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これが、予想外の面白さ!でした。
この本は、全国の高校生たちが集まって、
直近の直木賞候補作品の中から1作を選ぶ
{高校生直木賞}に選ばれた本です。
「高校生直木賞」なんて言うのがあることさえ知らなかったけれど、
高校生が、この本を選んだとということに、
なんだかうれしさがこみ上げてきました。
戦国時代の大名・宇喜多直家の生涯が
様々な人の視点から描かれている。
自分の娘たちの嫁ぎ先を攻め滅ぼすこともいとわず、
悪徳非道の男であるはずの直家だが、
読み進めていくうちに、様々な思いがよぎる。
ラストのシーンが切ない。
面白い本を読んで、本を閉じた時、
すごい満足感というか、感動というか・・・
胸にあふれるものがあるのだけど、
それを、どんなふうに表現したらいいかがわからない。
これを、ボキャブラリーが足りない、というのでしょうね・・・
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戦国時代。下剋上の世の中で、宇喜多直家は自身の舅を暗殺したり、自分の娘たちを嫁がせた後、片っぱしから暗殺や謀殺を繰り返していくなど、悪名高き武将だった様です。
表題作の宇喜多の捨て嫁は、直家の四女の視点で描かれていますが、この本の冒頭の話なので、そして私自身が宇喜多直家をほとんど知らずに読んだので、衝撃的でした。いくら戦国時代だからって、酷すぎる…と思い読んでいました。
しかし、読み進めるにつれて、直家を中心にして、様々な人たちの視点で続きものの短編集の様な形で描かれていますが、時代やそうせざるを得なかった背景、葛藤、苦悩なども描かれていて、「この時代を生きる・生き抜く」ことの壮絶さを感じずにはいれませんでした。
もちろん、物語なので、本当のところは分かりませんが、裏切らなければ、どうしたらいいのか、妻や子どもたちが拷問の末殺されるのを策を講じず見ているのか、主は何て、非情の極みみたいなことをするのか…と何とも言えない気持ちで読み終えました。直家は、死の間際、何を思ったのだろう。
様々な人たちの思惑や時代の流れ、才覚や運など、たくさんの要素が重なっていて、本当に大作でした。その中で、やっぱり、人の心はある。そこにかなり救われた様な気持ちになった作品でした。
ずっと、直家が患っていたとされる「尻はす」という濃い血膿の霧が漂っている様な作品でした。
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まだ織田信長が覇権を握る前の戦国時代、備前で活躍した宇喜多直家を中心とした権力争いが様々な人達の視点で描かれており、それが描写がグロテスクなまでにリアルで面白い。
各章の出来事が全てに繋がっており最後はキチンとオチがある。できれば一気に読んだ方が理解できて面白く読める。
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これは傑作だ。何といっても章立ての構成が秀逸。最初に「捨て嫁」で一撃の後に、「無想の抜刀術」で生まれついての業の深さを感じさせ、最後の「五逆の鼓」は江見河原が琵琶法師に見える、まさに平家物語。戦国時代が舞台の歴史小説にも関わらず、権謀術数が中心で合戦話が皆無、しかし人物がよく見通せるつくり。圧巻、脱帽。
高村薫や東野圭吾が推したのに直木賞を逃し、非常に残念だが後世に残る作品だと思う。
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宇喜多直家にまつわる人々それぞれに焦点を当てた短編集。権謀術数を駆使し備前の戦国大名となった宇喜多直家。手段を選ばないやり方は周りを不幸にしたのであろうか。人間臭さが良く描かれておりますが、少々冗長な書きぶりです。
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自分にとって戦国武将で宇喜多と言えば「宇喜多秀家」であった。
この小説はその父「宇喜多直家」を中心に書かれている。
妻や娘たちを犠牲にしてのし上がっていく冷血な戦国武将との思いで、読み進めんでいくと致し方なく犠牲にしなければならなかったところが分かってくる。
六章からなる小説であるが、それぞれが時や視点を変えて書かれており何とも言えない面白みを出している。
"腹裂き山姥"のオチはご愛嬌だ。
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(再読)
本書を読むのは二度目だが、衝撃は薄くならない。
背筋を何かが這い回り、気持ち悪いのだが、ゾクゾクするような快感がある。
これからも、この快感を味わいたくて何回も読み直すだろう。
読み直す価値のある物語だと思う。
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タイトルからして捨て嫁、末娘の於葉(およう)の物語と思いきや、於葉の話はあっけなく終わり、各章違う人物から見た宇喜多直家の物語。
直家も非道だが、主君の浦上宗景は家臣の中で勢力をつけたものを次々と暗殺するセコい奴。器の小さい者が上に立つと配下の者は苦労が多い。
戦国大名で名を残すような人物は部下の束ね方を心得ている。名君と呼ばれるか否かはその辺にありそうな気がする。
昭和の歴史小説のような重々しさはなかったが、なんだろう?読んでいて疲れる話だった。
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宇喜多直家凄い。業の深さがかなりありました。面白かったです。悪にもそれなりに理由があるとかの次元を超えてる権謀術数でした。
大河ドラマでやってほしい人ランキング私的2位に躍り出た宇喜多直家。お茶の間がザワつく。
木下昌輝作品は「人魚ノ肉」以来なのですが、今作も伏線回収が楽しかったです。あの人物のあの行動の裏にはこんな想いが…を知っても、だからといって寄り添えるかというとそうじゃない。非道で残酷です。
各々キャラ立ちも凄い。天竺の鳥料理??タンドリーチキンではあるまい。。
どんなに非情でも揺れる瞬間はあるというのが皮肉だし哀しい。人はすんなりと鬼にはなれないです。
小鼓の名人の音色は梅の薫りを漂わせるというのは美しいなぁ。
高校生直木賞というものがあるんだと検索してみたら、受賞作品を何作か読んでいました。
「ナイルパーチの女子会」「また、桜の国で」「くちなし」、最近の受賞作は「同志少女よ、敵を撃て」…結構シビアな作品が並んでおりました。国内海外問わず、時代物歴史物が半数でした。
「面白い本ないか」と訊かれてオススメするときに相手が生徒さんや学生さんだったりするとどうしても「これちょっと人物とか描写が殺伐とし過ぎるか」と思ってしまうけど、そんな手加減は無用かもしれないです。何歳でも、読みたいときに読みたい本読めばいいという気持ちをすぐ忘れるけど自分自身だってそうだったなぁと思い出しました。
『軍師官兵衛』で陣内孝則さんがされてた人物か。どおりでなんだか聞き覚えがあるはずです。似合うなぁ。
装画、山本タカトさん。美麗です。
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タイトルから、直家の嫁いだ娘のお話かと思いましたが、それはこの本の中の一編。視点を変え、年代を前後し、いつしかこの本が梟雄とまで呼ばれた宇喜多直家を描き出していることに気づきます。時系列が前後することで読みにくいかなと思いましたが、本人視点まで交えて語られたことで徐々にはまるピースに見せ方の上手さを感じました。娘を捨て嫁とまで世間から呼ばせた彼は、ただの梟雄ではなかった。それまでの荒々しさをすっとまとめるラストの「五逆の鼓」が印象的です。衣類の流れていた旭川の冷たさが私の足にも伝わってくるほどでした。
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面白かった。
各話短編を直家、というより、直家そのものを表す血膿で横串にして、繋ぎ合わせた構成は、良く考えられたものと思う。
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誰が忠義で誰が不忠か分からぬ謀略の数々、人の心の裏の読み合う宇喜多直家と娘の於葉。短編の中にゾクリと感じさせるものがあった。「宇喜多の捨て嫁」
短編集でありながら、宇喜多直家の生涯を主君浦上宗景との謀略数々を中心に描かれている。
短編の時系列が直家晩年の「宇喜多の捨て嫁」から始まる。宇喜多直家の人となりは謀略に長けた戦国大名の印象であったが、幼少期からの直家が成長するにつれ、止むに止まれず謀略を使わずには生きられず、その謀略の業を自らの病「尻はす」として背負っていることを伝えたかったのではないだろうか。
ちょっと、アクが強い作品。
馴染みのなかった戦国大名宇喜多直家に少し興味を持った。
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第一話を読み終え、宇喜多の娘に感情移入してしまい
「もっと読みたかったのに、何だ短編集だったのか・・」
とガックリしたのも遠い昔の記憶。
一連のつながりのあるストーリーだったのですね。
読み進めるにつれて、憎き悪役と思っていた宇喜多直家に対する見方がガラリと変わってしまいました。
◇中国地方の歴史に疎い私は、
「誰それ?聞いたこともない」
と、読みとばしていた人名が伏線であり、
「もしや、これがあの人のことか!」と何度ページを後戻りしたことでしょう。
これがデビュー作とは驚きで、次もまた読みたくなりました。
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宇喜多直家の生涯を様々な視点で描いた作品。
彼は彼なりに必死に家を守ったのだと思うのだけど。
歴史はたくさんの視点から見なくては分からないということが、この作品を読むとよく分かる。
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戦国時代の話はどうも取っ付きにくい。
幼少の頃からの名前が変わったり、諱という本名以外に呼び名があったり、寝返ったり裏で手を結んだり。歴史に疎いわたしは、目まぐるしく変化する状況についていけない。
でもこの本は巻頭に『主な登場人物』というページがあり、宇喜多家の家系図も城の地図も載っている。とても親切だと思う。とはいえ、昔の言い回しや嫡男なんていう古い言葉のせいで、小難しい印象は消えたわけではない。それでも何かに惹かれて読み進める。
6つの短編からなるこの本は、主人公は違うがすべてひとりの人物で繋がっている。本のタイトルにもなっている一番最初の『宇喜多の捨て嫁』は、この物語の主役である宇喜多直家の四女の話だ。
この本は最後の『五逆の鼓』まで読んでこそ、本当の良さが分かる。
五逆とは5種の重罪のことで、
1 父親を殺すこと
2 母親を殺すこと
3 聖者を殺すこと
4 仏の身体を傷つけて、出血させること
5 教団の和合一致を破壊し、分裂を図ること
であり、それを犯すと無限地獄に落ちるらしい。
鼓の名人の息子、江見河原源五郎の鼓は直家に梅の花の香りをもたらす。小鼓の名人は極めると、その音に梅の薫りが匂うそうだ。常識的に考えて楽器をどんなに素晴らしく演奏したとて、実際に香りが漂うことはありえない。でも分かる。頭では否定しても、わたしの心がそれを受け入れている。
この作者の本は以前『人魚ノ肉』というのを読んだ。そのときも感じたのだが、五感の表現がとても巧いのだ。目で文字を追いながら、わたしの意識はその世界の中にいて、その出来事を目の当たりにしているような、そんな気持ちになってしまう。
戦国時代に生まれた男も女もみんな不幸だなと、今の時代に生きるわたしは思う。一番偉い人以外の命は何かのために容易く使われ、大切な人も宝物もすべて奪われてしまう。
戦に勝ったとしてもそこに約束された平和があるわけではない。いったい何のために戦い続けたのだろう。そんな時代を誰が喜び、どんな得をしたのか。
まさかと思って天を仰ぐが、空が答えてくれるわけはない。