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小仲は胃癌が再発したあと、
外科医の森川医師より「これ以上、治療の余地がありません」と告げられた。
衝撃のあまり「私にすれば、死ねといわれたのも同然」と、小仲は診察室を飛び出すが、大学病院でのセカンドオピニオンを断られ、抗がん剤を専門とする腫瘍内科、免疫細胞療法のクリニック、そしてホスピスへと転々とする。
それぞれの場所で小仲が会った医師とは?
一方、森川は診療を中断した小仲のことを忘れることができず、末期癌患者にどのように対したらよいのか思い悩む日々を送る。
悪いお医者さんの話かと思ったら、いいお医者さんのはなしでしたーw
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「がん患者は最後まで抗がん治療の継続を望む」のが当たり前みたく書かれているけど、ここまで治療継続に固執する患者さんに出会ったことはないな。いるとしても大多数ではないと思うのですが。患者さんと医者とは言っても結局人対人だから、コミュニケーションの問題で、小仲さんの場合は医療者を恨むことが生きがいになっている気もするので、恨まれるのもまたひとつの手段と思う。
医療者側から見れば、手術がうまくいっても感謝されないこともあれば逆に治療がうまくいかなくても感謝されることもある。再発患者をここまで意地でも入院させない病院にも出会ったことはない。「治る患者しか診ない」というのは言い過ぎ(フィクション)だろう。
ちなみに、食道OPを終えて帰りの電車で「今日の患者さんは助かりそうだ」なんて確信が持てる外科医はいないと思う。
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悪医。
久坂部羊さん。
もうだめだとなったら、
治療はしない。
治療の余地がないという現実を、しっかり受け止めて、
残された時間を大切に、
その時が来るまで、
一生懸命に生きる。
抗がん剤ではガンは治らない。
延命効果でしかない。
アフリカでは助かる命が死んでいるが、
日本では助からない命を無理に助けようとしている。
患者の気持ちは複雑。
医療者側の理屈。
患者側の理屈。
助かる患者。
治らない患者。
答えの出ない疑問な森。
患者は、
治療=病気を治すこと。
医療者は、
治療=やりすぎると大変な事になる。
医者と患者。
永遠の平行線
患者の希望は、病気が治るということだけじゃない。
医者が見離さないでいてくれることが励みになる。
希望は患者なりの、心の準備。
命を縮める治療でも、いい面がある。
患者側の気持ち。
医者の気持ち。
支える看護師の気持ち。
それぞれの気持ちが、
痛いほどわかった。
伝わった。
気持ちが変わる本です。
おススメ。
素晴らしい本でした。
涙があとからあとから。
止まりませんでした。
大号泣。
清々しい涙です。
良かった。
第3回日本医療小説大賞受賞
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末期ガンを宣告された患者と、宣告した医師の想いや生活が交互に書かれていて、グイグイ引き込まれて一気読みしてしまった。
最後まで治療を施して欲しい患者と、治療せずに余命を有意義に過ごして欲しい医師との、いつまでたっても平行線な気持ちのズレとそれぞれの葛藤がヒシヒシと伝わってくる。
私自身も11年前に乳ガン宣告を受け、フルコースの治療を経験した。肝臓に遠隔転移してからすでに5~6年経っているが、私は生きているし普通の生活を送っている。
この先も病院とは離れられないし、定期的に抗がん剤もしているけれど、幸い私は大きな副作用も無く日々の生活も遊びも楽しんでいる。
ガン罹患者として、とても重くて考えさせられるテーマだったが、読了出来たのは私が良医に恵まれ元気だからかもしれない。
本書は、医療従事者だからこそ書けるノンフィクションのような小説だと思った。
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現役の医師が描くだけあって、真実味がある。
末期がンの患者に対する医師の本心と思いと現実。
しかし、患者はもう治療法がないなんて受け入れられない。
それでもと泣きつく患者に、正直に向き合うか適当に受け流すか…
医師が考える残りの人生と患者が希望を捨てずにと向かう残りの人生にも大きな壁がある。
おそらく、ずっと平行なのだろう。
でも、医者も人間。自分も患者の立場になれば同じようになるのかもしれない。
とても興味深い話だった。
2020.1.28
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早期の胃がんを手術し、十一か月後に再発、転移が見つかり、抗がん剤などの治療を続けたが、担当医師から「残念ですが、もうこれ以上、治療の余地がありません」と告げられる。
52歳男性のがん患者の小仲と、医療センター外科医の森川。
それぞれの思いと、その後の日々が、描かれていく。
俺を見放すのかと怒りに震える小仲と、希望のない抗がん剤治療によって逆に命を削ることを悪と考える森川。
どちらも、自分の考えを分かってくれない相手を理解できないのだが…。
そんな二人の、どちらか一方への共感に偏らずに読み進むことができ、
そして終わりが来る。ほんの少しの救いがあってよかった。
何が正しいか、答えなど言えないけれど。
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「がん」の治療は、早期発見なら効果はあるけど、転移後は難しい。なぜなら、それだけ「副作用が強い」から…という現実が、素直にわかる本でした。
私だったら、どうするかな…とずっと考えていました。
「がん」が重いのは、他の病気より「長く」取り組まなきゃいけないから。仕事のこと、お金のことに始まり、ものすごい不安が押し寄せてくるのは間違いないと思うんです。
だから一緒に伴走してくれる専門家が必要で、特に主治医の方に「一緒に歩みましょう」という姿勢が見えるか見えないかは患者の気持ちを大きく変えると思います。
結局、最後に方法が無くなってしまっても「見放す」んじゃなく、何か希望になる言葉ひとつ、患者さんの心に残してあげられたら…。お医者さんだって人間だし、それでなくとも激務なので、職業的に機械的になってしまうこともあると思いますが、でもお互い、人間だからこそ、学びあえるものがあるのだから。
誰もが必ず死ぬ。でも、それでも「死」は重く、だから大きな「学び」もある。
私自身は、人生の終わりに、どんな学びをするんだろうか。
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ストーリーは
52歳の男性、ガンが再発、治療の結果
「残念ですが、もうこれ以上、治療の余地はありません」
と若い外科医に余命宣告されてしまう
「つらい抗生剤治療で命を縮めるより時間を有意義に」と
52歳の男性「先生は、私に死ねと言うんですか」
納得いかない男性「もう先生には診てもらいません!」
若い外科医を恨みながら「ガン難民」になってしまった男性
苦しみの果てホスピスにたどり着くまでを
患者の苦しみ、医者の悩みを対比させながら、展開される
わたしなら?
昨日見た再放送
NHK「ドキュメント72時」「海の見える老人ホーム」
の中でホーム住人高齢の男性がいみじくもおっしゃっていた
「80代になっても気持ちは30代と一緒なんだよなぁ」
「だってさ、みんな具合が悪くなれば医者に行くでしょ」
その恬淡とした物言いが印象深い
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患者と医者の思いが、
交錯しながら綴られていくのが
面白かったです。
小説だと、登場人物の考えとか、
行動とかが一貫して同じになってしまうところ、
この本の人達は、状況をいろいろに捉えて、
現実っぽく考え行動していくところが、
ノンフィクションを思わせました。
がんを宣告されて、
余命を充実させることができるのは、
なにがしかの支えがあってこそなんでしょうね。
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今の時代、がん=不治の病という認識はだいぶ変わってきてはいるものの、やはり医師からがんを宣告されたら、誰でも大きなショックを受けるでしょう。
小説の主人公は50代のがん患者。そして、もう一人の主人公は30代の医師。数ページ単位で、それぞれの話が進んでいきます。
この本の著者は現役の医師で、がん治療の描写がとてもリアルです。(私の身内にがん患者だった者がいて、それとの比較です)
山崎豊子さんの白い巨塔のようなベストセラー本にはなっていませんが、とても現実的で、私も主人公と同じ立場になったらどうなるかと考えさせられる一冊でした。
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末期癌患者の52歳の小仲と拠点病院の外科医森川を主人公にその視点で交互に描かれている。森川はこれ以上治療をしないと告げ、小仲は俺に死ねと言うことかと。森川の本心は治る見込みのない患者をこれ以上抗がん剤で苦しめずに、残りの時間を体力のあるうちに有意義に暮らしてほしい。小仲は生に執着し、森川を悪医とし他の医療機関にかかるが論文の実験台にされるなど悲惨な状態に陥る。最後は医療ボランティアの助けを得てホスピスで安らかに逝く。その直前、森川の出演したテレビを観た小仲は森川の本意を知り救われたのかな感じた。
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医者と患者、それぞれの立場から医療について描かれています。
医療って何?
治療って何?
わかりやすかったです。
個人的には、健康関連のお仕事をしているし、親族に医者が多いので、さんざん考える機会があった方です。
だから、この小説に出てくる患者さんたちが言う、「医療(治療)をやめるってことは、生きることを諦めるってってことだ」という思い込みにびっくりしました。
でも、通常、風邪を引いたときも、なにか体に不安がある、、などがあれば、病院に行けばなんとかしてもらえる、、と思っている人には、びっくりする内容なのかもしれません。
医療者、患者側を淡々と描いていますが、読みながら、「えっ、どっち?」などと混乱することもなく読みやすかったです。
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一気読みでした。
抗がん剤は毒で、逆に命を縮ませることもあるから、残りを有意義に生きるためにやめた方がいい。という医者の気持ちも分かります。
ただ、患者からすると、治療法が無くなるのが怖いのです。
特に、色々な治療をしてきた人にとっては、使う薬が無くなったと言われると、死ぬしかないのか。ってなると思います。
医者と患者のこの距離がどこまで縮めることができるか。これが、この本の読みどころなのかなと、思いました。
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タイトルからどんな腹黒い医師が登場するのかと思ったら全然違っていた。
治療法がもう無いからと自分に余命宣告をした医師を悪医と呼ぶ患者とその宣告をした医師、2人の視点から描かれる物語。両者とも悩みながらもがきながら懸命に生きる人。今の自分は「生」にしがみつく気持ちはないけれど、土壇場になったら果たしてどうだろう?と考えさせられた。
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癌に興味があったから読んだ。癌患者の苦しみは良くかけているな、おそらくこんな感じなんだろうなと思ったけど、医者の書き方が、ステロタイプで深みが感じられなかった。著者が医者だから現実に近いんだろうけど、おそらくだからこそ、手心が加えられているんじゃないか。総じて、もっともっとどろどろした感情を抱えているんじゃないか。そこんところを深く掘り下げて書いてほしかった。