紙の本
分かりやすくまとめられた現代ロシア史
2017/05/12 20:49
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界初の社会主義革命によって成立したソビエト連邦は20世紀という時代に多大な影響を与え、そして70数年後に消滅した。本書はその歴史をモロトフ(元外相)いう党の中枢にいた人物の生涯を辿りながら詳述した、ロシア研究の第一人者下斗米さんでなければ書けぬ力作である。それにしてもソ連は建国以来、第二次大戦で2000万人、内戦とスターリン粛清で1800万人が命を落としたという。日本人の戦死者とは一桁違う。ソ連邦の人口約1億のうち、3人に1人は死に、殆どの国民が悲惨な運命に遭ったことになる。20世紀のソビエト連邦の歴史は悲劇の歴史というほかはない。
紙の本
ソビエト連邦建国から崩壊までを描いた画期的な一冊です!
2020/03/19 17:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、20世紀最大の政治事件とも言われるソビエト連邦という人類史上最大で最初の社会主義国家の建国から滅亡までを克明に描いた一冊です。1917年のロシア革命から1991年のソビエト連邦崩壊までの74年間は一体どのような時代だったのでしょうか。ソ連崩壊後に私たちの目に触れることとなった大量の史料を駆使して、ソ連という国を読み解いた画期的な一冊です。内容構成も、「序 章 党が国家であった世紀」、「第1章 ロシア革命とボリシェビク」、「第2章 共産党とアパラチク(機関専従員)」、「第3章 ネップ(新経済政策)とアンチ・ルイノチニク(反市場主義)」、「第4章 スターリン体制とスターリニスト」、「第5章 世界大戦とナルコミンデル(外務人民委員)」、「第6章 冷戦とデルジャブニク(大国主義者)」、「第7章 非スターリン化とドグマチーク(教条主義者)」、「第8章 停滞の時代のなかのペンシオネール(年金生活者)」、「終章 モロトフとソ連崩壊」となっており、どのテーマも興味深いものばかりです!
紙の本
同胞を殺し、殺させる輩が、かつて支配し、今なお、している国
2023/03/03 01:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
100年に満たない時間幅の中で、
大規模な戦争への参加があったとはいえ、
千万という単位で自国民を葬った、
例の北方の隣国の一時代について
記述した本です。
二十世紀の暗黒史、という副題を
奉りたくなる一冊。
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ソビエト連邦の歴史の中ではイマイチ目立たない、モロトフにフォーカスしてソ連史を追う。
最近、何となくこの手の本をぽつぽつ読んでいるのだが(ロシア・ソ連というのは妙な魅力があると思う)、モロトフについてはさらりと流されていることが多かった。自伝を書かなかったそうだが、もし書いていたらどんなものになっていたのだろう……。
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単純な通史ではなくモロトフの立場からロシア近代史はどう評価しうるのか。といった視点で記述がされていると思う。ただ、いかんせん、スターリンの時代から第二次世界大戦後をモロトフの目線で見ることはとてつもなく無理を生じる。読み進める中で、革命期の活動家がその後何を発言しうるのか、という点が面白かった。はっきり言えば、時代錯誤である。
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スターリン時代のソ連ナンバー2として知られるモロトフを焦点に据えたソヴィエト連邦通史。ソ連共産党とソ連国家との関係の変容に重きを置いている。近年のロシアでの研究動向を反映して「古儀式派」(正教異端派)の影響と人脈を重視しているが(モロトフも古儀式派が強い地域の出身という)、一歩間違えると宗教還元論や陰謀論に堕す危険性があり、これには疑問が多い。
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1917年のロシア革命から1991年のソ連崩壊までを、モロトフを切り口に描いた研究書。
モロトフは
1930-1941 首相
1939-1949 外相 (39-41は首相兼務)
1953-1956 外相
と、スターリンの腹心として、スターリン存命中も1953年のスターリン死後も
ソ連の国家中枢にいました。
1949年以降はスターリンから疎まれたものの、モロトフは1986年に死ぬまで一貫して、
大粛清ですら"仕方ないこと"とするほどに、スターリン主義者であったそうです。
読みやすい文章で書かれているので、ソ連の通史を軽く知るには良いと思います。
なお、もうひとつの切り口である、ロシア正教の古儀式派については、
まったく知識が無いため、そのアプローチが良いものなのか否かは分かりません。
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モロトフを基軸に、ソビエトの勃興から崩壊までを最新の研究成果も交えながらコンパクトにまとめ上げた力作。
アナクロニズムの連続、そもそも革命政権が肥大化していくことの内包する矛盾が、ソ連の崩壊の端的な理由だと改めて。
ただ、ソビエト史と共産主義史へのある程度の知識がないと、事実の羅列を追うだけになってしまうので、入門的には使えない。
スターリンの時期はかなり丁寧に記されているが、崩壊のメカニズムに迫りたい、という個人的なこの本を手に取った動機を満たすものではなかったかな、、
個人的には、モロトフという着眼はとても面白く、彼の人生こそソ連の歴史そのものだというのはまさしくその通りだと思った
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モロトフを軸に叙述するのは、ちょうどその生涯がソ連の誕生から崩壊に至る歴史とほぼほぼ重なる要素もあるだろう。それにしても、ソ連の誕生から崩壊に至る過程はまさに壮大な社会実験そのものという気がする一方、その実験で失われた命はあまりにも多い。
米ソ冷戦が終結といったニュースを聴いた子供の頃、これから戦争というものは起こらなくなるのだなとぼんやり思った記憶があるが、現代は覇権主義やポピュリズムなどが台頭し、冷戦時の二極から多極化して混迷の度を深めている。未来の世界史の行方が気になる。
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多すぎる数の犠牲のうえに存在していたソビエト連邦。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、再度この地域の歴史を勉強したいと思って手に取ってみた。
現実を見ず、自らの理想を通すための政略だけで動かすには、領土も広大すぎ、人々の考えも多様すぎたのだと、無理に一言にまとめるとそうなるのであろう。
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御近所の書店が閉店するというその日に立寄り、眼に留めて求めた一冊であった。ゆっくりと読んだ。
随分と以前から関心を寄せている事項に纏わる本ということにもなる。主に“政治史”ということで、「ソ連」が辿った経過を振り返る内容である。
ヴャチェスラフ・ミハイロヴィチ・モロトフ(1890-1986)という人物が在る。「モロトフ」は、「レーニン」や「トロツキー」や「スターリン」と同様、往時の革命家が使っていて、そのまま通称として有名になった“ペンネーム”である。本名はスクリャービンというそうだ。
近現代の歴史に関心を寄せる方であれば、「モロトフ・リッペンドロップ協定」という、第2次大戦の前のソ連とドイツとの間の密約という話しを耳にしているかもしれない。この話しに出て来るソ連の外務大臣がモロトフである。
モロトフは、ペンネームを通称として使い続けたことが示すように、革命が成る以前からのボリシェヴィキである。党の仕事や政府の仕事を手掛け、スターリンに近い幹部として要職を歴任した。フルシチョフ時代になって党を離れ、やがて1984年に復党する。そしてゴルバチョフ時代に入った1986年に96歳で他界している。
本書はこのモロトフを“キーマン”と位置付け、彼が関与した事案等を軸に据えながら、「ソ連」が辿った経過を振り返る内容である。
極々大雑把に顧みる。
ロシア革命の後、第1次大戦の後始末や内戦というような状況が在りながら、レーニンを指導者として体制が構築されて行く。レーニンが逝去した後、スターリンを中心とする流れと、その他の流れとの抗争のような情況が在って1930年代に入って行く。
1930年代には農業集団化の件等、実に色々と在って、やがて第2次大戦の時期に進む。戦争を乗り切った後、国際政治の様々な動きも在るが、やがてスターリンが逝去する。
以降、スターリンに近かった人達が排され、フルシチョフの時代に入る。そしてフルシチョフはブレジネフに追い落とされてしまう。やがてブレジネフの下で「停滞の時代」になる。
ブレジネフが逝去した後は、アンドロポフ、チェルネンコと何れも短命政権であった状態が続き、1985年にゴルバチョフが登場する。
ゴルバチョフの下での動き、「上からの革命」が「下からの革命」の挑戦に晒されるような状況、ソ連共産党の維持することや、連邦体制を維持することが困難になり、ソ連の旗は1991年に下ろされてしまう。
こういうような大雑把な流れに関して、様々な事柄を挙げて掘り下げているのが本書だ。
現在、ソ連の旗が下ろされてから30年余りということにはなる。「ソ連の歴史」を振り返ると、バルト3国とソ連後の12の国々が成立して辿る経過、ソ連が旗を下ろすようになって行く頃の「色々と在った…」または「課題を残し過ぎた?」ということが在って、それ故に「昨今の様々な問題」も生じているのかもしれないというようなことを思った。
「30年余り」というのも“微妙”かもしれない。本書の終章辺りに綴られている、1980年代末や1990年代冒頭の色々な出来事に関しては、極個人的な話しになるが、「自身の人生の中での見聞」というようなことで記憶に留まっている場合も多く在った。そういう情況でもあるが、それでも30年以前と最近とでは、色々な事柄を巡って随分と様子が変わってしまっていることも思わざるを得ない。そういう「個人の人生の中での時間」であると同時に「余りにも多くが大きく変わり得る時間」ということで、30年余りを“微妙”と表現したくなる。
そういう訳で、「ソ連の歴史」というようなことになると、やや複雑な想いも沸き起こるのだが、それはそれとして「振り返っておきたい事柄」であると強く思う。これもまた「昨今の様々な問題」を考える大事な材料だと思う。
本書は、最初のモノが2002年に登場していたが、その後の研究成果―ロシア革命の“担い手”というような役割を負った人達に関する事等―を加味して加筆し、2017年に「ロシア革命100年」を意識して改めて登場したモノであるという。「ソ連の歴史」に登場する人名等に不慣れな方に関しては、やや「入り悪い?」のかもしれない。が、自身はその種のモノに少し馴染んでいるので、何か凄く夢中になってしまった。
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レーニンからゴルバチョフまで。二次大戦期に外相を務め、スターリン時代のNO.2でもあるモロトフを軸としてソビエトの始まりから終わりまでが書かれてる。よく分からないところもあったけれど、ソビエトの社会主義とはなんだったのか改めて考えさせられた気がする。