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紙の本
あおによし
2023/05/31 21:06
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
万葉集4000首余りの中から、恋を詠った数首にまつわる物語を想像の翼のおもむくままに紡いだ連作短編集。編者の大伴家持やその周辺のひとびとにまつわるストーリーがうまくつながり、平城京や赴任地での風景描写も時代の空気を濃密に伝えてくれる。
日本の歴史上大きな画期となったのは、武家政権へと移行する平安末期から鎌倉初期だが、それ以上に激的だったのが万葉集の編まれた奈良時代だと思う。仏教と律令を国造りの柱に据えたこの時代は、それまでのやり方を大きく変えるものであり、天皇とよばれるようになった大王と古代から覇を唱えてきた豪族たちと振興の氏族たちが、権力をうかがい綱引きを繰り広げていた不穏な時代でもあった。
そんななか、個人の嗜好や心の風景もそれ以前とくらべて変化しつつあった。古代の歌謡から、より洗練された短歌で心情を表す形式が貴族だけでなく、一般庶民のあいだでも広まり、恋のようなより個人的な感情は漢詩よりも短歌で伝えるのが主流となってゆく。
平安時代に入って技巧が凝らされ洗練されてゆく古今集よりも、古代の雫をたっぷり含んだ万葉集は現代の我々から見ても、その表現に驚かされることがしばしばある。
そのひとつが、この作品の最後を飾る 『恋の奴』 だろう。恋という風のようにとらえどころのないものをひとつの人格あるものとしたところが何とも言えずすごいの一言に尽きる。
鍵をかけて櫃に納めてあったにもかかわらず、気付くと鍵が外れて『恋の奴』が猛獣のように飛びかかってくる。その手に囚われたが最後、またも恋の渦に呑み込まれてしまう・・・。人間の理性では制御できず、凶暴性すら感じさせる『恋』という不思議な感情をこれ以上うまく言い表した例を他に知らない。
だが作者はこの歌を灼熱の恋に身をやく人間ではなく、詠み手の心と自らの心を図りながら、知らず知らず『恋』を飼い始めた若い女性の目を開くものとして読者に示す方法をとった。とても巧妙で奥行きのある物語に仕上がっているのは、従順に飼いならせると思っていた子犬が、いつの間にか自らの意思で動く得体のしれない『奴』に成長し、いつつかみかかってくるかしれない不安を抱く若い女性をヒロインとしたからだろう。
その相手が、父親のような慈愛で包む男や、権勢の駒とするため恋を仕掛ける策略家の男ではない、自分のささやかな世界を静かに守りつづけることに意味を見出す男だというのがよかった。清冽な湧き水に手を浸したような読後感だった。
紙の本
万葉人の魅力
2017/02/25 18:33
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
万葉の歌を題材に大伴家持や彼の周辺の人々の恋の在り様を描いた短編集です。
古代ロマンあふれており、万葉人の生き生きとした姿が心地いいです。
藤原氏に押され凋落の体の大伴氏の悲哀もそこはかとなく感じられます。
律令を中心に中央集権国家形成を目指し政治が大きく動いた政界、地方はまだ貧しく都は疫病がはやり天皇は遷都を繰り返す不安定な情勢など、
時代背景や人間関係の知識があった方がより楽しめるかも。
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