでもあるようですね。
でも、菊子はガラスの靴の代わりにスニーカーを履いて、自分の足で歩くことを選びました。
太ももは今日もパンパンであるに違いない。
でも、体も気持ちも軽いのに違いない。
とても面白かったし、幸せな気分になりました。
投稿元:
レビューを見る
聞く子の魔法?でグイグイ引き込まれた。
傾聴って言葉があるけど、菊子がやっていたのはきっとそれで。でもやっぱり菊子だって人間だから、生々しい話聞かされ過ぎたら、気持ち悪くなってしまうのは当たり前で。
物語が進んでいく中で菊子にどんどん人間味が足されていくのが鮮やかだった。
投稿元:
レビューを見る
原之内菊子って、はらのうちきくこ…なるほどー!と、読んでから気づいた。テンポよく読めて面白かった!菊子の顔を見た人は、心の内を話し出さずにはいられなくなる。菊子のおばあちゃんがすごい。菊子の特技は聞くことではなく人を信じること。童話が大好きな桐谷と関西弁のおっさん戸部、いいコンビだなぁ。
投稿元:
レビューを見る
"はらのうちきくこ"は黙っていても相手が本音を話さずにいられなくなる能力がある。インタビュアーに抜擢したところ思いもよらぬ展開に…。単なる「聞き屋」ではなくインタビュアーってとこが面白かった。
投稿元:
レビューを見る
2017.8.21 読了
大手出版社を辞めて 独立した戸部と、
そこにいる唯一の社員の桐谷。
2人しかいない 会社。
なかなか うまくいかない。
弱小出版社なので、
取材も 編集も なにもかもしなければならない。
取材(インタビュー)からして
相手を怒らせて 失敗してしまう。
その帰りに寄った弁当屋さん。
えらい長蛇の列で、興味本位で入ってみた。
なんと そこの女子 原之内菊子さん。
皆の目的は、弁当の味ではなく、
菊子さんに話を聞いてもらいたいから。
菊子さんには 不思議な力があって、
なぜか 菊子さんと目が合うと 本音を
ぶちまけたくなる。
戸部は「これは いいインタビュアーになれる!」と
自分の会社にスカウトする。
最後は ちょっとホコっとする。
シリーズになるのかな。
なれば うれしいかも。
投稿元:
レビューを見る
類まれなる「聞く能力」を持った原之内菊子(このネーミングがまた何とも)。その能力のせいで仕事も続かず悩んでいた彼女に与えられた仕事は、インタビュアー。これこそ天職じゃないか、と思えるのですが……ううむ、これはあまりにもきついなあ。本音を聞かずにいられる、ってのも幸せなことなのかもしれません。
彼女がなぜその能力を得るに至ったかの物語と、彼女を必要とする人たち。きれいごとばかりではないにせよ、温かな印象でした。キャラもそれぞれ魅力的。文学オタクの青年とか、お菓子作りが趣味の組長とか。なんかいいよなあ。
投稿元:
レビューを見る
彼女の目を見ると、心の内を話さずにはいられなくなる。
ほんわかあったかい物語。
[図書館・初読・9月13日読了]
投稿元:
レビューを見る
なで肩で、お尻のどっしりしたオバサン体型。
おたふく顔の原之内菊子。
だが、彼女には、特別な才能があった。
彼女の顔を見るやいなや、人は自分のことを
しゃべりたくて、しゃべりたくて仕方なくなるのだ。
悩み、グチ、何もかも…。
そのために彼女はトラブルを抱え込み、
職を転々としていた。
天ぷら屋でアルバイトをしていた彼女を見染めたのが、
弱小の編集プロダクション「三巴企画」の戸部社長だった。
彼女に会うと、人はベラベラと話をしたがる、
それは、取材記者として、ドンピシャじゃないだろうか。
そして、三巴企画の唯一の社員、桐谷俊、
生真面目で融通がきかない童話オタクの彼も
彼女の魔術にかかった一人。
菊子に心の内をさらけ出し、また、
彼女を取り巻く人々の変化を目の当たりにするうち、
彼自身も変化していくことに気づく。
さて、三巴企画のインタビュアーになった菊子は、
やくざの組長の取材に出かけるが、
とんでもない事件に発展して…。
ストーリー半ばまで、菊子より戸部社長のキャラが際立ち、
菊子自身や心のうちの輪郭がぼんやりして、
物語に引き込まれるまでにはいかなかった。
人は胸の内、悩みやグチ、本音やたまった毒素を
人に向かって吐き出せば、
吐き出した人は楽にはなるだろう。
だが、本当に、楽になるのだろうか。
本音を漏らしたことを後悔しないのだろうか。
また、「話され症」の菊子に、
人々の「語り」は溜まっていかないのだろうか。
余計なことを考えてしまった。
投稿元:
レビューを見る
2019/6/21
1ページ目から大山淳子だ!ってなる文章。
いいな、ワクワクする。
主人公の話し方が特に独特でお馴染み。
声が聞こえてくるようでニヤニヤしてしまう。
それにしても元気のないばっつぁが元気でよかった。
菊ちゃん行くとこある。
しかも両親も気にかけているし。
それ以上に三巴企画がある。
よかったなぁ、居場所。
いいなぁ。
菊子の記事読んでみたい。